東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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083. 鉄人兵団の蹂躙

 

中央暦1640年1月27日

第三文明圏外東方 フェン王国

旧ニシノミヤコ

 

 

パーパルディア皇国軍の海上戦力と陸上戦力を消滅させた日本自衛隊フェン王国派遣部隊は、次のフェーズとしてニシノミヤコ奪還作戦へと移行していた。

 

ニシノミヤコ沖合の海中では、ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦(全長150メートル)を超える数百メートルの超巨大な人工物がゆっくりと接近していた。本奪還作戦のため、潜水母艦形態で派遣されたはくげい級原子力潜水艦の1番艦『はくげい』だ。

 

巨大な船体が開き、その中から複数機の『岩蟹』たちが海中へ出撃する。岩蟹の機体内部には、陸上自衛隊の特戦群や剣王シハン直属の精鋭武士団が降車のときを静かに待っていた。

 

その中には、剣王シハンの側近であり、今回の精鋭武士団長を命じられたモトムの姿もあった。モトムは、数日前に実施された作戦概要時のことを思い返していた。

 

日本国自衛隊が投入してきた兵器は、どれも空想の産物のような超兵器ばかりであり、実際、五大列強のパーパルディア皇国正規部隊ですら、赤子の手を捻るかのようにあっさり全滅させた。

 

しかし、その中で唯一、モトムが微妙そうな顔を向ける兵器があった。ニシノミヤコ奪還作戦で投入される人型兵器・・・、戦闘用ジェットジャガー(BJJ)とかいう名の機械式のゴーレムだ。

 

自衛隊の話によると、昨年末の『魔王事変』において有用性が確認されたらしく、皇国軍が小型魔獣を繰り出してくる可能性を加味して投入が決定されたらしい。厳めしい顔をしているが、どう見ても強そうには見えず、モトム以外の侍大将たちも怪訝そうな顔をしていた。

 

そんなフェン王国側の心情を察したのか、『魔王事変』におけるオークロードとの戦闘の様子が参考資料として映された。3メートル近い体格のオークロードをゴミ屑のように蹴り飛ばし、それと拮抗可能なパワーをもった本機の戦闘映像を見たモトムたちは、時が止まったかのように固まる。

 

その後デモンストレーションとして、フェン王国の横綱(フェン王国にも相撲に似た競技があるらしい)と試合をさせてみたが、手も足も出ないほどのとんでもない怪力だった。ちなみに日本国が国家転移直後にクイラ王国と国交を締結した際、日本国の横綱がドワーフと親善の相撲したが、まったく勝てなかったらしい。

 

奪還作戦では、まず約100体のBJJで構成された部隊がニシノミヤコ空中から投入されるらしい。初見時の怪訝そうな表情はどこへやら、戦闘用ジェットジャガー隊の頼もしさを実感したフェン王国武士団は畏怖と尊敬の念を込め、『鉄人兵団』という愛称で呼び出したのであった。

 

 

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首都アマノキの南東海域において、シウス将軍の率いる大艦隊は日本国海上自衛隊と激突。艦隊副指令アルモスの率いる先遣隊を含めた魔導艦隊、切り札であった新型魔獣『エビラ』を含めた全戦力を喪失し、シウス将軍などの救助された数百人程度を除き全滅した・・・。

 

一方、ベルトラン陸将が率いる陸戦部隊は、首都アマノキの西にあるゴトク平野において日本国陸上自衛隊と激突。施設科によって事前にセッティングされていた『M8500TCS(マイクロウェーブ8500サンダーコントロールシステム)』により、中核であった『カマキラス』や『アンギラス』などの全戦力を喪失。こちらは最後まで抵抗の意思を見せたことから、『M8500TCS』のマイクロ波加熱を受けて一人残らず殲滅されたのであった・・・。

 

このように、意気揚々とニシノミヤコを出撃した侵攻部隊は、昼過ぎにはほぼ全滅状態となっていた。緊急魔信を発信する暇もなく、短時間で全滅したことから、旧ニシノミヤコに残された占領維持のための歩兵約1000人、また引き継ぎのために先行派遣されてきた臣民統治機構の職員たちは、この事実をまったく知らず、いつものようにこの世の春を謳歌していた。

 

数時間後、身勝手な天国から地獄へと叩き落されることになるとは露も知らずに・・・。

 

「今頃はアマノキが陥落してみんないい思いをしているんだろうな。出撃していった奴らが羨ましい限りだぜ!」

 

「まったくだ、なんで俺たちが占領維持なんてクソみたいな任務をしなきゃいけないんだよ」

 

悪態をつきながら、レイプニッツとゴーカーンという名の二人の皇国兵が旧ニシノミヤコの大通りを歩いていた。首都アマノキを陥落させた後、いつものように野蛮な行為を満喫しているだろう同僚たちのことを思い、二人は苛立っていた。

 

「今日の任務も終わって交代に入ったことだし、気晴らしでも行くか? そうなだ・・・、あの店なんかどうだ?」

 

レイプニッツの指さした先には、小奇麗な茶屋があった。

 

「いいねぇ、さて今日はどんな風に楽しもうかね。」

 

「オラオラ、剣バカの蛮族ども! 貴様らの新しい主人になってやった列強の皇国民様のお出ましだ!! 誠心誠意接待しやがれ!!」

 

下衆な顔をした二人が、大声で威張り散らしながら茶屋の扉を蹴破って入店する。中にいた客たちはいそいそと退店し始めるが、その中に若い女性の姿を見つけ、二人が呼び止める。

 

「そこの貴様! 我々の姿を見た途端に逃げようとするとは、さては反乱分子だな!! 店の奥まで一緒に来い、徹底的に調べてやろう!!」

 

携帯していたサーベルを突きつけながら、女性の腕を掴む。

 

「お止めください! 私は反乱分子などではありません!!」

 

他の客が早々に逃げ出したのを良いことに、二人は下着一枚まで脱いだ状態となり、大声で嫌がる女性を暴行しようとしていた。このような胸糞悪い光景は、18日にニシノミヤコが陥落して以降、各地で連日のように続いていた。

 

「・・・!? この甲高い音は一体なんだ?」

 

突如、ニシノミヤコ上空に甲高い音が響く。それに加え、ヒューという何かが落ちてくるような音が響き始め、そして・・・。

 

ドッカーン!

