中央暦1639年12月19日
トーパ王国 城塞都市トルメス
南門 周辺
騎士モアと傭兵ガイは、騎士団の命により、城塞都市トルメスの南門で待機していた。トーパ王国南部の入江から上陸した日本軍(正確には自衛隊というらしい)が、王国騎士団の護衛を伴ってこちらに向かっており、間もなく到着すると連絡があったためである。南門から城までは自分たちが案内し、その後、観戦武官として彼らに同行する予定だった。
「なあモア、俺らが案内する日本国の自衛隊って、どんな連中なんだ? 戦闘車両とかいう自分で動く馬車みたいなのが10両くらい来るって聞いたが、一体どんなものか知っているか?」
「さあな・・・。日本国の海上自衛隊とかいう海軍の噂はよく耳にするが、陸軍についてはあまり聞かないな。海軍の方は、フェン王国の軍祭で襲い掛かって来た列強パーパルディア皇国の監察軍をあっさり全滅させた・・・。ロデニウス大陸沖大海戦では、たったの9隻でロウリア王国軍4400隻の大艦隊に挑み、2400隻を無傷で撃沈した・・・。俺が知っているのはこのくらいだが、いずれにせよ、異次元の強さだったと聞いているぞ。」
二人が日本国についての話題で盛り上がっていると、遠方から何かが唸るような音が迫ってきた。前方に先導する王国騎士団が見え始め、その後ろには巨大な何かが一緒に近付いてきていた。
深緑色をした鉄の地竜三匹が整然と隊列を組み、周囲の雪が巻き上げて地響きを発生させながら前進してきていたのだ。あっけにとられる二人の前で一団が停車するが、地響きはさらに大きくなっていく。
三匹の鉄の地竜の後ろから、同じく深緑色をした鉄の蠍の群れが進行してきていた。最初にやってきた鉄の地竜と比較して、二倍以上はあろうかという巨大さに加え、『特徴的な尻尾の先端』を見たモアは言葉を失う。
王都ベルンゲンにある王立正倉では、神話時代から現在までの貴重な歴史的な宝物や書物、遺物などが大切に保管されている。神話時代のものだと、この世界を魔王軍の魔の手から救い、元の世界へと帰って行った『太陽神の使い』に由来したものまで所蔵されていた。
ここでは日本国にある正倉院のように、数年に一度、所蔵物の修繕や点検が行われることがあり、数年前、モアはその警備を任されたことがあった。どうやって使うのかよくわからないものが数多くあったが、モアの目を引いたのは巨大なアンテナのような円盤であった。
『太陽神の使い』がこの円盤を使って強烈な雷を放ち、迫りくる魔王軍を次々に焼き尽くしたと言い伝えられていた。度重なる魔王軍との戦闘で故障し、この世界に放置していったらしい。その円盤をより巨大かつ先進的に発展させたようなものが、尻尾の先端に設置されていたのだ。
石のように固まってしまった二人を追撃するかのように、今度は上空にアイロンのような形状をした30メートルを超える巨大な飛行物体が現れ、近くの広場に静かに着陸した。そしてその中から、ただ丸いだけの何の装飾も無い兜をかぶり、緑の斑模様の服を着た兵士が現れ、モアとガイの方へ歩み寄り、ビシって右手で敬礼する。
「日本国陸上自衛隊、トーパ王国特別派遣部隊、小隊長の百田太郎二等陸尉です。ご案内感謝致します。」
金ピカの派手な鎧を着こんだ英雄のような恰好の兵士が来ると想像していた二人であったが、その予想は大きく裏切られ、そのギャップにぎこちない対応となってしまう。
「ト、トーパ王国騎士団 世界の扉守護騎士のモアです。こ、これより皆さまをトルメス城にご案内した後に、あなた方日本国軍へ同行致します。よろしくお願いします。」
百田とかいう自衛官の左肩には、白地に赤丸の模様が描かれていた。
(白地に赤丸のマークが日本国の国旗か・・・。神話に登場する『太陽神の使い』たちが掲げていた旭日旗に酷似しているな・・・)
モアは日本国の国旗のことが少し気になったが、彼らをトルメス城へと案内した。
● トーパ王国特別派遣部隊の内訳
・ 96式装輪装甲車 1両
・ 89式装甲戦闘車 1両
・ 10式戦車 3両
・ 90式メーサー殺獣光線車 3両
・ 93式ツインメーサータンク改(冷凍メーサー仕様)1両
・ 95式レーザータンク改(冷凍メーサー仕様)1両
・ スーパーX2改 1機
※ 熱線魔法を使用することから、魔王がゴジラのように熱攻撃に耐性がある可能性を考慮され、通常メーサー車と冷凍メーサー仕様車との混成部隊となった。また陸上メーサー兵器の中で唯一、全幅が10メートルを超える92式メーサータンク改はトルメスにある城門を通過できないため、今回の派遣からは外された。
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トーパ王国 城塞都市トルメス
トルメス城会議室
トーパ王国特別派遣部隊の百田隊長たちは、トルメス城内にある会議室へと案内され、トーパ王国軍騎士長であり、魔王討伐隊のアジズ隊長たちと状況の確認や今後の作戦について協議を開始した。
