投稿が遅くなってしまい申し訳ございません……
話は変わりますけど、ファミマコラボの結束バンドのメイド姿どちゃくそに可愛くないですか???
スタジオから戻ってきたひとりと喜多ちゃんとその辺のよく分からない雑草を食べてお腹を壊していたリョウがトイレから戻ってきたところで、臨時のバンドミーティングがスタートした。
そして虹夏が発表した議題は『より一層バンドらしくなるには?』
うん? ざっくりしすぎてる? 大丈夫、それは俺も思ったから。多分、この場にいる全員もそう思ったに違いない。
まあ、でも急遽始まったミーティングだし、議題を考える時間が全然なかったからちょっと適当なのは仕方ないと言えば仕方がないのだが。
しかし、ざっくりとした議題だったとは言え、意外にも話し合いは順調に進んでいた。
というのも、結構、皆ちゃんと議案を出してるんだよな。
虹夏はバンドグッズの作成……というか、もう作成済みで早速皆の前でお披露目していた。ただの結束バンドに色を付けて腕に巻いていただけだったけど……
リョウは物販についての議案を挙げた。リョウにしては珍しくまともな議案…………な筈もなく、その実態は虹夏の作った結束バンドを500円で売るという、ぼったくりも甚だしいとんでもない議案であった。しかも、サイン付きは650円と更に破格な値段で売ろうとしている。流石は金欠銭ゲバ屑ベーシスト。
喜多ちゃんは結束バンドのイソスタ運営をするなら自分がやりたいと提案し、その提案を気に入った虹夏からそのままSNS大臣に任命された。この三人の中だと喜多ちゃんが一番まともな議案を提案したんじゃないの?
さて、まともでないのもあるけど、一応、各メンバーから議案は出たのは出たので、このミーティングもそろそろお開きが近いかな?
……ん? 誰かメンバーの中で一人だけ議案を出してない奴がいるって?
えー! な、なんだって〜!? それって一体誰の事かな〜? (すっとぼけ)
「後藤さんは?」
「……え?」
「何かアイディアはある?」
「え!? あ、い、いいいいや、私はその……ゔっ!?」
あ、俺が言うまでもなく答えが出たな。
そう、その人は俺の最愛の妹ひとりの事だったのでした〜!!
って、ふざけてる場合じゃない。早くひとりに助けてやらねば。
恐らく、ひとりはこのミーティング中、議案について何一つ考えてなかった筈だ。喜多ちゃんに突然尋ねられて大きく動揺しまくってるのがその証拠だ。あと喜多ちゃんの眩しさに焼かれてんな、あれ。
元々内気な性格で他人と喋ることが苦手なひとりだ。
普段から学校でも話し合いがある時は自分から意見を出すことは殆どしないのだろう。
自分が意見を出さなくても勝手に話し合いは進んでいくし、最後は流されるまま全員に同意しておけばそれで話し合いは終わり。
恐らくは今回のミーティングもその体でやり過ごす予定だったんだろうけど、残念な事にこの場には喜多ちゃんがいた。
喜多ちゃんは優しい子だ。例え相手がどんなに根暗でコミュ障で陰キャであろうと、必ずその子に声を掛けてあげられる優しい気持ちを持った子だ。
今回も彼女からしたらごくごく普通の当たり前の行動をしたに過ぎない。まだ議案を提案していないひとりに気がついて声を掛けてくれたのだろう。100%の善意で起こした行動が、逆にひとりを苦しめる結果になってしまったそれだけの話。
言ってしまえば、ミーティングを適当にやり過ごそうとした、ひとりの完全な自業自得である。
とはいえ、そんなダメ人間であろうと、ひとりは俺の可愛い可愛い大事な妹だ。そんなひとりをサポートしてやるのも兄として大切な役目なのだ。
「喜多ちゃん、期待してるところ悪いんだけど、多分ひとりは何も考えてな」
「あ、ぼっちちゃんは大丈夫!」
「「え?」」
俺が喜多ちゃんに本当の事を伝えようとしたところ、横から虹夏が割って入って来てそう言った。
余りにも突然だったので俺とひとりは揃って同じ驚き方をした。
「ぼっちちゃんにはオリジナル曲の作詞という重大任務があるから」
「え……」
「ほら、前に決めたじゃん! リョウが作曲でぼっちちゃんが作詞って!」
あー……そう言えばバイトを始める前、ひとりが結束バンドに入ってすぐのミーティングでそんな事話してたような…………
確か、ひとりは曲の歌詞に禁句が多いから、ひとりが書いたらいいって話をしてた気がする。
ひとりはその話をすっかり忘れていたからか、それとも、思い出したせいか、手に持っていた結束バンドを机の上に落としていた。
「リョウも作曲よろしくね! それと作詞大臣!」
「さ、作詞大臣……」
「後藤さん、すごい仕事任されてかっこいいね!」
「か、かっこいい……!?」
虹夏から期待の言葉をかけられ、喜多ちゃんからかっこいいと褒められちゃって…………
俺には分かる。今、ひとりの承認欲求はかつてない程に満たされている!!
