東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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035. ならず者たちの最期

 

中央暦1639年9月25日

第三文明圏外東方フェン王国

首都アマノキ

 

 

軍祭で賑わっていたフェン王国の首都アマノキは、パーパルディア皇国の皇国監察軍が乱入し、手当たり次第に攻撃を開始したことで、町中が大混乱に陥っていた。

 

ワイバーンロードの放った導力火炎弾が着弾したアマノキ城や市街地では、各所で大きな火災が発生し、警備中の侍や火消し衆たちが設置された井戸や防火水槽から水をくみ上げ、消火活動に追われていた。またアマノキ港周辺では、特A級竜騎士のレクマイアが指揮するMN隊こと『メガニューラ』隊が民間人に襲い掛かり、逃げ遅れた人を次々にミイラ化させる地獄絵図が繰り広げられていた。

 

フェン王国民や軍祭に参加していた各国の観光客たちは、列強国の圧倒的な暴虐の前にもはや為す術がないと絶望し、必死に逃げ回っていたが、アマノキ沖合の光景を見た人々は自分たちの目を疑った。沖合に停泊する日本国の巨大艦に襲い掛かったワイバーンロードたちが、ハエのようにあっさりと叩き落され・・・いや跡形も残らず、木っ端微塵に爆散させられたのだ。

 

先程の廃船への攻撃デモンストレーションにて、凄まじい大砲を搭載している艦船であることは十分理解できたが、魔導砲による砲撃は命中精度の問題から、『あくまで対艦・対地攻撃で使用されるもの』というのがこの世界の常識であった。

 

二次元的な水上艦同士の戦闘ですら、『命中率の低さを数で補う』というコンセプトのもと、列強パーパルディア皇国海軍の主力が多数の魔導砲を搭載した戦列艦(ちなみに最大射程での命中率は約1%程度)であることからも、『三次元的に高速で動き回る航空戦力を大砲で一発も外さずに撃墜した』ことが、どれだけ常識外れのことだったか伺える。

 

ワイバーンロード10騎が殲滅された様子は、アマノキ城や市街地を攻撃していたベータ分隊やメガニューラ隊を指揮していた副隊長のレクマイアにも見えており、全員がありえないという顔で唖然としていた。

 

「レクマイア副隊長、アルファ分隊が沖合に停泊していた巨大艦から攻撃を受け、全滅しました! 隊長との通信も途絶!!」

 

ベータ分隊から緊急の魔信連絡が入ったレクマイアは、必死に状況について考える。あれだけの巨大な艦船であれば、皇国のフィシャヌス型100門級戦列艦に匹敵するほどの魔導砲が搭載されているはず・・・。ということは、それを操るために大勢の水夫が甲板で作業している筈だ。加えてアルファ分隊の火炎弾攻撃で、船体は無事でも甲板上の水夫はタダでは済んでいないだろう。そこをメガニューラ隊で追撃し、魔導砲群を無力化できれば、ただデカいだけのハリボテになる筈だ!

 

そう考えたレクマイアは、旗下のメガニューラ40匹によるアマノキ港への攻撃を中止し、残されたベータ分隊に指示を出す。

 

「ベータ分隊全騎、あの沖合の巨大艦に突撃せよ! 俺のメガニューラ隊も援護する! アルファ分隊の仇をとるぞ!!」

 

実際のところ、海上自衛隊の護衛艦は FCS 射撃管制システムをはじめ、あらゆる箇所が自動制御されているため、最大クラスの護衛艦『いずも』ですら約470人と大きさのわりに乗組員の人数は多くない。加えて、戦列艦のように戦闘時に甲板で作業する自衛官は殆どいないのだが、レクマイアは皇国海軍の場合に当てはめ、突撃命令を下した。

 

 

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同日

フェン王国首都アマノキ沖合

海上自衛隊 派遣艦隊旗艦『きょうてん』

 

 

「司令、本艦に攻撃してきた敵ワイバーン10騎をすべて撃墜しました。本艦の第二プラズマメーサービーム砲塔周辺の装甲に火炎弾が直撃しましたが、損傷ありません!」

 

ゴジラの放射熱線をも無効化できる装甲とはいえ、異世界転移後に初めて受けた敵意をもった攻撃に、ブリッジにいたクルーたちも冷や汗をかいたが、まったく被害が出なかったことに全員が胸を撫で下ろす。

 

「このまま民間人救援のため、アマノキ港周辺を攻撃しているワイバーンと蚊トンボどもにも攻撃を開始したいが、下手に撃墜すると周辺に被害を拡大しかねないな・・・」

 

今回派遣された護衛艦群は、軍祭での火力演習のために臨時編成された艦隊ということもあり、『メーサーヘリ』や『岩蟹』のような市街地や海岸線での特殊生物との戦闘に適した兵器を持ってきていなかった。そうした背景もあり、民間人がまだ多数いるエリアへの被害拡大を恐れて攻めあぐねていたが、レクマイアの判断が事態を好転させた。

 

「司令、アマノキ城やアマノキ港周辺を攻撃していたワイバーン11騎とトンボ型特殊生物約40匹がこちらに向かってきます!」

 

「敵部隊が海上に出次第、全艦攻撃を開始せよ! 一騎一匹でも逃すと民間人への被害が拡大する恐れがある。確実にすべて殲滅しろ!!」

 

『きょうてん』のプラズマメーサービーム砲やイージス艦『みょうこう』をはじめとした護衛艦群の主砲が、接近してくる10騎と40匹に照準を合わせ、攻撃のタイミングを見計らう。さらに万が一、至近距離まで接近された場合に備え、高性能20mm機関砲などの近接防空システム(CIWS)も起動するなど、迎撃準備が整えられた。

 

