東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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088. 舞い降りる鉄人

 

中央暦1640年2月1日

フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国

皇都エストシラント 第一外務局にある迎賓用庭園

 

 

隕石・・・。それは遥か宇宙の彼方から飛来し、大気圏突入時の高熱で燃え尽きることなく地表まで到達することの出来た落下物の総称である。ちなみに燃え尽きてしまった場合には、流星と区別される。

 

大気圏通過時や地表への落下の際、夜間でも真昼のように空が明るくなるほどの巨大な火球が発生したり、衝撃波の爆音が数10キロメート四方にも渡って響くなど、凄まじい現象が発生する。

 

地球においても、『旧約聖書』のヨシュア記第10章や『続日本記』など、隕石のことを記載していると考えられている伝承や記録が古今東西において数多く残されている。

 

ただの岩石の塊であることが殆どであるが、極稀に岩石の中に潜んだ凶悪な宇宙生物が地球へ襲来することもあり、それゆえ人知を超えた神の裁きであるかのように描写されることも多い。

 

一例を挙げると、1億3千万年前の中生代白亜紀の地球へ襲来し、当時の生態系の頂点に立つ恐竜を絶滅寸前に追いやったグランドギドラの若個体『ヤングギドラ』、6500万年前に地球に襲来し、植物に壊滅的な打撃を与えて恐竜絶滅の原因を作り出した『デスギドラ』などの宇宙怪獣が該当する。

 

両者とも隕石と共に地球へ襲来した地球外生命体であり、特に前者は『恐怖の大魔王』とエリアス族から恐れられるほどの天災級の大怪獣であった。また地球の守護者である巨大亀が活躍する別の世界線においても、体がケイ素化合物で構成されたケイ素生物の群体が隕石とともに地球へ飛来し、北海道から東北地方にかけて大きな被害を出している。

 

一方、日本国が転移したこの世界では、地球以上に隕石に対する伝承が、それもまったく同じ内容のものが広く知れ渡っている。古の魔法帝故国こと『ラヴァーナル帝国』が神々に弓を引こうとした神罰として、彼の国が支配するラティストア大陸へ巨大隕石を落とされそうになったという神話のことである。

 

他種とは隔絶した魔力と技術力を持ち、全世界を支配した史上最強・最悪の大帝国として悪名高い魔帝ですら、迎撃や防御することを諦め、時空転移魔法を発動させて未来へと退避しなければならなかった恐ろしい自然現象として、各文明圏はもとより、文明圏外のあらゆる地域にも認識されているのだ。

 

そんなものがパーパルディア皇国の中枢である皇都エストシラントに・・・、それも最悪なことに、皇国の官公庁や皇族の居住区が集中する中央区へ向かって落下しているという報告がされれば、一体どういうことになるだろうか。

 

言うまでもなく、皇都中が上へ下への大騒ぎである。

 

『皇都防衛軍基地』からは非常事態を知らせる魔導サイレンが鳴り響き、飛竜隊が次々に出撃して皇都上空へと舞い上がる。一人でも多くの皇族や高官たちを避難させるため、基地指令室からの魔信の指示をもとに、割り振られた建物へ向かって飛行している。また外務局をはじめとした官公庁や付近の高級住宅からも、役人や富裕層たちが蜘蛛の子を散らすように四方へ逃げ出し始めていた。

 

「早いな、もう到着したようだ・・・」

 

慌てふためき右往左往する皇国人を尻目に、朝田と篠原は平然としていた。皇女レミールの命令により、迎賓用庭園で報告書を作成している(かのように見せかけている)二人を見張っていた衛兵たちも職務放棄して逃げ出していた。

 

 

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皇都エストシラントに接近する隕石のことを最初に発見し、緊急報告を行ったベテラン竜騎士モブリアは、基地指令室からの指示に従い、部下の竜騎士たちを引き連れて『皇宮パラディス城』へと急行していた。

 

せめてルディアス皇帝陛下だけでもお救いせねば! と相棒のワイバーンオーバーロードと空を全力で駆けていたが、隕石の現在位置を確認するために目を移したときに違和感を感じた。本来であれば、惑星の重力によってどんどんと加速している筈の隕石が、まるで急ブレーキをかけるかのように減速し始めているように見えた。

 

それだけではない。先程まで真っ赤に燃え滾り、煙に包まれていた姿であったそれは、

岩石のようなゴツゴツした表面ではなく、丸みを帯びた人工物の姿を露わにし始めたのだ。

 

「こちら第13竜騎士団第2飛行隊! 先ほど報告した隕石のような物体が制動をかけ始めている!! あれは隕石ではない!! 何か金属で出来た人工物のようだ!!!」

 

