東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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092. 未来に視えたもの

 

中央暦1640年2月28日

第一文明圏(中央世界) 

エモール王国 首都ドラグスマキラ

 

 

第一文明圏のあるミリシエント大陸には、大陸南部に列強第一位の『神聖ミリシアル帝国』が、大陸北部に列強第三位の『エモール王国』が存在している。経済的にも軍事的にも世界最大規模の文明圏でもあるため、この世界の中心的なエリアという意味も込めて『中央世界』とも呼称されている。

 

国家転移という未曾有の天変地異により、地球で築いてきた外交関係や経済関係がリセットされてしまった日本国にとって、第一文明圏の国々との国交締結は非常に重要であった。しかし現時点において、日本国は上記二か国の列強国はおろか、中央世界の国々とはまったく国交を締結できていないのが現実であった。

 

中央世界と評される第一文明圏の国々からすると、第三文明圏はいまだに飛行手段が飛竜頼りの田舎文明圏扱いであり、日本国が国家転移した大東洋はさらにその果てに位置する文明圏外である。そのため、果ての果てにあるド田舎からやって来た新参者のような色眼鏡で見られてしまい、なかなか相手にされなかったのだ。

 

しかし昨年11月に列強第二位の『ムー連邦』と対等な立場で国交を締結したことで、各文明圏における日本国の認知度も上がり、さらにムー連邦から仲介もしてもらえるようになったため、状況は少しずつ好転し始めた。

 

現在、北東に位置するミルキー王国と国交締結にむけた協議がほぼ完了できたことから、外務省の使節団はミルキー王国の隣国にある『エモール王国』に向け、国境であるバムナ砂漠を横断中であった。

 

ちなみにミルキー王国は第一文明圏有数の資源国家であり、旧アルタラス王国のような大規模な魔石鉱山に加え、クイラ王国のようにレアアースも豊富に産出していた。そのため外務省は、第一文明圏の中でも最優先で外交交渉を開始し、国交締結まで漕ぎつけたのであった。

 

 

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第三文明圏の東に位置する大東洋において、日本国がアルタラス島の奪還作戦について協議していた頃、列強国『エモール王国』の首都ドラグスマキラにおいて、年に一度の重要な行事が行われようとしていた。

 

エモール王国は日本の四国と同サイズの国土面積をもった内陸国であり、人口も100万人程度と、他列強国と比較した際に数字上はかなり小さな規模のように見える。しかし、人口の大部分は竜の神々の眷属である希少種『竜人族』で構成されており、これがエモール王国を上位列強たらしめていた。

 

竜人族は、ハイエルフに匹敵する高い魔力と獣人族などの他亜人種を凌駕する頑健な身体能力を併せ持ち、さらに『風竜』をはじめとした属性竜などの様々な竜種と意思疎通が可能な特殊能力をもつ。

 

このように国民の殆どが一騎当千の強者であるがゆえ、軍事力ではパーパルディア皇国を上回るとされている。

 

首都ドラグスマキラの北部にあるウィルマンズ城の一室では、国王である竜王ワグドラーンの前に30人前後の大魔導師たちが集まっていた。今日は、国儀である『空間の占い』が実施される日であり、部屋にいる全員が緊張した表情をしていた。

 

それもそのはず、占いという名称ではあるが、実際は空間の神々に干渉する超高等な大魔術の一種である。高い魔力を有した竜人族が大勢で実施する本占いは 98% もの的中率を誇るという、未来予知ともいえるものであった。

 

国の重役たちが見守る中、薄暗いドーム状の部屋の中で儀式は始まる。ドーム状の天井に星のようなものが映し出され、空間占い師アレースルが神々とのコンタクトを開始する。

 

「空間の神々に許しを請い、これより未来を視る・・・」

 

「・・・!?、な!そ……そんな! なんと言うことだ!!」

 

「いったい何だ!何が見えたというのか?」

 

酷く狼狽したアレースルの様子に、部屋中が緊張に包まれる。大地震や巨大嵐のような大災害、はたまた世界規模の大飢饉が見えたのだろうかと、竜王ワグドラーンも焦りを見せ、詳細を問う。

 

「・・・魔帝。そう遠くない未来・・・古の魔法帝国が・・・神話に刻まれし、ラティストア大陸が復活する!!」

 

アレースルから発された『魔帝』という言葉に、その場に居合わせた全員が戦慄し、天を仰ぐ。

 

「時期と場所は!? 奴らはいつどこに復活するのだ!?」

 

「残念ながら空間の位相に歪みが生じている・・・。復活する時期も場所も視えなかった・・・。」

 

