東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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054. キレた赤鬼

 

中央暦1639年12月19日

トーパ王国 城塞都市トルメス

トルメス城会議室

 

 

魔王の側近、魔族マラストラスがトルメス城会議室を襲撃したことにより中断されていた『ミナイサ地区の民間人救出作戦会議』は、別の大広間へと移動して再開されていた。

 

「それにしても、マラストラスほどの危険な魔獣をこうもあっさり退治するとは・・・。百田殿たち自衛隊の方々には、なんと礼を言ったらいいやら」

 

マラストラスの攻撃魔法で、副隊長とともに火達磨にされるところだったアジズ隊長が、額の汗を拭いながら感謝する。

 

「いえ、我々は成すべきことをしただけです。アジズ隊長、今後の魔王軍との戦闘ために一つお尋ねさせて下さい。あの魔獣は淡い黄色い壁のようなものを出し、我々の銃撃を防いでいました・・・。あれも魔法によるものなのでしょうか?」

 

「あれは、対物理型の魔力障壁を展開したものと思われます。」

 

「魔力障壁・・・ですか・・・」

 

いまいちピンときていない百田隊長の様子を見たトーパ王国軍の魔導士が、アジズ隊長に続いて補足説明を行う。

 

「魔力による障壁を展開する防御魔法の一種です。かなりの魔力を消費するため、普通の魔導士だと、あれほど長時間にわたって展開し続けることは不可能ですが、魔王やオーガクラスの魔獣ともなれば、絶大な魔力を保有しているため、あのような芸当を実現しているものと思われます。」

 

「魔力障壁には、剣や投石などの攻撃を防ぐ物理防御型と、高熱や攻撃魔法のような

質量が殆どないエネルギーによる攻撃を防ぐ特殊防御型があります。」

 

「先ほど百田殿たちが行われた杖による攻撃は、パーパルディア皇国が配備しています魔導マスケット銃のように、高速で弾を飛ばすものだったと推測しています。そのため、ヤツは物理防御型の魔力障壁を展開し、防御しました。しかし、城島殿の魔導銃は高熱のエネルギーを発射するタイプの攻撃であったため、意味を成さず、あっさり貫通してヤツに直撃した・・・ということです。」

 

魔導士の説明を受けた百田隊長たちは、なるほどと納得する。

 

「なるほど・・・。では魔王やオーガたちと戦闘時、ヤツらが魔力障壁を展開した場合には、今回のように物理攻撃とエネルギー攻撃を織り交ぜて行えば効果的・・・ということでしょうか。」

 

「はい、その通りです。もしくは魔力障壁を展開されたとしても、障壁の防御力を上回る大質量や超速度による貫通力、エネルギー量であれば、それらを突破することも可能です。」

 

「ちなみに物理と特殊の両方の魔力障壁を同時に展開することは、両者の魔道プロセスがあまりに異なるため、不可能とされています。例えるなら、『上を見ながら左右を同時に見る』ようなものです。」

 

「『神竜』のような絶大な魔力をもち、風竜のように念話でコミュニケーションできるほどの知性があり、『頭が三つ』くらいあって全く異なることを同時に思考可能な生物でもない限り、絶対に不可能ですのでご安心ください。」

 

(超絶頭の良いキングギドラみたいなヤツでもない限り、無理ってことか・・・)

 

『頭が三つ』という表現を聞いた百田隊長たちは、1992年のインスタント・キングギドラと1999年に襲来したグランドギドラを思い浮かべる。

 

ムー大陸とともにこの世界に転移したマンダも、魔素が豊富なこの惑星に適応し、一般人と念話が出来るほどの知性を有していた・・・という報告があった。操られていたインスタント・キングギドラの方はともかく、意外と知性的であったグランドギドラのように、長寿な宇宙怪獣であるギドラ族がこの惑星に適応していたら厄介だな・・・と考える。

 

(この件は日本に戻ったら、諸々とあわせて要報告事項だな・・・)

 

 

「なるほど・・・。ということは、魔王やオーガと戦闘する際は、ヤツらがどちらかの魔力障壁を展開する場合を想定し、96式装輪装甲車や10式戦車はメーサー戦車と同時運用した方が良さそうだな・・・」

 

民間人救出作戦の会議は深夜まで続いた。そして無人ドローンによる偵察が完了した二日後の早朝、トーパ王国特別派遣部隊とトーパ王国騎士団はミナイサ地区へ突入した。

 

 

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魔王の侵攻で生き残ったミナイサ地区の住民たちは、大講堂や議場、学校などの大きな建物の中に押し込められていた。建物の周囲は、魔物や魔獣が交代で見張りをしており、逃げようとした者から捕まえ、目の前で『食材』として料理されていた。

 

脱走者がいない日でも、毎日、何人かが料理のために連れて行かれ、日に日に生きている人が減っていく・・・。まさに生き地獄といえるような状態が、現在のミナイサ地区であった。

