東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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027. ロウリア王国の終焉

 

中央暦1639年8月30日 午前11時過ぎ

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

ハーク城 3階大広間

 

 

ハーク城内部に突入した陸上自衛隊の特殊作戦群と警視庁から派遣された特殊部隊『SUMP』の隊員たちは、3階にある大広間前で第一近衛隊とカマキラス幼体2匹を撃破した。天井付近で潜んでいたカマキラス幼体から不意打ちを受けたものの、小型特殊生物の襲撃に備えて『メーサーライフル』や『110mm個人携帯対戦車弾』などの重火器を持ち込んでいたこともあり、ここまで無傷で制圧出来ていた。

 

「周囲クリア、敵兵、及び小型特殊生物は確認されず。」

 

戦闘態勢を取っていた隊員たちは自動小銃やメーラーライフルを下ろし、周囲を警戒しながら、今の戦闘で使用した弾薬の補充やバッテリー交換を行う。その間、特殊生物に精通した隊員が絶命したカマキラス幼体の遺骸に近づき、炭化していない体組織をサンプリングしつつ、状態を確認していた。

 

「隊長、この大カマキリですが、7月のエジェイ西方の戦いにて確認された巨大カマキリと左右前肢の鎌形状等が酷似しています。おそらくその幼体、もしくは亜種と思われます。」

 

「陽動部隊の活躍で、我々の強襲に対応可能な兵が足りず、やむを得ず育成途中の幼体も投入してきたってところでしょうか・・・」

 

「よし、本任務完了後、そのサンプルも特殊研究本部に回しておけ。そろそろ巨大カマキリについての遺伝子解析や関連する調査の結果がある程度判明する頃だ。きっとこのサンプルも役立つだろう。」

 

「目標は近い。今後もこんなヤツが出てくる可能性が高い!いっそう気を引き締めていくぞ!!」

 

「了解!!!」

 

準備を完了させた隊員たちは、再度、目標である4階『王の間』に向かって駆け始めた。

 

 

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ハーク城4階 王の間

 

 

「第一近衛隊、全滅しました模様です・・・。3階大広間は敵部隊の制圧下に入りました。直前の通信から、応援に送ったカマキラス幼体2匹もやられてしまったようです・・・」

 

魔力通信士から絶望的な報告が追加された。第零近衛隊に比肩する精鋭兵が揃った第一近衛隊、そして幼体とはいえ、剣や槍、バリスタですら弾く外骨格もつカマキラスでさえ、あっという間に無力化する敵部隊の恐ろしいまでの強さに、報告する魔力通信士の声が震え始めていた。

 

すぐ下の階に鬼神のような敵部隊がいる状況に、近衛隊大隊長ランドは背中と顔に冷や汗をかく。カマキラス幼体が3匹いるとはいえ、このままでは第零近衛隊とそれを指揮する自分もあっさり殺されてしまうだろう。

 

彼は必死に思考を巡らせ、起死回生の案を思い付いた。

 

 

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ハーク城4階 謁見の間

 

 

特殊作戦群とSUMPの隊員たちは、4階にある『謁見の間』の扉の前まで到達していた。クワ・トイネ公国の情報部を通して極秘入手した城内図面では、謁見の間の先に目標である『王の間』があるが、ここから先は袋小路となっており、王族だけの秘密の避難経路のようなものでもない限り、脱出は不可能な構造であった。

 

3階の大広間手前で受けた大カマキリの奇襲を踏まえ、付近に隠し部屋がないか、天井にアサシンや小型特殊生物が潜んでいないか十分に警戒しながら、謁見の間に続く扉に近づく。どうやら内部に即席のバリケードが作られているようで、少々の力では開きそうにない。

 

「隊長、扉に時限爆弾を設置して吹き飛ばします。」

 

隊員が扉に近づき、時限爆弾を設置する。ハンドサインを通して、数十秒後に起爆する旨を全員に伝え、扉から離れた位置で床に伏せた。

 

「扉の破壊直後に謁見の間内に突入する!」

 

「5、4、3、2、1!」

 

次の瞬間、謁見の間に続く重厚な扉が木っ端微塵に吹き飛んだ。バリケードの影に潜み、侵入者を待ち構えていた第零近衛隊のロウリア兵数名も、バリケードや扉の破片と共に部屋の隅までまとめて吹き飛ばされた。

 

爆発による砂埃が舞う中、隊員たちは謁見の間に突入した。設置されていた照明用魔石も今の爆風で吹き飛んでしまい、薄暗くなった謁見の間に声が響く。

 

「随分と手荒な来訪ですね。日本国軍の皆さん、はじめまして。私は近衛隊大隊長のランドと申します。お見知りおきを・・・」

 

派手な飾りの付いた銀色の鎧に身を包んだ男が、某寿司屋の社長の名物ポーズをしながら部屋の奥からゆっくり現れた。

 

