中央暦1639年12月1日
第三文明圏外 ロデニウス大陸
クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ
偽装商船タルコス号が、ロデニウス大陸の北方海域にて海賊の襲撃を受けていた頃、クワ・トイネ公国の公都クワ・トイネでは、『大東洋諸国会議』という国際会議が開催されていた。参加国は第三文明圏の文明圏外国で構成されており、大きな出来事や事件、大規模な災害などが起きた際に臨時的に開かれる会議であった。
元々文明圏外国の提唱により開催され始めた会議であったため、第三文明圏唯一の列強国である『パーパルディア皇国』はもちろん、他の文明国も無意味な会議としてまったく参加してこなかった。それゆえ、国際会議としては珍しく、各国の代表が本音をオープンに打ち明けられる性質の会議となっていた。ちなみに今回の開催国であるクワ・トイネ公国は、ハンキ将軍と外務局員のヤゴウが代表として出席している。
これまでの会議では、周辺国に侵略行為を繰り返すパーパルディア皇国の動向が主な議題となっていたが、今回はそれだけではない。年始に突如大東洋に出現し、列強国に匹敵するような力で『ロウリア事変』を終結させた新興国、『日本国』についてのディスカッションが追加されている。
会議の冒頭で、日本国の存在が確認され、ファーストコンタクトが行われた今年1月から現在に至るまでの出来事が各国に共有される。参加国の大多数が、遅かれ早かれ、日本国と既に国交を開設している国々であったが、フィルアデス大陸にある一部の国家とは、いまだにコンタクトすら行えていなかった。これには、『アマノキ事変』におけるパーパルディア皇国の件を受け、日本国政府がフィルアデス大陸にある国家との国交開設に消極的になったことが影響していた。
そういった背景もあり、フィルアデス大陸の内陸寄りに位置しているマオ王国の代表からは、『得体の知れない危険な国家』として脅威視する意見が挙げられる。
一方、既に日本国と国交を締結し、その恩恵を受け始めていたトーパ王国やシオス王国などの国々からは、次々と日本友好論が続く。
「私たちトーパ王国は、日本国を危険な国だとは思っていません。彼らは自分たちに危害が加えられない限り、武力を行使するようなことはしていません。もし彼らがパーパルディア皇国のような覇権主義な国であれば、私たちは今この場にいることすらありえなかったでしょう。」
「我らシオス王国も同じ意見です。パーパルディア皇国のように、貿易や技術供与と引き換えに、奴隷の差し出しを要求してくるようなこともありませんでした。品目に制限があるとはいえ、超技術で作られた工芸品や科学の道具、それらの原理が記載された書籍でさえも輸出してくれます。それに・・・」
フィルアデス大陸とロデニウス大陸間の交易を生業としている商人が、先月29日に自国内へ持ち込んだエストシラント新聞を広げ、シオス王国代表が話を続ける。
「既にご存知の国もいらっしゃるかもしれませんが、つい先日、我が国の隣国だったアルタラス王国がパーパルディア皇国によって滅ぼされ、属領の一つにされました。『次はお前たちの番だ』・・・と言わんばかりに、新たに開発した魔獣のことまで、このように新聞で大体的に報道しています。今後国を存続させていくには、『暴虐な皇国に対抗可能な日本国と、いかにうまく付き合っていくか』こそが重要だと考えています。」
シオス王国の意見に賛同するように、アワン王国代表が話始めた。
「我々の全てが集まっても、パーパルディア皇国はおろか、全盛期のロウリア王国軍にも勝てないだろう・・・。日本国はそのロウリア王国をあっさりと蹴散らし、フェン王国の軍祭では、皇国のワイバーンロードさえも蚊の如く叩き落とした。どの国も日本国と付き合い始めてまだ一年も経っていないと思うが、両国の外交姿勢も照らし合わせれば、今後どちらとの関係を重視していった方が良いかは言うまでもないと思いますぞ。」
マオ王国代表が、怪訝そうな顔をして反論する。
「だが、日本国は皇国軍に・・・、皇国の新聞で報道されている新型魔獣たちに対抗できるのか? 文明国に匹敵する国力と軍事力をもっていたアルタラス王国でさせ、皇国軍に手も足も出ず、完敗していたのだぞ!」
マオ王国代表のもっともな意見に、クワ・トイネ公国のハンキ将軍が話始める。
「ここにいる殆どの方々は、まだ日本国に行ったことがないと思うので、彼らの国について儂が知ったことを少し話をしたいと思う。」
「彼らが今年の始めに大東洋へ現れる前、『地球』とかいう惑星にいたときは、皇国のちんけな魔獣たちとは比べ物にならないような超生物たちと、存亡をかけた戦いを繰り広げていたようじゃ。それこそ、かの『竜魔大戦』にて古の魔法帝国と激突した『インフィドラグーン』の『神龍』のような相手とな・・・」
ハンキ将軍は『ロウリア事変』の終結後、日本国を再度訪問していた。ロウリア事変の後始末についての話し合いなど、外交的な内容が主な目的であったが、彼にとってはプライベート(ロウリア事変において援軍として派遣された旗艦『いずも』の艦船模型を購入する)の方もそこそこ重要であった。
※ 013話をご参照下さい。
日本国としても、重要な友好国の将軍が再来日するということもあり、2月の訪問時には案内しきれなかった『ゴジラミュージアム』の観光など、手厚く接待された。
『ゴジラミュージアム』で見せられた、1954年の第一次ゴジラ事変から始める特殊生物たちの出現、それらに対抗するために開発されたメーサー砲をはじめとする超兵器群、戦いに巻き込まれて破壊と復興を繰り返す都市・・・。
約半世紀にも渡る凄まじい戦いの歴史に圧倒されると同時に、ロウリア事変において、『日本国はまったく本気を出していなかった』という事実にも驚愕した。ちなみに帰国後、ハンキ将軍の執務室には『いずも』の艦船模型と、1/600スケールのスーパーメカゴジラの模型が追加されたのであった。
「確かに新聞に載っている皇国の新型魔獣は、非常に脅威的なものじゃろう・・・。だが、それは『我らにとって』であり、『日本国にとって』ではないと儂は考える。もし儂の言うことが信じられないのであれば、日本国を訪れた際に『ゴジラミュージアム』とかいう博物館を見学させて貰うとよいぞ! 度肝を抜かれること間違いないぞ!! ついでに土産用の金は沢山持って行った方が良いぞ、意外と高かったからな・・・。」
日本国の技術は先進的であるが、どの程度の軍事規模を有しているのか、いまだ底が見えていない。日本国の力を直に体験したロデニウス大陸以外の国々は、国力の富むパーパルディア皇国が本気で攻撃を仕掛けた時、日本国にそれを打ち破るほどの力があるのか、慎重に見極めていくこととなった。
最終的に今回の会議では、下記の方向で声明が出される事となった。
・ 日本国とは敵対せず、友好関係を深めていく
・ パーパルディア皇国に対しては、事態の推移を慎重に見守り、これまで同様、情報共有を密に行う