 

 

● 城島分隊

 

ミッション内容 : レッドオーガの陽動と討伐

 

 

大講堂の前にある広場では、巨大な金砕棒をもったレッドオーガがオークやゴブリンの部隊を率いて陣取っていた。10式戦車やメーサー戦車でそのまま攻撃すると、一番生存者が多いと思われる大講堂を巻き込んでしまう恐れがあった。

 

そこで取られた方法が・・・

 

レッドオーガたちが陣取る広場から約500メートル離れた平屋の屋根には、84mm無反動砲(カールグスタフ)を構えた自衛官がいた。目標はレッドオーガとその周囲の魔獣たち、砲弾は対戦車榴弾が装填されていた。

 

次の瞬間、筒の前と後ろから煙が吹き出ると共に、爆音が辺りに木霊する。本能的に死の気配を察知したレッドオーガは、魔力全開で魔力障壁を展開する。

 

対戦車榴弾はレッドオーガのすぐ近くで着弾し、その爆風と衝撃により、レッドオーガは魔力障壁を展開したまま大きく後方へと吹き飛ばされた。近くにいたオークやゴブリンたちは言うまでもなく、木っ端微塵となり、周辺に肉片らしきものが散乱する。

 

「嘘だろ・・・あの赤鬼、ハチヨンに耐えやがった! プランBへと移行する!」

 

突如攻撃されて吹き飛ばされたレッドオーガは、自分を攻撃してきた敵の場所を怒りながらキョロキョロと探していた。

 

「ヘイヘーイ! レッドオーガのバカ・ウスノロ・木偶(デク)の坊!! お前のかあちゃん手羽先~!!」

 

500メートルほど離れた屋根の上で、自分に向けて罵詈雑言を浴びせて挑発している人間たちがいた。無様に吹っ飛ばされ、ただでさえイライラしていたレッドオーガは、ただのエサと思っている人間たちに挑発され、完全にキレた!

 

「ニンゲンの分際で!! コロス!コロス!コロース!!」

 

金砕棒を振り回しながら、レッドオーガが駆けだしてきた。レッドオーガに続き、近くにいたサイクロプスやオークロードなどの魔物たちも後ろから追ってくる。

 

斥候の自衛官たちは屋根から飛び降り、近くに停車していた高機動車に乗り込んで慌ててその場から退避する。しかし、魔力障壁により殆どダメージがなかったのか、それとも怒りで我を忘れているのか、レッドオーガは追従する魔物たちを突き放し、凄まじい速さで迫って来ていた。

 

高機動車が退避予定の広場には、2両の90式メーサー殺獣光線車と89式装甲戦闘車が接近中のレッドオーガを待ち構えていた。

 

「レッドオーガを確認次第、89式の35mm機関砲で攻撃を開始せよ。おそらくヤツは魔導障壁を展開するが、それと同時に90式はメーサーを一斉照射!」

 

斥候の自衛官たちを乗せた高機動車が広場へ到着した約10秒後、怒りに満ちたレッドオーガが広場へと現れた。レッドオーガの頭の中は、『自分をコケにした人間たちをどう惨たらしくブチ殺してやろうか・・・』と考えることで一杯であったが、広場で自分を待ち構えていた鉄の魔獣たちを見て、全身から冷や汗が噴き出る。

 

「バ、バカな・・・。あれは『鉄の地竜』と『鉄の蠍』!? それにあの紋章はまさか!?」

 

次の瞬間、89式装甲戦闘車から35mm口径弾が連続して発射された。レッドオーガは金砕棒を投げ捨て、両手で物理防御用の魔力障壁を展開するが、一発、もう一発と防ぐごとに、魔力障壁には次々とヒビが入り始めている。

 

「90式、とどめだ! メーサー照射!!」

 

城島分隊長の指示で、レッドオーガに向けて、2両の90式メーサー殺獣光線車からオレンジ色に輝くメーサー光線が照射された。メーサーライフルを遥かに超える威力の熱エネルギーは、既に満身創痍の魔力障壁を素通りし、レッドオーガの肉体を一気に焼き焦がす。2両から放たれるメーサー砲は、さらに背後から遅れてやってきた配下の魔物の軍勢にも直撃し、それらをまとめて焼却処分する。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ」

 

あっという間に全身が火達磨となったレッドオーガは、魔力制御が出来なくなり、展開していた魔力障壁が消失した。追い打ちと言わんばかりに、89式装甲戦闘車から35mm口径弾が連続発射され、メーサー砲の照射でズタボロになったレッドオーガの全身に多数の風穴を開けた。

 

城島分隊による陽動と攻撃により、大講堂の前に陣取っていたレッドオーガ、及び配下の魔物たちは、あっさりと消滅することとなった。

 

 

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