インビジブル・デルタ   作:ニゲル・ガレット

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ROAD TO THE TOPでのアヤベさんの曇り具合がツラい、なので二次創作くらい妹さんが生きていても……と思い筆を取ったものの内容を他投稿者様と差別化しようとする内にまったく別の何かが出来上がってしまったと筆者は供述しており……。
自分の手に負えないまま執筆中小説一覧の肥やしにするのも惜しいと思い投稿しました。
誰か続きを書いてくれ……!


未知なる一等星

トレセン学園カフェテリア。

2000名ものウマ娘たちが在籍するマンモス校であるこの学園の食事処は、昼時にはいつも大賑わいだった。

 

「デスタちゃーん!一緒に食べよー!」

 

「はーい!ただ今ー!」

 

席を探す最中、友人たちの呼び掛けを聞き届けて快活な返事とともに踵を返すウマ娘。

 

……それが、デスタちゃん……もとい『デネブリスペクター』なる存在だった。

 

「お誘いありがとう!みんなとこうやって食卓を囲めるなんて、とっても嬉しいよ!」

 

「も〜大げさすぎっ!」

 

「そーそー!ま、デスタちゃんがいると盛り上がるしね!」

 

そう笑って返してくれる一行につられて、笑みがこぼれる感覚を味わいながら席につく。

 

こんな感情は……あの頃には考えられないものだったから。

 

そうして食事と共に展開されていった話題は、やがて間近に迫った冬休みに関することに切り替わった。

 

「もうすぐ冬休みだけど、みんなはどこにお出かけの予定なの?」

 

そうひとりが口にしたのを皮切りに、一行は家族との遠出や友人との外出など各々の予定を挙げだす。その勢いに、すぐさまデネブの番はやってくる。

 

「私は久しぶりに孤児院に顔を出そうと思ってるの!院長やみんなと思いっきり遊……ゲフン、みんなのわがままに応えてあげるのよ!」

 

言い切ると、思わず言い直してしまった部分をしっかり拾った全員の笑い声が響き渡る。

 

「ハハハ!デスタちゃんったら〜!」

 

「自分が久しぶりに構ってほしいだけだったり〜?」

 

「そ、そんなことないって!」

 

そう茶化す全員に、二重の羞恥心で顔を真っ赤にしながら言い返すデネブ。

しかしその指摘は的を得ている。なにも考えず遊戯に興じられたあのときの童心に再度浸りたい、そんな思いは確かに存在していたからだ。

 

デネブは両親の顔を知らない。経緯は記憶の奥底に眠らせてしまったが、当てもなく夜中の路地で座り込んでいたところをその孤児院の院長に拾われ、同じく最寄りのない子供たちと共に育てられた身だった。

この『デネブリスペクター』という名も、そこで与えられたのだ。

 

その後数回ラリーを繰り返してほとぼりが冷めてきたタイミングで、全員の皿が空き始めた。

 

「ごちそうさまでした!」

 

全員で一斉に手を合わせ口にしたその言葉で会食はお開きとなり、食器の返却に向かいだした一行はその流れで解散となった。

 

「また一緒に食べようね!」

 

「もちろん!また会おっ!」

 

再会を誓い合い、踵を返したデネブは意気揚々とカフェテリアをあとにしようとした。

 

──出入り口の間際、何気なくすれ違った生徒の目が見開かれていたことに気付かぬまま。

 

「……ねえ」

 

「ハイ?」

 

突如自分に向けられた呼び止めに虚をつかれ振り返った先には、少なくともデネブの記憶には存在しないウマ娘がいた。

クールな印象を抱かせる落ち着いた顔つきは、よく見ればなんとなく自分と似ているような気もするが、それ以上の感想はない。

彼女は体を硬直させているこちらに至近距離まで歩み寄るとまじまじと顔を見つめ回してきた。

 

「な、どうしたの……ですかね?」

 

