東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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かなり更新が遅くなってしまし、すみません。


075. ワンサイドゲーム

 

中央暦1640年1月27日

第三文明圏外東方 フェン王国

首都アマノキ 南東海域

 

 

「こちら総旗艦『パール』、先遣艦隊、応答して下さい・・・。ダメです、旗艦『ミール』はおろか、先遣艦隊所属の竜母や魔導戦列艦とも連絡が取れません・・・。」

 

陸戦部隊の侵攻に合わせ、同じタイミングで首都アマノキへ総攻撃をかけるという作戦に則り、シウス将軍の率いる主力艦隊と艦隊副指令アルモスが率いる先遣隊は、魔法通信で密に連絡を取り合っていた。

 

しかし定時連絡の時間になっても、首都アマノキの東側海域へと向かった先遣艦隊と連絡がまったく取れなくなり、音信不通な状態が続いていた。

 

補足であるが、ベルトラン陸将が率いる陸戦部隊はニシノミヤコを出撃後、山岳や河川を迂回するルートで首都アマノキへ向けて進撃していた。こちらは海上を進む主力艦隊や先遣艦隊とは異なり、魔信での定時連絡は取れていなかった。

 

フェン王国の忍び衆によって、大小の河川に架かる橋がすべて破壊されており、当初の侵攻作戦では想定していなかった魔信不感地帯にある街道を進まざるをえなかったためである。

 

「奇妙ですな、陸戦部隊が直前に連絡してきた進路とは異なり、このあたりの海域は魔信不感地帯ではありません。ましてや我が皇国軍の魔法通信を妨害出来るほどの魔導技術が、フェン王国軍にあるとは思えませぬし・・・」

 

フェン王国侵攻軍総旗艦である120門級超フィシャヌス級戦列艦『パール』にある作戦指令室では、シウス将軍をはじめとする今回の侵攻作戦を練る指揮官たちが怪訝そうな顔をしていた。

 

「先遣艦隊から最後の定時連絡のあった海域へは、念のため数隻の砲艦を偵察に向かわせています。フェンの季節的に雨季にあたるため、突発的な魔力嵐があったのかもしれません。我々は当初の作戦通り、アマノキの南部にある砂浜からエビラを上陸させるとしましょう。そろそろ、偵察のワイバーン隊から海岸付近の状況について、連絡がある頃です。」

 

 

※ 魔力嵐

 

磁気嵐の魔法版のようなもの。正確には、魔法通信を妨害する鉱石やそれを多量に含んだ土砂などが、台風や大雨などの影響により、一気に大河の下流や海域へ流出した際に発生する。磁気嵐のような恒星(太陽)の活動に起因した天文学的な現象ではないが、通信障害などの現象が発生することから、このように呼称されている。

 

 

通信兵が、息も絶え絶えに作戦指令室へ駈け込んで来る。

 

「ほ、ほ、報告します! 先遣艦隊の確認に向かった砲艦4隻との連絡が途絶しました。同時に4隻の魔力反応も消滅しています!!」

 

「そんなバカなことがあるか! 4隻だぞ! 我が皇国の誇る魔導戦列艦4隻が、本隊に通信する暇もなく沈んだというのか!? そのような非現実的なことなど、あろう筈がない!!」

 

通信兵の報告を聞いた一人の指揮官が、顔を真っ赤にして大声で怒鳴る。さらにまた一人の通信兵が、大粒の汗を垂らしながら走ってくる。

 

「アマノキ南部にある砂浜の偵察に向かったワイバーンロード小隊が消息を絶ちました。こちらも魔力反応が一騎も残らずに消滅しており、撃墜されたものと思われます・・・。魔力反応が消失する直前、小隊からの魔信で『鉄の蠍』、『鉄の象』という言葉が聞き取れましたが、詳細は不明です・・・。」

 

作戦指令室にいる指揮官たちに、動揺が広がる。敵は文明圏外国家のフェン王国と日本国であった筈。一体、自分たちは何を相手に戦っているのだろうか・・・。

 

「この戦いはルディアス陛下の関心も高く、決して撤退するようなことは許されない! 敵が向かってくるのあれば、全力全開で相手をし、蹴散らすのみだ!!」

 

「魔信で敵影と思われるものが確認できたアマノキ南部にある砂浜へは、予定通りエビラの上陸前に艦砲射撃を行う。魔導砲の射程に入り次第、最前列に位置する魔導戦列艦は各個砲撃を開始せよ!」

 

「砲艦が連絡途絶になった海域側については、海中にエビラを待機させておけ。万が一、日本国の海軍が出てきた場合には、エビラを使って海の底へ送ってやろうぞ!」

 

周囲を奮い立たせるように鼓舞するシウス将軍であったが、本国からの補給物資とともに第三外務局のカイオス局長から送られてきた『あるレポート』の存在が頭をよぎっていた。

 

それは皇国監察軍の東洋艦隊司令官であったポクトアール提督が、昨年9月に撤退に追い込まれた『アマノキ事変』について尋問された際に作成された記録書、通称『ポクトアール調書』であった。

 

第三外務局から公式な依頼文書というかたちで出してしまったがゆえに、レミールによって監査室権限で閲覧され、その結果、眼前で破り捨てられてしまった親書とは異なり、こちらはカイオス局長が個人的に出していた郵便物であった。

 