この報告を受け、皇国の歴史上、初めて皇都が襲撃されたことを理解した皇都防衛軍基地司令のメイガ陸将は、緊急事態宣言を発令。避難誘導のために出撃させた全竜騎士たちに対し、迎撃命令を下したのであった。

 

 

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迎賓用庭園の上空まで到着したスーパーX改は、周囲を警戒しながらゆっくりと高度を下げていく。それと同時に機体側面のハッチが開き、中から人型をした数体の鉄人が飛び降りた。昨年の『魔王事変』や数日前の『ニシノミヤコ奪還作戦』において活躍した戦闘用ジェットジャガー(通称BJJ)である。

 

「救援ニ参リマシタ。早ク我々ノ後ロヘ」

 

迎賓用庭園へと降り立った数体の戦闘用ジェットジャガーは、朝田と篠原の存在を認識すると、ボディーガードのように二人の前に立ちはだかりながら周囲を警戒する。

 

なお二人には携帯用バリスティックシールドが手渡されており、戦闘用ジェットジャガーの後ろで姿勢を低くし、シールドを構えて身を守っている。

 

スーパーX改から降下した戦闘用ジェットジャガーはこれまで同様、すべての個体がメーサーライフルや個人携行型ロケットランチャー(110ミリ個人携帯対戦車弾)などで重武装されており、人工知能の方もニシノミヤコ奪還作戦からアップデートや修正等の対応は一切されていない。それどころか、敵国の中心で外交官が拘束されるという緊急事態に際し、全火器使用自由(オールウェポンズフリー)のコードまで解除されていた。

 

そんなことは露も知らず、舞い戻って来た衛兵たちに加え、皇都防衛軍基地の司令部から命令を受けた治安維持部隊が迎賓用庭園へ次々と雪崩込んできた。

 

「蛮族の分際で恐れ多くも皇都へ侵入してくるとは、貴様ら楽に死ねると思うなよ!!」

 

治安維持部隊が魔導マスケット銃を一斉に発砲し、その直後、衛兵たちが大剣や槍を構えて突撃して来た。発射された魔導マスケット銃の銃弾は戦闘用ジェットジャガーの外部装甲や二人の構えたバリスティックシールドにすべて弾かれ、甲高い金属音が周囲に響く。

 

「敵対ノ意思ヲ確認。ニシノミヤコ戦ニオケル有害小型特殊生物ト同ジ武器ヲ使用。駆除対象ト認定。外交官保護ノタメ、全武装ヲ駆使シテ殲滅シマス。」

 

突撃してくる衛兵の集団に向け、一体の戦闘用ジェットジャガーが挨拶代わりに110ミリ個人携帯対戦車弾を発射した。本来、戦車や装甲車に対して使用する弾頭が接近する衛兵のすぐ近くへと着弾し、猛烈な爆風と衝撃波が衛兵たちを包み込む。衛兵の集団は一瞬で木っ端微塵となり、周囲に鎧の破片や肉片が散乱する。

 

一方、蛮族の外交官を守るように仁王立ちする銀色のゴーレムに対し、皇国自慢の魔導マスケット銃による銃撃が全く効かなかったことに治安維持部隊は酷く狼狽していた。さらにお返しと言わんばかりに強烈な爆裂魔導砲の直撃を受け、ミンチと化した衛兵たちの惨状を見た一部の兵は、完全に腰を抜かしていた。

 

「ええい、怯むな! あれほどの魔導砲をそう何発も撃てるものか! 次弾が発射される前に接近して仕留めろ!!」

 

治安維持部隊の隊長が部下たちを鼓舞し、サーベルを片手に自ら先陣を切って突撃するも、今度はメーサーライフルが容赦なく照射され、一瞬にして火達磨となって焼死する。

 

衛兵や治安維持部隊を退けた戦闘用ジェットジャガーたちは、朝田と篠原を担いでスーパーX改へと飛び移る。朝田と篠原、そして戦闘用ジェットジャガーのすべてを収容したスーパーX改は、すぐさま迎賓用庭園を離陸し、皇都エストシラントからの脱出を開始する。

 

なお離陸の際、フードを被った男が何かを喚きながら走って近づいてきていたが、スーパーX改のジェットファンによる風圧で枯れ葉のように吹き飛ばされ、噴水が設置された大きな池へ勢いよくダイブしていた。

 

しかし、モブリア率いる第13竜騎士団第2飛行隊もすでにスーパーX改を目視確認可能な距離まで到着し、攻撃体勢に入ろうとしていた。皇都エストシラントからの脱出劇が開始された。

 

 

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