東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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095. 列強の対応 後編

 

中央暦1640年2月2日

フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国

皇都エストシラント パラディス城 玉座の間

 

 

スーパーX改の活躍により、外交官の朝田と篠原が無事に皇都エストシラントを脱出出来たその日の夜、『皇宮パラディス城』にある玉座の間では緊急の帝前会議が開催されていた。

 

ちなみに第三外務局のカイオス局長は、スーパーX改離陸時のジェットファンによる風圧で吹き飛ばされ、真冬の噴水へ勢いよくダイブしたことで風邪をこじらせ、欠席していた。

 

あっさりと敵飛竜に皇都エストシラントへの侵入を許し、外交官たちに逃げ去られてしまったことに、当事者である皇国皇軍最高司令官アルデと皇都防衛軍基地司令のメイガ陸将は借りてきた猫のように縮こまっていた。

 

「アルデにメイガよ、此度の失態についてどう責任を取るつもりか?」

 

ルディアス皇帝の問いかけに、アルデは声を震わせながら答える。

 

「フェン王国の攻略失敗に続き、重ね重ね誠に申し訳ございません。まさかたかが二人の人間を救助するために、恐れ多くも皇都まで乗り込んでくるとは思いもよりませんでした・・・。ですが、今回の件で日本国がどのような兵器を運用しているかを把握することが出来ました。それを踏まえ、私どもの考えた対策をご拝聴頂けると幸いです。」

 

「ここまで列強国である我が国をコケにするような行いをしたのだ。日本国も民族浄化をされても文句は言えまい・・・。それよりもお前の話した敵飛竜の特徴と今後の対策について述べてみよ。」

 

レミールが私情で激昂し、外交官の身柄を拘束して政治犯収容所へブチこもうとしていたことを棚にあげ、ルディアス皇帝は自らが宣言した日本国に対する民族浄化宣言を正当化するかのような発言をする。

 

「迎撃に向かった飛竜隊の証言によると、敵飛竜はまるで隕石のように擬態して皇都エストシラント上空へ侵入したとのことでした。実際の隕石のように宇宙から落ちて来るような芸当は不可能であることから、ワイバーンロードの最高到達高度よりも高い地点から擬態魔法をかけて来たものと思われます。」

 

「外交官救出時も中から金属製ゴーレムが出現したと報告があることからも、機体内には多数の魔導士が待機しており、機体の擬態やゴーレムの操作を行っていたものと思われます。」

 

「また敵機の表面はオーバーロード種の導力火炎弾の直撃にも耐える重装甲をしていましたが、最高速度はロード種とオーバーロード種の中間くらいでした。」

 

「さらに撮影しました魔写を先進兵器開発研究所で精査しましたところ、ムー連邦の飛行機械マリン同様、風を送り出す機構が機体の底部と後部に確認されました。飛行機械の場合、ここを破壊されると姿勢制御や速度を出すこと出来なくなり、墜落するとのことです。」

 

「以上のことから、この機体よりも俊敏性に優れるオーバーロード種であれば、弱点である機構へ火炎弾を直撃させ、撃墜可能であると考えます。また今回の件も踏まえ、今後はこのような装甲型ではなく、マリンのような攻撃型が襲来してくることが予想されます。二度とこのような失態を踏まぬよう、オーバーロード種の量産を陛下に許可頂きたく思います!」

 

オーバーロード種の生産にはワイバーンロード種を産む親竜を厳選し、その卵を新開発の強化魔法陣の上で孵化するまで培養しなければならないなど、製造にはかなり手間がかかる。特に卵の培養時にかなり潤沢に魔石を使用しなければならないため、ワイバーンロードの三倍に及ぶ製造費が必要になるなど、量産性は劣悪であった。

 

しかしガイガンが投入可能となる夏頃までに、日本国から本土を防衛することを重視したルディアス皇帝は、アルデとメイガから要望されたオーバーロード種の量産計画を承諾。財務局へ特別予算の捻出を指示し、各機関へオーバーロード種の量産対応を開始させた。

 

もしも外交官の救援に参上した機体が、X2やXⅢなど音速超えの後継機たちであれば、皇国もこのような楽観的な見通しは立てられなかっただろう・・・。

 

皇国が自分たちの認識が大幅に誤っていたことに気付くのは、アルタラス島が奪還され、事態が既に後戻り不可能なステージまで進行してからとなるのであった。

 

