東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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076. 海面に刺さる光の矢

 

中央暦1640年1月27日

第三文明圏外東方 フェン王国

首都アマノキ 南東海域

 

 

「こちら魔導戦列艦『パーズ』、海岸にいる『鉄の蠍』から怪光線を受け、艦の各所から火災発生!! 我が艦だけではない、周囲の砲艦も・・・」

 

言い終わる前に魔導スピーカーからは巨大な爆発音が聞こえ、魔信が途切れる。

 

総旗艦である120門級超フィシャヌス級戦列艦『パール』には、『90式メーサー殺獣光線車』と『16式機動戦闘車』の計3個小隊から攻撃を受け、風前の灯火となっている魔導戦列艦隊から悲鳴のような魔信がひっきりなしに届いていた。

 

「艦砲射撃に向かった魔導戦列艦隊、海岸にて確認された『鉄の蠍』と『鉄の象』からアウトレンジ攻撃を受け、被害甚大! このままでは全滅します!!」

 

「『鉄の蠍』と『鉄の象』の体表に、白地に赤い丸が描かれた国旗と国籍マークを確認したとの連絡あり。このマークは・・・、日本国です! 海岸から魔導戦列艦隊を攻撃しているのは、日本国と判明!!」

 

「我が皇国の艦載用魔導砲よりも射程のある陸戦用魔導砲に加え、かの神聖ミリシアル帝国の魔光砲まで実用化しているだと・・・。文明圏外国の蛮族どもが、まさか、そんな・・・」

 

作戦指令室に重々しい空気が満ちる。昨年11月、文明国に匹敵する国力と軍事力をもっていたアルタラス王国を侵略したときも、海軍は一隻どころか一発の被弾もなく、あっさりとアルタラス王国海軍を撃破していた。

 

そのため、今回のフェン王国への侵攻はそれよりも容易で、これだけでの戦力があれば首都アマノキを難なく占領出来る筈であった。実際、ニシノミヤコは自爆漁船を除けば、ほぼ被害ゼロであっさりと落ちた。

 

それが現在はどうだ・・・。竜母10隻を含む遣艦艦隊60隻は一隻残らず消息を絶ち、南方海岸へ艦砲射撃に向かった魔導戦列艦隊50隻も全滅寸前である。

 

この状況でさらに悪い報告が飛び込んできた。

 

「南東方向の海域に、航行中の未確認艦15隻を発見したとの連絡あり!」

 

「掲揚されている国旗は、白地に赤い丸・・・。日本国の海軍です!!」

 

「ついに来おったか! 総員、第一種戦闘配備!! 奴らの艦に向かってエビラを出撃させろ!!! その間に各艦は砲撃陣形を取れ!!!」

 

フェン王国侵攻軍総司令官のシウス将軍が、各艦へ矢継ぎ早に司令を出す。皇軍の魔導戦列艦が陣形を整える様子を眺めつつ、シウス将軍は『パール』艦長のダルダに話しかける。

 

「ダルダ君、君は奴らに勝てると思うか? おそらく奴らの艦にも、『鉄の蠍』と『鉄の象』が使用しているのと同等以上の魔導砲や魔光砲が搭載されているとみて間違いないだろう・・・」

 

周囲に聞こえないような小声で話しかけたシウス将軍に対し、ダルダ艦長は胸を張って返答する。

 

「無論です! 皇国最新の戦列艦150隻に対し、相手はたったの15隻。海戦の強さを決するのは砲の数です。いかに相手の性能が高かろうと10倍もの戦力差は覆りようがありません!!」

 

「ましてや今回は海中にエビラもいます。アルタラス王国の時と同じく、水中から攻撃されては、どれだけ強力な魔導砲を搭載していようと一溜まりもありません。蛮族どもを海の底へ引きずり込んでやりましょう!!」

 

ダルダ艦長は絶対の自信を見せる。次の瞬間、旗艦パールから海中へ衝撃波のようなものが伝搬し、アルタラス王国海軍を蹂躙した海中の悪魔が、巨大なハサミを構えながらゆっくりと深く暗い海中を進み始めた。

 

その直後、最前列を航行していた戦列艦から緊急の連絡が入る。まだ豆粒のような大きさにしか見えていない敵艦隊が煙に包まれ、何かが光の尾を引きながら飛び出し始める様子が見えたという内容であった。

 

「魔導砲の発射煙か? まさかこんな距離で一体なんのつもりだ?」

 

敵艦隊から飛び出した無数の光の矢は、海面を少し飛翔した後、突き刺さるかのうように次々と海中へと飛び込んでいった・・・。

 

 

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同日

フェン王国派遣艦隊

旗艦 護衛艦『いずも』

 

 

