東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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050. 皇国のコンタクトに向けて

 

中央暦1639年12月7日

第三文明圏の東 大東洋 

日本国 首都東京

 

 

日本国の首都東京にある首相官邸では、官房長官をはじめとした各省の大臣や官僚、自衛隊幹部やGフォース関係者などが参集し、『パーパルディア皇国』に対する協議が行われていた。

 

『アマノキ事変』のあと、日本国との国交締結を求める国々の来訪が、一気に増加していた。第三文明圏周辺だけでも、既に22ヵ国との国交開設や通商条約の締結が出来ており、早くから国交を締結したシオス王国などでは、ロデニウス大陸に続いてインフラの整備も開始されていた。

 

さらに、10月上旬に世界第二位の列強国『ムー連邦』と約1万2000年ぶりの再会を果たし、対等な立場で国交開設や通商条約を締結したことで、ムー連邦のある第二文明圏においても日本国の名が少しずつ周知され始めていた。来年初頭には、中央世界こと第一文明圏にある世界第三位の列強国『エモール王国』にも、国交締結を視野に入れた使節の派遣が検討されていた。

 

このように、この世界での足固めや外交を着実に広げつつある日本国であったが、最も近くにある列強国『パーパルディア皇国』に関しては、外交的な協議がまったく進展していないままであった・・・。

 

最初に外務大臣が挙手して、発言し始める。

 

「国交を締結しました国々から得られた、パーパルディア皇国についての情報を報告します。地球における中華思想(華夷思想)のような考えのもと、周辺国に対して理不尽な要求を繰り返し、拒否されると問答無用で侵略・征服を行うという凄まじい拡張政策を10年以上も前から行っているようです。」

 

「先日、秘密裏に保護しましたルミエス王女の祖国『アルタラス王国』も、国内有数の鉱山の献上や彼女の奴隷化などを要求され、それを拒否したことで宣戦布告されたと伺っています。侵略した国は属領、植民地のような自治権のない地域にされ、恐怖と暴力による圧政が敷かれているとのことです。常に『舐められまい』と振舞っているためか、周辺国からも『プライドの塊』と評されるほどの国民性だとか・・・」

 

防衛大臣が、外務大臣に続いて話し始める。

 

「『ロウリア事変』にて確認された巨大カマキリは、『かの国によって人工的に創られた人造特殊生物である』可能性を以前に報告したと思います。『アマノキ事変』において派遣艦隊が撃退しましたトンボ型の特殊生物については、10年ほど前からフィルアデス大陸での侵略戦争で、何度か目撃されていたとのことでした。残念ながら巨大カマキリの時と異なり、派遣艦隊の砲撃で真っ黒に燃え尽きるか、粉々に粉砕されて海上へと落下したため、特殊研究本部で解析可能なサンプルは回収できなかったようです。」

 

「さらにシオス王国では、アルタラス王国の侵略において、『巨大エビの魔獣』や『巨大な地竜』を新たに投入し、圧倒的な勝利を収めたとの内容を新聞で大々的に報道しているとの連絡がございました。これらの情報については精査が必要ですが、特殊生物を人工的に製造可能な工業力、おそらく魔法によるものを有しており、これらを生物兵器として使用していることは、ほぼ間違いないものと思われます!」

 

その後も多くの情報が展開・共有され、会合に出席している全員が、『パーパルディア皇国は極めて野蛮で危険な国家』であると認識した。しかし今後、かの国との外交を進めていくうえでどういった対応をとるべきか・・・については、議論が白熱していた。

 

フェン王国にいた民間人を守るためとはいえ、『アマノキ事変』においてレクマイア以外の竜騎士を全滅させ、竜母二隻を撃沈したことから、かの国との外交交渉は非常に難航することが予想されていた。加えて、前述したプライドが異常に高い国民性や周辺国を見下した中華思想ならぬ『パ皇思想』から、理不尽なで常識外れな賠償要求を行ってくることが想定される。

 

実際、日本国がこの世界に転移する数年前、リーム王国という文明国の貨物船が、誤ってパーパルディア皇国籍の船に衝突事故を起こしてしまったことがあった。列強国の船に航路を譲らなかったと酷い言い掛かりをつけられ、大した損傷でないにも関わらず、国際会議に参加した際にお披露目した最新鋭の戦列艦を賠償として要求され、リーム王国側は泣く泣くそれを献上した・・・なんて話もあったらしい。

 

もしロデニウス大陸の国家やムー連邦とのファーストコンタクトのように、海上自衛隊の護衛艦でパーパルディア皇国を来訪すると、無駄に高いプライドを刺激してしまい、十中八九、護衛艦の献上を要求してくるだろう・・・。そしてそれを拒否すれば、アルタラス王国同様、そのことを口実に宣戦布告してくる可能性が予想された。下手をすると、来訪した時点で戦闘になる可能性も考えられた。

 

そういった背景もあり、第三文明圏で使用されている木造帆船に近く、万が一拿捕されたとしても、重要技術の流出リスクの小さい方法での派遣が提案された。それは日本国内に現存する航海練習船であり、外洋航行が可能な大型練習帆船『日本丸II世』で使節をパーパルディア皇国へ派遣するというものであった。

 

 

※ 日本丸II世

 

海技教育機構が保有する航海練習船であり、1984年(昭和59年)に竣工。地球において有数の高速帆船として知られており、ディーゼルエンジン2基も装備しているため、風がなくとも航行可能。ちなみに実在します。

 

 

既に国交のあるシオス王国までは、海上自衛隊の護衛艦が道中の護衛として先導し、そこから皇都エストシラントまでは、シオス王国から出ている民間船団とともに向かうこととなった。

 

民間人の救援や攻撃を仕掛けられたための正当防衛という大義名分があるとはいえ、不幸な行き違いで武力衝突を起こしてしまったという日本側の負い目もあり、また最悪の事態が発生した際の技術流出を懸念した苦肉の策であった。

 

しかし弱肉強食なこの世界において、『艦砲などの武器をまったく装備していない』日本丸Ⅱ世で来訪することが、『力こそすべて』な考えのパーパルディア皇国からどれほど軽視され、格下の弱小国家として認識されるか・・・を日本国政府はまだ理解していなかったのであった。

 

 

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中央暦1639年12月5日

フィルアデス大陸の北東 

文明圏外国 トーパ王国

 

 

フィルアデス大陸の北東には、危険な魔物が多数生息し、魔物大陸とも呼称される『グラメウス大陸』へと繋がる四国ほどの大きさの地峡がある。そこには人間とエルフが人口の大半を占める『トーパ王国』が存在していた。

 

1万数1000年前の神話時代、フィルアデス大陸への魔物の侵入を防ぐために『世界の扉』と呼ばれる巨大な城塞を築き、人類の守護国として建国された国と言い伝えられていた。ちなみに日本国とは、アワン王国の紹介で比較的早期に国交を締結しており、北方海域における海洋調査を協力したり、カニなどの水産資源の交易を行っていた。

 

トーパ王国の北東部には、『世界の扉』と呼ばれる巨大な城壁とそれを支えるための城塞都市トルメスが存在している。世界の扉は、神話時代にこの世界の住人が太陽神の使いと協力して築いたものと伝承されており、謎の白い石で作られた高さが約20メートルもある強固な城壁である。この鉄壁の城壁の前では、ゴブリンやオークなどの魔物は弓矢やバリスタ、攻撃魔法の的にしかならない程度の脅威性であり、そんな状態が100年以上も続いていた。

 

しかしこの平穏を破るかのように、魔物の大軍勢が城塞都市トルメスに向かって進攻していた・・・。

 

 

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