東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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039. マイラスの苦悩

 

第二文明圏ムー大陸

列強国 ムー連邦

 

 

日本国が転移した第三文明圏の東方から西に約2万km離れたところには、第二文明圏と呼ばれる地域が存在している。第二文明圏は、ムー大陸と呼ばれる大陸とその周辺海域の島々で形成されており、ムー大陸を山脈に沿って斜めに分割した北東半分に世界第二位の列強国『ムー連邦』が存在している。

 

ムー連邦は、魔導文明が主流となっているこの世界において、ほぼ唯一と言ってもよい『科学と機械』を文明の基礎としている異質な国家である。これには、魔導文明を発展させられなかった『やむをえない理由』があった。

 

魔導文明には、魔素を多分に含んだ『魔石』と呼ばれる鉱山資源が必要不可欠である。地球における石油や石炭などの地下資源と同様、この世界において、魔石が埋蔵されている地域の分布は大きく偏っており、ムー大陸ではこの地下資源を殆ど採掘できなかった。

 

加えてムー大陸に住む住民の有する魔力量平均は、他大陸に住む住民と比較して劣っており、大魔導士級の魔法使いが輩出されることも稀であった。

 

このように、魔導文明の発展に必要な『物質的資源』にも『人的資源』にも恵まれなかったため、魔法とは異なる『科学』に有用性を見出し、機械と科学の技術発展に国を挙げて力を入れてきたのであった。

 

この魔導文明が中心の世界において、明らかに異質な存在であるが、その理由は後程明らかになる。

 

 

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中央暦1639年9月20日

列強国 ムー連邦

情報通信部情報分析課

 

 

第三文明圏から遠く離れた第二文明圏のムー大陸において、日本国の存在を最初に把握したのは、意外にもこの列強国『ムー連邦』に所属するとある技術士官であった。

 

『ムー連邦』には、『情報分析課』という諜報機関が存在する。近代戦において、情報戦が最も重要であることをいち早く理解したムー統括軍上層部により、数十年前に設立されたこの部署では、世界中に派遣している諜報員から日々集められる大量の情報を取捨選択し、分析することを専門にしている。

 

ここに所属する情報分析官にして技術士官であるマイラス少尉は、デスクに届けられた魔写を見ながら頭を抱えていた。その魔写には、同じくムー大陸に存在していた世界第五位の列強国『レイフォル国』をたった一隻で滅亡に追い込んだとされる超巨大な戦艦が写されていた。

 

魔写に写された超巨大戦艦は、自国の最新鋭艦『ラ・カサミ』の口径30.5cm主砲以上の巨砲を複数搭載しており、もしラ・カサミをはじめとしたムー連邦海軍の艦隊が真正面から撃ちあえば、間違いなく叩き潰されることが容易に想像出来た。

 

その巨大戦艦が所属する『第八帝国』を名乗る謎の新興国家こと『グラ・バルカス帝国』の情報が情報分析課に入り始めたのは、ここ数か月のことであった。しかし、旧レイフォリアをはじめとしたムー大陸西側地域を次々に侵略し、植民地化していることから『超危険国家』と認定し、情報分析課の最優先調査対象とされていた。

 

グラ・バルカス帝国の情報について調査、分析する日々が続いていたある日、ムー大陸から遥か東に離れた第三文明圏にいる諜報員から、新たな情報が届いた。

 

ロデニウス大陸の統一を目論んだロウリア王国の国王ハーク・ロウリア34世の野心から始まった『ロウリア事変』において、誰もが確信していたロウリア王国の圧勝という予想を、これまた新興国家の介入により、覆されたという内容であった。

 

クワ・トイネ公国やクイラ王国で収集された『ロウリア事変』の経過や、ロウリア王国大敗のカギとなったのは『日本国』という新興国家が参戦したことなどの情報が、日本国の主力艦と思われる艦船の魔写と合わせて纏められていた。

 

こちらもラ・カサミ以上に大きな艦船であったが、グラ・バルカス帝国の超巨大戦艦のような巨大な砲塔は搭載されておらず、どこから砲弾を発射するかわからない奇怪な形状の砲塔が船体に搭載されていた。それに加え、艦首に搭載された螺旋状の巨大な衝角など見たこともないような装備が船体の至る所に見受けられ、一体何を仮想敵と考え、どう戦うつもりなのか、まったく設計思想が理解できなかった。

 

「グラ・バルカス帝国に続き、わけのわからない国がまた急に突然現れたな。まさか我が国の神話が再来しているとでもいうのか・・・。脅威性でいえば、グラ・バルカス帝国の方が圧倒的だが、底が知れないという点では日本国の方も侮れないか・・・。」

 

自席の背もたれに上半身を預け、両国の艦船の魔写を眺めていたマイラス少尉は自国の行く末を案じ、大きな溜息を吐いた。

 

 

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列強国 ムー連邦

外務省

 

 

ムー連邦は機械科学文明ということもあり、魔法における魔石のような存在である『石油』を最も重要な地下資源と捉えていた。ムー大陸内にも開発された油田が存在するが、一部は第三文明圏外のロデニウス大陸にあるクイラ王国から安値で購入していた。

 

それゆえ『ロウリア事変』が勃発した際には、クイラ王国から石油や石炭が輸入できなくなるのではと危惧されていたが、日本国がこの紛争に介入したことにより、その心配も杞憂に終わった。

 

胸をなでおろすムー連邦外務省であったが、『ロウリア事変』の終結と今後の資源貿易について協議するため、ムー大使館を訪れたクイラ王国の外交担当貴族メツサルから『驚くべき話』を伝えられた。

 

『ロウリア事変』終結の立役者となった日本国は貴国同様、機械科学文明国家であり、今年の始めに国ごと他の世界から転移してきたらしい。日本国は、同じく機械科学文明国家である貴国に興味をもっており、国交締結を視野に入れた使節団が貴国のあるムー大陸へ向かっている・・・という内容であった。

 

世界第二位の列強国であるムー連邦と国交開設を希望する国は、特に珍しい話ではない。しかし自国の情報分析課が『まったく理解できない』と匙を投げるような艦船をもった国が、わざわざ向こうから出向いてくれるのであれば、会ってみても損ではないだろう・・・。

 

この情報は大使館からムー連邦本国へ連絡され、外務省を通してムー統括軍や情報分析課にも共有された。そして日本国についても調査していたマイラス少尉には、下記の指令が下った。

 

約10日後の10月6日頃、正体不明の新興国家『日本国』の使節団が、ムー連邦の領海付近へ到着予定である。外務省の職員に同行し、彼らの艦船や技術について調査せよ。

 

それぞれの思惑をもった二つの機械科学文明国家が、ついに接触しようとしていた。

 

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