中央暦1639年12月21日
トーパ王国 城塞都市トルメス
ミナイサ区域境界の城門前
今年の始めに日本国がこの世界へと国家転移する数年前、約20年にわたって取り組まれていたとある中核技術の研究、そしてそれに関連した兵器開発が、ようやく一段落ついたステージへと移行した。その中核技術とは、超重元素『タナトニウム』とそれを用いた重力制御技術、そしてそれを応用させた重力兵器の開発であった。
1992年の『第一次キングギドラ事変』において小笠原海溝の深くに沈んだメカキングギドラをサルベージし、その残骸を解析したことで得られた23世紀のオーバーテクノロジーは、現実世界を超える大きな技術革新をもたらした。
後に発足した国連G対策センター、および対ゴジラ実働部隊Gフォースの主力メカである『スーパーメカゴジラ』や『MOGERA』などの建造に大いに活かされたロボット工学技術は、言うまでもない。
上記で特筆すべき箇所としては、機械化された両翼に搭載された反重力浮揚システムが挙げられる。この部位は、反重力や重力制御といったこれまでフィクションでの架空技術とされていたものを実現していた。この技術を解析・運用出来れば、航空技術をはじめとした様々な分野に革命が起こることが期待されていたこともあり、最優先で調査が進められていた。
見本がすぐ目の前にあったということもあり、2000年代半ばにはこれらの技術解析は完了し、当時の最新兵器へ導入された。陸上メーサー兵器など、自機よりも重量のある大型車両を空輸することが可能な航空機『AC-3 しらさぎ』、翼による揚力などの空気力学を無視した形状をしているにも関わらず、飛行可能な『ごうてん型護衛艦』などが該当する。
一方、重力制御技術そのものを応用させた兵器についても、アメリカ合衆国と共同で研究が進められていたが、こちらについては難航していた。重力制御技術の中核を担う超重元素『タナトニウム』が非常に希少であったことから、容易に弾頭として多用出来ず、またその必要量も桁違いであったためである。
※ ウランのような感じをイメージ頂けると幸いです。
原子力発電や核兵器(原子爆弾)では、どちらも天然ウランを濃縮させたウラン235の核分裂の連鎖反応を用いているが、その割合は大きく異なる。
・ 原子力発電(ウラン235 : 5%以下)
核分裂反応をゆっくりと進ませて、長い期間にわたって熱を出すことに重点を置いているため、必要量は少なめ。
・ 核兵器(ウラン235 : ほぼ100%)
核分裂反応を連鎖的に引き起こし、一瞬のうちに爆発的なエネルギーを放出させることを目的としているため、高い純度が必要。
しかし核兵器と異なり、使用後に放射能汚染のような深刻な環境破壊を引き起こさないこと、さらにそれに起因したゴジラをはじめとした特殊生物の発生を未然に防止できることなどのメリットがあったことで研究は継続され、人類史上初の重力兵器『侵蝕弾頭』が完成したのであった。
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「はーっはっは! よーく聞け、下等種どもよ! 近いうちに魔帝様の国が復活なさる! お前ら下等種の世界は、もう間もなく終わるぞ!! 圧倒的な力をお持ちの魔帝様によって、お前らは全員奴隷と化すだろう!!!」
「一度ならず、二度までも我の野望を打ち砕きおった太陽神の使者どもは、今日この場で我の道連れにしてくれるわ!!」
怨嗟の言葉と捨て台詞を言い放つ魔王ノスグーラは、既に頭部や胴体が元の倍のサイズにまで膨れ上がっており、いつ爆発してもおかしくない状態であった。
「『侵蝕弾頭』の発射準備を急げ! 目標、赤竜の頭部に喰らい付いた魔王!!」
スーパーX2改の機体上部に設置されたミサイルランチャーに、『推進式削岩弾 D-03 』とはまた違った、異様な形状の弾頭が装填される。
「赤竜のコブが重力波の展開領域内に入らないよう、着弾点には細心の注意を払え!!」
ミサイルなどの誘導兵器が着弾して炸裂する際、通常の対地ミサイルなどであれば破壊的な爆風と熱が、ゴロザウルスを屠った冷凍弾であれば周囲を凍てつかせる強烈な冷気が発生するが、『侵蝕弾頭』の場合はいずれにも該当しない。
スーパーX2改から発射された『侵蝕弾頭』は、魔王が喰らい付いた赤竜の頭部手前に着弾する。弾頭が炸裂すると同時に、深い赤紫色の閃光がいくつも走り、六角形と五角形が配列したフラーレンのような球体が展開される。
球体の中心を基準に強力な力場が発生し、球状に拡大していく重力波によって周囲の空間が侵蝕され始めた。破裂しそうになっている魔王ノスグーラは、赤竜の頭部や周辺の大地もろとも、強大な重力波に飲み込まれた!
飲み込まれた魔王ノスグーラや大地は、圧倒的な重力場の前に、構成因子レベルにまで分解され、そのまま塵芥となって崩壊した。
球体の消滅後には、断頭台で処刑されたかのように首から上が消滅した赤竜の遺骸、そしてその前にはまるで空間ごと侵蝕され、数メートルにわたってすり鉢状に抉り取られたかのような大地が広がっていた。
「展開された重力場、停止しました。周囲への汚染は確認されず・・・」
「魔王の生命反応、消滅しました・・・。赤竜の遺骸も沈黙したまま、背中のコブも無事です!」
「今回の派遣任務、これで完遂だな。皆、本当によくやってくれた!!」
総帥である魔王ノスグーラやその側近たちが全滅したことで、魔王軍の指揮系統は完全に崩壊・・・。残った魔王軍の魔物たちは叫び声をあげ、蜘蛛の子を散らすようにグラメウス大陸への退却を開始する。
もちろん、そのまま自衛隊があっさりと見逃す筈はなく、上空からはスーパーX2改の40ミリバルカンや対地ミサイルによる攻撃、地上からは10式戦車やメーサー部隊による苛烈な追撃・掃討が行われた。
最終的に、生きてグラメウス大陸まで逃げ帰ることが出来た魔物は数10匹程度と、12月初頭に『世界の扉』に襲来してきた数万匹の魔王軍は、ほぼ全滅することなった。
※ 侵蝕弾頭
出典 : 蒼き鋼のアルペジオ
1992年の『第一次キングギドラ事変』において小笠原海溝の深くに沈んだメカキングギドラをサルベージし、その残骸を解析したことで得られた反重力や重力制御といった技術を発展させ、開発された人類史上初の重力兵器。
炸裂すると六角形と五角形が配列したフラーレンのような球体が展開され、それを起点に周囲の空間ごと重力波によって侵蝕することで、物質の構成因子にまで分解し、崩壊させることが可能。
核兵器と異なり、使用後に放射能汚染のような深刻な環境破壊を引き起こさないこと、さらにそれに起因したゴジラをはじめとした特殊生物の発生を未然に防止できることなどのメリットがあることから、アメリカ合衆国と共同で研究が進められていた。
しかし希少な超重元素『タナトニウム』を大量に必要とするため、その開発は難航しており、早期に導入された重力制御技術から10年以上遅れて実現された。
アメリカ合衆国と共同で本技術を用いた衛星兵器の開発も検討されていたが、戦略兵器への転用が可能で宇宙条約の第4条に抵触すること、侵蝕弾頭以上に大量のタナトニウムが必要となることから、試作機が作られた状態のまま、計画は凍結されている。