東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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087. スーパーX改 出撃

 

中央暦1640年2月1日

フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国

皇都エストシラント 第一外務局にある迎賓用庭園

 

 

日本国は1954年の『第一次ゴジラ事変』から始まり、99年の『第二次キングギドラ事変』にわたるまで、多種多様な特殊生物に襲来されてきた。特に1990年代には、圧倒的な力をもった『怪獣王』こと『二代目ゴジラ』をはじめ、『スペースゴジラ』、『デストロイア』、『グランドギドラ』などのまさに天災級ともいえる特殊生物たちと存亡をかけた戦いを繰り広げてきた。

 

それらに対応するため、通常兵器群に加え、メーサー砲をはじめとした対特殊生物向けの兵器も多数開発されて実戦投入されてきた。現在では数多ある対特殊生物向け兵器だが、それらの礎を築いたものは何かと尋ねられた際、自衛官など特殊生物に関する仕事に従事している人間の大多数は『スーパーX』と答えるだろう。

 

1984年の『第二次ゴジラ事変』において襲来した『二代目ゴジラ』を前に、74式戦車などの通常戦力はおろか、これまで特殊生物との戦闘において高い効果をあげていた『66式メーサー殺獣光線車』や当時の最新型戦闘車両であった『ハイパワーレーザービーム車』もまるで歯が立たなかった。

 

30年前の『初代ゴジラ』襲来時の悪夢をなぞるかのように、『二代目ゴジラ』によって破壊されていく首都東京であったが、それを阻止するために緊急出撃したのが『スーパーX』であった。

 

正式名称『陸上自衛隊幕僚監部付実験航空隊首都防衛移動要塞T-1号 MAIN SKY BATTLE TANK スーパーX』と言い、米ソ両大国の東西冷戦下という時代背景も踏まえ、核兵器による有事を想定した移動要塞型核シェルターとして開発・建造が進められていた極秘兵器であった。

 

電磁パルスの対策が不十分な未完成状態ではあるが、二代目ゴジラの通常熱線の超高熱にも耐えられる超装甲を有していたことから緊急出撃することが決定され、新宿上空で『二代目ゴジラ』を迎え撃った。

 

一時はカドミウム弾で体内の核反応を抑制することで、二代目ゴジラを昏倒させるまで追い込んだが、4発もの熱線の直撃に加え、さらに高高度核爆発の核爆発で発生した電磁パルスの影響も受けて機体の耐久が限界を迎え、最終的には撃墜されてしまった。

 

しかし『初代ゴジラ』に対して一切有効な手を打てなかった自衛隊が、最終的に敗北したとはいえ、ゴジラ級の特殊生物を相手に初めて互角に戦闘を行えた点は特筆するに値すべき素晴らしい成果であった。

 

そのため以降に開発された対特殊生物向けの兵器は、『超装甲で相手の熱線や光線に耐え、中遠距離攻撃で攻めかける』という『スーパーX』の戦闘スタイルを踏襲したものがメジャーとなった。

 

『超耐熱合金NT1』と『人工ダイヤモンドミラーコーティング』の鉄壁の装甲で通常熱線を無効化し、ホバリングで距離を取りつつメガ・バスターなどの強力な砲撃を得意とする『スーパーメカゴジラ』、赤色熱線すら防ぎきる『超耐熱合金NT-1S』の凄まじい防御力と戦闘機並みの機動力を併せ持ち、各種冷凍兵器を活かした一撃離脱戦法により、核エネルギーの暴走した『バーニングゴジラ』をも完封した『スーパーXⅢ』など、例を挙げればきりがない。

 

そんな『スーパーX』であるが、後継機である『スーパーX2』と『スーパーXⅢ』は改修が重ねられ、現在も現役バリバリであるのに対し、特殊生物との戦闘を想定した改修はあまり行われていない。

 

元々『移動型シェルター』として開発されていた経緯から、現在では特殊生物の強襲時における『移動要塞型シェルター』として改修され、運用されているのだ。

 

初号機(未完成の試作機)の時点で、スペースシャトルにも使用されているセラミック製耐熱タイルを装甲に使用するなど、大気圏突入にも耐えられる仕様であったことから、現在ではスーパーXシリーズの中で唯一、大気圏の離脱・再突入が可能な機体となっている。

 

※ ただし改修後に出撃・運用されたことはこれまで一度もなく、野党からその存在意義を問われることが度々あった。そうした背景もあり、配備されているのは一機のみ。

 

皇都エストシラントの遥か上空にあたる低軌道上には、この『スーパーX改』が待機していた。パーパルディア皇国との外交交渉に向かった朝田と篠原の身に危険が及ぶような緊急事態となった際、皇都エストシラント上空へと再突入し、二人を救出後にそのままパーパルディア皇国内から脱出することになっているのだ。

 

コックピット内に緊急事態を知らせる通知が入り、大気圏再突入の準備が急ピッチで進められる。炊飯器のような形状をした機体の全身がエアロシェルで包み込まれ、突入時の角度を綿密に調整し、斜めの姿勢となって降下を開始する。

 

降下速度が上昇するにつれて機体前方の空気が断熱圧縮されたことでプラズマ化し、その影響で機体底部が火の玉のように真っ赤に染まった状態で降下していった・・・。

 

 

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第一外務局内に併設された迎賓用庭園にて実施されていた日本国とパーパルディア皇国との会談は、お互いが相手側に『死刑宣告』ともいえる内容を回答し、終了した。

 

『特殊生物を用いた日本人の民族浄化宣言』というあまりに醜悪な方針を示したパーパルディア皇国に対し、苦言を呈した篠原の身柄が拘束されるという異例の事態を除いて・・・。