「海岸に配置しました守備隊3個小隊は、接近する敵戦列艦群を攻撃中。後数分で、全艦を沈黙化させられるとのことです。」

 

海上を進む海上自衛隊の第1護衛隊群を主力とした護衛艦15隻、そのすぐ近くの海中には三隻の異形な艦が静かに潜んでいた。いずれの艦も、通常の潜水艦のような葉巻型や鯨体型ではない特異な形状をしている。

 

「水中ソナーに1時の方向から接近する物体を検知。!」

 

CICの沈黙を破るように、海中をゆっくり航行中の『特殊な護衛艦』の一隻から連絡が入る。

 

「ソノブイでの探知完了、対象の大きさは約50メートル。遊泳速度や大きさを推定するとこれは・・・、例の巨大エビ型特殊生物です!」

 

ついに巨大エビ型特殊生物が出現したという報告に、自衛官たちに緊張が走る。

 

「やはり出てきたな! 対潜・対特殊生物戦闘用意、各水上艦は対潜ミサイルを発射始め!!」

 

水上艦のMk.41 VLS(垂直発射装置)からは、新アスロックこと07式垂直発射魚雷投射ロケットなどの対潜ミサイルが連続して発射された。発射された対潜ミサイルは初期旋回後に推力制御装置を分離し、巨大エビ型特殊生物が潜む海域に向かって超高速で飛行を開始する。

 

やがて前部弾体が切り離され、搭載された97式魚雷や12式魚雷が着水し、海中に潜む巨大なターゲット・・・、エビラに向かって航行し始める。

 

「目標命中まで、5・4・3・2・・・今!」

 

深い海の底で巨大な爆発が次々と発生し、海中がかき乱された。

 

 

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一体の巨大なエビが、深い海底をゆっくり進んでいる。右腕には戦列艦を握り潰す怪力を誇る巨大な鋏が、左腕には鋭利な槍状の鋏というアンシンメトリーな体躯、そしてロブスターのような頭部をもった皇国の新型魔獣『エビラ』だ。

 

その頭部には怪しく光るトゲのようなものが複数刺さっており、自身の意思とは関係なく身体を操作されていた。遠目から見れば、普通のエビのように甲殻の一部にも見えなくないが、すぐ近くで見ればあからさまに人工物であることがわかるものであった。

 

前方海域へ向かい、そこを航行している船舶をすべて沈めるようトゲを通して命令させ、ゆっくりと海中を移動し始めた矢先、ピコーン、ピコーンと目の前から甲高い不快な音を発信する何かが接近してきていることに気付いた。右手の大きなハサミを振り上げて威嚇するが、それらはスピードを落とすことなくどんどんと近付いて来る。

 

野生の勘で強い死の気配を感じ取ったエビラは、海底の岩礁帯にその巨大な身体をうずめる。その直後、高速で接近してきたそれらが一斉に炸裂した。

 

大気に比べて水は極めて密度が高いため、水中で爆発を起こしたときに発生する衝撃波は空気中よりも凄まじいものとなる。さらに爆発の数十ミリ秒後には、爆轟ガス球の膨張と縮小に伴って高速バブルジェットが生じるため、その威力をさらに倍増させる効果まである。同じ火薬量の爆弾でも、魚雷として水中で爆発させてた方が遥かに強力な破壊力を発揮するのはこのためである。

 

幸い、カマキラスとは比べ物にならないほどの硬い甲殻で全身が覆われていたこと、岩礁で衝撃を和らげることが出来たため、左腕にダメージは負ったものの、エビラはいまだ健在であった。

 

「目標に命中・・・、ですが、目標はいまだ健在!」

 

「あれだけの対潜ミサイルの攻撃に耐えられるとは、防御力はなかなかのようだな・・・。だが遊泳速度はマンダやゴジラはおろか、幼虫のモスラと比較しても随分と遅いな。」

 

「伊勢エビのように海底歩行がメインで、遊泳能力はそこまで高くないのかもしれませんな。対潜ミサイルによる攻撃は、海底の岩礁に潜まれて効果が低減してしまうため、ここは『しんてん』と『スーパーX2改』に任せましょう。」

 

「水上艦は敵戦列艦隊への攻撃へシフトする、メーサーヘリ隊は発艦準備を急げ! 『しんてん』と『スーパーX2改』は攻撃を開始せよ! あの怪物エビをフライにしてやれ!」

 

「メーサー攻撃ですと、正確にはフライというよりはボイルになりますよ。まあドリルスパイラル・メーサー砲は水中で使用できないため、冷凍メーサーによるフリーズの方ですかね。」

 

フェン王国派遣艦隊の旗艦『いずも』から、海中に潜むごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』と『スーパーX2改』に攻撃司令が下された。

 

海中での決戦が開始された。

 

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