詰め寄られている理由に心当たりがなかったデネブはおののきながらそう口にした。先輩であれば失礼にあたるだろうかと姑息な敬語を添えながら。

すると当てが外れた、というように首を振った相手は抑揚のない声でこう言った。

 

「……呼び止めて悪かったわね、忘れてちょうだい」

 

くるりとカフェテリアの方に向き直ったその背中を、人混みの中に消えていった後もしばらくデネブは見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長室には、あるニュースが飛び込んできていた。

 

「捕縛……これでようやく、終わったのだな……」

 

感慨深げに呟く秋川理事長のスマートフォンの液晶に映るニュースサイトでは、ある人物の逮捕報道がなされていた。

 

「ええ、捜査関係者の皆さんには何と労えばよいものでしょう」

 

涙を堪えるためか、瞳を閉じながらそう口にする秘書・駿川たづな。彼女のこの捜査の動向について注目していた内のひとりだった。

 

「ウマ娘という種の深淵を覗く……そのためにウマ娘の未来を奪うことは決して許されることではない」

 

理事長はその人物の所業に対し怒気を込めたように語った。

 

その人物は10年ほど前に存在が明るみとなった、癒着した医療施設から死産を装って不法に流された新生児を用い、6年に渡り研究を繰り返していたとして御用となった違法研究組織の最後の生き残りであったのだ。

 

「手引きをしたとされる病院の院長は未だ口を割らないそうですが、閉じ込められていた子供たちは残らず身元が判明し、あるべき形の生活に戻されつつあると聞きます」

 

それはとても暗く頼りない道ではあるが、と内心で付け加えながらたづなはそう口にした。

何名の子供たちが流されていたのかは院長が口を割らない以上正確には不透明ではあるのだが、何名かの研究員たちの供述を鵜呑みにするなら実験中の()()()は出なかったとされており、また支部の存在も確認されなかったため、現時点で救出された子供たちで全員、と推測するのが筋なのだが、この事態の収束点はまだ先にあった。

 

「だが、肝心のひとりが未だ見つかっていない……」

 

そのひとりは、組織の尻尾を露にするきっかけとなった存在。

あるとき、救出された被験者に残らず確認された逃亡防止用の拘束具の重しをもろともせず、施設を脱走した者がいた。

連れ戻さねば、と慌てても警察、探偵などの手を借りるワケにはいかない組織は構成員のみで捜索班を編成するも、足取りを追うことはできないまま時は過ぎ、やがてそこから組織の存在が明るみとなってしまい、あっけなく御用となってしまったのだ。

そんな、ある意味では他の子供たちを救ったといえる勇気ある逃亡者の所在は、警察でさえも掴めていない。それは研究者たちの忌まわしき悪あがきによるものだった。

 

「検挙の間際に研究データのすべてを抹消されたそうで、彼女に関する情報の一切は残っていない……でしたよね?」

 

あいにく脱走の時刻は見通しの悪い新月の夜中で目撃者がおらず、外見のヒントは同じ被験者だった子供たちによる証言の『鹿毛であること』しかないらしく、氏名すら与えられていなかったため捜索のしようがない、というのが関係者の見解だった。

もし生きているならばこのトレセン学園でいう高等部にあたる年齢とされるが、彼女の安否は天のみぞ知る、といったところだろう。

 

「我儘……だが、彼女の安否を気遣わずにはいられん」

 

「はい……どうかせめて、生きていることを祈るばかりです」

 

ウマ娘たちを導き支えるいち先達として、無事を願わずにいられない二人は、まだ知らない。

 

 

新星集うトゥインクル・シリーズにて、既にカウントダウンが始まっているということを。




デネブの容姿はアヤベさんとは髪型、身長とか諸々異なるのでよく見たら顔似てるかも、ってくらいのイメージでお願いします。

もともと書こうとしていたものからズレにズレたものですので、続きはありません……。
気をてらった書き出しですれ違い系アヤベさん妹生存Ifを書きたいという方はどうぞパクってください。
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