東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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072. 灯る希望

 

中央暦1640年1月23日

第三文明圏の東 大東洋 

日本国 外務省

 

 

統合幕僚監部が設置されている防衛省庁舎の大会議室で、対パーパルディア皇国軍の作戦会議が開催されていた頃、元アルタラス王国の王女ルミエスは、霞が関の外務省庁舎へと招待されていた。

 

昨年の12月初頭に日本国で保護されてからの約一か月間、ルミエスはクワ・トイネ公国からの留学生として、上級騎士のリルセイドは大陸共通言語学の非常勤講師として過ごしていた。

 

ちなみに留学先の大学では経済学を専攻しており、祖国が再独立を果たしてからのことを見越し、地球で培われた先進的な経済の仕組みについて学んでいる。

 

日本国で保護されてからの生活は、毎日が驚きの連続であった。超科学文明の技術で築かれた巨大な未来都市、時速500kmを超える超高速で浮上走行する超高速鉄道をはじめとした先進的なインフラ、さらに日本国が元いた『地球』と呼ばれる世界で繰り広げられてきた神話のような戦いの歴史・・・。

 

通っていた大学の図書館に所蔵されていた書籍や部屋に備え付けられたパソコンと呼ばれる情報機器を通して調べていくにつれ、日本国の国力は祖国であるアルタラス王国はおろか、第三文明圏の列強国であるパーパルディア皇国でさえ、足元にも及ばないであろうことが容易に判断できた。

 

『日本国の支援があれば、祖国を救えるかもしれない・・・』

 

そんな思いを心に宿らせて過ごす日々であったが、悪夢のようなパーパルディア皇国の魔の手は、ついに東の果てにあるフェン王国とこの国にまで伸びてきた。

 

自分は皇国から逃れられない運命なのか・・・と絶望したが、数日前に行われた記者会見にて、日本国の総理大臣とかいう宰相は、パーパルディア皇国と正面から対決する姿勢であることを高らかに宣言していた。

 

そんなタイミングで、亡命者である自分たちへの相談事とは、一体何だろうか・・・と疑問に思いながら、案内された来賓室へと入室する。来賓室では柳田という外務官が待っており、予想もしない依頼と提案がなされた。

 

『フェン王国を侵攻中のパーパルディア皇国を撃退後、ルミエス王女には女王としてアルタラス王国の正統政府の樹立を宣言して頂きたい。日本国はこれを承認するとともに、アルタラス王国の解放と独立成功後の支援を約束する。

 

アルタラス王国解放は、パーパルディア皇国に虐げられている属国や植民地にされている地域解放のモデルケースとなり、皇国を解体、または消滅させる第一歩となるでしょう。』

 

日本国は自国民や友好国の人たちを躊躇なく大虐殺するような危険な列強国を、パーパルディア皇国を解体するどころか、相手の出方次第では消滅させてしまう腹積もりらしい。

 

歴史を動かすようなあまりのスケールの大きさに、日本国の軍がそれほどの偉業を成せるだけの力を本当に持っているのか、ルミエスやリルセイドいまだ半信半疑な様子であった。ルミエスに付き従う近衛の一部は、直接自分の目で軍を見ないと信じられないといった感じであったが、その機会はすぐに訪れた。

 

1954年の『第一次ゴジラ事変』から始まり、数多の特殊生物が首都東京へと上陸してきた歴史を顧みて、横須賀基地の近くにある砲台跡地には『対特殊生物迎撃用の超大型メーサー砲台』が設置されている。

 

パーパルディア皇国軍が、フェン王国で日本人やニシノミヤコ住民を大虐殺した事件に加え、外交協議の場において、レミール氏が日本本土への侵攻を仄めかす発言をした件を踏まえ、万が一、パーパルディア皇国軍が侵攻してきた場合に備え、これらの緊急点検と試射が実施されることとなったのだ。

 

ルミエスやリルセイドを含む大勢の見物人が見守るなか、初代ゴジラ(補足:身長50メートル)を超える巨大なパラボラアンテナ状の砲身が動き始め、水平線の先へと照準が合わされる。

 

それと同時に発射準備が完了した旨を知らせるサイレンが鳴り響き、近くに設置されたスピーカーからは、サングラスやバイザーで目を保護し、直接光線を見ないよう注意するアナウンスが流される。

