しすこん・ざ・ろっく!   作:そるるん

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筆が乗ったので投稿です。
推敲はしてないです、鮮度って大事だもんね()

本文、少し長くなりそうなので分けての投稿となります。



04『Stay together ①』

 

 

 私、後藤ひとりはダメ人間だ。

 

 

 馬鹿だし、運動音痴だし、人の目見れないし、会話の頭に必ず「あ」って付けちゃうし。

 

 

 高校入って1ヶ月経つのに友達いないし、心の拠り所はギターだけ──

 

 

 

 

 

 ずっとそう思ってた、そう、2週間前までは! 

 

 

 2週間前、お兄ちゃんと一緒に初めて訪れたライブハウス。

 私の人生はそこで大きな転換を迎えた。

 

 

 ライブハウスに到着すると、お兄ちゃんのクラスメイトである虹夏ちゃんにいきなりサポートギターをお願いされてしまった私。

 

 

 突然の出来事にあたふたするも、ライブはなんとか乗り切ることが出来た。

 その後バンドメンバーの虹夏ちゃんとリョウさんに温かく迎えられ、晴れて私は『結束バンド』のメンバーとなった。

 

 

 そして先週、バンドに加入して初のバンドミーティングが開かれ、新しいボーカル探し、曲作り、ノルマを稼ぐ為のバイトについて話をした。

 

 

 新しいボーカルは、私、友達一人もいないし、コミュ障で人と会話するのさえ億劫だし、うん、虹夏ちゃん達に任せよう! 

 

 

 曲作りは、リョウさんが作曲、私は歌詞担当って話になったけど、それもボーカルが見つかってからって言ってたし、まだ少し先の話になりそう。

 

 

 バイトは、今日から『STARRY』で働くことになっている。

 

 

 そして、現在、今まさに私はSTARRYの扉の前までやって来ていた。後はこの扉を押し開けて中に入れば、バイトが始まる訳なのだが。

 

 

 その前に一旦自分を褒め讃えたい。

 

 

 私凄くない!? たった2週間で成長しすぎなのでは!? 

 今まで友達なんて一人も出来なかったのに、今は虹夏ちゃんとリョウさんっていう家族以外で会話出来る人達が居て、バンドも組みたいって夢も今叶っちゃって、おまけにバイトまで手を出して……

 

 

 せ、成長し過ぎている……まず、STARRYまで一人で来れたこと自体凄いよ!! このオシャレな人達で賑わうオシャレタウン下北沢を一人で歩いて来れたのは本当に凄いと思う。

 あ、1週間前も一人で来てる……で、でもあの時は街の雰囲気、行き交う人のオーラだけで死にかけたけど、今回は吐き気を催すだけで助かったし! 

 

 

 今の私ならなんでも出来そう! 正に無敵! 新生、後藤ひとりはライブハウスのバイトなんてチョチョイのチョイなのだ!!

 

 

 

 よーし! そうと決まれば、早速扉を開けて中に入ろう! まずはスタッフさん達に挨拶しないとね! なんたって今の私にはチョチョイのチョイなのだから! 

 

 

 

 チョチョイのチョイ! 

 

 

 

 

 

 

 

 チョ、チョイのチョイ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょ、ちょちょちょ、ちょちょちょいのちょちょちょちょ

 

 

 

 

 

 

 や、やっぱり無理だ! 怖い!!!! 

 

 

 扉の取手を掴んだまではいいが、それ以上は体が動かない、中に入る事をまるで体が拒否しているようだった。何を調子に乗っていたのだろうか、所詮は超絶根暗コミュ障陰キャ、私はこの中に一人で入ることすら戸惑ってしまうのだろうか。

 

 

 ま、前の時はお兄ちゃんが居たから大丈夫だったけど、今日は誰もいない! 何なら今日はお兄ちゃんも、虹夏ちゃんも、リョウさんも、皆遅れて来るらしい。

 

 

 お、終わった……この2週間で確かに私を取り巻く日常は大きく変化した。けどそれは、あくまでも日常の話であって私自身が変化した訳ではないのだ。

 

 

 昨日だってそうだ、本当は今日この場所に来ることが億劫で仕方がなくて、何とかバイトに行かなくていい理由を作りたくて、馬鹿な私は風邪を引きたいばかりに、湯船に大量の氷を浮かべ極寒とも言える氷風呂に20分ほど浸かり、下着一枚で扇風機の風を全身に浴び続けた。

