中央暦1639年1月27日 正午
クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ
首相官邸 応接室前
首相官邸では、首相のカナタや外務卿リンスイが応接室を前に緊張していた。
目の前の応接室では、一足先に日本国の外交官が案内されていた。
通常であれば、外務局の職員が先んじて交渉や会談の打ち合わせを行い、外務卿が国交締結を取り仕切る。
そして最終的に首相と相手国の元首が条約宣言を行うのが通例となっており、いきなり首相や外務卿が直接先方の外交官と面会するのは異例ともいえる。
しかし隣国のロウリア王国と緊張状態が続いており、現在も手一杯な状況である公国にとって、力のある国と少しでも友好的な関係を築いておきたいというのも事実であった。
======================================================
同日
クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ
首相官邸 応接室
日本国政府から特命を受けた外交官の田中と橋本は真剣な面持ちで外交担当を待っていた。
橋本は護衛艦いずもが臨検され、転移後に異世界人と初めて会ったときのことを思い返していた。
『まさか日本語がそのまま通じるとは予想外だったな。少なくとも意思疎通は問題ないようで本当に良かった。それにしても俺らのような人間種に加え、エルフや獣人までいるとは・・・本当に異世界だな』
部屋のドアが開かれ、カナタやリンスイたちが入室してきた。
田中と橋本は席を立って一礼する。
「はじめまして。私は日本国外務省の田中と申します。本日は急な訪問にも関わらず、このような会談の場を設けて頂き、ありがとうございます。」
「クワ・トイネ公国首相のカナタと申します。」
「クワ・トイネ公国外務卿のリンスイと申します。本日は司会進行を務めさせて頂きます。よろしくお願い致します。」
地球から転移した日本国と異世界との初めての会談が開始された。
=====================================================
中央歴1639年2月18日
日本国 首都東京 迎賓館
日本国とクワ・トイネ公国、異世界に転移しての初めての会談は、大成功に終わった。
お互いの文字や文書を理解出来ないというトラブルはあったものの、言葉が通じることもあり、円滑にやり取りを進めることが出来たのだ。
国ごと転移というお伽話のような説明をされたこともあり、日本国への使節団を派遣することなどが取り決められた。
その後、日本国に来訪した使節団は九州から首都東京まで案内され、迎賓館にて実務者協議が開催されていた。
最終的に、下記の内容を盛り込んだ条約の締結向けて前向きに準備を進めることが検討され、会議は良好に終了した。
・ 国交樹立に向けた話し合いの継続
・ 日本国に向けた食料の輸出(桑)
・ マイハーク港をはじめとするインフラの整備(日)
・ 為替レートの整備 etc
1週間後の2月25日、上記の内容が盛り込まれた条約が締結され、日本国とクワ・トイネ公国との間で正式に国交が樹立された。
さらにその数日後、クワ・トイネ公国からの紹介もあり、クイラ王国とも同様の条約を締結することが出来た。
こうして国ごとの転移後、初めて異世界の国家と友好関係を築くことが出来、食料と資源の危機から脱することが出来た。
しかしロデニウス大陸にあるもう1つの国家、ロウリア王国の魔の手が忍び寄ろうとしていた・・・