東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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046. 進撃の暴竜

 

中央暦1639年11月24日

文明圏外国 アルタラス王国

王都ル・ブリアス アテノール城

 

 

アルタラス王国海軍は、何年もかけて軍備を増強し、血の滲むような努力と訓練を積み重ね、パーパルディア皇国の侵攻に備えてきた。

 

しかし皇国海軍は、アルタラス王国が想定してきた魔導戦列艦隊や竜母などの従来戦力に加え、これまで見たことのない『巨大エビのような新型魔獣』を戦線へ投入してきた。『海中から攻撃される』という全く予想していなかった事態に、王国海軍は手も足も出ず、当初の目論見に反して一日も持たずに全滅してしまった。

 

「まさか王国海軍が、こうもあっさり蹴散らされるとは・・・。我が国の戦列艦隊を鎧袖一触に蹴散らす巨大なエビの魔獣・・・。皇国は一体どこでそのような海魔を手懐けたのだろうか・・・」

 

「近年、皇国が見たこともないような魔獣を色々な戦場に投入している噂を耳にしています。しかし、いずれも昆虫型の陸棲魔獣ばかりで、今回のように海魔まで使役していたというのは完全に想定外でした・・・。」

 

王国海軍が完敗した報告を受けた国王ターラ14世や側近たちは、皇国の底知れない軍事力に大きな衝撃を受ける。

 

「ですが、『巨大エビの魔獣』ということは、陸上までは上がって来られない筈です! 陸上戦はおそらく地竜や牽引式の魔導砲など、従来の皇国軍同様の戦力かと想定されます。」

 

「海軍からの魔信によると、皇国軍の魔導砲はこちらの倍の約2kmもの射程があったとのことでした。それならば奴らを敢えて上陸させ、エビ魔獣や魔導戦列艦による砲撃支援が得られない海岸から3km以上離れた内陸側へと誘い込み、兵数と地の利に勝る我ら王国騎士団で包囲殲滅すればまだ勝機があると考えます!!」

 

騎士団に所属している若手貴族が、淀んで重々しい空気になりかけていた大広間の雰囲気を、血気盛んな発言で吹き飛ばす。

 

「そうだな、散っていったボルドや海兵たちのためにも、後は我らが頑張るしかない! 皇国軍の侵攻状況はどうなっておる?」

 

ターラ14世は国のために殉職していった兵たちに祈りを捧げ、上陸してくるであろう皇国軍との激突に向けて気持ちを切り替える。

 

「王国海軍を撃破後、そのまま王都ル・ブリアスの北東方向にあるラス海岸方面へ向かっているとのことです。あそこは広い海岸線と遠浅の砂浜が広がっているため、揚陸地点としてうってつけかと思われます。」

 

「ラス海岸とここ王都ル・ブリアスの間には、約50年前に廃坑になった露天掘り式の魔石鉱山が点在しています。皇国軍はそれらを避けながら進撃してくることなるため、侵攻ルートはここ『ルバイル平野』で間違いないものと思われます。」

 

王国第1騎士団長ライアルが、広げられたアルタラス島北部の地図を指示棒で指しながら説明する。

 

「幸いなことにルバイル平野には、採掘時の残土で築かれたルバイル城堡がございます。さらにその城壁には、戦列艦に搭載されるような強力な魔導砲や風神の矢を複数設置しており、迎撃態勢は万全です! 空からのワイバーンロードにさえ注意を払えば、射程の劣る牽引式魔導砲や地竜が主力の皇国軍地上戦力など恐れるに足りません!」

 

「よし、王国騎士団はルバイル城堡にて集結! 総力をもって皇国軍を迎え撃つぞ!!」

 

国王ターラ14世が率いる約2万人の王国騎士団は、翌25日に王都ル・ブリアスを出立し、ルバイル城堡にて皇国侵攻軍を待ち構えた。

 

 

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中央暦1639年11月25日

文明圏外国 アルタラス王国

ラス海岸 野営陣地

 

 

一方、前日にアルタラス王国海軍を無傷で撃破したパーパルディア皇国アルタラス侵攻軍は、さしたる苦労もなくラス海岸に海岸堡を確保し、野営陣地を構築していた。

 

