東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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047. 亡国の姫君

 

中央暦1639年11月29日

文明圏外国 シオス王国

東の港

 

 

フィルアデス大陸南方、アルタラス島の東には文明圏外国の島国『シオス王国』が存在している。島の面積は北海道と同程度であり、アルタラス王国に比べずっと小さいが、フィルアデス大陸とロデニウス大陸を結ぶ交易の中継地として繁栄していた。

 

ロデニウス大陸にあるクワ・トイネ公国、クイラ王国、そしてロウリア王国とは貿易相手国として古くから密接な関係を築いていたこともあり、ロウリア事変後のかなり早い段階から日本国の存在を把握し、早期に国交を開設していた。

 

また前述の通り、フィルアデス大陸とロデニウス大陸間を結ぶ通商航路のチョークポイントに位置しているため、国交開設後にはロデニウス大陸に次いで、日本国によるインフラ整備が進められていた。

 

特に10月末に日本国とムー連邦が対等な立場で国交を締結したことで、その重要性はさらに増しており、ムー連邦が建設していた空港施設、ガントリークレーンやコンテナ埠頭をはじめとした港湾施設などの大規模な拡張工事が進められていた。

 

そういった背景もあり、活気に満ち溢れている東の港町であったが、港の一角に停泊中の一隻の商船は、町の様子とは対照的に、悲壮感に満ちた雰囲気を放っていた。

 

この商船はアルタラス王国の王女ルミエスを脱出させるための偽装商船タルコス号であり、船員たちはアルタラス王国騎士や彼女の従者たちであった。皇国軍の侵略が開始されるぎりぎりのタイミングでアルタラス島からの脱出に成功し、ロデニウス大陸方面へ向けた逃避行の途中、整備と補給のために東の港町に寄港していた。

 

悲壮感が溢れる顔をした船員たちの震える手には、衝撃的な内容が書かれたエストシラント新聞が握られていた。

 

 

『圧倒的な皇国軍 アルタラス王国は僅か三日で陥落!!』

 

 

上記の見出しとともに、パーパルディア皇国の侵攻軍がアルタラス王国軍を木っ端微塵に粉砕し、73ヵ国目の属領となった旨が記載されていたのだ。

 

・ 巨大エビの魔獣やリントヴルムを上回る巨大な地竜が戦闘に投入され、ほぼ無傷でアルタラス王国海軍や騎士団を全滅させたこと

 

・ 王族は一族郎党、親類縁者のすべてが処刑され、王都ル・ブリアスのアテノール城前に晒されたこと

 

・ パーパルディア皇国臣民統治機構のアルタラス統治機構が設置され、アルタラス島の国民は魔石鉱山や農園の作業に従事する奴隷にされたこと etc

 

いずれの内容も船員たちの心身を抉り、踏みにじるような凄惨なものであった。

 

「ま、まさか既に王国が落ちてしまっていたとは・・・。陛下・・・、みんな・・・」

 

「悲しんでいる暇はない! ルミエス様がご無事であれば、アルタラス王国はまたいつの日か再建できる!! 今は一刻も早く、姫様を安全なロデニウス大陸へお連れするのが我らの使命だ!!!」

 

悲しみに暮れる船員たちに、王族直轄上級騎士のリルセイドが檄を飛ばす。

 

「ここにもいつ皇国の魔の手が伸びて来るやもわからぬ・・・。早急に出港するぞ!」

 

水や食料など最低限の補給だけを済まし、逃げるように東の港を出港した偽装商船タルコス号であったが、その三日後、ロデニウス大陸の北方海域にて海賊の襲撃を受けることとなる。

 

幸い、旧ロウリア王国ことロウリア共和国の依頼で近くの海域を巡回していた海上保安庁の巡視船『しきしま』に救援されたが、ルミエス王女が海賊との戦闘時に毒矢を受けて意識不明の重体に陥ってしまい、クワ・トイネ公国エジェイ基地病院へ緊急搬送されるのであった・・・。