 

その数分後、眩いばかりの極太の光線が発射され、莫大な熱エネルギーが海面上を通過したことで、水平線の先まで水蒸気の絨毯が伸びていた。

 

凄まじい光景を見せつけられたこの日、元アルタラス王国の王女ルミエスは、日本国政府からの提案を受諾。数日後にルミエスを長とする新生アルタラス王国正統政府の樹立を宣言し、日本国内に臨時政府を置くことを決定したのであった。

 

 

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中央暦1640年1月26日

第三文明圏の東 大東洋 

日本国 九州地方南方の上空

 

 

ムー連邦内にある空港を飛び立って5日目の朝、最新鋭旅客機『ラ・カオス』は日本に接近してきていた。その機内には、昨年10月に日本国がムー連邦とファーストコンタクトを取った際、その案内役を務めた技術士官のマイラス少尉、そしてマイラスの同僚である戦術士官のラッサン少尉が搭乗していた。

 

日本国とパーパルディア皇国がフェン王国で激突する可能性が浮上したため、情報収集を目的に観戦武官として派遣されたのだ。ムー連邦の政治部会では、どちらの国に彼らを派遣するかで会議がヒートアップした。

 

しかし駐日大使の外交官や日本国を親善訪問した国会議員の証言、さらにはファーストコンタクト時に撮影された『V-22 オスプレイ』や『しんてん』、『白鯨』の魔写を踏まえた空軍と海軍の関係者から強い要望もあり、日本国へと派遣することを決定したのであった。

 

「どんな戦闘機が来るんだろう?」

 

間もなく日本の防空識別圏と呼ばれる飛行圏内に突入し、護衛としてやってくる日本国の戦闘機のまだ見ぬ姿に、マイラスは子供のようにワクワクしていた。

 

マイラスとは裏腹に、戦術士官のラッサンは、片田舎と思っている第三文明圏、それもそのさらに東の果てへと派遣されたこともあり、冷めた態度で相槌を打つ。

 

「どうせ大した事は無いだろう、所詮は文明圏外のド田舎なんだぜ」

 

ちなみに昨年のファーストコンタクト時、ラッサンは別件で第一文明圏へと出張しており、報告書程度でしか日本国のことを把握していなかったため、このような態度になるのも無理はなかった。

 

「頼むから日本人たちの前でそういう態度はしないでくれよ、せっかく観戦武官として自分たちを向かえ・・・!?」

 

機内にいてもわかるほどの雷鳴のような轟きが二度聞こえ、一瞬のうちに矢じりのようなかたちをした飛行物体が機体の横を通り過ぎて行った。

 

「な、なんて速さだ!? それにプロペラが機体に付いてないぞ!」

 

唖然とする二人をよそに、その機体はすぐさま旋回し、速度を合わせて『ラ・カオス』と並ぶ。

 

「おいラッサン、こっちを見てみろ! 凄いものが飛んでるぞ!!」

 

テーマパークに連れてきた貰った子供のような声で、大興奮した様子のマイラスが指さした方向の上空を見ると、螺旋状の巨大な衝角が艦首に装着され、漆黒色の独特な曲線系のラインで構成された艦体をもつ異形の艦艇が浮上飛行していた。

 

「な、何だありゃ!? 戦艦が空を飛んでいるだと!?」

 

ラッサンは先ほどまでの態度とは打って変わり、自分の理解を超えた航空機や飛行戦艦の存在に驚愕し、まん丸と口を開けて放心状態となっていた。

 

「まさか本当に飛行できるとは・・・。あれは昨年10月に商業都市マイカルへ寄港した日本国の護衛艦『しんてん』だよ。俺がそのときに撮影させて貰った魔写を、お前にも見せてやっただろ。確か『ごうてん型』とかいう種類だったかな。」

 

ムー連邦の旅客機『ラ・カオス』は日本の戦闘機『F-15J改』の先導により、日本国の領土上空に入り、福岡空港へと着陸した。

 

「とんでもない国に来たな・・・」

 

マイラスとラッサンは、巨大で美しい機体が並んだ空港を眺めながら、自分たちの任務の重要性に身震いするのだった。

 

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