野営陣地のテント内では、陸戦隊長バフラムと作戦参謀、陸軍将校たちが今後の侵攻作戦について協議を重ねていた。

 

「ワイバーンロードの上空偵察によると、このあたりには魔石鉱山の廃坑が点在しているようです。地盤が不安定であることが予想されるため、地竜や大軍がその付近を進攻すると最悪、落盤する恐れがございます。」

 

「ゆえに我が軍はこれらを迂回し、この平野を進攻せざるをえないでしょうが、厄介なことに、ここにはアルタラス王国軍の築いた出城がございます。魔導砲のようなものが設置されていたとの報告もあり、攻略は困難なものになるかと・・・」

 

若手の陸軍将校が心配そうな声で報告するが、陸戦隊長バフラムは自信満々な様子で鼻で笑う。

 

「ふん・・・、蛮族の築いた矮小な出城などで、皇国軍の覇道を止めることなど出来ぬわ!! 知恵の足りぬ貴様ら若輩共には、この私自ら城攻めの手ほどきをしてやろう! もうそろそろ皇国本国より、『ヤツ』が到着する頃だろう・・・」

 

約一時間後、皇国兵の大多数も見たことがない『巨大な地竜』がアルタラス島へ到着し、ラス海岸から上陸した・・・。

 

 

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中央暦1639年11月26日

文明圏外国 アルタラス王国

ルバイル城堡

 

 

侵攻準備の整ったパーパルディア皇国アルタラス侵攻軍は、26日の午前からアルタラス島の攻略を開始した。

 

空には竜母から発艦したワイバーンロードが舞い、地上には『リントヴルム』と呼ばれる四足歩行の地竜32匹とそれらに牽引される牽引式魔導砲、フリントロック式のマスケット銃を装備した歩兵約3000人、そしてその最前列には背中全体に鋭い棘がびっしり生えた『巨大な地竜』が地響きと砂煙を立てながらゆっくりと前進していた。

 

「皇国軍、ルバイル城堡まで約10kmの地点をゆっくりと行軍中。最前列には巨大な地竜の姿を確認!」

 

ルバイル城堡に設置された物見櫓で周囲を監視していた騎士が、皇国軍の襲来を半鐘を鳴らして知らせる。

 

「ついに来おったか・・・。固定式魔導砲の発射準備を急げ! 地竜が1.5kmまで接近したタイミングで各自の判断で砲撃を開始せよ! 上空のワイバーンロードの接近に備え、風神の矢と弓兵はいつでも発射出来るようにしておけ!!」

 

ターラ14世の指揮のもと、ルバイル城堡では地竜とワイバーンロードへの迎撃準備が進められた。

 

地竜『リントヴルム』は、ゾウの2倍近い全身をワイバーンロードを上回る硬い鱗で覆われており、剣や槍、弓矢などではまったく歯が立たないほどの守備力を誇る。

 

さらに、広範囲を焼き払うことが可能な導力火炎放射も使用出来るため、例えるなら『生きた軽戦車』のようなものであり、パーパルディア皇国が第三文明圏の頂点へと登り詰めることが出来たのも、この地竜の存在があってこそであった。

 

しかし鈍重であるがゆえ、機動力に欠けること、そして魔導砲による砲撃クラスの威力がある攻撃までは防ぎきれないという弱点があり、固定式の魔導砲が設置された出城や砦の攻略時に死傷する事例が近年増えてきていた。

 

そのため、『固定式魔導砲で接近される前に撃退する』というターラ14世の作戦は、これまでの皇国軍が相手であれば有効な戦術であった。『これまでの皇国軍』であれば・・・。

 

 

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「バフラム隊長、そろそろ敵出城に設置された魔導砲の射程に近づきます。ワイバーンロードの導力火炎弾で空から敵砲台を破壊した方が良いのでは・・・」

 

「貴様はシウス将軍からの報告を聞いておらなかったのか! 敵は爆裂魔法を封入したバリスタを使用してきたというではないか。おそらくあの出城にも、同様のものが配備されているとみるべきだろう。」