その結果……!
「私にかかれば作詞なんて朝飯前、ちょいのちょいですよ〜」
「後藤さんってすぐ調子に乗っちゃうのね」
顔がとろんとろんになるくらいニヤついてしまっていた。おまけに滅茶苦茶調子に乗っている。
くぁわいいなあ……皆の前でなければ思わず抱きしめてやりたいくらいに可愛い。
「うへっえへへ……大ヒット間違いなし、バンドらしい歌詞書いてきますから〜」
調子付いたひとりは不気味に……非常に可愛らしく笑いながらそう高らかにそう宣言した。
あー、これは調子に乗り過ぎてるねえ……きっと後で苦しんで絶対後悔するパターンだな、これ。
「……らしい?」
リョウが何かを呟いていたような気がしたが、ひとりの事に夢中になっていた俺はそれに気が付くことは出来なかった。
▲ ▽ ▲ ▽
バンドミーティングから実に一週間もの時が過ぎた。
その間、なんと、ひとりはあの場で宣言した通りオリジナル曲の歌詞をちょちょいのちょい! と、書き上げてしまった!!
…………というのは嘘で、実際は全く何も書けていない状態であった。
虹夏から作詞大臣に任命され、作詞という名の重大任務を任され、モチベーションも爆上げ、嬉々として新品のノートの表紙に歌詞ノートと書いた所までは良かったんだけどねえ。
じゃあ、いざ歌詞を書くぞとなった時、何も思いつかなかったらしい。
そんなひとりは今日も今日とて家のリビングで歌詞ノートを広げ、ノートと睨めっこをしながら頭を抱えていた。
もう一週間、あんな状態が続いている。俺もひとりが心配で一度だけ相談に乗ろうとしたことがあるんだが……
『心配してくれてありがとう、お兄ちゃん。でも、この作詞っていう大事な仕事。任せてくれた虹夏ちゃんの為にも、バンドの為にも、一人で頑張ってみたくて……! だから、お兄ちゃんには見守ってて欲しい……』
と、ひとりにそう言われ断られてしまった。断られたこと自体少し寂しいが、可愛い妹の頼みだし、暫くは黙って見守らせて頂こうかね。
そういう訳で俺は現在、ひとりの邪魔にならないように、リビングの端の方でもう一人の可愛い天使と遊んでいる。
「行けーっ! ジミヘン! お兄ちゃんを倒せーっ!」
「わんわん!」
彼女の名前は後藤 ふたり。年は5歳で人懐っこく、明るく元気な性格をしており、今みたいに悪戯を突然仕掛けてくるようなお茶目で可愛くて愛苦しい部分も持ち合わせた、超絶ウルトラハイパーぎゃんかわな俺とひとりの妹である。
そして、この小型犬の名前はジミヘン、我が家で飼われている愛犬である。
ふたりの指示と共に俺に向かって突撃してくるジミヘンを優しく抱きとめる。そしてそのまま優しくお腹を撫で回してやると、ジミヘンは恍惚の表情を浮かべ気持ちが良さそうにしている。ふっ、チョロい。
「ジミヘン、おすわり」
「わん!」
「お手」
「わん!」
「お回り」
「わんわん!」
「ゴロン」
「わふ!」
「よしよし! 偉いぞ〜」
俺はジミヘンに連続で芸の指示を出し、ジミヘンもその全てを一寸の狂いもなく成功させた。
「わっはっは! どうだ、ふーちゃん! ジミヘンは新たに我が下僕となり『獄犬ケルベロス』として生まれ変わったのだ!」
「わん!?」
「ける……べろ?」
「『獄犬ケルベロス』だ! さあ行け! ケルベロス! ふーちゃんを倒すのだ!」
「わ、わん!」
「わーっ!? ジミヘンが裏切ったーっ!?」
「はーっはっは! 逃げろ逃げろ! ケルベロスはどこへ逃げようと地獄の果てまで追いかけていくからな!」
「れいくん、5歳児相手に何やってるの……」
ふたり相手に全力で悪役を全うしていたところ、呆れた顔をした母さんにそうツッコまれた。
5歳児相手に全力で中二病を発揮する大人気ない現役高校男児(17歳)
本当、何やってんだろうねっ!!
「ふたりの面倒見てくれるのはありがたいけど、家の中で暴れちゃダメよ〜」
母さんはそれだけを俺に伝えると、再び家事へと戻って行った。
確かに、高校生にもなって5歳児と一緒にはしゃぎ過ぎてしまった。反省反省。
「ふーちゃん、次は何をして遊ぼうか?」
「うーん…………お兄ちゃんと遊ぶの飽きたからお絵描きする!」
「あ、そう……」
ふたりはそう言うと、ジミヘンを連れてクレパスとスケッチブックを取りにこの場から走り去って行ってしまった。この場に取り残された俺は、少しやるせない気持ちになった。飽きたと言われたことが、無性に寂しかった。
まあ、でも、それも仕方ないよな……相手は小さな子供、興味や関心の対象がコロコロ変わるのはしょうがない。
短い時間ではあったけど、ふたりの笑顔だって沢山見られたんだ。思い出せ、ふたりのあの屈託のない笑顔を……!
