東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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062. 太陽神の使者の秘密

 

中央暦1639年12月21日

トーパ王国 城塞都市トルメス

ミナイサ区域境界の城門前

 

 

魔力暴走を引き起こして自爆する寸前であった魔王ノスグーラが、球状に展開された巨大な力場に引きずり込まれ、周囲の大地諸共、まるで何かに侵食されて抉り取られたかのように消滅した。

 

「た・・・倒したのか!? 魔王ノスグーラを・・・」

 

「倒した・・・というか消滅しちまったぞ・・・」

 

「てことは、俺らは助かったのか!?」

 

「な、なんという凄まじい戦い方だ・・・」

 

この様子は、96式装輪装甲車にオブザーバーとして乗り込んでいたモアとガイは勿論、城壁防衛のために合流したアジズ隊長らトーパ王国兵や騎士たちからも見えていた。新たに打ち立てられた伝説を目の前で見せられた彼らは、大きな歓声をあげる。城門、城壁上から次々に歓喜の声があがり、城塞都市トルメス全体が勝利と生の喜びに包まれる。

 

後の歴史書で『魔王事変』と記載される今回の事件、そして日本国から派遣された自衛隊の活躍は、トーパ王国民やその周辺国にも広く知れわたることとなった。

 

また魔王軍に破壊された『世界の扉』についても、『魔王事変』後に麻生内閣総理大臣とラドス16世との間で実施された日ト首脳会談にて、日本国から再建のための支援が行われることが決定された。

 

こうしたこともあり、トーパ王国の対日感情はこれ以上なく向上し、ロデニウス大陸国家やムー連邦同様、この世界における極めて友好的な親日国家の一つとなったのであった。

 

 

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城塞都市トルメスには、魔王軍の恐怖から解放され、歓喜に満ちたトルメス市民や復興のボランティアで訪れているトーパ王国民とは別に、『情報収集』や『諜報』といった目的で滞在している者たちが少数存在した。

 

南地区にある宿屋の一室に閉じこもり、携帯用の魔導タイプライターをひたすら叩き続けている『ライドルカ』もその一人だ。彼は第一文明圏にある世界第一位列強国であり、世界最強の国と謳われる『神聖ミリシアル帝国』の諜報員であった。

 

彼は第三文明圏を中心に諜報活動を行っており、有力な国の動向や戦乱の状況などの情報を本国へ連絡するのが主な任務であった。そんな折、『古の魔法帝国』の遺産の一つとされる生物兵器、『魔王ノスグーラ』が復活した・・・という情報を聞きつけ、その性能把握と情報収集のため、商人たちに紛れてトーパ王国に滞在していたのであった。

 

ライドルカは、文明圏外国であるトーパ王国の戦力では、魔王ノスグーラ率いる魔王軍に歯がたたず、トーパ王国の陥落は時間の問題だと考えていた。勿論、フィルアデス大陸までもが魔王軍に陥落させられるのは、世界のリーダーを自負する『神聖ミリシアル帝国』としてもいささか問題であったため、可能な限り魔王軍の情報を収集を行い、本国へ帝国軍の派遣を打診する腹積もりであった。

 

しかし、日本国とかいう初めて聞く名の新興国が援軍として参戦したことで、魔王軍は鎧袖一触で殲滅された。救助されたミナイサ区の住民によれば、レッドオーガは日本国の陸上兵器が放つ雷撃で黒焦げに焼き殺され、ブルーオーガは騎乗していた恐竜型魔獣ごとカチコチに凍結され、粉々に砕け散ったらしい・・・。

 

ただの新興国にそんな芸当ができるわけがない・・・と全く信用していなかったが、翌日の魔王ノスグーラと彼らの戦闘は、それまでの常識を覆すものであった。日本国が運用していた兵器からは、魔力反応が一切確認できなかったことから、第二文明圏の『ムー連邦』を中心に発展している機械科学文明のものに近いことは予想できたが、魔導文明の盟主である帝国の魔導技術ですら、どの兵器も再現すらできないだろう・・・。

 

万が一、帝国が不幸な行き違いで日本国と敵対することにでもなったら・・・。考えるだけで恐ろしいことになるだろう。

 

それと同時に、『魔王ノスグーラ』が謎の誘導魔光弾による攻撃を喰らい、消滅する直前に言い放った捨て台詞が頭をよぎる。

 

『近いうちに魔帝様の国が復活なさる』

 

