キミは、目を覚ました。
まず最初にその瞳に映るのは、見慣れない天井だ。
寝起きでまだ動ききらない頭。少しして、自分が引っ越したのだという記憶を取り戻す。
「朝ごはん、出来てるよー?」
そして扉越しに聞こえる、女の子の声。
それもまた若干のタイムラグの後、キミは把握する。
キミは堂島家へ昨日引っ越したばかりだ。今いるのは、自分に割り当ててもらった部屋。テレビや机、作業机の様なものまで、最低限のものは揃っている。
起き上がり、頭を振る。今日から学校なのだ、あまりぼんやりする時間は残されていないだろう。
着ていた服を脱ぎ、つりさげていたハンガーから制服を取り、着込んでいく。以前の君が通っていたのは私服の高校だったので若干違和感を感じるが、思ったよりはマシだったのでキミは内心でほっとした。
そんなキミの視界に飛び込んでくるのは数々の段ボール。実家から直接この場所へと送られた荷物を入れていたもの。
ざっと見る限り、半分程空にして棚や机やタンスの中へと放り込んだ様だ。そして途中で面倒くさくなったか力尽きたか、そのまま放置して寝たという事だ。
……何か嫌な夢を見ていた気がする。キミは頭を軽く振る。頭の中が掻き混ぜられたかのような、変な違和感。若干の疲労感。
慣れない引っ越しでヘタレたか、とキミはぼやいた。まぁ良い、別にすぐに引越しの片づけを済ませる決まりもないのだから、明日明後日までだらだらと片付けても罰は当たらないだろう。。
そう考えるなり、キミは鞄を手に取り扉を開けた。
「おはよう」
居間へ降りてみれば、菜々子ちゃんは目玉焼きとウィンナーを皿にのせ、それを机へと運んでいた。机に皿を置き、キミを見て笑う。思わずキミは本当にあの刑事の娘かと一瞬疑うが、母親似なのだろうと納得した。
「これで、よしっと」
トースターから焼けたパンを取り出し、それも皿に並べて完了。椅子に座る少女に倣い、自分も向かい側の椅子に座る。
「じゃ、いただきます」
きちんと手を合わせ、真面目に言う菜々子ちゃんの姿を新鮮に思いつつも、キミも同じく手を合わせ、それからパンを手に取った。取り出されてあるバターのパックを開け、ナイフでまだ熱い、こんがりとした面へ塗っていく。
「食事は君が?」
また微妙な空気は勘弁なので、キミはとりあえず気になった疑問を投げかけた。
その質問に、少女は頷く。
「あさはパンをやいて、あとはめだまやき。よるはかってくるんだ。お父さん、作れないから」
キミが思ってた以上にここの家事はこの少女が担っている部分が大きいらしい。小学生に家事を任せて流石にぐうたら出来るはずもない。おそらく自分も手伝う羽目になるんだろうな、とキミは内心で溜息を吐いた。
「今日から、学校でしょ?」
そんなキミの内心も知らず、話しかけてくる菜々子ちゃん。そうだけど、とキミが頷けば、少し笑って。
「とちゅうまでおなじ道だから……いっしょにいこ?」
そわそわしながら、こんな事を口にした。案内してもらえるのならむしろありがたい、とキミはその提案にあっさり頷いたのだった。
雨粒が地面に、傘に、家の屋根に。あらゆるところにぶつかり、音を鳴らす。そこそこの強さだろうか、風が無くて良かったと思いながら、キミは黒の傘を掲げて歩いていた。
菜々子ちゃんとは途中、鮫川の河川敷で別れた。ここまで来たら後はまっすぐ行くだけだから、と丁寧に教えてくれ、そして小学校の方へ歩いて行った。よくできた子だな、と思わずキミも内心感心していた。
自分の両親も、あんな風に従順な子供が欲しかったのだろうか。少しそれを考え、そして馬鹿らしいとばかりに笑った。従順で素直な自分なぞ納得できない。どうしようもないのも把握済みだ。
だから。
「!」
そんな事を思いつつ、住宅の間を歩いている時だった。
キミの隣を、ふらふらと、しかし結構なスピードで走り抜ける自転車。
いわゆる傘差し運転という奴で。まぁ見慣れた光景だと思っていたら。
派手な音と共に、バランスを崩した自転車が電柱へぶつかった。
自転車が転倒し、そして乗っていた茶髪の少年が衝撃を受け、その隣で呻いている。
……どうやら股間を直撃したらしい。まぁ、傘差し運転に常に危険はつきものだし、自業自得でもあるのだが。
呻きつつ、痛みに耐えかねて跳ねている彼を横目に、キミは通学路を進む。
キミが学校に到着し、まず思ったのはやはり田舎だな、という事だった。
床が板張りだ……転んでも怪我をしにくくなるのか、とも思うが歩くと軽くきしむような音が立つのがまた。
そんな事を考えながらも、とりあえず人に話を聞き、職員室を目指す。
途中でファラオの仮面のような何かを被った大人や、人形を持っている人を見かけて若干不安になりつつも、キミは職員室へとたどり着いた。
前でノックし、失礼します、とお決まりの言葉を口にして戸を開く。
中の先生に事情を話し……キミの担当の先生の名を告げられた。諸岡、という名前らしい。
あそこ、と指で指し示された通りの場所へ足を運べば、そこには神経質そうな男と、制服姿の先客がいた。
そこでキミは奇妙な偶然にため息をつきたくなる。
目の前にいたその「女生徒」は、キミが昨日、見たばかりの少女だったからだ。
うわぁぁぁぁぁぁぁ1か月以上更新出来てなかったァァァ
しかもP4GAほぼ終わりかけてるゥゥゥゥゥゥゥ
……はい。すんません、夏バテとかで色々体力墜ちてました。精神的な意味でも。
もうだいぶ時間経っちゃってるじゃん何やってんだ畜生……
さて、これでやっと学校編です。
一部ゲームで見知った顔も登場、そして謎の少女もやっと登場いたしました。
ここから、「本編とは違った流れ」へと進んでいく事になります。
とある要因によって、「歪んだ運命」へと進む、と言えばかっこいいでしょうか。
まだまだペルソナとかとある要因が出せなくてちょっと遠い目しそうですが……(汗
お付き合い、頂ければ幸いでございます