 

 

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中央暦1639年12月5日

日本国首都 東京

 

 

ルミエスが目を覚ますと、見たことのない天井が目に映る。天井に付いた魔法灯具(後にLED照明とかいう科学技術の照明と教えて貰った)からは、明るくて白い光が降り注いでいる。

 

「うう・・・、ここは・・・」

 

その声を聴いたリルセイドが、座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、枕元へ近寄る。

 

「姫様ぁ~、目を覚まされたのですね! ほんどうによがっだぁ!」

 

安堵して涙ぐんだ目をしているが、心配でずっと眠れていなかったのか、その目元には隈ができている。

 

「ここは・・・どこなのですか?」

 

「ここは、日本国の首都東京にある病院です。姫様は毒矢を受け、二日近く意識不明の状態だったのです。とにかく助かって本当に良かった!」

 

無機質な部屋の中には見たことのない様々な魔法道具が置かれており、指先や体に付けられた紐は、近くのピッピッピッと音が鳴る機械に繋がれていた。

 

「オ目覚めのようですネ。脈拍、血中酸素濃度ともに正常、ドクターニ連絡シマス。」

 

突如、機械的な声が病室に響く。ルミエスがぎこちなく首を動かして周囲を見回すと、全身が白く塗装され、赤十字のマークが胸に付いた2メートルくらいのゴーレムが、特徴的な厳めしい強面でこちらを見ていた。

 

突然のことにギョッと驚いた様子のルミエスであったが、リルセイドが苦笑いしながらフォローする。

 

「姫様、こちらは、日本国の医療福祉の現場で使用されているサポートゴーレムらしいです。確か『メディカルジェットジャガー』とかいう名前だったかと・・・。顔はちょっと怖いですが、ご安心下さい。」

 

リルセイドから、乗組員の全員が日本国で保護されている旨、日本国から『身分を隠し、クワ・トイネ公国からの留学生』という名目で生活する提案を受けた旨などを説明された。

 

話が終わったタイミングで、メディカルジェットジャガーの連絡を受けた医師がやってきて、診察が行われた。毒による後遺症も特に見られなかったため、三日ほど入院ののち、ルミエスは無事に退院することが出来、東京での新生活が始まった。

 

こうしてアルタラス王国王家の唯一の生き残りであるルミエス王女は、日本国で秘密裏に保護されることとなった。約9か月後、このことは第三文明圏において、大きな意味をもつことになるのであった・・・。

 

 

 

※ ジェットジャガー

出典 : ゴジラ対メガロ(1973年)他

 

 

青年電子工学者・伊吹吾郎により開発された人型ロボット。日常生活の補助用として開発され、人間が持ち運べない重たいものの運搬や危険な現場での作業用として重宝されている。

 

特殊生物が関わる事例では、1998年のダガーラ事変において、強酸性の体液を吹きかけるベーレムの駆除にも投入された。

 

以下、代表的なバリエーション。

 

・ 医療福祉用の『メディカルジェットジャガー』

全身が白く塗装され、赤十字マークが胸に施されているのが特徴。顔が強面のため、入院時に本機を初めて見た子供の大多数は号泣する。

 

・ 防災・消火活動用の『消防ジェットジャガー』

全身が赤で塗装されており、「火」と書かれた火消し暖簾が特徴。口から消火薬剤を出すことができ、巨大なホースを装備することで直接放水しての消火も可能。

 

人工知能も搭載している点から、メーサーライフルやロケットランチャーなどの重火器を装備させ、屋内や限られたエリアでの対小型特殊生物用戦闘マシン(宇宙戦争なバトルドロイドやスカイネットな暗殺マシーンのような)運用も可能なのでは・・・とミリオタたちに噂されているが、本件について防衛省はノーコメントの姿勢を貫いている・・・。

 

 

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