東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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094. 列強の対応 中編

 

中央暦1640年3月1日

第一文明圏(中央世界) 

列強 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス

 

 

第一文明圏のあるミリシエント大陸の南部には、列強第一位、つまり自他ともに『世界最強の国家』と国内外から認知されている『神聖ミリシアル帝国』が存在している。

 

ミリシエント大陸の約半分という広大な領土に加え、古の魔法帝国こと『ラヴァーナル帝国』が不在の現在において世界で最も高度な魔導技術を有しており、魔導技術力・軍事力・経済力とも他の列強国の追随を許さないほどの国力を誇る。

 

第一文明圏が中央世界と呼ばれる理由が、総合力が最強の『神聖ミリシアル帝国』が大陸南部に、個人能力最強の『エモール王国』が大陸北側に存在しており、その両大国が融和政策をとっていることもあって、文明圏として最も安定しているためであった。

 

神聖ミリシアル帝国を支える魔導技術の高さだが、実は『ムー連邦』が独力で機械科学文明を発展させてきたのとは異なり、自らが基礎研究や試行錯誤を行い、発展させてきたのではない。

 

ミリシエント大陸には、かつて『龍魔戦争』と呼ばれる『インフィドラグーン』との大戦争前後において、ラヴァーナル帝国が建設した軍事施設や研究施設などの超魔導文明の遺跡が数多く残されていた。神聖ミリシアル帝国はこれらの施設跡やそこに残された遺品の数々を解析し、それを自国の技術として取り込んできていたのだ。

 

自分たちよりも進んだ文明や技術、知識に敬意を払い、追いつけ・追い越せの精神で模倣し、積極的に取り込もうとする姿勢自体は何も問題ない。明治維新の頃の日本や、第二次世界大戦後に独立した旧西欧列強の植民地であった国々も、そうやって国を発展させてきた。

 

神聖ミリシアル帝国における問題点は、ラヴァーナル帝国の魔導文明があまりに高度なため、原理・原則を完全に理解できず、構造や形状をそのまま模倣していることである。悪いように言えば、物事の本質を把握しないまま手本通りに作っているだけに過ぎないのである。

 

そのため独自の開発力や応用力は低く、互いに切磋琢磨して発展させてきた地球と比較すると、その技術体系はかなり歪んでいるのだ。この状況を問題視している者もいるが、『世界最強』というネーミングバリューに胡坐をかいてしまっているのが現状である。

 

そんな神聖ミリシアル帝国であるが、『ムー連邦』における『情報分析課』(マイラスの所属先)と同じく、諜報活動を専門にしている『帝国情報局』という部署がある。首都である帝都ルーンポリスにある帝国情報局の建物の一室では、二人の男が神妙な顔つきをしながら話し合っていた。

 

一人は帝国情報局の局長アルネウス、もう一人は彼の部下である諜報員のライドルカだ。ライドルカは第三文明圏を中心に諜報活動を行っており、昨年末に発生した『魔王事変』においても、『古の魔法帝国』の遺産の一つである。『魔王ノスグーラ』の性能把握と情報収集のため、トーパ王国を訪れていた。

 

「魔王ノスグーラを文明圏外の新興国が撃破した報告にも驚かされたが、今度は列強パーパルディア皇国の正規軍が完膚なきまでに叩き潰されたとは・・・。ライドルカ、お前はこの新興国を・・・、日本国についてどう考える?」

 

アルネウス局長は、ライドルカの作成したフェン王国における戦いについてまとめたレポートを眺めながら尋ねる。

 

「照射した対象を焼き尽くす、または瞬時に凍結させる魔光砲を搭載した陸上兵器たち、誘導魔光弾についても航空機や車両、さらには歩兵からも発射可能なものなど様々な種類が実戦配備されていました。このように、私がこれまでに目撃した兵器だけでも、我が国とは隔絶した技術力の高さを感じました・・・。」

 

「さらに今回のフェン王国において、それ以上に驚愕的なものを確認しました。運よく、湾港からそれを撮影することに成功しました。こちらの魔写をご覧下さい。」

 

