東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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以前ご質問頂きました『地球から転移した地球出身な怪獣』についてですが、今後、数体の登場を予定しています。そのうちの一体は・・・


042. 海竜の紋様

 

中央暦1639年10月6日

第二文明圏ムー大陸

列強国ムー連邦

 

 

文明圏外国の外交官がムー連邦へ来訪した際、驚愕させられる機会が五回あると言われている。最初は『商業都市マイカル』へ来港し、自国とは比較にならない規模の湾口設備や大型船舶、そして高層ビルをはじめとした都市建造物をみたときである。

 

次がムー連邦の名所を案内される際、馬車や人力車ではなく、石油燃料で自走する『自動車』に乗せられたとき、三回目は『アイナンク空港』で『マリン』をはじめとした自国のワイバーンよりも速く飛翔する飛行機械を見せられたときである。

 

しかし遥か第三文明圏の果てにある日本国から来た二人の外交官は、ムー連邦の技術の結晶である『マリン』よりも優れた飛行機械に乗って来たこともあり、自動車にも高層ビルにも驚かず、日常風景を見るかのように平然としていた。

 

自動車に至っては、日本国内に約6000万台も保有しているというとんでもない情報まであっさり話されてしまう始末であり、『オスプレイ』とかいう異次元の性能をもった飛行機械の件とあわせ、面会して数時間程度しか経過していないにも関わらず、マイラスは精神的に疲れ切ってしまっていた。

 

ただマリンの機体側面にある国籍マークを見た外交官の一人が、なぜか少し狼狽した様子になったことから、翌日に予定しているムー歴史記念館や海軍施設を案内すれば、この日本人たちをギャフンとびっくりさせられるのでは・・・と少し自信が出たのであった。

 

 

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中央暦1639年10月7日

第二文明圏ムー大陸

列強国ムー連邦 ムー歴史記念館

 

 

翌日、職員とともにムー歴史記念館を案内するマイラスであったが、通常の文明圏国のとは異なり、日本国の外交官たちはムー歴史記念館の名物である大型の惑星模型にもあまり驚いていない様子であった。大方の文明圏外国から来た人間は、世界が球体の惑星であることに驚愕するのだが、日本国はムー以上に科学技術が進んでいるためか、惑星や天体の概念についても知っているようであった。

 

ここまではマイラスが予想していた通りの流れであったが、隣に展示してあった旧世界の惑星模型をみた二人が、これまでにない様子で酷く興奮し、狼狽え始めた。

 

文明圏外国はもちろん、文明国や列強国でさせ、ムー大陸の『大陸大転移』についてはムー連邦に伝わる神話と見做され、なかなか信じて貰えていなかった。だが、日本国からやってきたこの二人の外交官は、マイラスの説明を必死にメモを取りながら真剣に静聴していた。そして休憩スペースに設置された机の上に何かを広げ、衝撃の事実を口にし始めた。

 

「『ヤムート』と呼ばれる島国、そして『ニライカナイ』が、現在の我が国であると推測されます。」

 

この発言には、マイラスはもちろん、一緒にいた歴史記念館の職員も度肝を抜かれた。机の上には、日本が転移した後の第三文明圏の周辺の地図、そしてムー大陸が存在しない旧世界の地図が広げられていた。

 

「我々の元いた世界でも、この太平洋という大海に存在していたムーという大陸が、1万2000年前に発生した大地震により、一夜にして海底に没したという伝説が残っています。」

 

「またこのとき海底に沈んだ国が『ムー帝国』を名乗り、元いた世界の約50年前、全地上世界を侵略しようとする事件が発生しました。先程マイラスさんからご説明頂きました内容と紐づけますと、その国家の正体は『ムウ公国』だったようですね。」

 

「ははは・・・。ま、まさかの歴史的発見ですね。あなた方日本国とは、個人的には友好国となってほしいものです。まさか・・・そんな事が・・・。本内容は後ほど、上層部に報告しておきます。」

 

気を取り直したマイラスは、資料館内の案内を再開する。

 

大陸ごと異世界へ転移するという天変地異、それに伴い発生した大混乱。そして転移先の惑星の原住民や周辺国との軋轢。

 

ワイバーンをはじめとする特殊生物を使役し、魔法を基礎としていた現地文明に対し、巨石の加工技術など十分に対抗可能なほどの文明を築いていたムー王国であったが、あるウィークポイントを攻められたことで圧倒的に劣勢となり、最終的にムー大陸の半分を失ったというものであった。

 

そのウィークポイントとは、転移後のムー大陸を侵略してきた原住民は、治癒魔法で怪我や感染症を容易に治療できたのに対し、ムーの住民は元は地球人のために魔力を殆ど持っておらず、『治癒魔法が使えなかった』という点であった。特にムー大陸内へに持ち込まれた『天然痘』は、免疫や治療法をもたない当時のムーにとって最大の脅威となり、町や村が全滅することもあったらしい。