ワグドラーンや重鎮たちが矢次早に質問するも、まるで靄がかかったかのような状態で、この世界に発現したラティストア大陸と『ラヴァーナル帝国』だけが視えたらしい。

 

エモール王国が建国されるよりも遥かに昔、古の魔法帝国が存在した神話の時代には、竜の神々が治める『インフィドラグーン』という名の国がミリシエント大陸存在した。

 

あるとき、古の魔法帝国は竜の神々に対し、配下の竜人族を毎年一定数差し出すように要求する。その理由が、『竜人族の皮は丈夫で美しく、これでバッグを作ったら国内で高く売れたから』という耳を疑うようなものだった。

 

眷属を鞄の材料にされた竜の神々は烈火のごとく怒り、竜人族を守るため、断固としてこれを拒否。後に『龍魔戦争』と呼ばれる大戦争へと発展した。

 

巨大な竜と人造魔獣、魔導兵器がぶつかり合った戦いは激戦を極めたが、戦争終盤、コア魔法と呼ばれる究極魔導兵器を完成させた古の魔法帝国は、インフィドラグーンの首都に対してこれを使用。

 

インフィドラグーンの大都市はこのコア魔法の直撃により消滅し、激減した竜人族は世界に離散して遁走する事となる。古の魔法帝国が大陸ごと未来に転移した後、竜人族は再びこの地へ集結し、エモール王国を建国した。

 

「・・・我が国を含め、この世界に生きる全ての種が再びあの悪魔どもの下で辛酸を舐める事になるのか・・・」

 

絶望的な声を発したワグドラーンに対し、魔力を殆ど使い果たして息も絶え絶えのアレースルが反論する。

 

「否、読めぬ・・・未来は不確定なり。魔帝の深き闇に立ち向かう強き光が同時に視えた!」

 

アレースルの言葉に、全員が希望の眼差しを向ける。

 

「一体それは何だ!? 神話に伝えられる神々の介入か」

 

「否、新たな国・・・、別の世界からの転移してきた転移国家の出現による。ここより遥か東・・・。第三文明圏のフィルアデス大陸よりさらに東の大東洋に出現した島国、人族の治めし国。強く世界を照らす光・・・太陽を国旗とした国、国名は日本国・・・。」

 

「相手は古の魔法帝国だぞ! 魔力の低い人族に一体何が出来るというのだ!」

 

人族の国家と聞いたワグドラーンが怪訝な顔をするが、アレースルは言葉を続ける。

 

「魔帝の人造魔獣どもと互角以上に戦う巨大な機械の神龍たちと空飛ぶ巨大な鋼鉄の艦船・・・。いや、一体は機械だが、機械でない。何かの骨のようなものが一瞬見えた・・・。それにコア魔法すら覆い尽くすほどの深淵の闇・・・。我に視えたものはこれだけだ・・・。」

 

言い終えた直後、汗だくのまま床に倒れ伏したアレースルのもとに、ワグドラーンが駆け寄って労いの言葉をかける。

 

「『日本国』だな・・・。よくやったアレースル! 後はゆっくり休むがよい!!」

 

「この日本こそ・・・。古の魔法帝国に対抗する唯一の鍵となろう。」

 

「国家転移とはムー連邦の神話の再来とでもいうのか? それに機械の神龍とは一体・・・」

 

担架に乗せられて医師団に運び出される魔導士たちを見送りながら、重鎮たちは顔を見合わせて、困惑したように首を傾げる。

 

そんな様子の重鎮たちの様子を見た竜王ワグドラーンは彼らを叱責し、外交担当の貴族へ命令を下す。

 

「国儀である『占い』で視えた以上、もはや荒唐無稽な御伽噺と侮るな」

 

「日本についてすぐに調べろ! 人族の国ごときに我ら竜人族がこちらから外交を求めるのは癪だが、魔帝の復活が見えてしまった以上、この世界に生きるすべての種の興亡に関わる最重要事項だ! どんな国か入念に調べ上げ、速やかに国交を結べ!」

 

「これは特命である! 明日にでも第三文明圏へ出立する準備を急げ!!」

 

「その必要はなし・・・。日本国は向こうから外交を求めて来る・・・。現在、ミルキー王国国境付近の砂漠を通過中だ。明朝には第24番の国境の門にたどり着くだろう・・・。」

 

担架の上で気絶寸前のアレースルが、弱々しく声をあげる。

 

「それは好都合だ。第24門の番人に、決して門前払いせぬよう魔信で伝えておけ!」

 

竜王ワグドラーンは再来する魔帝の恐怖に怯えつつ、密かにまだ見ぬ日本国へ期待を寄せるのであった。

 

 

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