 当然、そのアホな行動をお兄ちゃんが許すわけもなく、こっぴどく叱られた、久しぶりにマジギレしてるお兄ちゃんを見た気がする。

 

 

 結局、そんな私の努力も虚しく、意外と丈夫なこの身体は風邪を引くことはいよいよなかった。

 

 

 今朝は虹夏ちゃんから今日のバイト頑張ろうね! って励ましのロインまで貰っちゃって……

 お兄ちゃんもこんな私が心配だからって一緒にバイトしてくれるって言ってくれてるのに……

 こんなにいい人達に恵まれてるのに、私ってなんてクズなんだ……

 

 

 だから、そんないい人達の気持ちを無下にしない為にも、今日は頑張ろうって気持ちでここまで来たのはいいけど、やっぱりいざ目の前まで来ると、こ、怖い。

 

 

 ど、どうしよ……早く誰か来ないかな? お、お兄ちゃんでも虹夏ちゃんでも、リョウさんでもいいから早く誰か……

 

 

 

「チケットの販売は17時からですよ」

 

「あひっ!?!?」

 

 

 び、びっくりした!? 急に後ろから話しかけられた! す、スタッフさんかな? と、とにかく挨拶返さないと……ひえっ!? に、睨まれてる!? こ、こここ怖いっ!!

 

 

「まだ準備中なんで」

 

 

 ち、違う! これ、私、怪しまれてるんだ! ごごご、ご誤解を解かないと!! 

 

 

「あっうぇ……お、おおおおちちち、ちち、おおおちおおちおちちおちおちつつ、いて、てててててててて」

 

「いや、お前が落ち着け」

 

 

 あ、これ私ダメそう。

 

 

 ▲ ▽ ▲ ▽

 

 

「新しいバイトの子ね。なら、早くそう言いなよ」

 

「あ、ぅぅ……しゅ、しゅみましぇん……」

 

「私、ここで店長やってるからよろしく」

 

「あ、はい……よ、よろしくお願いしましゅ」

 

 

 うう……店長さん怖い少し苦手なタイプ。お、お兄ちゃん達早く来てー! 

 

 

「ってか、こないだ段ボール入ってギター弾いてた子じゃん。名前は確かマンゴー仮面!」

 

「あ、はい! マンゴー仮面です!」

 

「え、じょ、冗談で言ったんだけど……」

 

 

 ふ、二つ目のあだ名だ! 嬉しい!! 店長さん好き! 

 

 

「お前、後藤の妹さんだろ? あいつから話をよく聞いてるよ」

 

「へ?」

 

 

 お兄ちゃんの事知ってる……? あ、そう言えばこの間お兄ちゃんここの店長さんとも知り合いだって話してたような。

 

 

「あ、あああ兄がお世話になってま、まままますすす!!!」

 

「お、おう、まあ、でもそんな大した仲じゃないし、そんなに畏まらなくてもいいよ」

 

「おおお、お構いなく!」

 

「え? あ、うん……?」

 

 

 何か緊張し過ぎて受け応え間違えた気が……店長さん首傾げちゃってるし……

 

 

 で、でもお兄ちゃんと店長さんってどうやって知り合ったんだろ? やっぱりよくSTARRYに来てたって言ってたからその時に知り合ったのかな? うう……知りたい! 実の兄がどんな経緯でここまで人脈を拡げたのか知りたい! でも聞けない! だってコミュ障だから……

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 き、気まずい! 初対面の人それも大人の人と何の会話したらいいか全然分かんない!

 こ、このままじゃ私、会話も出来ない無愛想な奴って思われて、初日でバイトくびにされるんじゃ……

 そ、そんな事になったらせっかく誘ってくれた虹夏ちゃんに申し訳なさすぎる!!

 いや、それどころか完全に愛想尽かされて……

 

 

『ぼっちちゃん初日でバイトくびになるなんて、バンドの活動費も稼げないような人なんてウチには要らないよ』

 

『ぼっち、バンドもクビだね』

 

 

 うわあああああああ!!! そんなの無理すぎる!!!? い、嫌だ、虹夏ちゃん、リョウさん! 私を見捨てないで~!! 