 

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中央暦1640年2月2日

フィルアデス大陸の東にある文明圏外国 

アワン王国 パーパルディア皇国割譲地

 

 

フィルアデス大陸の東、位置としてはガハラ神国の北側、列強パーパルディア皇国から北東沿岸より東側に位置するエリアには、文明圏外国の島国 アワン王国がある。

 

海洋資源が豊富で漁業と農業が盛んな国ではあるが、旧アルタラス王国のような鉱物資源の産出も特になく、工業力や軍事力は脆弱であった。

 

そのため日本がこの惑星に転移する数年前、列強パーパルディア皇国から領土の割譲について要求された際にはあっさり屈してしまい、国土の西側にあるエリアはパーパルディア皇国の割譲地となっている。

 

しかし生産性が低すぎて割譲後の開発は行われず、現在も簡単な湾口が整備されているだけの左遷地扱いされた閑散とした地域となっていた。

 

そんなアワン王国内にある皇国割譲エリアの酒場では、怪しげな二人の男が話し込んでいた。二人とも普通のヒト族の男性であるが、その首元には怪しげなチョーカーが巻かれていた。

 

一人はオールバックの金髪をしており、もう一人はワインレッドのジャケットとスラックス姿の優男であった。

 

「ダクシルド、お前が進めていた魔王ノスグーラによる『フィルアデス大陸壊滅計画』は失敗したようだな・・・。ノスグーラによる侵攻が工業都市デュロまで到達したとき、魔王軍の戦力をさらに増強できるよう、俺の方で人工魔獣たちをせっかく用意していたというのに。」

 

「まあ魔王軍向けに準備していた人工魔獣たちは、うちのルディアス皇帝が指示したフェン王国侵攻用として使われたから無駄にはならなかったけどな。」

 

オールバックの金髪の男・・・、パーパルディア皇国先進兵器開発研究所の魔帝遺跡研究班に所属するアルバート主任が落胆したような声で話す。アルバートの苦言に対し、もう一人のスーツ姿の男・・・ダクシルドが苦々しい顔をしながら答える。

 

「昨年の11月に魔王城ダレルグーラの広場でノスグーラの封印を解いたとき、ヤツの頭部に予め魔族制御装置をセットしていたが、まったく効果がなかった。それどころか、光翼人の末裔たる我々の指示を聞こうともしなかった・・・」

 

 

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約4か月前の中央暦1639年11月初旬

グラメウス大陸奥地 グーラドロア平野

魔王城ダレルグーラ

 

 

「よく聞け、魔王ノスグーラよ。我が名はダクシルド! 一万年以上前に封印された不甲斐ない貴様を私が現代に蘇らせた。これより先、偉大なる魔法帝国の始祖であり、貴様の創造主である光翼人の末裔たる私の手先として存分に働いて貰うぞ!! 」

 

魔王ノスグーラについての資料は皇国本国に残されており、遺伝子はおろか魂の髄まで創造主である魔法帝国や光翼人へ忠誠を誓うようインプットされていると記載されていた。さらには念には念を入れ、皇国本国で開発されたばかりのサークレット型魔族制御装置も事前にセットしており、万全を期していた。しかし・・・

 

「グァッグァッグァッ、貴様程度の脆弱な者が魔帝様、ないし光翼人様の末裔だと? 寝言は寝てから言え! 確かに下等種どもよりは多少マシな魔力を有しているようだが、我が主であった光翼人様に比べれば足元にも及ばぬは!!」

 

魔王ノスグーラはダクシルドの一行をバカにしたように笑い飛ばすと、セットされていたサークレット型魔族制御装置を頭から取り外し、粉々に握り潰す。

 

「このまがい物も魔帝様が作られていたものに比べると、まるで玩具のようじゃわい。確かに魔力の波長は光翼人様のものとよく似ているから、大方下等種族との混血が進んで退化してしまったというところじゃな。」

 

「魔帝様が復活なされたら、貴様のような魔力の弱くなりすぎた末裔など、下等種どもと大差ない扱いをされるだろう。我を復活させた功績に免じ、この場は見逃してやるから早々に立ち去るが良い。我はこれから魔王軍を再建し、トーパの民から順にこの大陸を制圧するのに忙しくなるかな!」