そのため外務局監査室による検閲の目を逃れ、補給物資とともに無事シウス将軍の手元まで届いていたのであった。

 

休憩の合間に目を通してみると、そこにはあまりに現実離れした内容が記載されており、一笑に付していた。しかし、自分たちが今から戦おうとしている相手が、もしその艦隊であったとしたら・・・。しかも同封された手紙には、1月に実施された日本国とのファーストコンタクトにおいて、ポクトアール提督の東洋艦隊をやったのは自分たちだと認めるような発言をした旨まで記載されていた。

 

シウス将軍は人知れず、数十年ぶりの死の恐怖に震えるのであった。

 

 

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同日

第三文明圏外東方 フェン王国

首都アマノキ南部の海岸

 

 

魔導戦列艦『ミシュラ』は、現在海岸まで約20キロメートルの地点を航行中であった。魔導砲の射程である2キロメートルを切ったタイミングで開始される艦砲射撃に向け、船内では海兵や水夫たちが戦闘準備を進めていた。

 

「そろそろ南部の海岸線が見えてくる頃だ。先程総旗艦『パール』から、海岸付近の偵察に向かったワイバーンロード隊が消息を絶ったと連絡があった。また自爆ボートなどで不意打ちを仕掛けてくるやもしれぬから、しっかり周囲を見張れ!!」

 

艦長のモーブが大声を張り上げる。マストの上に設置された見張り台では、海兵が望遠鏡を覗き込んで周囲を警戒していたが、少しずつ見えてきた海岸線の方を確認した瞬間、手回し式の魔導サイレンを鳴らして非常事態を知らせる。

 

「上陸予定の海岸線に正体不明なものを確認! ムー連邦で実用化されている自走する魔導砲のようなものと、巨大な円板を尻尾に付けた蠍のような見た目のものです!!」

 

「あれも魔導砲か? 奇怪な見た目をしているが、所詮は陸戦用・・・。皇国の誇る艦載用魔導砲の射程が上に違いない! アウトレンジから捻り潰してくれよう!!」

 

魔導戦列艦『ミシュラ』をはじめとした約50隻の魔導戦列艦と海岸までの距離は、約10キロメートルを切ろうとしていた。皇国軍で広く運用されている艦載用魔導砲の有効射程の5倍前後も離れており、この場にいるパーパルディア皇国人は、誰一人としてこの距離から攻撃されることを想定していなかった。

 

最前列を航行中であった魔導戦列艦『ミシュラ』に対し、海岸に配備されていた『90式メーサー殺獣光線車』の巨大な誘導放出型メーサー砲塔から、オレンジ色に輝くメーサー光線が照射された。

 

戦列艦は、船体側面に多数の大砲(舷側砲)が搭載されているがゆえ、船体強度が弱くなるという欠点がある。このように防御面に課題があったため、製鋼技術の発達に伴って装甲艦が主流になるにつれて、地球では次第に姿を消していった。

 

『対魔弾鉄鋼式装甲』と呼ばれる魔法金属の外装材で保護するなどの改修はされているが、パーパルディア皇国の誇る魔導戦列艦もその例に漏れず、所詮は木造船である。そのうえ常に海水に晒されているため、船体を構成する木材は湿気を多く含んだ状態である。

 

そんな魔導戦列艦に対し、物質内部の水分子に対して熱エネルギーを効果的に集中させるメーサー砲が照射されるとどうなるか・・・。

 

『対魔弾鉄鋼式装甲』が施された船体へと直撃したメーサー光線は、表面はおろか木材内部に含まれた水分までを瞬時に蒸発させ、あっという間に焼き尽くしていく。炭化するほどの高温まで急速加熱されたことで、照射された周辺は木材の発火点を超え、次々に発火し始める。

 

すぐ内側の船内で発射準備が進められていた魔導砲の砲弾や魔石の弾薬へと引火し、魔導戦列艦『ミシュラ』は火柱を上げながら大爆発を起こし、木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

「魔導戦列艦『ミシュラ』轟沈!! 海岸にいる鉄の蠍が、尻尾の先から怪光線を発射して攻撃してきました!! 海岸までの距離は約10キロメートル!!! 完全にこちらの射程外から攻撃してきています!!!」

 

「魔導戦列艦『レシーン』轟沈! 『クション』轟沈ッ!! 『パーズ』轟沈ッ」

 

『90式メーサー殺獣光線車』8両で構成された2個メーサー小隊によるメーサー砲の連続照射に加え、『16式機動戦闘車』の1個小隊からの砲撃も追加される。艦砲射撃のために海岸へと接近していた魔導戦列艦は、次々に爆発・炎上し、海の底へと沈んでいく。

 

沈む魔導戦列艦の数があまりに多すぎて、轟沈報告がまったく追いつかない。

 

「な、なんだと!? こちらの魔導砲の5倍もの距離から攻撃できるというのか!?」

 

「相手は文明圏外国家の蛮族だぞ! こんなことが現実にあってたまるか!!!」

 

海岸に配備されていた『90式メーサー殺獣光線車』と『16式機動戦闘車』の計3個小隊と戦闘となった魔導戦列艦約50隻は、アウトレンジからの攻撃を受け、たった一発の魔導砲を発射することもなく、完全なワンサイドゲーム状態で全滅したのであった。

 

同時刻、総旗艦『パール』が航行中の海中においても、激闘が開始されようとしていた。

 

 

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