 

「では、どうやってあの出城を陥落させるおつもりなのでしょうか。このまま進軍すれば、出城に設置された魔導砲で甚大な被害が出ます!」

 

「なんのために野営地で『アンギラス』の到着を待っていたと思っている。ヤツを使ってあの出城を落とすために決まっているだろうが!」

 

ルバイル城堡まで約3kmの地点に到達した皇国の侵攻軍は、全部隊が一旦行軍を停止する。そして最前列にいた『巨大な地竜』のみが、そのままルバイル城堡に向かって進攻を続ける。

 

「皇国軍、最前列の巨大地竜のみが接近中! まもなくこちらの魔導砲の射程です!!」

 

「一体だけで進攻するとはどういうつもりだ!? こちらの魔導砲の性能を図るための試金石にするつもか? だが、あれほどの巨体で暴れられたら厄介だ・・・、すぐに砲撃して仕留めろ!!」

 

騎士団長の指示で、ルバイル城堡に設置された固定式魔導砲が次々に発射される。巨大な地竜こと『アンギラス』の周囲に次々に着弾し、土埃と爆炎が周辺に立ち込めた。

 

「敵巨大地竜の背中に1発が直撃しました!」

 

「よくやった!! このまま他の地竜共にも砲弾をお見舞いしてやれ!!」

 

意気込む騎士団長や騎士たちであったが、煙の晴れた先には、砲弾が直撃した筈の敵巨大地竜が何事もなかったかのように平然としていた。

 

「ま、まさかこちらの魔導砲がまったく効いていないのか!?」

 

「『リントヴルム』であれば、魔導砲が直撃した時点で絶命している筈だぞ!?」

 

地竜『リントヴルム』は、固定式魔導砲の砲撃に弱い・・・。その問題を解決するため、『リントヴルム』を素体にして新規開発されたのが、陸戦用A型魔獣こと『アンギラス』であった。

 

リントヴルムを超える60メートル前後の巨大な体躯をもち、魔導砲の砲撃をも跳ね返すほどの硬い甲殻で背中全体が固い覆われた、まさに歩く要塞である。さらにリントヴルムと異なり、皇都エストシラントからアルタラス島程度の距離であれば、容易に渡海可能なほどの遊泳能力とスタミナまで持ち合わせた皇国の新たな象徴というべき魔獣である。

 

魔導砲による砲撃をものともせず、ルバイル城堡への進攻を続ける『アンギラス』であったが、不意にアルマジロのように全身を丸め始めた。ボールのように丸まった形状となったことで背中のトゲが逆立ち、まるでウニのような状態になったアンギラスは、そのまま尻尾で加速をつけ、高速で転がり始めたのだ。

 

そのままのっそりゆっくりと近づいてくると思っていた王国騎士団は、アンギラスの予想外の攻撃に迎撃が間に合わず、トゲトゲした硬い巨体が、ルバイル城堡の城壁に勢いよく激突した!

 

元々採掘時の残土で築かれた城堡であったため、城壁は粘土細工のように粉々に崩れ落ち、設置されていた魔導砲も完全に破壊された。

 

城堡内部で暴れ始めたアンギラスに王国騎士団が立ち向かうが、魔導砲すら跳ね返す硬い巨体に剣や槍は全く効果がない。さらにアンギラスが開けた大穴から、『リントヴルム』隊までもが侵入し、鉄壁と思われたルバイル城堡はたった半日で陥落した。

 

ルバイル城堡から敗走したターラ14世は残存兵力を集結し、王都から約10kmの地点で最後の決戦を挑んだが、牽引式魔導砲やリントヴルムの前に敗北し、多数の騎士たちと共に戦死した。

 

 

こうして『エビラ』や『アンギラス』といった新型魔獣を投入した皇国軍の前に、アルタラス王国は僅か三日でパーパルディア皇国の手に落ち、属領の一つとなった。後の歴史書において、『悪夢の半年間』と呼ばれるパーパルディア皇国によるアルタラス島の統治が始まるのであった・・・。

 

 

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