ああ……可愛い、天使……陰鬱とした心が浄化されていく……
と、ここで俺は思い出したかのようにひとりの方をチラリと見る。
すると、そこにはノートと睨めっこしながら頭を抱えるひとりの姿が…………って、あれ再放送?
どうやら、俺とふたりが遊んでいる間も変わらずずっとあの姿のままでいたようだ。
それ程までに作詞という作業が困難を極めているというのがひしひしと伝わってくる。
うーん、ひとりとの約束があるから、作詞の事で相談に乗るのは避けていたけれど、流石に一週間もこの状態が続いているのだから心配だ。
よし、約束は破っちゃうけど、妹の悩み苦しむ姿を見続けるのも兄としてもう見てられないし、相談に乗ってやろう。ごめんな、ひとり!
「ひーちゃん、作詞の事で悩んでるなら俺が相談に……」
「え、あ、ちょちょ! まっ……!?」
ガタッ、バシャ
俺がひとりに話しかけると、ひとりは大慌てでノートを隠そうとし、その拍子に側に置いていたお茶の入ったコップが倒れ、なんの不幸かその中身は無情にもひとりのジャージにかかってしまった。
「ひーちゃん大丈夫か!? すまん、俺が急に話しかけたせいで……」
「あ……い、いや、お兄ちゃんは悪くないよ。私が慌てたせいだから…………え、と、着替えて来るね」
ひとりはそう言うとゆったりとした動きでノートを抱えたまま、2階の自室へと向かっていく。
その途中、ひとりは俺の方に振り返ると
「作詞の事、ほ、本当に大丈夫だから……! 気にしないで!」
それだけ伝えて、早足で2階へと上がって行ってしまった。
気にするなと言われてもなあ……やっぱり悩んでる姿を見てるとどうしても心配はしてしまうもんなあ。ん?
ひとりが消えていった階段の奥を見つめていると、ふと誰かの視線を感じた。
視線の感じた方を見れば、父さんと母さんが心配そうな顔でこちらを見ていた。
そして、不意に手を引っ張られたので視線を落とすと、不思議そうな顔をしたふたりとジミヘンが俺の事を見上げていた。
どうやら、ひとりの事を心配に思っていたのは俺だけじゃ無かったらしい。
家族全員が今のひとりの事心配してるんだな……
俺はこの場にいる全員の顔を見渡すと、一言こう言った。
「あー……ひとりの様子、見に行ってみる……?」
俺のその一言に全員が無言で頷くのであった。
▲ ▽ ▲ ▽
薄暗い階段をなるべく音を立てないように、音を殺しながら静かに上る。ひとりの部屋は階段を上ってすぐのところにある和室だ。因みに俺の部屋はこの廊下の突き当たりの角部屋にある。
ひとりの部屋の前まで辿り着くと、俺は早速異変を感じ取る。
部屋の中から声が聞こえる……ひとりが何か喋っているようだ。
俺は後ろから付いてきていた両親とふたりにアイコンタクトを送る。
全員ひとりの部屋から聞こえる声に気がついているのか、無言で頷いた。
俺はふすまを掴むと、少しだけ横にずらしそっと部屋の中を覗き込む。俺の後に続いて、両親もふたりもジミヘンも同じように部屋の中を覗き込む。
そこで俺は、俺達は、地獄を目にした。
「うぇ〜い!! いっき! いっき! 皆バイブス上げてこぉ〜!! お兄さんテキーラ追加ぁ!!」
何故かパーティグッズでありそうなハート型のサングラスを掛け、パリピの様な真似事をするひとりがそこに居た。
ひとりの意味不明過ぎる行動にこの場にいるひとり以外の人間が全員呆気に取られていた。
ひとりの奇行はまだまだ続く。
次にハート型のサングラスを外したかと思えば、今度は自撮り棒を手に持ち、そして……
「今日渋谷行く人この指とーまれっ! ここは有名なイソスタ映えスポットらしいわ! あと10分後に花火が打ち上がるから皆で写真撮ろうね!」
ひとりが壊れた。そして可愛すぎる。
恐らくこの場にいる全員がそう思った筈だ。
不意にひとりと俺達の視線が交錯する。
それを合図のようにして、俺達はひとりの部屋に一斉に飛び込んだ。ひとりは状況を呑み込めずに呆気に取られているが今はそんな事知った事では無い。こんな地獄を見せられて黙って見過ごすわけにはいかない。
その後の俺と両親の動きは本当に素早かった。
「お母さんの知り合いに有名な霊能者がいてね、明日一緒にお祓いに行きましょう」
「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……悪霊退散……! 悪霊退散……!」
「ひーちゃん、作詞に追い込まれ過ぎて、知らない間に憑かれてたなんて……! 気付いてあげられなくて本当にごめんな……」
「ごごご、誤解!!?」
その後、恥ずかしさから顔を真っ赤にしたひとりに誤解だと告げられ、全員もれなく部屋から追い出されてしまいましたとさ。
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