東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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078. 侵攻艦隊の最期

 

中央暦1640年1月27日

第三文明圏外東方 フェン王国

首都アマノキ 南東海域

 

 

「日本国艦隊との距離、間もなく10キロメートルを切ります!」

 

最前列を航行していた戦列艦『ディア』のマストでは、見張り員の水兵が日本国海上自衛隊の護衛艦隊を常に監視し、報告をあげ続けていた。

 

「そろそろ『エビラ』が日本国の艦隊へ攻撃を開始する頃でしょう。連中も、まさか海の中から攻撃を受けるとは思ってもいないでしょうな! さあエビラよ、愚かな蛮族どもを一人残らず深い海の底へと引きずり込んでしまえ!」

 

フェン王国侵攻軍総旗艦である120門級超フィシャヌス級戦列艦『パール』の船尾楼では、ダルダ艦長が自軍の勝利を信じて絶対の自信を見せている。

 

一方、侵攻軍総司令官のシウス将軍は、望遠鏡で海上自衛隊の護衛艦を注視しながら、嫌な予感を感じていた。日本国の艦船は、どれも見たことがないくらい巨大で、なおかつ皇国の戦列艦よりもかなり速い。船体には帆がなく、搭載されている艦砲もムー連邦の機械科学のものに酷似していた。

 

また先程、日本国の艦隊から発射された光の矢は、皇国の戦列艦隊には一発も届かず、すべてが海の中へと落ちていった。ダルダ艦長や幹部たちは、届くはずもない距離から放たれ、無様に海面へと落下した光景をバカにして笑っていたが、あれが海中を進むエビラを狙った攻撃だったとしたら・・・。

 

「敵艦の魔導砲が動き始めました! 我が艦へ砲身を向けています・・・、敵艦発砲!!」

 

単縦陣で進む日本国艦隊の先頭にいる艦砲が動き始め、砲身の内部が僅かに光った直後、綿のような煙を吐いた。

 

「まだ10キロメートルも離れているぞ、威嚇のつもりか?」

 

パーパルディア皇国の常識では理解できない状況に、シウス将軍もダルダ艦長も首を傾げる。彼らだけではない、他の軍幹部たちも日本国艦隊の意図を図りかねていた。

 

次の瞬間、状況を推察する猶予もなく、突如として最前列を航行中の戦列艦『ディア』が爆発し、火柱を上げながら吹き飛んだ。皇国軍の海兵たちは、あり得ない光景をみたかのように、全員があんぐりと口をあけたまま茫然としている。

 

「戦列艦『ディア』轟沈! 日本国艦隊の攻撃です!! 敵は約10キロメートルの距離から砲撃を行い、一発で命中させてきました!!!」

 

「敵艦、連続発砲!! 戦列艦『ルディ』、『ネウス』、『シラン』轟沈!!」

 

今の時点ですら沈む艦の数が多すぎて、報告が間に合わない状況であったが、さらに後続の艦船も砲撃に加わり、砲撃の密度がさらに上がる。

 

単縦陣で進む日本国艦隊15隻に対し、10倍の150隻という数に勝るパーパルディア皇国の魔導戦列艦隊は、鶴翼の陣形をとろうとしていた。敵に対し、自軍をV字のように左右に長く広げた隊形に配置し、前進してくる日本海軍を翼包囲して殲滅しようとしていたのだ。

 

※ 鶴翼の陣

完勝するか、それとも完敗するかの両極端な結果になりやすい陣形であり、主に相手より兵数で勝っているときに使われた。史実では、三方ヶ原の戦い(1573年)において、徳川家康が武田信玄にこの陣形で挑み、惨敗したことで有名。

 

しかし、皇国軍が配備する魔導砲の射程を超える遥か彼方の遠距離から、鬼のような百発百中の砲撃を連続して受け、左翼を担う艦隊は演習の的のように次々と海の底へ爆沈していく。

 

「右翼艦隊に敵飛竜が多数接近! 奇妙な竜だ、羽ばたいてないぞ!?」

 

「な、なんだあの光線は!? ぎや~!!」

 

一方、右翼艦隊は、旗艦である護衛艦『いずも』から発艦したメーサーヘリこと『93式メーサー攻撃機』部隊の攻撃を受け、絶賛炎上中であった。

 