神話の時代、他種とは隔絶した圧倒的な魔力と魔導技術を持って全世界を支配し、神々にすら弓を引いたとされる恐怖の大帝国が、近いうちに復活する・・・。魔王の爆弾発言が頭の中で繰り返され、報告書を作成中のライドルカの額と背筋に嫌な汗が流れる。

 

もし古の魔法帝国こと『ラヴァーナル帝国』が復活した場合、祖国である『神聖ミリシアル帝国』は、魔導文明の盟主としてこれに対抗しなければならない。しかし時折発掘される遺跡には、高度すぎて解明できていない点も多く、彼らの文明が非常に高度であったことが伺える。

 

それゆえ、ミリシアルは魔帝に対抗出来るのかと問われた際、ライドルカは勿論、自信をもってイエスと即答できる能天気な政府や軍の関係者は殆どいないのが現状である。

 

だが、もしあれほどの力をもった日本国が神聖ミリシアル帝国の味方となり、一緒に魔帝に対抗してくれるのであれば・・・。

 

ライドルカは魔王に関する報告書とは別に、上申のための説明資料を作成し、急ぎ足で第一文明圏行の旅客船が停泊する波止場へと向かっていった。

 

 

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中央暦1639年12月23日

トーパ王国

 

 

日本国自衛隊のトーパ王国特別派遣部隊が魔王ノスグーラを討伐した数日後、魔王軍との戦場になったミナイサ地区には、特殊研究本部や国連G対策センターに所属する科学者やエンジニアたちの姿があった。

 

今回の『魔王事変』において討伐されたレッドオーガやブルーオーガをはじめとする魔王軍幹部の生体サンプルの入手、体内から膨大な『タナトニウム』の反応が検出された赤竜の遺骸の回収、そして初の実戦使用された『侵蝕弾頭』の影響調査のためであった。

 

当初の目的であった魔王の生体サンプル入手については、侵蝕弾頭の影響で破片すら残らずに完全消滅してしまったが、ブルーオーガとゴロザウルスについては凍結粉砕されたこともあり、良好な状態のサンプルを入手出来た。

 

また赤竜の遺骸からは、予想を上回るほどの『タナトニウム』が蓄積されていることが確認された。これは赤竜の生息地であったグラメウス大陸内に、大規模なタナトニウム鉱床がある可能性を示唆しており、年明けにグラメウス大陸調査のための観測衛星も打ち上げられることとなった。

 

また今回の『魔王事変』で、魔王ノスグーラや赤竜といった地球の特殊生物たちに匹敵する危険な生物が多数確認されたこと、地球では希少であった『タナトニウム』が大量に入手できる見通しとなったことから、日本国政府は凍結されていた『DT計画』の再開を決定したのであった。

 

一方、トーパ王国特別派遣部隊の百田隊長は、王都ベルンゲンにある王立正倉を案内されていた。

 

魔王討伐後の祝勝会にて、90式メーサー殺獣光線車のメーサー砲が、かつてこの世界を救った『太陽神の使者』が使用したとされる円盤によく似ている旨をモアから聞かされた。「一度、見てみたいものだ」と軽い気持ちで答えると、近くにいたラドス16世から「是非見て行ってくれ!」とあっさり了承された・・・という流れであった。

 

王立正倉の奥に案内され、保管されている円盤を見た百田隊長やエンジニアたちは唖然とした顔をする。そこに『原子熱線砲』に酷似した小型のパラボラアンテナが鎮座していたのだ。

 

地球史において世界初となる指向性エネルギー兵器は、ロシリカ国の『原子熱線砲』とされている。1961年の第一次モスラ事変において、ロシリカ陸軍から供与された原子熱線砲を研究し、熱エネルギーの集中照射型発射機として日本独自に開発されたのが、『90式メーサー殺獣光線車』の前身である『66式メーサー殺獣光線車』であった。

 

「なぜ、原子熱線砲がこの世界に・・・」

 

「百田さん、ここを見て下さい。」

 

同行していたエンジニアが指さした先には、見慣れた文字・・・、日本語の書かれた金属プレートがパラボラの側面に溶接されていた。

 

『昭和18年 大日本帝国異世界方面軍所属 「く号兵器」試作一号』

 

『登戸研究所 異世界方面部所属 芹沢 大助』

 

自衛隊や防衛省、国連G対策センターに所属する人間であれば、知らぬ人はいない名前・・・。1954年の『第一次ゴジラ事変』において、自らが開発した究極の兵器『オキシジェン・デストロイヤー』を使用し、自身もろとも『初代ゴジラ』を消滅させた『芹沢博士』の名前が刻まれていたのであった・・・。

 

 

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