東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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079. ゴトク平野の罠

 

中央暦1640年1月27日

第三文明圏外東方 フェン王国

首都アマノキ西 ゴトク平野

 

 

シウス将軍の率いる大艦隊と新型魔獣『エビラ』が、首都アマノキの南東海域で全滅していた頃、ベルトラン陸将の率いる陸戦部隊は、アマノキの西にある『ゴトク平野』手前の街道を行軍中であった。

 

上陸した皇国陸軍約1万人のうち、1000人は拠点化したニシノミヤコや道中に陥落させた中規模集落などの占領任務についており、残りの9000人が魔導マスケット銃などで武装し、アマノキ攻略へと向かっていた。

 

アルタラス王国侵攻時の3倍もの兵力に加え、ルバイル城堡戦においてその力を見せつけた新型魔獣『アンギラス』を中心に、『カマキラス』が2体、陸戦用魔導砲を牽引する地竜リントヴルムが32体、さらに『メガニューラ』100匹とワイバーンロード30騎による制空権をも確保しているという大戦力であった。

 

「当初の侵攻ルートから迂回することにはなったが、予定通り、夕方の陸海同時攻撃には間に合いそうでよかったわ。我が部隊が『ゴトク平野』に出れば、フェン王国もお終いだな!」

 

「途中、フェン武士団の奇襲もありましたが、我が部隊は大きな被害もなくあっさり撃退しております・・・。魔獣部隊と魔導砲による支援砲撃の本領が発揮可能な『ゴトク平野』へ出れば、もう奇襲などの小細工も通用しますまい・・・」

 

ベルトラン陸将に、陸戦参謀のヨウシがボソボソとした声で応じる。強気な態度をとっているベルトラン陸将であったが、シウス将軍同様、内心では拭い切れない僅かな不安を覚えていた。

 

彼はニシノミヤコ陥落後に歩兵師団の指揮を執り、外務局監査室の『虐殺皇女』ことレミール皇女の命令で捕らえた日本人とニシノミヤコの住民たちを虐殺していた。

 

その際、日本人の所持品を戦利品として押収したのだが、その中身が問題であった。機械科学文明の雄こと『ムー連邦』しか製造できないネジ巻き式時計よりも、さらに精巧に作られている腕時計や高いガラス加工技術で製造されている医療器具、そして最も驚愕させられたのは奇妙な板切れであった。

 

普段はただの黒い板切れであるが、側面にあるボタンを押すと表面が明るくなり、時計や魔法灯具として使用できる魔法道具であった。日本人から治療を受けたフェン王国人を拷問にかけ、情報を聞き出したところ、数十冊分の医療関係書籍を一言一句漏らさずに記録しているという言わば持ち運べる本棚であり、計算機でもあり、さらには魔法通信機としての機能までも有した超マルチ魔法道具だったらしい。

 

タブレット端末やスマートフォンとかいう名の道具らしいが、何かしらの暗号を入力してロックを解除しなければ、それらの機能は使用できないようであったため、時計や魔法灯具としてのみ使っていた。

 

このような超マルチ魔法道具は皇国はおろか、世界第一位の列強である神聖ミリシアル帝国さえも製造することは出来ないだろう・・・。

 

皇国はとんでもない相手を敵に回してしまったのではないか・・・と人知れず、不安を胸に抱えたままのベルトラン陸将であったが、彼らの運命を暗示するかのように、真っ黒な雷雲がゴトク平野の空一面を覆い尽くしていたのであった・・・。

 

 

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首都アマノキの西には、ゴトク平野と呼ばれる草原が広がっている。村や集落もなく、ニシノミヤコへ通じる街道が整備されているだけの荒野であった。

 

平坦な大地に背の低い雑草程度しか生えていないという地形を生かし、日本国との国交成立後には政府開発援助(ODA)の一環として、太陽光発電所の建設計画が進められていた。

 