メーサー砲や護衛艦の主砲による攻撃は、『対魔弾鉄鋼式装甲』と呼ばれる魔法金属の外装材で保護された船体側面ですら、木造船である魔導戦列艦にとっては致命傷となる。では、そうした強化がまったく施されていない無防備な甲板、それも魔導砲の砲弾や魔石が山積みになっているところへ、メーサー砲やロケット弾、対特殊生物用ナパーム弾が撃ち込まれるとどういうことになるか・・・。

 

考えるまでもなく、次々に引火して誘爆。そして大爆発して木っ端微塵である。

 

鶴翼の陣の中央、つまりV字の付け根にあたるところには大将である総旗艦の120門級超フィシャヌス級戦列艦『パール』が布陣していた。自軍の魔導戦列艦が次々と爆発炎上し、そしてあっけなく沈んでいく光景は、ダルダ艦長やシウス将軍にも見えていた。

 

「エ、エビラは何をしているのだ、早く、早くあの化け物どもを沈めろ!!」

 

現実離れした光景に、ダルダ艦長は狂乱したかのような声を出しながら錫杖を振るっているが、エビラからの反応はまったくない。大声をあげて発狂しているダルダ艦長に対し、シウス将軍は、望遠鏡から目を離して先ほどまでエビラが潜んでいた海域を凝視する。

 

そこには、フェン王国周辺の海域にしては珍しい大きな流氷がプカプカと海面に浮いていた。遠目からではわかりにくいが、それは内部に赤い何かが残された状態で凍結しているようであった。

 

「あそこに漂流している氷塊は一体なんだ? いくら真冬とはいえ、フェン王国周辺の海域まで流氷が流れつくなんて聞いたことがないぞ・・・」

 

シウス将軍は懐疑的な表情で赤い流氷を見つめていたが、ひときわ巨大な氷塊のなかにエビラの特徴であった巨大な右腕のハサミを見つけ、思わず望遠鏡を二度見する。

 

まさかの事態を想像し、額に大粒の冷や汗を滲ませるシウス将軍をよそに、突如ズドーンという大きな爆発音が鳴り響き、周囲の魔導戦列艦に水柱が発生した。

 

水柱の上がった魔導戦列艦は内部で誘爆を起こしたのか、巨大な火柱をあげて大爆発を起こし、真っ二つに裂けて沈んでいく。

 

「一体何が起こっているのだ? 海中に何かいるのか? エビラは・・・」

 

考える間もなく、緑色をしたアイロンのような物体と螺旋状の巨大な衝角を艦首に装備した漆黒色の艦艇が海中から飛び出し、そのまま低空を飛行しながら魔導戦列艦へ攻撃し始めた。

 

「あの特徴的なフォルムの空飛ぶ艦船は、ま、ま、まさか。ポクトアールレポートに書かれていた・・・」

 

シウス将軍の率いる魔導戦列艦隊の命運は尽きようとしていた。艦隊前方には、海上自衛隊の第1護衛隊群を主力とした護衛艦15隻と発艦した『メーサーヘリ』部隊、後方にはごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』と『スーパーX2改』・・・。

 

このように自軍を大幅に上回る戦力に包囲攻撃されており、列強たる皇国の技術とプライドの結晶である魔導戦列艦は次々と爆沈し、海の底へと消えていった。

 

ついに総旗艦である魔導戦列艦『パール』にも、スーパーX2改の発射した89式魚雷が命中し、強烈な揺れと衝撃に見舞われたシウス将軍は、甲板の壁に叩きつけられる。

 

魔導戦列艦『パール』はエビラを使役する魔獣操作装置を艦の中央に設置するため、魔導砲の大多数が撤去されていた。そのこともあってか、他の魔導戦列艦のように砲弾や魔石に引火・誘爆するような事態にはならなかったが、魚雷が直撃した喫水線下の船体左腹には大きな風穴が開く。

 

大量の海水が艦内に流れ込んでバランスを崩したパールは、徐々にその巨体が傾き始め、やがて転覆、そして装甲の重みでそのままゆっくりと沈んでいった。

 

こうして艦隊副指令アルモスが率いる先遣艦隊に続き、シウス将軍率いる侵攻艦隊主力も一隻残らずに全滅し、フェン王国侵略のためにパーパルディア皇国が派遣した魔導戦列艦約200隻と竜母10隻は、エビラともども海の藻屑と化したのであった。

 

またこの海戦で生き残った皇国軍人は、運よく乗っていた旗艦が誘爆せず、そのまま海へと投げ出されたシウス将軍をはじめ、100人程度であった・・・。

 

 

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