東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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038. カイオス局長のパワハラ面談

 

中央暦1639年10月1日

列強国 パーパルディア皇国

皇都エストシラント

 

 

列強国パーパルディア皇国の首都『皇都エストシラント』にある第三外務局では、まだ9月下旬にも関わらず、局内が真冬のように氷点下以下まで冷え切っていた。皇国監察軍東洋艦隊からフェン王国への懲罰作戦失敗の報告を受け、局長カイオスが青筋を立てながら激怒していたからである。

 

『国家戦略局』を通し、事前に入手していた情報では、フェン王国の軍祭に参加予定の戦力は、皇国監察軍の相手にならない脆弱なものでり、立案されていたフェン王国への懲罰作戦が失敗する要素はどこにも見当たらなかった。

 

実際、竜騎士隊とメガニューラ隊を発艦後、東洋艦隊を迎撃しにきたフェン王国水軍と会敵し、被害ゼロで圧勝した旨の報告が入ってきていた。ここまでは想定通りのシナリオであり、その後、竜騎士隊からアマノキへの攻撃成功の連絡が来る筈であった・・・。

 

しかし竜騎士隊20騎をはじめ、竜騎士隊と共にアマノキへの攻撃に向かったメガニューラ隊の指揮官であるレクマイアも、東洋艦隊に魔信連絡を入れることもなく、消息をたった。アマノキの状況が把握出来ず、困惑していた東洋艦隊からは、『空飛ぶ巨大艦を含む艦隊が現れ、竜母が撃沈された』旨の連絡が届く。詳細を聞こうにも、魔法通信担当の兵は頭がおかしくなったかのように『魔帝が復活した!!』とばかり復唱しており、まったく状況が掴めない。

 

数日後、逃げ帰るように『工業都市デュロ』の基地まで帰還してきた東洋艦隊には、二つ目の報告を裏付けるように、出撃時にその威容を放っていた竜母2隻が欠けていた。残っていた最後の1隻も、第三文明圏における空の覇者たるワイバーンロード一騎どころかメガニューラ一匹すら搭載されていないもぬけの殻であった。

 

これはつまり、『フェン王国への懲罰作戦において、竜騎士隊とメガニューラ隊が全滅し、竜母までもが沈められた』という作戦失敗を示唆していた。加えて司令のポクトアール提督、各戦列艦の艦長以下水兵たちは、まるで幽霊でも見たかのようにガタガタ震え、真っ青な顔をしていているという異様な状態であった。

 

工業都市デュロにある三大陸軍基地内にて療養させたことで、数日後にはある程度話せるまで落ち着きを取り戻したため、ポクトアール提督を皇都エストシラントの第三外務局まで呼び出し、事情聴取を行った。

 

唯一の格下であったレイフォルが滅亡した現在、万が一、パーパルディア皇国よりも格上である他の列強国の艦船を誤って攻撃し、返り討ちにあってしまったのでは・・・など、カイオスは最悪の事態も想定し、緊張した面持ちでポクトアール提督から当時の状況を伺った。

 

しかし、ポクトアール提督の話した内容が以下のようにあまりに現実離れしていたこともあり、最悪の事態に備えて東奔西走していた自分がバカバカしくなり、そして監察軍東洋艦隊の不甲斐なさにブチ切れているという状況である。

 

・ 最前線にいた漆黒の巨大艦は空中に浮遊していた

 

・ 後方の灰色の巨大艦もこちら以上の速力であった。

 

・ 竜母を一撃で撃沈する威力の砲撃を放たれた。

 

・ 10km前後で各竜母を一発で命中させた。 etc

 

 

「ポクトアール提督、当時の状況についてはよくわかった・・・。貴殿はその空中に浮遊していた漆黒の巨大艦を古の魔法帝国の空中戦艦だと考えたと。そしてこの情報を皇国本国へ伝えるため、急ぎ撤収した・・・というわけかな。」

 

カイオスは左手にもった報告書を眺めながら、怒気を込めた声でポクトアール提督に話しかけた。

 

「その通りです、カイオス局長。巨大な艦船を空中に浮遊させられる超魔導技術、そして10kmもの距離に関わらず初弾から砲撃をいきなり命中させ、それもピンポイントで竜母だけを狙って攻撃可能な艦船など、古の魔法帝国以外には不可能です!」

 

ポクトアール提督は興奮した声で、当時の状況を詳しく説明しようとした。

 

「では一つ尋ねるが、『伝承にあった魔帝の空中戦艦』がどういう形状をしていたか・・・については知っているかね?」

 

「いえ・・・。あまりに突拍子もない内容のため、何かの比喩のようなものかと思っていました。」

 

「では、よく覚えておきたまえ・・・。魔帝の空中戦艦は『車輪のような円形』をしているのだよ! 貴殿の話した『艦首に衝角が装備された船舶』のような船体とは、全然異なる形状だ!!」

 

カイオスは報告書をポクトアール提督に投げつけながら、大声で怒鳴った。

 

工業都市デュロの近くで発見された古の魔法帝国の研究施設跡には、空中戦艦が出入りしていた記録も残っていた。あくまで生物兵器の研究施設跡であったこともあり、残念ながら実機や部品、図面等は残っていなかったため、具体的な原理や性能などは不明であった。

 

しかしここで創り出された生物兵器を搬出するための格納庫と思われるエリアの様子、そして他の地域で伝承されている内容から、大体の大きさや形状程度であれば、ある程度推測することができたため、皇国上層部にも周知されていた。

 

「そもそも、もし本当に魔帝の艦隊だったのであれば、なぜ竜母だけを撃沈して貴殿らを見逃した! それほどの凄まじい性能をもった魔導船であれば、皇国監察軍の旧式魔導戦列艦を全滅させるなど赤子の手をひねるようなものだろう!!」

 

「それとも何か。実際の魔帝は、逃げる敵は見逃すような慈悲深い国家でした・・・とでも言いたいのか!! 」

 

何も言い返せないポクトアール提督に、カイオスが早口で捲し立てる。

 

「それにここ数か月の間、『昼間が一瞬、全世界が夜になったように闇に覆われた』ことが一度でもあったか? ああ!?」

 

今年の始めに『夜が一瞬だけ、真昼のように明るく照らされた』ことはあったが、魔帝復活の合図であるこの現象は、いまだ確認されていない。

 

「無能無能無能無能無能無能無能、無知無知無知無知無知無知無知無知無知無知、阿呆阿呆阿呆阿呆阿呆阿呆阿呆阿呆阿呆!!」

 

あまりの怒りに、カイオスは酸欠になるくらいの早口で、ポクトアール提督を罵詈雑言で罵った。傍からみると、ブラック企業のパワハラ面談をされているかのような光景である。

 

「暫くの間、貴殿を自宅謹慎とする。この件は、いずれルディアス陛下のお耳に入ることにもなるだろう・・・。それまでの間、もう少しまともな言い訳を考えておくのだな!!」

 

大声で怒鳴り散らしたことで、ある程度冷静さを取り戻したカイオスは今後について考える。旧式装備の監察軍とはいえ、文明圏外国の蛮国に敗れたことがルディアス皇帝に知られれば、局長である自分もただでは済まないだろう・・・。

 

どんな方法や武器を使用したかは不明だが、皇国の顔に泥を塗った敵がいたことは事実である。もしかすると、皇国の国家戦略局がロウリア王国を密かに支援したように、背後に他の列強国がいるのかもしれない・・・。

 

カイオスは皇国に逆らおうとしている『敵』を知るため、第三外務局総出で情報収集を開始したのであった。

 

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