現時点では送電用鉄塔が数機建設されているだけであり、工事進捗としては初期段階であったが、事前調査として『ゴトク平野の地質調査が完了している』という状態が、パーパルディア皇国の陸戦部隊を迎え撃つ上で重要な意味をもっていた。

 

「天野二等陸佐、メーサー中隊、及び90式戦車隊をはじめとした戦闘車両の配備、完了しています。」

 

ゴトク平野を抜けた先にある小さな集落には、天野二等陸佐が指揮する陸上自衛隊の

現地作戦本部指揮所が設けられており、パーパルディア皇国軍を撃退するための準備が進められていた。

 

「敷設された『電位差発生装置』との接続状況良好。またソニックビームシステム車全機、作戦位置に配備完了。ゴトク平野上空に散布されたヨウ化銀により、人工雷雲から小雨が降り始めました。間もなく豪雨へと変化するものと思われます。」

 

マイクロウェーブ8500サンダーコントロールシステム(M8500TCS)・・・。対象エリア上空で航空機から散布したヨウ化銀コロイドを核に人工雷雲を成長させ、地上に固定した電位差発生装置に向け、人為的に落雷を発生させる大規模装置である。

 

落雷による攻撃に加え、巨大なアンテナを備えたソニックビームシステム車から特殊な電磁場を展開することで、フィールド一帯に莫大なマイクロ波加熱を発生させ、対象を焼き尽くすようなことも可能である。

 

元々は誘導雷をはじめとした科学実験用の設備であったが、1989年の『ビオランテ事変』において、二代目ゴジラの体温を上昇させる目的で初期型である『M6000TCS』が緊急投入された。

 

二代目ゴジラの反撃や植獣形態ビオランテとの戦闘に巻き込まれて大きな被害を出したものの、二代目ゴジラに対して、抗核エネルギーバクテリア (ANEB) を活性化させるほどの体温上昇に成功させたという実績があったため、その後も改良が続けられていた。

 

改良点の一例としては、電位差発生装置の大幅な小型化に成功したことが挙げられる。元々は防波堤などで見かけるテトラポットと同等の大きさであったが、最新の『M8500TCS』ではマンホールサイズにまで小型化された。これにより、施設科による設置が大幅に簡略化され、さらに上から土を被せることで容易に偽装可能となった。

 

ゴトク平野にはこの電位差発生装置が400基以上も埋設されており、それらをぐるりと囲うようにソニックビームシステム車16両が展開している。90式戦車中隊が最戦線に配備され、『92式メーサータンク改』や『93式ツインメーサータンク改』、『95式レーザータンク改』などのプラズマ加熱ミラータイプ型メーサー車両で構成されたメーサー部隊がその後方で待ち構えていた。

 

さらにその後方には、より射程の長い『ハイパワーレーザービーム車改』と『99式自走155mm榴弾砲』などの戦闘車両が砲塔を西に向けて待機している。ゴトク平野には、まさにワイバーン一匹さえも通さない、鉄壁の防衛ラインといえるものが構築されていた。

 

「偵察と思われるワイバーンロードが10騎、こちらへ向かってきます。まだTCフィールド内へは入っていません。」

 

「まずは偵察隊を攻撃し、皇国軍本体をTCフィールド内へ誘い込む! ハイパワーレーザービーム車改は偵察部隊のワイバーンに向けてレーザー射撃を開始せよ。また各メーサー部隊も有効射程に入り次第、攻撃開始!!」

 

メーサー部隊のさらに後方には、大型トレーラートラックのような車両が数量配備されていた。メーサー砲とは異なるコンパクトな形状をしたレーザー主砲とエネルギーパックを搭載した装置車、そして管制装置やサーチライトを搭載した牽引車で構成されるハイパワーレーザービーム車改だ。

 

対特殊生物用として発展してきたメーサー砲とは異なり、弾道ミサイルや航空機などの超高高度迎撃用対空兵器として開発、改良された機体である。そのため、その有効射程は50キロメートルとメーサー砲以上の距離を誇る。

 