 

 

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「一万年以上にも及ぶ封印の間に何らかのバグやエラーが発生していたのか、ノスグーラはトーパ王国を救援に来た日本国とかいう新興国家にあっさり駆除されたらしい。まったく、あれだけの大口を開いておきながら低文明国家に返り討ちにされるとは、魔王も情けない・・・。」

 

所詮は生物兵器に過ぎない魔王ノスグーラに光翼人の末裔というプライドを傷つけられ、ボロクソに罵られて追い返されたことを思い出したダクシルドは、イライラした様子でそのときのことを話す。

 

「いや、その日本国だが、ただの低文明国家と侮らない方が良いかもしれないぞ。さっき話したフェン王国侵攻用として使われた人工魔獣・・・、陸戦用にアンギラスを、海戦用にエビラをそれぞれ一匹ずつ侵攻軍へ引き渡していたのだが、フェン王国の救援で参戦した日本国の軍によってあっさり駆除されたらしい・・・。」

 

「所詮はパーパルディア皇国程度の正規軍とはいえ、大規模な侵攻軍ごとあいつらが完全に叩き潰されたと緊急魔報(電報の魔法版)が届いていてな。おかげで久々の休暇を満喫中だった俺は、このままデュロへトンボ帰りさ。」

 

やれやれといった様子で、アルバートは肩を竦めるのと同時に手のひらを上に向けたまま両肩の高さまで両手を上げる。

 

「俺個人の考えとしては、エビラやアンギラスを撃破できる力を持っていることから、日本国はミリシアルと同程度の国家だと考えている。うちの愚帝たちは、日本国をあくまで文明圏外国家として考えているようだがな(笑)」

 

「文明圏外国家と侮っている相手に敗北したことで酷くお怒りなのか、俺に『ガイガン』のコールドスリープ解除、及び実戦投入に向けた調整を命じてきやがったよ。どうも日本国との戦争でガイガンを投入したいらしい。」

 

「デュロの遺跡に残されてたのは・・・、確か『ミレース』の方だったか?」

 

考え込むような仕草をするダクシルドに対し、アルバートが続ける。

 

「その通りだ。来るべきときに備え、本国に保管されている『レクス』と合わせて運用させたかったが、まあ仕方ない。ある意味、堂々と大手を振って復活準備が進められるようになったから、俺としては良かったとも考えている。」

 

「日本国との戦争でガイガンの戦闘データさえ取得するれば、もうこの国に用はない。ガイガンが暴走したかのように見せかけ、デュロと遺跡を木っ端微塵に破壊してすべての証拠を抹消し、そのままガイガンと共に本国へ帰国しようと思っている。」

 

「この計画を遂行するうえでダクシルド、お前に頼みたいことが一つある。皇国の脆弱な魔導機関では、ガイガンを実戦投入可能にまで調整できるのはどう頑張っても8月頃までかかるだろう・・・。その間にデュロが日本国に攻め込まれられたらアウトだ。」

 

「エビラやアンギラスを蹴散らす力をもった日本国に対し、皇国正規軍では時間稼ぎにすらならないだろう。そこでだ、エスペラント王国北に封印されている邪竜を解放し、魔王ノスグーラで行おうとしていた『フィルアデス大陸壊滅計画』を代わりに進めて欲しい・・・。」

 

アルバートの言葉に、ダクシルドがぎょっと驚いたような表情を見せる。

 

「ちょっと待て。『邪竜アジ・ダハーカ』は、我らの祖先である光翼人ですら使役することを諦め、バグラ火山の火口に封印したと記録されている化け物だぞ! 万が一、そんなヤツがガイガンを調整中のデュロを襲撃してしまえば、元も子もないぞ!!」

 

ダクシルドは、焦ったような表情でアルバートのプランを非難する。

 

「長距離の飛行は不可能で、かつ泳げないヤツの特性を加味すれば、グラメウス大陸バグラ火山からデュロまで移動するには相当時間がかかる。それにお人好しの日本国のことだ、友好国が化け物に襲撃されそうになっていれば、ノスグーラのときみたいにトーパやその他国々へ救援に向かうだろう・・・。こちらとしてはそれで十分時間稼ぎにはなる。」

 

それぞれの思惑が交錯するなか、『皇国』の新たな暗躍が始まろうとしていた・・・。

 

 

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