中央暦1639年1月27日
クワ・トイネ公国 マイハーク港沖合
経済都市マイハークの北側には、この都市の物流を支えるクワ・トイネ公国最大の港であるマイハーク港があった。
そこに併設されたクワ・トイネ公国海軍基地では、軍船ピーマからの連絡を受けた指令室が大騒ぎになっていた。
・ 長さ250mを超える超大型船をマイハーク港北で発見
・ 臨検を行ったところ、日本国を名乗る国の外務担当者が乗っており、我が国との国交締結を視野に入れた会談を希望している
・ 先日の正体不明の未確認騎は、日本国の哨戒機であり、飛行中に領空侵犯をしてしまったとのこと
・ 本件については数日前に突如として国ごとこの世界に転移し、周囲の偵察を行っていた。意図せず領空侵犯をしてしまい、日本政府として正式に謝罪したいとのこと
通信担当から上記報告を受けたマイハーク防衛指令室のノウカ司令は絶句しながらも、臨検の情報を公都の首相官邸へ緊急連絡を行った。
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クワ・トイネ公国の公都クワ・トイネ。
その中央に位置する首相官邸の蓮の間では公国首脳陣が集まり、緊急の会議が開かれていた。
議題はもちろん、24日に経済都市マイハークへ侵入した国籍不明の未確認飛行物体についてである。
防衛、軍務を司る軍務局のハンキ将軍から下記の報告が行われる。
・ 正体不明の飛行物体が、マイハークに空から進入し、町上空を旋回して北東の方角へ飛び去っていった
・ 胴体と翼に赤い丸が描かれていた
・ 対象は羽ばたいておらず、翼に付いている風車を高速で回転させながら飛行していた
・ 速度、限界高度ともワイバーンの比ではない
「先日の正体不明騎について、皆はどう思うか。率直な意見を聞かせてほしい。」
クワ・トイネ公国首相カナタは、会議に出席している各首脳陣に意見を求める。
外務卿リンスイが挙手して話始めた。
「我が外務局によれば、三大文明圏の1つである第二文明圏の列強国、ムー連邦が開発した飛行機械に酷似していると報告がありました。しかし、ムー連邦の飛行機械はワイバーンの1.5倍程度の速さに対し、今回の飛行物体は明らかに3倍以上の速さはありました。さらに4000メートルを越える高度にまで一気に上昇しており、予想される性能を大きく上回っています。」
この世界において、ワイバーンのような生物以外の飛行手段をもつ国は先ほどのムー連邦を含めた2つの列強国しか知られていない。
リンスイが話終わると情報局長が続けて報告を始めた。
「諜報部からムー連邦の遙か西、第二文明圏から外れた西の果てに第八帝国と名乗る新興国家が出現し、侵略戦争を行っているとの報告がありました。詳細は不明ですが、巨大な鉄船をもっているとのことです」
「鉄船をもっているということは、もしかすると飛行機械も・・ということか」
ハンキ将軍がポツリと話した。
「ですが第八帝国は、ムー大陸から遙か西にあるとの事です。我が国からムー大陸までの距離でさえ、2万km以上も離れています。今回の飛行物体が、それであるとは考えにくいと思われます。」
その後も色々意見が出たが、結局これといった進展はせず、会議は平行線を辿る一方であった。
その時、外交部の若手幹部が息を切らして入り込んできた。
通常、蓮の間での会議中には緊急時以外、部外者の入室は固く禁じられている
つまり明らかに緊急事態が発生したということであった。
「いったい何事だ!!!」
外務卿リンスイが声を張り上げる。
若手幹部が息を整えながら報告を始める。
「報告します!!たった今、マイ・ハーク港の沖にて日本国を名乗る長さ250mを
超える超大型船と接触した海軍から連絡がありました!」
「海軍により臨検を行ったところ、日本国特使が乗っており、我が国との会談を開きたいとの申し出がありました」
「また日本国特使から、数日前に突如としてこの世界に転移してきた転移国家であり、元の世界の国々と断絶されたため哨戒騎による偵察を行ったところ、意図せず我が国の 領空侵犯をしてしまい、深く謝罪するとのことでした。」
いきなり国ごと転移などという突拍子もない話をされ、会議に出席していた首脳陣の誰もが信じられないという顔をする。
しかし都市上空に侵入した不明騎の件の謝罪や日本国の特使が乗ってきたという超大型船のこともあり、まずはその外交官を官邸に招致することを決定した。