※ メーサー砲の有効射程

92式メーサータンク改の500万ボルトメーサー砲だと、約12キロメートル。

 

装置車側に設置されたレーザー砲が上空へ向けられ、細く鮮やかな黄色いレーザー光線が放たれた。

 

 

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陸戦部隊に所属する竜騎士デオッチは、部下の9人の竜騎士たちとゴトク平野の偵察任務中であった。酷い豪雨の中を飛行しており、いつもであれば部下達から不満・不平の声がピーピー聞こえてくるが、今回はいつも以上に士気があがっていた。

 

それもその筈、この侵攻作戦はルディアス皇帝陛下の関心も高く、ベルトラン陸将からは、アマノキ陥落後に皇国軍最高司令官のアルデ様からもたっぷりと褒章が貰えると伝えられていたからだ。フェン王国の奇襲には手を焼いたが、所詮は剣と弓だけの蛮族。褒章は貰ったも同然といえる状態であった。

 

「ここまでくれば、アマノキは目と鼻の先だ、どんな褒章が出るのか実に楽しみだ! それにしても酷い雨だな。」

 

皇国軍の中でも花形と選ばれる竜騎士は、基本的に視力の良いものが選抜される。特に陸戦部隊における竜騎士は、上空支援や偵察任務に加え、魔導砲射撃における前線観測員としての役割も担っていたため、隊員の視力は全員が 3.0 以上と現実世界のマサイ族に匹敵するほどであった。

 

しかし出撃前に降り出した小雨は次第に大粒の雨粒となり、現在は線状降水帯のような局地的豪雨が降り続いていており、数メートル先までしか見えないような状態であった。。。

 

「ん!? 今東の方で何か光ったような・・・」

 

豪雨の中、デオッチ隊長が何かの違和感に気付いたが、すでに謎の攻撃は偵察隊に直撃していた。自分の左右を飛行していた竜騎士のワイバーンロードたちが、黄色い光線に貫かれたのだ。

 

胴体に風穴を開けられたワイバーンロードは、羽ばたく力も無くし、そのまま枯れ葉のように地表へと落ちていった。

 

「こちら偵察隊、敵部隊からの攻撃を受けて二騎を喪失! 東の方角から謎の光による攻撃が飛んできた!! 敵部隊はゴトク平野の東に展開している模様!!」

 

「了解、陸戦部隊本体は東方向へ向かって進軍を開始する。支援のため、残りの竜騎士たちとメガニューラをすべて向かわせる!! こちらの魔導砲の射程に入るまでに、敵本体の位置と規模を確認し、上空からの攻撃で蛮族どもを血祭にあげてやれ!!」

 

誘い込むための罠とはしらず、ベルトラン陸将の率いる陸戦部隊はゴトク平野の中央へ・・・、TCフィールド内へと勇猛果敢に侵攻していったのであった。。。

 

 

 

※ ハイパワーレーザービーム車改

出典 : ゴジラ(1984年)

 

 

84年の第二次ゴジラ事変にて投入された試作急造兵器を改修し、正式運用された航空機・ミサイル迎撃用対空兵器。

 

初期型では、射程50キロメートルを誇るヘリウムネオンガス・レーザーをメイン武装としていたが、各メーサー砲と比較して威力が低いのが欠点であり、メカゴジラやMOGERAの頭部に装備されたプラズマレーザー砲へと換装、強化されている。

 

元々は自衛隊で使用されていたトレーラートラックを改造した急造兵器であったことを活かし、16式機動戦闘車のように一般道路や高速道路を走行可能な展開の早さ、そして前述の長射程を踏まえ、超高高度迎撃用対空兵器として運用されている。

 

宇宙、中間圏に対する弾道ミサイルなどへの第一次防衛迎撃時にはイージス艦(SM-3)と本機が担い、成層圏内における第二次防衛は92式と93式、ペトリオット(PAC-3)と分担している。

 

武装:

プラズマレーザー砲塔1基

 

 

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