東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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RPG系のゲームにおいて、追い詰めたと思った敵が取ってくる行動といえば・・・


060. 最期の足掻き

 

中央暦1639年12月21日

トーパ王国 城塞都市トルメス

ミナイサ区域境界の城門前

 

 

昨日から開始された日本国自衛隊のトーパ王国特別派遣部隊との戦闘で、魔王ノスグーラ率いる魔王軍の命運は、風前の灯火と化していた。

 

魔王ノスグーラの両腕たるレッド・ブルーのオーガコンビや側近であるマラストラス、さらには魔帝様より下賜されたゴロザウルスも前日までにすべて討伐され、オークロードなど魔王軍の一級クラス戦力はほぼ壊滅・・・。

 

さらにミナイサ区域境界の城門前広場での戦闘において、魔王軍最後の主力であった三体のカイザーゴーレムも、スーパーX2改の活躍であっという間に全滅しており、切り札であった赤竜は、メーサー部隊が発射した冷凍弾による超低温な環境で休眠状態に陥っている。

 

魔王軍の総帥たる魔王ノスグーラ自身も、メーサー部隊との戦闘で左腕を焼き尽くされ、片翼と右腕、両足が凍結粉砕された満身創痍な状態となり、赤竜の前に無様に転がっている。

 

「両腕を失い、もはや魔力障壁の展開もできないだろう。10式各車、とどめだ!」

 

「赤竜の方は『タナトニウム』の反応が検出された背中のコブ周辺を避け、胴体を狙えよ!」

 

次弾装填が既に完了している三両の10式戦車から、休眠状態となった赤竜とその手前に転がっている魔王ノスグーラ目掛け、三発の10式120mm装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)が一斉発射された。

 

「こ、このようなところで・・・。いまだこの大陸すら制圧出来ていない現状で、下等種どもに討たれようものなら、魔帝様に顔向けできぬわ!!」

 

10式戦車から APFSDS が発射される直前、魔王ノスグーラは最後の力を振り絞り、残された片翼に飛行魔法を集中させて浮遊し始めた。胴体はまだ残っているが、傍から見ると、日本三大怨霊のひとつとして有名な『怨霊伝説』のようである。

 

「魔王、残った胴体と首だけで浮遊し始めました!」

 

「まずは赤竜を優先で駆除する! 赤竜の厄介な重力操作が無くなれば、両腕を喪失した手負いの魔王など大した脅威ではない。」

 

三両の10式戦車から発射された三発の APFSDS は、冷凍弾ミサイルにより休眠状態に陥った赤竜に全弾が命中した。赤竜はゴロザウルスのように冷凍メーサーの照射を受けておらず、細胞レベルで凍結されたわけではなかったため、粉々に砕け散るようなことはなかった。しかし、『タナトニウム』の反応が検出された背中のコブ周辺を避けるように発射された APFSDS は、命中した箇所から赤竜の体内へ侵入すると、その内部を衝撃波でズタズタのボロボロに破壊していく。

 

休眠状態のところを突如として胴体から尻尾付近まで貫通する風穴を開けられ、体内の臓器や器官をグチャグチャにされた赤竜は、断末魔の咆哮を上げながら即死し、そのまま動かなくなる。

 

「赤竜もやられたか・・・。こうなったら!」

 

怨霊のように首と胴体だけでフワフワと浮遊していた魔王ノスグーラは、息絶えたばかりの赤竜の遺骸に近付くと、その肉に喰らい付いた。

 

「百田隊長、魔王が赤竜の遺骸を喰い始めています!」

 

「何のつもりだ? 10式で攻撃しようにもこの射角で砲撃すれば、貫通してコブの部分に直撃してしまうな・・・。10式戦車は、全車一旦後退! 90式メーサー車は魔王の頭部が喰らい付いている周辺を焼却せよ!!」

 

最前列にいた10式戦車が後退すると同時に、三両の90式メーサー殺獣光線車が照準を合わせる。メーサー砲が照射されようとしたとき、魔王ノスグーラに喰らい付かれた赤竜の頭部周辺の体組織が灰色へと変化し、少しずつボロボロと崩れ始めるのが見えた。