 

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懲罰部隊の隊長が戦死したのに伴い、残存部隊の代理指揮を執ることになったレクマイアは、アルファ分隊を殲滅した沖合の巨大艦に向けて飛行していた。海上に出て攻撃目標の艦隊との距離が縮まったことで、その全容が明らかになってきた。

 

「なんてデカさだ・・・。だが、たかが数門の魔導砲で一体何ができるというのだ!」

 

どの艦船も皇国海軍の戦列艦以上の大きさであるが、この距離から目視可能な魔導砲は数える程度しかない。おそらくアルファ分隊が大部分を破壊したか甲板の水夫たちが死傷したのだろう・・・と考えたベータ分隊の竜騎士たちは、導力火炎弾の発射体制に入ろうとした。

 

次の瞬間、ベータ分隊の前を先行していたメガニューラ40匹の飛行編隊に向けて、漆黒色の異形の艦船に装備された四基の砲塔から紫色に輝く12本の閃光が一斉に発射された。各砲塔は10秒近く連続してメーサー砲を照射しながら、空中の広範囲を一気に薙ぎ払っていく。翼開長5メートル前後のメガニューラに対し、紫色に輝きつつ稲妻状に蛇行する光線が次々に直撃した。

 

ワイバーンロードは、弓矢程度であれば、容易に撥ね飛ばすほどの硬い鱗をもつ。そんなワイバーンロードすら紙切れのように焼き尽くす『きょうてん』のプラズマメーサービーム砲が直撃し、メガニューラたちはあっという間に空中で焼却処分され、炭クズになって燃え尽きていく。数匹のメガニューラが紫色の閃光を潜り抜けることに成功するも、奥にいた灰色の艦隊からも次々に暴風雨のような銃弾の雨が降り注ぎ、バラバラになって海へと落下していった。

 

ワイバーンロード以上の俊敏性で大空を飛び回るメガニューラたちが、害虫を駆除するかのように淡々と空中で焼き殺されていく光景に、レクマイアは目を疑った。数年前に魔獣使役の才能を見出されてから、彼はメガニューラ隊の指揮官として数多くの文明圏外国に出兵していった。しかしそのいずれの遠征においても、メガニューラが撃墜されたことは、一度、一匹足りともなかったためである。

 

レクマイアのすぐ前にいたメガニューラにもメーサー砲が直撃し、その背後にいた彼が騎乗するワイバーンロードの片翼をメーサー砲が貫通した。瞬時に片翼を焼き尽くされ、バランスを崩したワイバーンロードは、レクマイア諸共、海へと落下した。

 

溺れそうになりながら、必死に海面から顔を出したレクマイアが見たものは、メガニューラ隊を全滅させた巨大船たちが、ベータ分隊に向かって砲撃を行い、空に紫と黒の汚い花火を次々に咲かせている光景であった。

 

こうして一足先に『日本国の洗礼』を受けたアルファ分隊から遅れること10分後、ベータ分隊とメガニューラ隊も、レクマイア以外は全滅するという同じ運命を辿ったのであった。

 

 

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余談ではあるが、メガニューラが初運用されたのは、10年前の中央暦1629年、ルディアスが皇帝の座に即位して間もない頃であった。工業都市デュロの近くで古の魔法帝国の研究施設跡が発見され、その施設跡を用いて最初期に開発されたのが、カマキラスとメガニューラであった。

 

ちょうどその頃は、パーパルディア皇国では西や北西への侵攻を開始し始めた、いわゆる皇国拡大期であった。西部にある文明国エドリンを属領にするべく、侵略計画が練られていたが、戦争で発生する数千、数万レベルの人的資源の喪失が問題になっていた。

 

その対策として、『とある皇族』が『被害を極小に抑える方法』を提案した。その方法とは、『敵国の地方の村を1つ落とし、降伏を迫る。要求を拒否されれば、村人を1人残らず惨殺し、見せしめにする』、『処刑方法は、全員をメガニューラの餌にし、生きたままミイラ化させる』という非常に残酷で悍ましい内容であった。

 

・ 簡単に生産可能

・ 一人で数10匹クラスの量を制御可能

・ 体液を吸い尽くされるという凄惨な捕食方法

・ 主力であるワイバーンロードと共同作戦可能なほどの飛行能力

 

メガニューラの特性が作戦内容的にも実にフィットしていたこともあり、この案はルディアス皇帝に承認され、皇帝の名において実行されることとなった。二週間後、ターゲットにされた1つの村と村民たちが消え、従わなければ同じ悲劇がエドリン全土に起こるだろうという勧告がなされた。『一人残らず魔獣の餌としてミイラにされる』という、あまりの惨たらしさと恐怖に震えあがったエドリンの国民は、即時降伏した。

 

こうしてこの手法の有効性を理解したパーパルディア皇国は、同様の方法を用いて、その版図を拡大していったのであった。カマキラスが遠距離攻撃手法を持たず、航続距離の短さから失敗作扱いされていたのに対し、メガニューラはワイバーンロード以上の俊敏性・同等以上の飛行能力とその特異な捕食方法から、属領統治や対文明圏外国の侵略用として属領統治軍や皇国監察軍で主に運用されていったのであった。

 

 





本作の独自設定として、メーサー砲の色はエネルギー出力に応じて変えています。イメージとしては、可視光線同様、エネルギーが高くなると波長が短くなるような感じです。紫外光以上は見えないため、極彩色と表現しています。いずれ登場するかもしれない方々のメガ・バスターやプラズマメーサーキャノンが極彩色だったのを参考にしています。

90式メーサー : オレンジ色
メーサーヘリ : 青色
ごうてん級通常メーサー : 紫色
ごうてん級艦主砲 : 極彩色
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