東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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077. 海中の激闘

 

中央暦1640年1月27日

第三文明圏外東方 フェン王国

首都アマノキ 南東海域の海中

 

 

パーパルディア皇国の新型魔獣『エビラ』は、海底の岩礁帯の地中にじっと身を潜めていた。猛烈な死の気配を感じとった後、水中で大きな爆発が連続して発生し、海底から巻き上がった土砂が周囲を包んでいた。

 

あまりに急な攻撃で海底への退避が間に合わず、エビラの全身は岩礁帯の地中へ潜り切れていなかった。多数の魚雷が至近距離で炸裂し、それらが発生させた強烈な衝撃波をもろに浴びた左腕のハサミは、既にヒビ割れてボロボロの状態であった。某狩猟ゲーム的な表現をすると、『部位破壊されかけている』に近いといえるだろう。

 

もしあのまま進んで爆発に巻き込まれていたら、全身を自慢の甲殻で覆われた自分ですら、無事では済まなかっただろう・・・。頭部に刺さったトゲには、『前方の船舶を早く沈めろと』・・・という命令信号がひっきりなしに届いており、しぶしぶその巨大な体躯を動かして岩礁帯の地中から這い出る。

 

すると、とてつもない爆発を引き起こした魚群が接近してきた方向から、自分と同サイズ、またはそれ以上の巨大な何かが近付いて来る気配を感じ、右腕の巨大なハサミを構え、攻撃体勢をとるのであった・・・。

 

 

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三隻の巨大な人工物が、暗い海中をゆっくりと進んでいる。潜水艦とは思えない形状をしたそれらは、パーパルディア皇国軍の使役する特殊生物・・・、特に前方の岩礁帯に潜んでいるエビラを撃破するために日本国から派遣された特殊生物との戦闘に特化した護衛艦であった。

 

ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』と『スーパーX2改』である。唯一、潜水艦に近い形状をしたはくげい級原子力潜水艦の1番艦『はくげい』は、ニシノミヤコ奪還のための装備を積載した超大型潜水母艦形態であるため、それら二隻の後方で待機していた。

 

「敵巨大エビ型特殊生物、岩礁帯の地中を這い出てそのままこちらへ向かって来ています。」

 

ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』の戦闘指揮所では、水中ソナー(正確にはアクティブ・ソナー)で接近するエビラを検知し、他の護衛艦へ情報が共有される。

 

「しんてん艦首砲の冷凍メーサーを直撃できれば、すぐにでも決着させられるが、海底へ潜られるのは厄介だな。マンダのような高い遊泳能力はないものの、巨大なハサミをもった大型甲殻類型の特殊生物ゆえにといったところか・・・。」

 

「このあたりの水深はそこまで深くないうえ、岩礁帯も多いようです。しんてんのような大型艦で戦闘するには、いささか不向きなフィールドですね。」

 

※ 大きさ比較

ごうてん級護衛艦 : 全長150メートル

スーパーX2改 : 全長34メートル

スーパーXⅢ改 : 全長38.5メートル

エビラ : 全長50メートル

 

「まずはあの化け物エビを海底から叩き出す! 『スーパーX2改』は魚雷仕様『D-03』による攻撃を行い、やつを岩礁帯から誘い出せ! ただし決して接近されないように細心の注意を払え。もしもあのデカいハサミに捕まれば、いくら超耐熱耐圧合金NT-2Dの装甲だとしても流石にジ・エンドだぞ!!」

 

「『しんてん』は無音航行開始。いつでも艦首砲を照射できるように準備を完了させておけ! あの化け物エビが『スーパーX2改』に誘い出されたところを狙い、確実に仕留めるぞ!!」

 

エビラの約三倍の大きさをほこる異形の護衛艦『しんてん』は、艦首に装備された超大型ドリル衝角の先を岩礁帯に向けた状態のまま、無音航行を開始する。傍からみると、スーパーX2改という擬餌状体を使用し、エビラという獲物をおびき寄せようとしているチョウチンアンコウのような構図である。

 

スーパーX2改の艦首底部に設けられた魚雷発射管から、2発の89式魚雷が発射される。今回発射された89式魚雷は、通常の長魚雷ではない。その先端には通常弾頭の代わりに、昨年の『魔王事変』において巨大ゴーレムの撃破に貢献した『推進式削岩弾D-03』が搭載されていた。

 

発射されたD-03搭載型89式魚雷は、50kt(ノット)以上の高速でエビラへと接近する。接近する魚雷を察知したエビラは、案の定、右腕の巨大なハサミを器用に使って海底の土砂を掘り、地中へと逃れようとする。先程のような対潜ミサイルや通常の魚雷による攻撃であれば、周囲の岩礁と自身の硬い背中側の甲殻で防御出来ただろうが、そうは問屋が卸さない。