 

「赤竜の遺骸が風化し始めているだと? 魔王のヤツは一体何を始めるつもりだ?」

 

「風化して崩れていく・・・。以前先輩方からお聞きしたファイヤーラドンの最期のようですね。」

 

脳裏に 94年の『メカゴジラ事変』のことを思い浮かべた自衛官が、ポツリと呟く。その言葉を聞いた百田隊長は、はっとした顔をすると同時に、オブザーバーとして96式装輪装甲車に乗り込んでいるモアとガイに確認を取る。

 

「モア殿、貴国の歴史書に記載されている魔王の伝承について、魔力や生命エネルギーを奪い取るような能力について書かれた内容のものはありましたでしょうか?」

 

「いえ、そのような能力はなかった筈です。人類に比肩するほどの知能や大魔導師をも遥かに上回るほどの強大な魔力、そして万を超える魔獣を統率・隷属させる能力しか存じていません・・・」

 

96式装輪装甲車に持ち込んだ資料を大急ぎで確認しながら、モアが答える。

 

「魔力は魔法を使うものにとって、血液のようなものです。血液同様、絶命直後であれば、体内には魔力がまだ残っています。ですが、魔力には、生物それぞれの型・・・、血液型ならぬ魔力型のようなものがあるため、合致しない異なる種のものを大量に取り込むと、自身の魔力と反発してしまいます。」

 

「最悪の場合、それぞれの魔力同士が暴走して大爆発するようなことも・・・。ま、ま、まさか、魔王の狙いは・・・」

 

「ええ、我々がいた元居た世界には、自身の生命エネルギーのすべてを瀕死の仲間に分け与え、より強大な力で復活させた生物がいました。私はてっきり、赤竜の魔力を吸収して復活するつもりでは・・・と考えたのですが、モア殿のお話を聞く限り、魔王のヤツは赤竜と自身の魔力を暴走させて自爆するつもりのようですね・・・」

 

冷静に状況を説明しているが、さすがの百田隊長もこめかみの部分に冷や汗をかいている。

 

「た、大変だ! 魔王と赤竜ほどの魔力が暴走すれば、ミナイサ区くらいは簡単に消し飛んでしまいますよ!! 早く避難しないと!!!」

 

赤竜に喰らい付いた魔王ノスグーラの頭部と胴体は、水風船のようにブクブクと膨れ始めており、怪しげに赤く点滅している。まるで、時限爆弾の回路に取り付けられたLEDランプが、カウントダウンを刻んでいるかのような光景である。

 

「城壁周辺には、アジズ隊長率いるトーパ王国軍騎士団数千人も合流しています。残念ですが、今から逃げても間に合わないでしょう・・・。モア殿、魔力暴走を止める方法は何かありませんか? 低温で凍結させると反応が止まる・・・とか。」

 

「化学反応のようなものではないため、低温にしても魔力反応は止まりません。それこそ、どこか安全なところに廃棄するようなことくらいしか対処法はありません・・・」

 

モアは、苦虫を噛み潰したような顔で答える。まさに万事休すといった局面であるが、ここで無線から思いもよらない提案が飛び込んできた。

 

「百田隊長、スーパーX2改に搭載されている『例の特殊弾頭』を使用させて下さい!」

 

無線を通し、モアと百田隊長のやり取りを聞いていた猿渡分隊長が、スーパーX2改に一発だけ試験的に搭載された特殊弾頭の使用許可を求めてきたのだ。

 

「猿渡、お前正気か!? あの弾頭は、ようやく評価やテストが終わったばかりの代物だぞ・・・。」

 

「わかっています・・・。ですが、この状況を打破できるのは、あの弾頭しかありません! どうか使用許可を頂けませんでしょうか・・・」

 

緊迫した状況のなか、百田隊長は意を決したような顔で決断を下した。

 

「わかった・・・、全ての責任は俺が取る。『侵蝕弾頭』の使用を許可する!」

 

 





ご挨拶が遅くなりましたが、本年も拙作をよろしくお願い致します。
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