 

こうした経緯もあり、ムー大陸の半分を失う痛手を負いつつも、魔法に対抗して巨石加工技術をベースとした機械と科学の技術発展に国を挙げて力を入れ、苦難の歴史の果てに世界二位の列強国へと昇り詰めることが出来たというものであった。

 

今年の始めにロデニウス大陸の国家と国交が開設され、交易が開始された際、この世界のウイルスや細菌の種類が地球と似通っていることが確認されていた。さらに地球において神話や伝説の存在とされたワイバーンなどの特殊生物が、こちらの世界では普通に生息していたことから、日本国が国家転移するよりも以前から、地球とこの惑星の間で小規模な転移現象が発生しており、病原菌や特殊生物のやり取りが行われていたのでは・・・という仮説も提唱されていた。

 

ムー大陸史における天然痘の件も踏まえ、『地球において起源不明とされていた病原菌の一部は、実はこの異世界から転移してきていた可能性がある』という衝撃の事実が発覚し、ムー連邦の起源や古代日本史とあわせ、日本国政府に報告された。

 

ムー連邦との国交締結後には、両国に残された歴史的遺物や史跡の調査による古代史や生物学的な学術研究、国家転移現象の解明のため、日ム国際調査チームが結成されるのであった。

 

さらにムー連邦の協力のもと、1963年の『ムー事変』におけるムー帝国の文書を再解析した結果、正式名称が『ムー帝国』ではなく、『ムウ帝国』であったことが判明。ムー連邦との混同を避けるため、政府の公式文書は勿論、歴史の教科書や刊行書籍における表記が『ムウ帝国』表記へ修正されるのであった。

 

※ これに伴い、今後の表記は『ムウ事変』となります。

 

 

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中央暦1639年10月7日

第二文明圏ムー大陸

列強国ムー連邦 海軍基地

 

 

予想外の事実が発覚し、思わず話し込んでしまったマイラスであったが、予定よりも少し遅れて、『商業都市マイカル』近くにある海軍基地へ二人を案内していた。海軍基地の一角には、ムー連邦が誇る最新鋭の戦艦『ラ・カサミ』が停泊しており、海軍基地の軍人たちがマイラスと共に基地内を案内する。

 

ラ・カサミを見た佐伯は、ミリタリーマニアの血が騒ぐのか、案の定、「戦艦は男のロマン!」と言ってはしゃぎ始めるが、一方の御園は『記念艦三笠にそっくりだ』とだけポツリと溢した。

 

「日本国の海軍にも、戦艦が存在しているのですか? 我が国にも、貴国の海軍がロウリア王国の大船団を鎧袖一触で撃破した武勇伝が伝わっていますよ。」

 

『戦艦』について知っている様子であったため、魔写に写されていた『謎のドリル戦艦』を含め、マイラスは日本国の海軍について探りを入れることにした。

 

「いいえ、約70年前の我が国が大日本帝国と呼ばれていた時代には、立派な戦艦を保有していましたが、今は時代の流れにもあり、一隻も保有・建造していませんね・・・。我が国の海上自衛隊が保有しているのは、護衛艦と呼ばれる艦種だけです。」

 

「そういえば、先ほど記念艦に似ている・・・と仰いましたが、その艦も貴国の戦艦なのでしょうか?」

 

「はい、約120年前に我が国の旗艦を務めた『三笠』という戦艦にそっくりなんですよ。」

 

日本国の艦船技術は100年以上進んでいる可能性があり、『謎のドリル戦艦』も『護衛艦』とかいう艦種にあたるらしい。残念ながら、それ以上のことは話して貰えなかったため、日本国と国交締結後に再度詳しく調査することにしよう・・・とマイラスは気持ちを切り替える。

 

「マイラスさん。貴国の戦艦に掲揚された海軍旗にも、昨日見学させて頂いたマリンと同じように、海竜の紋様がデザインされていますね。午前にご案内頂きました歴史記念館でも、午後の海軍基地見学もきっとビックリされますよ!と仰られていましたが・・・」

 

御園に質問されたマイラスは、腕時計で現在の時間を確認する。

 

「そろそろ時間ですね・・・。お二人には我が国の守護神をご紹介しましょう!」

 

マイラスは、二人を海軍基地内にある最も沖に近い埠頭の先へと案内する。そこには竜の彫刻が彫られた立派な祠が祭られており、海軍将校たちが片膝をついて祈りを捧げていた。

 

マイラスも海軍将校たちに加わって暫く祈り続けると、祠の先の海面に巨大な渦潮が発生し、そして海が二つに割れた。周囲に激しい水飛沫が舞い散るなか、二つに割れた海の中から、『巨大な海竜』が姿を現した・・・!

 

 

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