東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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068. 有事への備え

 

中央暦1640年1月16日

第三文明圏の東 日本国

首都東京 首相官邸

 

 

日本国の執政中枢部である首相官邸では、官邸スタッフが慌ただしく動き回り、閣僚たちが真剣な表情で話しをしていた。パーパルディア皇国の大艦隊が、フィルアデス大陸の東にある工業都市を出撃し、フェン王国のある方向へ向かって進軍中という情報が入ったのだ。

 

「周辺の友好国から得られた情報から推察するに、パーパルディア皇国の大艦隊はフェン王国に向かっているものと思われます。」

 

「さらに先日打ち上げました情報収集衛星が撮影しました画像には、100隻を超える戦列艦に加え、ルミエス王女の祖国『アルタラス王国』を侵攻した際に使用されたと思われる『巨大地竜』が渡海している様子も映っておりました。フェン王国への侵攻軍とみて間違いないものと思われます。」

 

防衛大臣に加え、防衛省特殊戦略作戦室から駆け付けた黒木特佐が状況について説明する。

 

「フェン王国への渡航制限(渡航中止勧告)は出していましたが、医療支援活動のために医療・人道援助団体が首都アマノキに滞在していたはずです。一刻も早く退去命令を出すべきです!」

 

「アマノキに設置しました我が国の大使館であれば、衛星電話が繋がります。そのため、アマノキ周辺で活動しているのであれば、まだ何とかなります。ですが・・・」

 

外務大臣が手で顔を覆いながら、話を続ける。

 

「もし、アマノキ以外の町や村へ派遣された少人数のグループがいるのであれば、残念ながら、彼らに連絡を取ることは出来ないでしょう・・・」

 

外務大臣が話終えたタイミングで、防衛大臣が発言し始める。

 

「では艦隊を止めるべきです。昨年の『アマノキ事変』から、いずれこうなる事は容易に予想できていたでしょう?」

 

「我が国とフェン王国の間には、集団的自衛権を盛り込むだけの法整備はされていない。確かに『対特殊生物に関する相互協力条約』は締結済みですが、それは『特殊生物による被害が出た後』から適用されます。残念ながら現時点では、越権行為となってしまいます・・・」

 

法務大臣が、苦虫を嚙み潰したような顔で反論する。

 

「それにパーパルディア皇国とは、ようやく外交チャンネルが開けそうなタイミングです。まだ正式なルートは、ありません・・・」

 

「昨年末に行われた最初の会談時、パーパルディア皇国は次回の開催を1月下旬まで持ち越すよう要望してきましたよね。まさかと思いますが、その目的はフェン王国侵攻で日本人を捉え、人質として交渉を有利に進めるためだったのではないでしょうか・・・」

 

「下手をすると、昨年の『アマノキ事変』のように、特殊生物を用いてフェン王国にある町や村を手当たり次第に襲撃するつもりなのかもしれませんね・・・」

 

「何の罪もない民間人が特殊生物に虐殺されるのを、ただ見ていることしかできないのか・・・」

 

様々な意見が出されるが、会議は遅々として進まず、空論が続く。会議は踊る、されど進まずな状況であったが、黒木特佐があることを思い出し、発言し始めた。

 

「そういえば、フェン王国には政府開発援助(ODA)の一環で、太陽光発電所の建設をし始めていたのでしたっけ? そちらはどういった進捗状況でしょうか?」

 

「現在は、アマノキへの送電用鉄塔が西にある『ゴトク平野』周辺に数基建設されているだけです。発電所自体はまだ地盤調査などの初期段階で、殆ど進展していませんよ。」

 

「そうですか。太陽光発電所を建設するにあたり、フェン王国には気象観測用の科学機器や大型土木車両などを搬入する許可を頂いているのでしたよね。さらにこの時期、フィルアデス大陸からの湿気を含んだ季節風の影響で、フェン王国ではかなり降水量が多くなるのでしたっけ?」

 

突如、パーパルディア皇国軍の侵攻と全く関係のない話を始めた黒木特佐に対し、大臣や閣僚が訝しげな表情を見せる。

 

「黒木君、君は一体何が言いたいのかね?」

 

「おそらくパーパルディア皇国軍が上陸するとすれば、フェン王国の最も西にあるこの町『ニシノミヤコ』でしょう。奴らの進軍速度が不明なため、もし『ニシノミヤコ』が特殊生物による襲撃を受け、フェン王国から救援要請があってから部隊を派遣するのであれば、アマノキや東の町に対する防衛線の構築が間に合わない恐れがあります。」

 

黒木特佐は、情報収集衛星により撮影されたフェン王国の衛星画像をレーザーポインターで指し示しながら説明を続ける。

 