 

89式魚雷はエビラの潜む岩礁へと命中し、弾頭から分離した推進式削岩弾D-03の本体が岩礁帯を掘削し始めた。深く暗い海底で、グォーンという金属製ドリルの機械音が響く。

 

その数秒後、岩礁帯で海底火山が噴火したかのような大爆発が連続して発生した。対潜ミサイルによる攻撃とは異なり、衝撃波を防ぐ盾として機能していた岩礁を貫通した至近距離での炸裂である。D-03の起爆により発生した衝撃波に加え、爆発の衝撃で細かく砕けた岩礁が、まるで散弾銃のようにエビラへ襲い掛かって来たのだ。

 

この強烈な一撃で、すでに満身創痍であった左腕は完全にもぎ取られ、さらに左の触覚や眼球までも潰され、エビラは痛々しい姿になる。一方、残された右の眼球は、怒りと憎悪に染まったかのように真っ赤に血走っていた・・・。

 

「D-03弾頭、巨大エビ型特殊生物に命中。砕けて巻き上がった岩の影響でノイズが酷く、現在、状況を確認中。」

 

岩礁帯から離れた箇所では、スーパーX2改がD-03弾頭による攻撃の効果確認と状況把握を行っていた。事前に確認されたエビラの遊泳速度では、そう簡単に接近されない距離を保っていたのだが、突如、砂煙の中から巨大なハサミが襲い掛かってきた。

 

「巨大エビ型特殊生物が急接近しています! 緊急回避、スーパーキャビテーション航行開始!!」

 

スーパーX2改の艦首から無数の気泡が放出され、船体が包み込まれる。それと同時に通常の潜水艦では有り得ない超高速へと加速され、その場から一気に離脱する。

 

白鯨級原子力潜水艦の1番艦『白鯨』で試験導入された『スーパーキャビテーション航行』・・・。これは液体中で発生するキャビテーション現象を意図的かつ大量に発生させ、物体とその周囲の流体にかかる摩擦を小さくすることで、水中抵抗を減らした高速航行を可能にさせるものだ。

 

早い話が、大量の気泡で船体を包み込むことで水中抵抗を大幅に減らし、通常ではありえないほどの高速航行するという技術だ。夢のような航行技術ではあるが、欠点としてスクリューのような通常のプロペラ推進は使えず、ロケットエンジンなどの推進機構が必要となる。スーパーX2改は対特殊生物兵器のなかでも珍しい水空両用機であるがゆえ、これが搭載できていた。

 

スーパーX2改は、既(すんで)のところで回避に成功したが、怒り狂ったエビラは後方から追いかけてくる。スーパーキャビテーション航行中の速度には流石に追従できていないが、通常潜水艦の速度であれば、間違いなく巨大なハサミに捕まって握り潰されていただろう。

 

「巨大エビ型特殊生物、スーパーX2改を追ってこちらに接近中!」

 

「機関始動、しんてん艦首砲の照射用意! 砲種は『冷凍メーサー』!! 」

 

「『冷凍メーサー』の有効射程まで後10秒! スーパーX2改はこちらの射線上より退避せよ! 5・4・3・2・・・射程に入りました!!」

 

「目標、前方巨大エビ型特殊生物! 『冷凍メーサー』照射!!」

 

ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』艦首に装備された超大型ドリル衝角の先から、青白く光り輝く極太の光線が発射された。冷凍メーサー光線が通り抜けた海水は瞬時に凍結し、樹氷のように周囲へと広がりながらエビラに直撃する。

 

極寒の光線が直撃したエビラの右腕のハサミはあっという間に氷塊と化し、そのまま全身が氷に包まれていく。エビラは必死に凍結から逃れようとするが、極寒の氷に包まれ、次第に四肢の感覚が無くなっていった。

 

「冷凍メーサーは巨大エビ型特殊生物に命中! 対象は凍結、沈黙したようです!!」

 

しんてんの戦闘指揮所に安堵の声が広がる。

 

「まだ仮死状態かもしれない。このまま『しんてん』の艦首ドリルで木っ端微塵に粉砕して止めをさす!」

 

『しんてん』の艦首に装備された超大型ドリル衝角が高速回転をはじめ、航行中の勢いそのままに氷塊と化したエビラへと突撃する。瞬間凍結され、脆くなったエビラの体は、高速回転する大型ドリルによって真正面から貫かれ、粉々に砕かれたことで、完全に絶命したのであった。

 

 

 

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