ライドルカが封筒から一枚の魔写を取り出し、アルネウス局長へ手渡す。そこには、海面から浮上飛行している異形の艦艇が写されていた。

 

「空飛ぶ魔船!? 我が国の秘匿兵器である『空中戦艦パル・キマイラ』とは様相が大分異なるが、これほど大きな金属製建造物を浮上させる技術を有しているだと・・・。」

 

アルネウス局長は、ライドルカの撮影したごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』の魔写を食い入るように見つめながら呟く。

 

神聖ミリシアル帝国には、発掘された古の魔法帝国の兵器を解析し、リバースエンジニアリングやその運用を専門にしている部署が存在する。しかし、あまりに構造や原理が難解すぎるものは、解析作業が遅々として進んでいないのが現状である。前述の『空中戦艦パル・キマイラ』に搭載されている浮遊魔法を利用した機関(反重力魔導エンジン)もその一つであった。

 

「いずれの兵器も魔力反応を一切検知できなかったことから、『ムー連邦』のような機械科学式である可能性が非常に高いと考えます。つまり魔法と科学という大きな違いがあるとはいえ、我が国はおろか、魔帝に匹敵する技術を有した恐るべき国家が、東の果てに出現したということになります。」

 

「幸いなことに、ロデニウス大陸やその周辺の国々、さらにはムー連邦とも友好的な関係を築いており、また旧ロウリア王国を併合するような動きも見せなかったことから、『グラ・バルカス帝国』のような領土野心のある国ではなさそうです。まだ未知数なことが多いですが、パーパルディア皇国のようにただの文明圏外国家として扱うことは非常に危険だと考えます。」

 

ライドルカの熱弁に、アルネウス局長はデスクで腕を組みながらじっと考え込む。

 

「そうだな・・・。日本国の規模は不明だが、君が持ち帰ってくれた資料から推測される技術力の高さだけでも、絶対に敵対するべき相手ではないと私も思うよ。」

 

「やれやれ、プライドの高い外務省や政治家様を説得するのは心が折れそうだが、日本を不必要に刺激しないように私から上申しておこう。魔王ノスグーラの件を踏まえ、先月に調査のための使節団派遣を提案した時は、聞く耳すら持たずに笑い飛ばされたからなぁ・・・。」

 

アルネウス局長はポツリ呟くと、自席を立って窓から外務省の建物や議員会館を見ながら溜息を吐く。

 

「それでは、日本国とパーパルディア皇国の戦争が終結した後、改めて使節団の派遣を提案してみてはいかがでしょうか。先日の報道によると、パーパルディア皇国は日本国に対して宣戦布告と民族浄化の宣言を行ったようです。おそらく今年中には第三文明圏の雄、パーパルディア皇国は日本国から熾烈な攻撃を受け、列強国の地位を失うことが予想されます。」

 

「これを加味し、皇国に代わって新たに第三文明圏、及び東方国家群の盟主となった日本国を次回の『先進11ヵ国会議』に招待するため・・・という形式であれば、議員たちも納得させられるかもしれません。」

 

ライドルカの提案に、アルネウス局長も納得したように頷く。

 

「いずれにせよ、第三文明圏の争乱が落ち着いてからすぐに動けるよう、今は根回しに徹するとするか。その時に備え、ライドルカ、お前は引き続き日本国の情報を集めてくれ。」

 

エモール王国のような『未来視』というチート能力がないこともあり、日本国に対して後手に回った対応をとるかたちとなった神聖ミリシアル帝国だが、帝国情報局の働きにより、某国のような敵対という最悪な状況になることは回避できる見通しとなった。

 

この数か月後、フィルアデス大陸のとある都市で『日本国が有する地球科学技術の結晶』と『古の魔法帝国が遺した生物兵器』が激突することになる。

 

純粋なラヴァーナル帝国製人工魔獣の貴重な戦闘データを見損ねた神聖ミリシアル帝国の関係者は、なぜエモール王国のようにもっと早い段階で日本国と国交を締結し、観戦武官を派遣しなかったのかと激しく後悔することになるのであった。

 

 

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