中央暦1640年1月27日
第三文明圏外東方
フェン王国 首都アマノキ
フェン王国の首都アマノキでは、救援のために日本国から派遣された自衛隊の戦闘車両や自衛官たちが、再侵攻を開始したパーパルディア皇国軍への迎撃準備を進めていた。
昨年の『アマノキ事変』でターゲットにされたアマノキ港周辺には、江戸時代的な風景に似つかわしくない大型戦闘車両の姿があった。牽引式の巨大な誘導放出型メーサー砲塔を備えた『90式メーサー殺獣光線車』や機動性に優れた装輪式戦車(装甲車)である『16式機動戦闘車』などだ。
首都アマノキの南部には遠浅の砂浜が広がった絶好の揚陸ポイントがあり、海岸線から巨大エビ型特殊生物が上陸してくる場合が想定された。そのため、比較的小型で市街地での機動性に優れ、運用がしやすい点を顧みて、これらの戦闘車両がアマノキ防衛用として抜擢された。
海上には海上自衛隊の第1護衛隊群を主力とした護衛艦15隻に加え、海中にはごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』と『スーパーX2改』、はくげい級原子力潜水艦の1番艦『はくげい』が控えている。
一方、パーパルディア皇国軍陸上部隊の侵攻ルートとして予想されているゴトク平野周辺については、既に陸上自衛隊施設科によって『M8500TCS』が展開されており、これを軸とした編成が組まれている。
具体的には、アマノキ港周辺に配備されている90式メーサー殺獣光線車が外され、代わりに『92式メーサータンク改』や『93式ツインメーサータンク改』、『95式レーザータンク改』などのプラズマ加熱ミラータイプ型の大型陸上メーサー車両が中心となっている。
これには、90式メーサー殺獣光線車の誘導放出型メーサーがもつある欠点が影響していた。誘導放出型メーサーはプラズマ加熱ミラータイプ型メーサーと比較した際、製造コストや生産性で優位である反面、雨天時にエネルギーが水蒸気となって威力が減退するという欠点がある。そのため、人工雷雲により一帯が豪雨となることがほぼ確実な『M8500TCS』とは、相性が良くないのであった。
上記以外では『M8500TCS』の一要素を担う『ソニックビームシステム車』や補助的な役割をもつ『ハイパワーレーザービーム車改』、さらに『90式戦車』、『99式自走155mm榴弾砲』などの通常陸上兵器群が配備されていた。
またアマノキ上空には、96年の『デストロイア事変』において実戦投入された名機『スーパーXⅢ改』や『F-2』、『F-15J改』などの有翼戦闘機に加え、『93式メーサー攻撃機』、『AH-64D』などの戦闘ヘリも控えている。
特殊生物を生物兵器として使役し、何の罪もない大勢の民間人を虐殺することに何の躊躇いもない連中が相手のため、即時に戦闘可能かつ二代目ゴジラ級の強力な特殊生物を相手にしても十分足止め可能なガチの構成となっている。
昨年にロデニウス大陸において発生した『ロウリア事変』やトーパ王国において発生した『魔王事変』のときとは比較にならないほどの対特殊生物向け大部隊が、アマノキに迫るパーパルディア皇国の侵攻軍を待ち受けた。
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同日早朝
第三文明圏外東方 フェン王国
首都アマノキ 南東海域
ニシノミヤコを出撃したパーパルディア皇国の艦隊は、首都アマノキへ向け隊列を組んで進軍していた。シウス将軍率いるパーパルディア皇国のフェン王国侵攻部隊が計画している作戦は、以下の通りである。
ベルトラン陸将が率いる陸戦部隊は、ニシノミヤコから約100キロメートル南東にある首都アマノキに向け、そのまま街道を侵攻。途中にある集落で略奪を行いつつ、そのままゴトク平野を抜け、アマノキの西側から攻勢をかける。