「法務大臣が仰られたように、襲撃や救援要請を受けていない現時点では、自衛隊の派遣はできません。しかし『科学実験設備』であれば、現時点でもフェン王国へ輸送し、有事に備えてセッティングすることができるのではないでしょうか。」

 

「皇国軍がニシノミヤコから陸上戦力を上陸させ、首都アマノキや東にある町に向けて進軍するのであれば、アマノキ防衛用として、ここゴトク平野で『M8500TCS』が使用できるかと思います。」

 

その発言を聞いた麻生内閣総理大臣がはっとした顔をする。

 

「なるほど、その手があったか! すぐさまアマノキ北部の鉄塔が建設されたエリアに『M8500TCS』を展開する準備を急げ! また岩国や佐世保の自衛隊基地は、有事に備え、メーサー車両などを迅速に輸送できるよう準備を進めておけ!」

 

パーパルディア皇国のフェン王国侵攻に備え、日本国でも対応準備が開始された。唯一、日本国が見誤った点としては、フェン王国で日本人が捕えられた場合の処遇についてであった。

 

この時点で日本国の外交担当は、カイオス局長から皇族レミールへと変更されており、フェン王国侵攻軍司令官のシウス将軍に宛てた外務局からの依頼書、ないし命令書の内容が大幅に書き変わっていたのであった・・・。

 

 

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中央暦1640年1月18日

第三文明圏外東方フェン王国

ニシノミヤコ

 

 

フェン王国水軍の自爆ボートによる攻撃を受けた魔導戦列艦『ロプーレ』は、豪炎を上げながら真っ二つに割けて轟沈していった。栄えある皇国本軍の誇る魔導戦列艦が、文明圏外国の攻撃で沈められた・・・という衝撃的な光景は、艦砲射撃の準備を行っていた他のからも見えており、

 

「魔導戦列艦ロプーレ、轟沈しました! あの漁船もどきは大量の爆薬を搭載した自爆舟のようです!!」

 

「残り五艘の自爆舟が他の戦列艦に向かって突っ込んできます!」

 

「あ、あんな鼻クソ舟、さっさと沈めろ! 魔導砲を撃て!!」

 

「こんな密集した陣形で撃つと、味方の艦に当たってしまいます!」

 

フェン王国侵攻軍の旗艦である120門級超フィシャヌス級戦列艦『パール』の艦上では、前線に布陣した魔導戦列艦から悲鳴のような魔信連絡が届いていた。

 

「じ、自爆兵器だと!? 皇国の覇道に傷を付けるとは、フェン王国ごときが舐めた真似をしてくれたものだな!」

 

『自爆兵器』などという卑劣な戦法を用いて皇国本軍に土を付けたフェン王国に対し、シウス将軍は忌々しいめな表情を見せる。

 

「『エビラ』を出せ! あの死に急ぎ共をヤツの昼飯にしてやれ!!」

 

「竜母から竜騎士隊を発艦させろ! 誇り高き皇国軍をコケにしたことへの報いを蛮族の侍共に教えてやれ!!」

 

文明国に匹敵する国力と軍事力をもっていたアルタラス王国でさえ、皇国本軍に対して被害らしい被害をまったく与えられなかった。それゆえ、魔導戦列艦一隻を沈めたクシラ水軍将の自爆特攻は、文明圏外国としては大金星ともいえる成果であった。

 

しかしこの一撃が、無駄に高いプライドをもつ皇国軍を本気にさせてしまったのであった・・・。

 

 

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「クシラ水軍将に続け! 皇国軍に武士の意地を見せてやれ!!」

 

クシラ水軍将の特攻を受け、見事に轟沈した魔導戦列艦ロプーレの姿を見たフェン王国水軍の士気は大いに上がった。

 

パーパルディア皇国の魔導戦列艦に向かい、五艘の偽装漁船は水飛沫をあげてどんどん距離を詰めていくが、残り500メートルを切った時点で海面に異変が生じた。

 

突如として無数の気泡が発生し、ブクブクと泡立ち始めた瞬間、巨大な赤いハサミが海中から出現し、偽装漁船の前に壁のように立ちはだかったのだ。

 

接近中の接近中の偽装漁船に対し、巨大なハサミが振り下ろされる。木造の大型魔導船すら粉砕する強烈な一撃に、質素な小舟が耐えられるはずもなく、木っ端微塵に破壊される。

 

「い、一体なんだ!? 今のバカでかいハサミは!?」

 

宙を舞い、海面へと叩きつけられた水軍兵たちは木片などに捕まって漂流していたが、海中から巨大なエビの怪物『エビラ』が姿を見せる。

 

「こ、これがアルタラス王国の海軍を圧倒したとかいう皇国の新型魔獣か・・・」

 

水軍兵たちが最期に見たものは、巨大なエビの怪物が自分たちを掴み、その大きな口へと運んでいる光景であった・・・。

 

 





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