中央暦1640年2月1日
フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラント 迎賓用庭園の上空
ベテラン竜騎士のモブリアが率いる第13竜騎士団第2飛行隊は、第一外務局にある迎賓用庭園の上空へ差し掛かろうとしていた。卑怯にも隕石に擬態し、皇都エストシラント内へと侵入した謎の物体はすでに目的を達成したのか、迎賓用庭園を離陸しようとしていた。
「なんの目的か知らぬが恐れ多くも皇都へ侵入するとは、万死に値すると思え!」
導力火炎弾の射程、つまり目視確認可能な距離にまで近づいたことで、敵の全容が徐々に鮮明になり始める。それはまったく羽ばたかずにその場に浮遊しており、代わりにゴォーという唸り声のような轟音を出し続けている。
魔力反応もまったく感じなかったため、ムー連邦のマリンとかいう飛行機械の同類かと思ったが、プロベラとかいう高速で回転する風車も付いておらず、随分見た目が異なっている・・・とにかく奇妙な物体だというのが、モブリアをはじめとする竜騎士たちの印象であった。
「こちら皇都防衛軍基地司令室、第一外務局より緊急入電! 侵入した物体から出現した金属製ゴーレムの攻撃により、迎撃に向かった外務局所属の衛兵隊、並びに急行した治安維持隊の第三小隊が壊滅!!」
迎賓用庭園を見下ろすと、人のようなかたちをした黒焦げになった炭クズ、何か巨大な爆発が発生したと思われる芝生の焼け焦げた跡、粉々になった人体のパーツらしきものなどが散見できた。
「侵入した敵ゴーレムは日本国の外交官たちを連れ、例の物体へ再度乗り込んだ模様! あの物体は日本国の飛竜と推定される!! 皇国の威信にかけ、ルディアス皇帝陛下を侮辱した愚か者どもを絶対に生かして帰すな!!」
魔信からの攻撃命令が下されると同時に、現場に先行していた10騎のワイバーンオーバーロードとワイバーンロードたちがスーパーX改の正面へ回り込み、導力火炎弾の発射体勢に入る。
「蛮族の分際でルディアス皇帝陛下を侮辱したに飽き足らず、よくも同胞たちを!!」
10騎のワイバーンロードから発射された導力火炎弾は、その場を飛び去ろうとしていた丸みを帯びた機体前面にすべてが直撃し、金属色をしたボディーは爆炎と黒煙に包まれる。
「へ、ざまぁ見やがれ! 不敬な蛮族は一人残らず消毒だぁ~!!」
すべての導力火炎弾が命中したことで沸き立つ竜騎士たちであったが、次の瞬間、黒煙の中から突如として6発の青白い光弾が出現した。撃墜を確信し、完全に油断していた竜騎士たちはこれらを回避することができず、モブリアを含む竜騎士たちと相棒のワイバーンたちは光弾に次々と貫かれ、力なく地面へと落下する。
ワイバーンから導力火炎弾を受けたことへの正当防衛として、スーパーX改が前方の6体に向け、機体前方に搭載された省電力メーサーバルカン砲で反撃したのだ。
「全弾命中! 本機に対し火炎攻撃を行ってきた敵大型ワイバーンのうち、6騎を撃墜しました! このまま一気にここを脱出します!!」
ターボジェットファンの風圧で黒煙が晴れると、スーパーX改の姿が見え始める。10発もの導力火炎弾が直撃した筈の前面装甲には焼け焦げた跡すら付いておらず、まるで何事もなかったかのように平然と空中を浮遊しており、速度を上げてこの場から逃げ去ろうとしていた。
「バ、バカな・・・、オーバーロード種とロード種の導力火炎弾をあれほど喰らって、まったく損傷していないだと!?」
「誇り高き皇都防衛隊の竜騎士がこの程度のことで狼狽えるな! 陸軍の地竜リントヴルムを思い返してみろ! 背中や側面は甲殻で覆われているが、腹への攻撃には弱い。ヤツも全身が鉄壁ではない筈だ! 効果のなかった以外の部分へ、導力火炎弾を一斉にお見舞いしてやれ!!」
残された4騎と合流した全14騎の竜騎士たちは素早く陣形を立て直し、スーパーX改を取り囲んであらゆる方向から導力火炎弾で攻撃するが、スーパーX改はびくともしない。
30年以上前に建造された初号機ですら、二代目ゴジラの通常熱線の直撃に4発も耐えられるほどの装甲を有していた。以降も対特殊生物向け兵器の研究や開発が続けられた現在では、バーニングゴジラの赤色放射熱線にも耐えられるほど超装甲『超耐熱合金NT-1S』などが実用化され、後継機であるスーパーXⅢにおいて導入されている。
※ 最新鋭の装甲はスーパーX2改やごうてん型護衛艦の装甲へ導入された『超耐熱耐圧合金NT-2D』であり、『NT-1S』と同等の耐熱性に加え、水中戦も想定した両機に対応して耐圧性も強化されている。
これらの発展した技術をもとに改良されたスーパーX改の装甲(ちなみに超耐熱合金NT-1Sをベースに耐熱パネルがセットされた複合装甲)に対し、ワイバーンの導力火炎弾の熱量ではホッカイロを押し当てられた程度の取るに足りない温度でしかなかった。