トーパ王国騎士団は約2000人もの騎士が殉職する被害が出ており、また逃げ遅れたミナイサ地区の民間人約600人のうち、既に400人以上が魔王軍の餌食となっていた。説明を聞き終えた百田隊長たちは、早急に人質を救出する必要がある事を理解する。
「なるほど・・・事態はかなり切迫していますね・・・」
「そうなのだ・・・。オーガだけでも強敵だというのに、巨大な恐竜魔獣までいるとなれば、我々ではとても歯が立たぬ。」
掌に爪の赤い痕が幾つもつくほどの強さで両拳を握ったアジズ隊長が、口惜しそうな顔で答える。
「準備が整いしだい、私たちはまずオーガ退治から参りたいと思います。」
「おお・・・・列強をも退けた日本軍が動いて下さると、百人力、いや、万人力ですな。それに合わせて我が騎士団も出しましょうぞ! 」
「こちらにミナイサ地区の市内見取り図がござ・・・」
トーパ王国軍の副騎士長が市内見取り図を取ろうと席を立ったその時、複数の黒い物体が天窓を突き破り、会議室へと飛び込んで来た。コウモリのような黒い飛翔体群が一か所に集まり始めると、漆黒の羽を生やし、白い服を着た魔人の姿へと変貌していく。
「人間どもに反抗の兆し有りとみて様子を見てみれば、『魔獣』や『オーガ』の名ばかり・・・。なぜどいつもこいつも我の名を挙げぬのだ? 我の名を言ってみろぉ~!」
不満そうな声で、魔人が問いかける。
「こ、こいつは魔王の側近、魔族マラストラスだ!!」
「ホホホ・・・正解だ! 永き時を経て、人間どもも少しは進化したようだな。見事正解したお前には、我から素晴らしい褒美をくれてやろう!」
マラストラスが副騎士長に手を向けると、魔力により空気が歪み、黒い炎が現れ始める。
「ヘル・ファ・・・」
「全員伏せろ!!」
百田隊長の叫びに反応し、会議室にいた出席者たちは一斉に床へと倒れこむ。それと同時に、自衛官たちの持った杖の先から超高速の光弾が発射され、マラストラスへ襲い掛かる。
マラストラスは発射しようとした攻撃魔法を中断し、とっさに全魔力を放出して物理防御用の魔力障壁を展開する。89式5.56mm小銃の銃弾が魔力障壁に当たり、金属同士がぶつかったような音を立てる。
「この攻撃!? ま、まさか貴様たちは、太陽し・・・」
「城島ぁ! メーサーライフル照射!!」
89式5.56mm小銃の銃撃を防ぐための物理防御障壁を展開するだけで、既に限界ギリギリであったマラストラスに向け、分隊長の城島仁史がメーサーライフルを照射した。メーサーライフルから放たれたメーサー光弾は、展開された物理防御用の魔力障壁をあっさり貫通し、マラストラスに直撃した。
「ッがガッザクっビデっヒデッブ!?!!!」
苦痛に満ちた悲鳴を叫びながら、マラストラスの右半身が次々に焼き尽くされる。冷静に魔力をコントロールできる状態でなくなったことで、展開していた物理防御用の魔力障壁が消滅し、89式5.56mm小銃の銃弾がマラストラスの全身を貫いた!
右半身が焼き爛れて黒焦げに、左半身が穴だらけのハチの巣となったマラストラスは、ドス黒い体液を流しながら力なく崩れ落ちる。その背後の石壁も、無数の弾丸で抉られ、一部が崩れ落ちていた。
部屋にいたトーパ王国騎士たちの全員が確信する。日本国について、これまで噂されていた突拍子もない武勇伝は、本当だったのだ・・・。アジズを含むトーパ王国の面々は日本国の、そして自衛隊への認識を改めた。
※ スーパーX2改
出典 : ゴジラvsビオランテ(1989年)
89年のビオランテ事変において実戦投入されたスーパーX2の改良機。装甲にはスーパーXIIIで採用された超耐熱合金NT-1Sを改良した超耐熱耐圧合金NT-2Dを使用することで、初号機から大幅に防御力が向上している。
※ NT-2D
水中機としての側面をもつ本機向けにNT-1Sを改良した新装甲。耐熱性は同等であるが、初号機のTA32を用いた装甲同様、水深1000メートルの水圧に耐える強度をも合わせもつ。後に、ごうてん級護衛艦の装甲にも導入された。
コクピットが追加されているが、初号機同様、自動操縦・遠隔操作も可能で水空両用の特殊機としての側面が強くなっている。スーパーXIIIと異なり、動力源がレーザー核融合炉ではなく、また水中戦も想定されていることから、実弾兵器がメイン武装となっている。
※ 水中では減衰率の高さから、冷凍系以外のメーサー兵器、光学兵器は使用不可。
また本機の特徴であったファイヤーミラーは、MOGERAに採用されたブルーダイヤコーティングが導入され、耐熱性が大幅に向上している。二代目ゴジラの通常の放射熱線レベルであれば、スーパーメカゴジラ同様、完全に無効化することができ、熱線やレーザーなどを収束・反射させることが可能。初号機の課題であったミラー破損時の修繕も、ドックで容易に交換可能となっている。
武装:
ネオファイヤーミラー
40ミリバルカン砲
マルチ魚雷発射口
上部ミサイルランチャー
本話の要約 : ザ・出落ち