一方、ニシノミヤコの沖合から出撃したシウス将軍の率いる大艦隊は、アマノキの南部海域を進軍中であった。ちなみに侵攻部隊の竜母20隻のうち、ちょうど半数にあたる10隻は、積載していたワイバーンロードやメガニューラを陸戦部隊へと引き渡していたため、それらは護衛の魔導戦列艦20隻とともにニシノミヤコの沖合にそのまま停泊している。
シウス将軍は艦隊を二つに分けており、艦隊副指令アルモスが率いる先遣隊は、魔導戦列艦50隻でアマノキ東側の海上を封鎖しつつ、竜母10隻から発艦させたワイバーンロードでアマノキ上空から導力火炎弾による空襲を開始。また魔導戦列艦130隻から成るシウス将軍の主力艦隊は、アマノキ南側の海上を封鎖しつつ、揚陸ポイントであるアマノキ港周辺からエビラを上陸させる。
仕上げとして陸戦部隊の攻撃に合わせるかたちで、市街地に向けて南側と東側から魔導戦列艦による艦砲射撃を行い、西・南・東からアマノキを包囲攻撃し、一気に攻略するというものであった。
シウス将軍から先遣艦隊の指揮官を任された艦隊副指令のアルモスは、旗艦『ミール』にある執務室の窓から自軍の圧倒的な戦力を眺めていた。周辺国とは隔絶した力の象徴を見ながら、満足そうな声で竜騎士長に話かける。
「竜騎士長! 皇軍は第三文明圏最強である!!」
「はは、存じております!」
「では、なぜつよ・・・」
アルモスが皇国軍の強さと素晴らしさを説き始めた瞬間、竜母艦隊の前方に展開している魔導戦列艦から、ウゥゥゥゥ――とけたたましい警戒音が響いてきた。
得意の演説を中断されたアルモスは執務室を飛び出し、艦橋から前方を注視する。望遠鏡越しに見えたものは、後部から炎を上げた巨大な光の矢たちが、前方に展開している魔導戦列艦の間を縫うかのように超高速で飛翔し、自らの搭乗艦を含めた竜母艦隊に向かって来ている光景であった・・・。
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南東海域を進軍中のパーパルディア皇国の先遣艦隊、その後方に布陣した竜母10隻に狙いを定めた存在があった。マッハ0.9の遷音速で巡行飛行中の『F-2』戦闘機と『スーパーXⅢ改』であった。
その後方上空を飛行する『E-767』早期警戒管制機(AWACS)からは、竜母艦隊上空に護衛と思われるワイバーンロード約20騎(竜母一隻分)の存在が報告されており、そちらはスーパーXⅢ改がそのまま対応予定であった。
竜母艦隊との距離が約100キロメートルに迫ったとき、93式空対艦誘導弾(ASM-2)が一斉に発射された。
アルモスの目に見えたものの正体は、時速1150キロメートルで接近する対艦ミサイルの雨であった。竜母を護衛していたワイバーンロードたちが導力火炎弾による迎撃態勢を取るが、時すでに遅し。
接近してきた多数の光の矢は、それぞれの竜母前方で大きく上昇し、吸い込まれるように斜め上方から飛行甲板へと突入し始めた。
直後、旗艦『ミール』を含む竜母から猛烈な閃光と轟音が放たれ、同時に巨大な爆炎に包まれる。砲弾やワイバーンの放つ導力火炎弾に対する耐火性を強化するため、竜母は船体全体を『対魔弾鉄鋼式装甲』と呼ばれる魔法金属の外装材で保護されている。
しかし、巡洋艦をたったの一発で大破させるほどの威力をもった対艦ミサイルが相手では、その自慢の装甲もまったく意味を成さず、装甲を突き破り船体内部で弾頭が炸裂。船内で発艦のときを待っていた竜騎士やワイバーンロード、メガニューラともどもすべてを焼き尽くし、木っ端微塵となって海上から消滅させた。
対艦ミサイルの波状攻撃を受け、竜母やその周辺の魔導戦列艦が次々に撃沈され、短時間の間に全滅した様子は、その上空で警戒飛行していた竜騎士隊にも見えていた。竜騎士隊の小隊長チリーノは眼下の惨状を見て、光の矢が飛んできた方角を警戒するよう部下たちに通達する。