スーパーX改もただ火炎弾攻撃を受け続けているわけではなく、機体上部から発射する照明弾や対特殊生物用閃光弾で周囲を牽制しつつ、前方に立ち塞がるワイバーンオーバーロードやワイバーンロードのみを省電力メーサーバルカン砲や30ミリバルカン砲などの低威力の武装だけでチマチマと攻撃していた。
皇都エストシラントはパーパルディア皇国随一の人口密集地であり、また大使館内に駐在している第三国の外交官、来訪中の商人や観光客など多数の民間人も滞在している。そんな街中でロケット弾やカノン砲などの重武装を使用すれば、万が一流れ弾が発生した際、彼らのような無関係の人間たちを巻き込んでしまうリスクが高すぎたための措置であった。
またスーパーX改の大気圏内における最高速度は、時速400キロメートル(初号機では半分の時速200キロメートル)と、後継機であるスーパーX2改の巡行速度マッハ1(時速約1200キロメートル)やスーパーXⅢの巡行速度マッハ1.7(時速約2080キロメートル)などと比較すると非常に鈍重である。『移動要塞型シェルター』として改修・運用されている都合上、避弾経始性と被弾面積を小さくする目的で防御力を重視した丸みを帯びた形状をしているため、音速以上まで加速させることが困難であったためだ。
そんな状況下ではあるものの、やがて最高速度である時速400キロメートルへ達した頃には、ワイバーンロードたちを振り切り、海軍基地のある軍港近くにまで到達していた。
※ ワイバーンロードの最高飛翔速度は、時速350キロメートル前後
スーパーX改を上回る飛翔速度(時速430キロメートル前後)を有するワイバーンオーバーロードについては数騎がしつこく喰らい付いてきていたが、流れ弾が市街地に直撃する懸念がなくなったことで、スーパーX改は全ての武装の使用制限を解除。
機体下面に装備された三基の二連装300ミリ特殊弾カノン砲や機体上部の隠蔽式砲台に装備された300ミリロケット榴弾砲などが次々と火を噴き、接近していた竜騎士たちは軍港や海軍施設上空で次々と爆散し、黒い花火と化しながら撃墜されていく。
さらに竜騎士たちを発艦させようとしていた大型の木造帆船(後にヴェロニア級大型竜母と判明)にも容赦なく省電力メーサーバルカン砲やミサイルランチャーが撃ち込まれ、魔石の埋め込まれた飛行甲板へと引火し大破・炎上し始めた。
虎の子である最新鋭の竜母が攻撃され、対応に追われる皇国軍を横目に、スーパーX改は一気にワイバーンたちが到達不可能な高度1万メートルまで急上昇し、そのまま皇都エストシラントからの脱出に成功したのであった。
※ スーパーX改
出典 : ゴジラ(1984年)
1984年の『第二次ゴジラ事変』にて緊急投入された初代スーパーXの改修機。元々『移動型シェルター』として開発されていた経緯から、現在では特殊生物の強襲時における『移動要塞型シェルター』として改修され、運用されている機体。
初号機(未完成の試作機)の時点で、スペースシャトルにも使用されているセラミック製耐熱タイルを装甲に使用するなど、大気圏突入にも耐えられる仕様であったことから、現在ではスーパーXシリーズの中で唯一、大気圏の離脱・再突入が可能な機体となっている。改修後の現在は、スーパーXⅢで採用されている『超耐熱合金NT-1S』をベースに耐熱パネルがセットされた複合重装甲となっている。
また武装についても、後継機である2機とは設計思想が大幅に異なっている。例えば、安定性と連射性を重視し、初号機のハイパーレーザーCO2タイプはスターファルコンで導入された省電力メーサーバルカン砲へと換装されている。またその他の武装も、照明弾や回転式砲塔のカノン砲など、特殊生物と直接撃ち合って撃退するためではなく、あくまで自衛や戦線離脱を目的としたものが多い。
※ スーパーX2改は、ネオファイヤーミラーを展開しつつ真正面で相対しながら攻撃することを基本戦術としている。一方スーパーXⅢ改は、高出力メーサー砲や冷凍弾ランチャーをはじめとした高い攻撃能力と戦闘機なみの機動性を活かした一撃離脱戦法を得意としている。
そのため歴代スーパーXシリーズのなかでも、回転砲塔のような側面方向へも攻撃が可能な兵装を有するのは、X改のみだけである。(なお、1984年の『第二次ゴジラ事変』においては未使用)。
武装:
カプセル弾臼砲(機体上部の隠蔽式砲台中央部に設置)
300ミリロケット榴弾砲6門(機体上部の隠蔽式砲台左右に設置)
照明弾ランチャー(機体上部に設置)
省電力メーサーバルカン砲2門
ファルコン級大型ミサイルランチャー(機体の左右側面に設置)
300ミリ榴弾砲1門
30ミリバルカン砲4門
二連装300ミリ特殊弾カノン砲3基(機体底部に設置)