 

茶屋の面した大通りに、金属で出来た箱のようなものが落下した。落下の衝撃で、茶屋の中にいた三人も転倒する。落下した金属製の箱が開き、中から目を青く光らせた厳めしい魔神のような強面のゴーレムたち約20体が現れた。

 

「一体なんだ?」

 

状況が理解出来ずに茫然とした様子の二人であったが、ゴーレムの一体がこちらに近付いて来て、何やら話しかけてきた。

 

「ソノ女性ヲ解放シナサイ。従ワナイ場合ハ排除シマス!」

 

「いきなり現れた訳の分からないゴーレムごときが、皇国兵の俺たちに要求するとは片腹痛いわ!」

 

ゴーカーンはサーベルを片手に、青目のゴーレムこと戦闘用ジェットジャガーBJJ-17に切りかかった。

 

「状況判断、BJJ-03の戦闘記録ニオケル有害小型特殊生物ノ近縁種ト判断。民間人保護ノタメ、対特殊生物向け武装ノ使用制限ヲ全テ解除、駆除シマス」

 

BJJ-17はサーベルを振りかざしてきたゴーカーンの腕を軽々と受け止め、そのまま右腕をスナック菓子のように握り潰す。

 

「ギャー、お、俺の腕が!!」

 

激痛に悶えるゴーカーンの顔面を目掛け、BJJ-17の口から毒々しいヘドロのような液体が吹きつけられた。三代目モスラをも苦しめ、この世界ではオークロードすら悶絶させた対小型特殊生物制圧用の強酸性毒『ウレコット・エッカクス』だ。

 

強酸性の猛毒は表面の皮膚を溶かすだけにとどまらず、目や鼻、口内へと入り込んで粘膜や神経を次々と蝕んでいく。急性中毒症状を引き起こしたゴーカーンは、ドロドロに溶けた顔から泡を噴きだしながらその場へ倒れこむ。

 

「こ、この化け物め! よくもゴーカーンを!!」

 

BJJ-17に向け、レイプニッツが魔導マスケット銃で攻撃するが、BJJ-17の外部装甲は甲高い音を立てて銃弾を弾き飛ばす。銃撃が効かないことに動揺している隙に、BJJ-17の手刀がレイプニッツの顔面に振り下ろされた。

 

前述の通り、戦闘用ジェットジャガーのパワーは、魔王軍の精鋭であるオークロードと拮抗可能なほどであり、その鉄拳はオークロードの頭蓋骨を粉砕するほどの威力を誇る。

 

そんなパワーの手刀が脳天に直撃したレイプニッツは、某暗殺拳法の岩山両斬波を喰らったモヒカンのごとく頭蓋骨を粉々に粉砕され、ギャグ漫画のように顔の半分まで手刀がめり込んだ状態で即死した。

 

戦闘用とはいえ、ジェットジャガーは対人戦闘で対特殊生物向けの武装を決して使用しないよう人工知能にプログラミングされている。では、今回なぜこのようなことが起こったのであろうか。

 

原因は非常に簡単で、皇国兵を『魔王事変』におけるゴブリンやオークなどの有害小型特殊生物の近縁種と認識してしまったためである。

 

人工知能にプログラミングされているデータは、基本的に地球における常識や倫理観をベースとしている。それゆえ、嫌がる女性(エレイ)に対し、布切れ一枚というほぼ裸に近い状態(オークやゴブリンと同じような恰好)で、武器で脅しながら暴行しようとしている状況から、あれは人間ではなく有害小型特殊生物の近縁種として判断してしまった・・・というわけである。

 

皇国兵にとって最大の不幸は、最初にBJJ部隊と会敵したのが、よりにもよってこの二人であったということだ。BJJ-17の『有害小型特殊生物としての認定』は、すぐさま残りの99体にネットワークを通じて共有化されてしまったのだ。

 

そのため、有害小型特殊生物として認定された皇国兵たちは、ニシノミヤコ各地でBJJ部隊に血祭にあげられる羽目となった。メーサーライフルの照射を受けて消し炭となった者、『ウレコット・エッカクス』を浴びて急性中毒となった者、情け無用の鉄拳で成敗された者など、事例を挙げるとキリがないほどであった。

 

気の毒に思えるかもしれないが、皇国兵の倫理観が、最悪レベルに低かったがゆえの末路ともいえるだろう。

 

その後、岩蟹たちが海岸から上陸すると同時に、上空から『AH-1S コブラ』や『メーサーヘリ』部隊の掩護を受けつつ、陸上自衛隊の特戦群や精鋭武士団がニシノミヤコに突入。

 

『鉄人兵団』ことBJJ部隊との戦闘で大混乱に陥っていたニシノミヤコ占領軍は大した抵抗も出来ずに壊滅、残された補給部隊や臣民統治機構の職員たちは全面降伏した。こうして大きな被害を出すことなく、同日ニシノミヤコは日本国・フェン王国の連合軍によって奪還されたのであった。

 

 

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