その直後、最も目の良い部下が悲鳴のような叫び声を上げる。
「隊長! 二時の方角から小さな光の矢と緑色をした巨大な敵飛竜が接近中です!!」
チリーノも目視しようと目を細めた瞬間、いくつもの小さな光の矢が自騎を通り過ぎ、すぐ後方を飛行していた彼の部下たちを直撃した。それは、先ほど竜母や魔導戦列艦を消滅させた光の矢よりもずっと小さく、直撃後の巨大な爆発も発生しなかったが、代わりに極寒の凍土を彷彿とさせる強烈な冷気が背後から伝わって来た。
チリーノが後方を確認すると、騎乗したワイバーンロードごと巨大な氷塊と化した部下の竜騎士が、海に向けて自由落下しているという現実離れした光景が目に映った。
冷凍弾の直撃を受け、氷塊になったまま海面に叩きつけられたワイバーンロードは、金槌で叩き壊されたガラス細工のように粉々に砕け、周囲の海面には竜母や魔導戦列艦の残骸とともに砕けた氷片が漂流する。
チリーノは何が起こったのか状況把握が追いついていなかったが、部下が最期に言い残した『緑色をした巨大な敵飛竜』が何らかの攻撃を仕掛けてきたことだけは理解出来ていた。
「敵飛竜がこっちに来るぞ! 全騎散開して迎撃せよ!!」
残された数騎の竜騎士たちが散開を始めるも、敵飛竜は目にも止まらない超高速で接近してくる。すれ違いさまに頭部がぱっくり開き、その中から白く輝く4枚の花弁のようなものが姿を現すのが見えた。
敵飛竜が竜騎士たちを追い抜き、常識では考えられないほどの速度で反転し、竜騎士たちの背後をとった次の瞬間、花弁の先から青白く輝く光線を発射する。チリーノを含めた竜騎士たちは回避行動を取る間もなく、スーパーXⅢ改の放った超低温レーザーが直撃した。
小隊長チリーノの目に最期に映った光景は、編隊を組んでいた小隊に極寒の光線が直撃し、愛騎のワイバーンロードもろとも一瞬にして全身が凍結していき、氷に覆われて末端から四肢の感覚が消失していく自身の身体であった。
この日、首都アマノキの東側の海上へと進行中であった艦隊副指令のアルモス率いる先遣艦隊を『F-2』戦闘機と『スーパーXⅢ改』が攻撃。周囲を警戒していたワイバーンロード部隊を含め、すべての竜母と付近の魔導戦列艦を撃破した。
また残された魔導戦列艦隊も、本隊の迎撃に向かう海上自衛隊第1護衛隊群を主力とした護衛艦の砲撃や上空からのスーパーXⅢ改の攻撃により、すべて撃沈されたのであった。
※ スーパーXⅢ改
出典 : ゴジラvsデストロイア(1995年)
96年のデストロイア事変において実戦投入され、バーニングゴジラを氷漬けにして一時的に活動停止に追い込む、完全体デストロイアにトドメを刺すなど伝説的な活躍をした多目的大型戦闘機。
メカゴジラやMOGERAのメイン装甲であった超耐熱合金NT1の改良型である超耐熱合金NT-1Sが採用されており、またメカゴジラ同様に人工ダイヤモンドミラーコーティングを施されていることから、バーニングゴジラの放射熱線にも耐えられるほどの非常に高い防御力を誇る。
また動力炉にはレーザー核融合炉が採用されていることから、航空機とは思えないほどの高出力な武装を搭載しており、戦闘機並みの機動性を活かした一撃離脱戦法を得意としている。
原発事故や核攻撃を想定して建造された経緯から、殆どの装備が冷凍兵器に特化していたが、95式レーザータンク同様、通常メーサー仕様にも換装可能なように改修されている。上述の対特殊生物兵器としては勿論、2011年に発生した大震災では、大津波による電源喪失からメルトダウンの危機に瀕した原子力発電所の事故にもいち早く出撃し、超低温レーザーで原子炉を凍結するなど獅子奮迅の働きをした。
武装:
1000万ボルト高出力メーサー砲(通常メーサー/超低温レーザー)1基
収納式上部ミサイルポッド
4連装ミサイルランチャー