「写真で見るよりずっと男前だな……すまんな、少し遅れたか」
車の前で立つ男性と握手をする。この人が、おそらくキミの父親の友人だろう。
キミが来たばかりです、と首を振るとほっとしたように笑った。
「ようこそ、稲羽市へ。今日からお前を預かる事になる、堂島遼太郎だ。聞いてると思うが、お前さんの親父とは中学の時からの付き合いでな」
「……初めまして、
キミがそうやって挨拶をすれば、また堂島は苦笑する。
「初めまして、か。一応、お前に会った事はあるんだが……無理もないか、ありゃ赤ん坊の時だったからな」
それから、彼はやや後ろに隠れがちだった女の子を前に押し出す様に動かした。
「こっちは菜々子、俺の娘だ。……ほら、挨拶しろ」
「……にちは」
挨拶しろと言われても、彼女……菜々子は、小さい声でわずかに聴き取れるだけ呟く様に言うと、すぐまた父親の後ろに隠れてしまう。
それを見た遼太郎は笑い、笑われて軽く不機嫌になった菜々子が丁度彼の尻辺りを平手でたたく。そしてまた軽く笑う……。
微笑ましい光景に、少しだけキミも笑いがこぼれた。
「それじゃ、行くとしようか。車、こっちだ」
丁度ガソリンが少なくなってきていたという事で、ガソリンスタンドへと君を乗せた車は立ち寄る事となった。
らっしゃーせー!という威勢の良い店員の言葉と共に車は停車。
キミも扉を開け、外に出て背伸び……ガソリンの臭う空気を背伸びをしつつ軽く吸い込む。
「どこか、お出掛けで?」
「いや、ちょっと迎えに来ただけだ。こいつが今日都会から来たばかりでな」
「へぇ、都会からすか……」
遼太郎と店員の話を聞いている間にも、菜々子はきょろきょろとあたりを見回す。店員さんがトイレの場所を伝えると、その方向へ走り去って行った。
「そうだな。レギュラー満タンで頼む」
「ハイ、ありがとうございまーす!」
少しタバコを吸ってくるか、と遼太郎は歩き去っていく。
と、そのタイミングでしばらく君と遼太郎を交互に眺めていた店員が、君に話しかけてきた。
「君、高校生?」
何気ない質問に、キミは頷く。
「やっぱりそうか。都会からくると、何も無くてびっくりっしょ?実際退屈すると思うよー?やる事と言ったら、友達ん家行くか、バイトする位だから」
「……まぁ、ここはここで、空気とかは都会よりましだと思うけど」
「ははっ。それは違いない。まぁここは、ガソリン臭い訳だけど」
2人して軽い冗談交じりの会話で少しだけ笑う。
「……でさ、今、ウチバイト募集してんだ。良かったら、考えてみてよ。高校生でも大丈夫だからさ」
バイトか、とキミは少し考え込んだ。
さっきも聞いたようにどうせあまりする事も無い。
考えておきます、ととりあえずキミは無難な返事を返し、握手した。
「さーてっと、仕事、仕事っと」
店員が離れると同時、菜々子が帰ってきた。
程なくして、遼太郎も。
電車と車にずっと乗っていた事による乗り物酔いかなにかでちょっと気分が変だったが……大したものではないのでガソリンを入れた車に乗り込み、堂島家へと向かう事となった。
「そんじゃぁ、歓迎の一杯と行くか」
「「「乾杯」」」
堂島家、夜。
キミのために用意された、段ボールが多い部屋にとりあえず持ってきた鞄を置いたキミは、菜々子と遼太郎と共に机を囲んで座っていた。
目の前にはスーパーで買ってきたのであろう寿司。そして、オレンジジュースの缶を片手に持ち、3人でぶつけ合わせる。
「……お前の事は聞いてる。色々あったみたいだな……」
色々なんてのも大げさだ、とキミは内心でぼやく。
単純に気に食わなかったからつい暴力が起きてしまった。それだけの、事。
「都会と違ってここは無いものが多いだろうが……その分静かに過ごせるだろ。ゆっくり考えていきゃぁ良い。お前の親父さんも心配してたぞ?」
心配、ね。
キミはまた苦笑する。
取り立てて大した愛情がある訳じゃない。かといって嫌いでもない。
キミは君の両親を両親と思っていたが、物語の様に深く愛している訳でも、大っ嫌いだったわけでもない。
両親の場合も同様だろう、実際に最近は忙しく、キミに意識をあまり向けられていなかったのだから。
何とも言えない、宙ぶらりんな状態であった。
そんじゃ、食うとするか、と遼太郎が箸を伸ばした、その瞬間。
彼のポケットの中で携帯が着信を告げた。
「ったく、誰だこんな時に……俺だ」
彼は愚痴を呟きながら立ち上がると、少しだけ机から距離を取りつつ、携帯を耳に当てて通話。
少ししてそれは終了し、携帯を閉じた。
「酒飲まなくてアタリかよ……悪いが、少し出てくる。飯は2人で食べといてくれ」
遼太郎がコートを手に取り、キミと菜々子に向き直る。
菜々子はややうつむき加減になりつつ、頷いた。
「いつ帰ってこられるかは……解らん。後の事は頼んだぞ」
そう言い残し、遼太郎は玄関を開けて出て行った。
「菜々子―、外雨だ!洗濯物はどうした?」
「入れた―!」
「そうか、じゃあ行ってくる」
玄関先とのやり取り。そして扉が閉まる音。次に、外で自動車のエンジンがかかり、ゆっくりと走り去っていく音。
……程なくして、居間は沈黙が支配した。
菜々子がテレビをつけるとニュースをやっていたが、それを元に話す気も起きない。
仕方が無いので、キミはとある疑問を口にした。
「お父さんの仕事って、何?」
テレビを見つめながら寿司を口に運んでいた菜々子だが、キミの質問に振り向き、少しの間口を動かし、飲み込んでから口を開いた。
「シゴト……ジケンのちょうさとか。お父さん、ケイジだから」
ケイジ……刑事。
それを聞いて、思わずキミはマジかよ、と呟きたくなった。
キミの両親はこれを知っていたのだろう。
さては、キミに更生でもさせるつもりだったのか。
それとも、やはり自分がまた何かしでかしそうだと踏んだのか。
どちらにしろ、あまり良いイメージは浮かばない。
困った事になった、とキミはため息を吐く。
これからの生活はどうなるのやら。
「……食べないの?」
ふと目を向ければ、不思議そうに、しかしどこか不安げに見てくる少女の姿。
マトモに悩む事も出来ないらしい。
大丈夫だよ、と答え、寿司を口に運んだ。
遅くなってしまいました。
未だオープニングフェイズでありますが、何とかやっていきたいと思います。
そして主人公の名前が判明。
九十九真……ネーミングセンスは、まぁ適当であったりはします。少しだけ意味を込めてもいますが。
主人公がややネガティブよりなのは仕様です(ぇ
タイトルの名前の書き方を変更しようかなとも思っております。
ペルソナは日日で動いていくストーリーなので、日々でかき分けていくのがやはりいいかな、と。
これからもゆっくりやっていきますが、良ければお付き合いください。
追伸
アニメのペース早過ぎィ!