 

完全に敵国同士の関係になったとはいえ、本来であれば外交官の立場は不可侵であり、身柄を拘束されるなどあってはならないことである。しかし、文明圏外国家の蛮族と見下している相手から心酔するルディアス皇帝をも侮辱されたことで、皇女レミールは完全に頭に血が上ってしまったのだ。

 

駆け付けた屈強な衛兵を相手に、武術の心得があるわけでもない篠原が対抗できる筈もなく、簡単に取り押さえられてしまった。有無を言わさずヒステリックに喚き散らすレミールを前に、残された朝田は必死に考えを巡らす。

 

ここは敵国首都の中心であり、普通であれば逃げられる可能性はほぼゼロに等しい。胸ポケットの中に潜ませていた小型通信デバイス・・・、非常事態を知らせる信号を発する衛星通信機のボタンを押したが、遥か空の上から救助が到着するまでの間、なんとか開けたこの庭園に篠原の身柄を留めておく必要があった。

 

「お待ち下さい、レミール様! 部下の失言は上司である私の責任です! どうか私に免じて、この愚かな部下を堪忍してやって下さい!!」

 

人目も憚らず、朝田がその場で土下座する。

 

(このバカ女は無駄にプライドが高い・・・。ある程度下手に出れば、気分を良くして気が変わるかもしれない。それが無理でも時間稼ぎくらいにはなる筈・・・。)

 

「今更、媚びへつらった態度を取ろうがもう遅いわ! この愚か者は蛮族の分際で、恐れ多くも偉大なルディアス皇帝陛下を愚弄した!! 政治犯収容所へブチ込み、日本国が滅ぶまでの間、死よりも辛い拷問漬けの日々を味あわせてやるのじゃ!!!」

 

「我々には『貴国の回答』を本国へ伝える義務がございます。列強国である貴国の宣戦布告と殲滅戦の意思を、本国政府にきちんと届けなければなりません! どうしても篠原の身柄を拘束されるというのであれば、せめてこの場で本国へ提出する報告書を作成するお時間だけでも頂けませんでしょうか!!」

 

朝田の必死の嘆願に、怒り狂っていたレミールも少し落ち着きを取り戻す。

 

(列強国たる我が皇国が、たかが文明圏外国家にきちんと宣戦布告を通告もせずに殲滅戦を開始した・・・などと周辺国に流布されても面倒か。)

 

「良かろう・・・。貴様の殊勝な態度に免じ、これより一時間ばかりの猶予をくれてやろう。それまでに本国への報告書とやらを作成するがよい。」

 

レミールは吐き捨てるように言い放つと、そのまま迎賓用庭園を後にする。ルディアス皇帝への報告のため、澄ました顔で皇宮パラディス城へ向かうレミールであったが、迎賓用庭園へと続く通路にある石造の影には、マントを深々と着込んだ立派なヒゲの男がその様子をじっと伺っていたのであった。

 

「心配するな、半時間もあれば『迎え』が上から降りてくるさ・・・。」

 

自分の失言で迷惑をかけてしまったことに責任を感じ、頭を抱え込んだ篠原を労うように朝田がフォローする。

 

 

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皇都エストシラントのすぐ近郊には、大規模な陸軍基地が設置している。このような極大サイズの陸軍基地は皇国内に三ヶ所・・・、『皇都エストシラント』、『工業都市デュロ』、そして『聖都パールネウス』にそれぞれ存在しているが、皇都エストシラント近郊の陸軍基地は海軍本部基地と合わせて首都防衛の要となっており、『皇都防衛軍基地』とも呼ばれている。

 

皇都エストシラントの空は、この皇都防衛軍基地内に設置された大型魔導レーダーに加え、皇都防衛隊に所属する竜騎士団により防衛されている。この日はベテラン竜騎士モブリアの率いる飛行隊のワイバーンオーバーロードが、警戒飛行を行っていた。列強国の首都ということもあって厳重な警戒網を敷いているが、パーパルディア皇国が列強国となったあと、皇都はおろか皇国本土が戦場となったことは一度もなかった。

 

そのため、誰もが今日も異常なしで終わると思っていたが、その矢先、空に異変が起こる。青空のうえから、真っ赤に焼けて光り輝く、何かが皇都上空へ降ってこようとしていた。

 

「こちら第13竜騎士団第2飛行隊! 皇都上空に小さな火の玉みたいなものが落下しようとしている。高度が高すぎて判断できないが、真っ赤に焼けているようにも見えることから小型隕石の可能性あり!」

 

上空を警戒していた竜騎士隊から『小型隕石らしきものが接近中』との報告を受け、皇都防衛軍基地の動きが慌ただしくなる。

 

「魔導レーダーにも反応ありません! 竜騎士隊の報告からも、目視確認出来た数は1つのみとのことです。このことからも、敵襲ではなさそうですね。」

 

「その小型隕石とやらの予想落下地点はどのあたりだ? その地区へ急ぎ避難命令を出す!」

 

「中央区・・・です。」

 

竜騎士からの回答を通信オペレーターが震える声で伝えた途端、指令室内の温度が氷点下まで急降下する。エストシラントの中央区には、皇国の官公庁のほぼすべてが集約されており、さらに『皇宮パラディス城』をはじめとした皇族の居住区も存在する。そんな重要なエリアに向かって、隕石が迫っている・・・。

 

後の歴史書において、当時列強国であったパーパルディア皇国が、『最初に本土攻撃された日』と記載される出来事が始まった・・・。

 

 

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