東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

55 / 117
052. オペレーション・モモタロウ始動

 

中央暦1639年12月8日の夜

トーパ王国 城塞都市トルメス

『世界の扉』跡地

 

 

『魔王ノスグーラ』の放った極大閃熱魔法により、1万年にもわたってフィルアデス大陸を守護してきた『世界の扉』は破壊され、雪崩れ込んだ2万匹を超える魔物の猛攻を前に、城塞都市トルメスの北部ミナイサ地区は、その翌日には陥落してしまった。

 

ミナイサ地区では、ロウソクや魔法灯具といった人々が生活する明かりは消え、代わりに松明や焚火が煌々と燃え、ぼんやりと周囲を照らしていた。ミナイサ地区を占領した魔王軍が、討ち取った騎士団や逃げ遅れた住民たちを『食材』にして、野営していたのだ。

 

半壊した大きな屋敷の中では、喰い散らかされた人骨が無数に散乱していた。その中央には、魔王ノスグーラが骨付き肉を嚙みちぎりながら、レッドオーガと話しこんでおっり、そこに人骨が煮込まれた鍋をもったブルーオーガが合流する。

 

「お待たせしました。魔王様の好物だった『エルフの骨を丸ごと煮込んだ魔力回復シチュー』をお持ちしました。」

 

「久方ぶりに極大魔法を使ったから、これは身に染みるぞい! それにしても我が封印されていた間に、人間どもは随分と数を増やしたみたいだな・・・。まあ、食料の現地調達がしやすくなるから、兵糧には困らぬな。」

 

魔王ノスグーラは、ブルーオーガの作ってきた特製シチューをドクロの杯に入れ、グイっと飲み干す。

 

「魔王様、今回はどこまで侵攻されるおつもりなのでしょうか?」

 

「前回は海の向こうの南方小大陸(後のロデニウス大陸)まで手を出したことで、太陽神の使いを召喚されてしまったからなぁ・・・。今回は、トーパのあるこの大陸(フィルアデス大陸)の制圧までにとどめておこうと考えておる。この大陸にある町や村を一つ残らず討ち滅ぼし、この世界を自分達の物と勘違いしている下等種共に、『この世界は魔帝様の物』だと解らせてやろうぞ!」

 

「魔帝様の国・・・魔法帝国が復活した暁には、その絶大な国力と魔導技術であっという間にこの世界を征服なさるだろうが、魔帝様が速やかに統治に移れるように、少しでも尽力するのが我らの使命ぞ!!」

 

魔王ノスグーラの宣言に応えるように、ブルーオーガは気合たっぷりに応じ、周囲にいたオークやゴブリンたちも大きな歓声をあげる。一方、レッドオーガは神妙な顔つきで、魔王ノスグーラへ話しかける。

 

「前回の戦いで、我々は『太陽神の使い』に敗れました。大空を高速で飛び回る神の船、強烈な爆裂魔法を放つ鉄の地竜、当たると焼き殺される熱線を放つ鉄の蠍、海魔をも蹴散らす魔導船・・・。精強な魔王軍が手も足も出ず、この北の地まで敗走するほどの力だった・・・。」

 

「俺は魔王様と違い、古の魔法帝国の力を知りません。魔帝様のお力は、あの太陽神の使いすらも上回るのでしょうか?」

 

名前と正反対に、青い顔で心配そうな表情をするレッドオーガに対し、魔王ノスグーラはグァッグァッグァッと愉快そうに笑い始める。

 

「そんな事を心配しておったのか。あの忌々しい太陽神の使いでさえ、魔帝様のお力の足元にも及ばんよ。魔帝軍の天の浮船の速さは音を超え、合成魔獣部隊はすべてを蹂躙する!」 

 

「お前たちに貸し与えた『ゴロザウルス』も、元々魔帝様が我の騎馬としてご用意して下さっていた魔獣だ。前回は卵から孵化していなかったが、今のこの大きさ的に大体1000年前くらいに誕生したようだな・・・」

 

魔王ノスグーラの目線の先には、アロサウルスのような獣脚類を彷彿とさせる魔獣が、ゴブリンたちに交って肉を食べている。

 

「おお、あれも魔帝様のお力の一片なのですね! 魔王様が極大魔法を放たれた後とはいえ、飛び蹴りの一発であの強固な城壁をあっさり蹴り破りましたからね。パワーだけなら、我らオーガ二人掛かりでもヤツにとっては赤子のようなものでしょう・・・」

 

「我らにはその力の一片しか与えられなかっただけで、魔帝様の力は絶大かつ絶対的だ! 安心するがよい!!」

 

 

====================================================================

 

 

中央暦1639年12月12日

第三文明圏の東 大東洋 

日本国 首都東京

 

 

トーパ王国がパーパルディア皇国に援軍要請を拒否された翌日、日本国外務省は日本駐在トーパ王国大使から、神話に謳われた魔王が復活した旨、そしてそれに伴う救援要請を受けていた。

 

高緯度で寒冷な気候ゆえ、ワイバーンなどの生物が生息していないトーパ王国とは、『対特殊生物に関する相互協力条約』をまだ締結しておらず、また『アマノキ事変』の件もあったため、日本国政府は当初、自衛隊の海外派遣に対して慎重な姿勢をとっていた。

 

しかし、コンクリート製の城壁を溶融させるほどの熱線を放つ魔王、30メートル以上もの大型恐竜魔獣に騎乗するオーガ、そしてそれらが『人肉を主食』としており、一刻の猶予もないという事実を伝えられた。

 

・ 魔王は知能を持ち、他の魔獣を多数支配する能力を有している。この能力により、魔獣にも関わらず、軍のような組織的な行動を可能としている。

 

・ 魔王は、『古の魔法帝国』と呼称される古代文明によって作り出された生物兵器と推測される。おそらくは遺伝子操作か、それに類似した技術であると思われる。

 

etc

 

日本国政府は、国交を締結した国々から、かつてこの世界に『古の魔法帝国』と呼ばれる恐怖の大帝国が君臨していたことを教えられていた。だが、この世界へ転移してまだ一年足らずであり、また魔法についても科学によるアプローチが開始されたばかりのため、その全容を把握しかねていた。

 

加えて最警戒国家と捉えているパーパルディア皇国が、どういった手法であれほどの特殊生物たちを使役しているか・・・について、友好国の協力のもと、魔法的なプロセスから調査を進めていたが、こちらも全く進展がない状態であった。

 

もし魔王の生体サンプルを入手し、魔王の有している魔獣支配能力やその遺伝子情報を検証・解析できれば、パーパルディア皇国や古の魔法帝国の調査が飛躍的に前進することが予想された。

 

こうした背景もあり、民間人救助と国際貢献、そして魔王のサンプル入手のため、陸上自衛隊のトーパ王国への派遣が決定された。

 

その作戦名 : オペレーション・モモタロウ

 

二代目ゴジラをはじめとした最強クラスの特殊生物たちと比較すれば、遠く及ばない威力とはいえ、強烈な熱線の魔法で攻撃してくる魔王の対策として、派遣される戦力は90式メーサーなどの通常戦力に加え、ある対G兵器の改良機が約25年振りに実戦投入されることとなった。

 

鬼ヶ島と化した城塞都市トルメス北部ミナイサ地区への討ち入りが、開始されようとしていた・・・。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。