「敵意がないのであれば、すぐに武器を捨てて投稿しろ!」

 

先頭にいた特殊作戦群の橋本隊長は、銃口を向けたまま降伏勧告を行う。

 

「あなた方のような強い軍は初めて見ましたよ。わかりました、降伏しましょう。第零近衛隊、全員彼らの言う通りにしろ!」

 

ランド隊長は持っていた剣を鞘に納め、両手を上げる。柱の陰に隠れていた数名のロウリア兵も持っていた剣を捨て、両手を上げた。

 

「あなた方がお探しのハーク・ロウリア陛下はこの先にいらっしゃいますが、陛下を一体どうするおつもりでしょうか?」

 

「答える義務はない! ところで降伏したなら、そこの床の隠し穴にいるヤツをけしかけるようなマネはやめてくれよ」

 

床の仕掛けを見破られたランド隊長は、思わずギョッとした。王の間には、暗殺者の侵入に備え、落とし穴が仕込まれている。その中にカマキラス幼体を潜ませ、自分と第零近衛隊は降伏した振りをする。そして身柄を確保しようと近づいた瞬間、カマキラス幼体が床から飛び出し、仕留めるという作戦を考えていた。

 

しかし不自然な床の凹凸、そして3m前後の体躯をもつカマキラス幼体から発せられる熱量は、上蓋の隙間越しとはいえ装着されていたサーモグラフィカメラにより、隊員たちにはバレバレであった。

 

「見破られましたか・・・。仕方ありません。かかれ!!」

 

ランド隊長の前の床が吹き飛び、中から3匹の大カマキリが現れた。残っていた第零近衛隊も床に捨てた剣をもう一度拾い、ランド隊長と共に襲い掛かってきた。

 

「やはり出やがったか・・・小型特殊生物が複数出現! フォーメーションAに移行する! 全員防護具着用!!」

 

バリスティックシールドを構えた隊員たちが前に出て防御態勢を取るのと同時に、隊員全員がヘルメットについた防護具を着用する。次の瞬間、対小型特殊生物用の閃光手榴弾がカマキラス幼体の前に投げ込まれた。

 

160デシベルを超える強烈な爆発音と100万カンデラ以上の眩い閃光が、カマキラス幼体たちと第零近衛隊を包み込む。普通の人間である第零近衛隊は勿論、小さな眼がドーム状に集まって構成されている『複眼』をもつカマキラスたちには、この強烈な閃光は効果抜群であった。

 

方向感覚の喪失や見当識失調などのショック状態を引き起こしたカマキラス幼体たちに、容赦なくメーサーライフルが照射され、110mm個人携帯対戦車弾が撃ち込まれる。近くでショックを受け、身動きが取れなくなっていた第零近衛隊にも、巻き添えで自動小銃を含めた流れ弾が直撃する。

 

やがて煙が晴れ、特殊作戦群とSUMPの隊員たちは、カマキラス幼体3匹と第零近衛隊の全滅を確認する。

 

「クリア、これより王の間に突入する。」

 

 

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ロウリア王国大王ハーク・ロウリア34世は、王の間の奥にある緊急控室で、両手で頭を抱えながら自分の軽率さを酷く後悔していた。

 

服従と言っていいほどの、屈辱的な条件を受け入れたうえでの列強パーパルディア皇国からの軍事支援。6年もの歳月をかけ、ようやく実現したロデニウス大陸統一するための最強の軍。数万の兵、数千隻の軍船、数百騎のワイバーン、そして切り札であったカマキラス・・・

 

クワ・トイネ公国とクイラ王国を同時に相手しても負ける要素はまったく無く、圧倒的な勝利で終わる筈だった・・・。

 

しかし現実は苦労して築き上げたこれらの殆どを失い、すぐ前の謁見の間にまで敵兵に攻め込まれる事態となっている。最初に日本国が国交締結しようと訪れた際、きちんと対応しておけば、せめて『ロデニウス大陸沖大海戦』の後に日本国について正確に調査をしておけば・・・と悔やんでも悔やみきれない。

 

部屋の扉が蹴破られる音とともに、敵兵が侵入してきた。

 

「ロウリア王国国王、ハーク・ロウリア34世ですね。私は日本国警視庁の青木と申します。あなたには特殊生物を用いたテロ行為、及びギムの町の住人虐殺容疑がかかっています。身柄を拘束させてもらいます。」

 

ハーク・ロウリア34世の両手に手錠がかけられ、その身柄は日本国の手に落ちた。彼の希望もあり、ミミネル将軍やパタジン将軍の残存部隊に対してこれ以上の戦闘は無意味である旨の魔信連絡が行われ、王都を含めた国民の安全を保障することを条件に、ロウリア王国軍は武装解除をして全面降伏した。

 

こうしてギムの町への侵攻から始まったロデニウス大陸の3国を巻き込んだ戦役は、ロウリア王国の敗北で終結したのであった。

 

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