 

 

「おい? 顔色悪いけど大丈夫か?」

 

「お願いします! 何でもやりますからどうかクビにだけはしないで下さい!」

 

「まだ、バイト始まってもないのに何言ってんだ!? よく分かんないけど、いきなりクビになんてする訳ないだろ」

 

 

 あ、何かクビになるのは免れたっぽい。よかった~

 

 

「……あー、良かったらこれでも飲む?」

 

 

 店長さんがそう言って取り出したのは幼児向けのキャラクターがプリントされた小型のパックのジュースだった。

 これ、ふたりがよく買って貰ってるやつだ……

 

 

 特に断る理由もないので私は「あ、いただきます……」と伝えてジュースを受け取った。ストローを袋から出して、差し口に突き刺して飲んでみる。あ、美味しい。何だか懐かしい気持ちになれる味だ。

 

 

 両手で落とさないように大事にパックを持ちながらジュースを飲んでいると、ふと店長さんがこちらをじーっと見つめているのに気が付いた。

 

 

 え、何……? 私、何でこんな見られてるの?

 や、やっぱり、怒ってる!? 私、クビにされる!? 

 こ、怖い。顔を上げられないからジュースを飲み続けるしかない。は、早く誰か来て……

 

 

 

 

「た、ただいま──ーっ!! ぎ、ギリギリ間に合った──ーっ!!!!」

 

「マジで、遅刻、するかと、思った……うぇ、疲れた……」

 

「も、もう無理……今日何もしたくない、何もやりたくない、もう帰ってもいい?」

 

「ダメに決まってるでしょ!! 今日遅刻しかけたのリョウのせいなんだからね!!」

 

「課題忘れて補習なんか受けやがって!! 俺と虹夏が手伝わなかったら、絶対間に合ってねえからな!」

 

「二人には本当に感謝してます。ありがとう。だから次はもっと早く課題を写させて欲しい」

 

「まず大前提で人の課題を写すって考えをやめろ」

 

 

 

 

 突然、扉がバタンと開かれたと思ったら雪崩込むように、お兄ちゃん、虹夏ちゃん、リョウさんが現れた。

 あ、ぁぁ……よかった~~~! やっと来てくれたあ!! 

 

 

 

「何だ騒々しい奴らだな」

 

「ちょっと、聞いてよお姉ちゃん! リョウがさ!」

 

「……ここじゃ店長って呼べって言ってるだろ。今のお前らのやり取りで何となく状況は理解した。リョウはバイトの後残ってスタジオの掃除な」

 

「……そんな、殺生な!!」

 

「虹夏達に迷惑かけた分しっかり反省して働け。それにどうせ今日もウチで晩飯食べてく気だろ? なら、別にいいじゃねえか」

 

 

 店長さんの命令にガクッと肩を落として項垂れるリョウさんを見て何だか少し気の毒に感じた。

 

 

「お、ひーちゃん。一人で来れたんだな偉いぞー。待たせて悪かったな」

 

「お、お兄ちゃん……ちょっと、恥ずかしいよ……」

 

 

 お兄ちゃんが私の背中側からそう声を掛けて来ると、わしわしと頭を撫でられる。

 何度もされてるので慣れはしてるけど、それでもやっぱりくすぐったいし、皆が見てる前なので少し気恥ずかしい。

 

 

 お兄ちゃんは「ごめんごめん」と言うと私の頭から手を離し、今度は私の手に持ってるパックジュースを見て「お?」と声をあげた。

 

 

「それよくふーちゃんが買って貰ってるやつじゃん。どうしたんだそれ?」

 

「店長さんがくれたんだ」

 

「え、星歌さんから?」

 

「私が何だって?」

 

「あひっ!?」

 

 

 や、やばい店長さんに聞かれてた!? もしかして店長さんから貰ったこと言ったらまずかったかな?

 

 

 はっ! 個人情報の漏洩……?

 

 

『私のあげたジュースだって事を口外したな!! 個人情報を漏洩させるような人間を雇う事なんか出来るか! クビだクビ!!』

 

 

 あ、あわわわわわわ!!?

 私、なんて事を!?!? 

 

 

「す、すすすみません!! 店長からジュースを頂いたことを兄に喋ってしまいました!! ど、どうかクビだけはご勘弁を!!!!」

 

「いや、あれは100%の善意であげたやつだからな!? というかジュース受け取った事を話しただけで何でクビにしなきゃいけねえんだ!」

 

「ひーちゃん、落ち着け落ち着け。ほら、頭もあげて。で、星歌さんってそんな可愛らしいもの飲むんすね」

 

「逆にお前は何でそんな冷静なんだよ。後藤」

 

「慣れてますから」

 

 

 私が土下座をする頭上で二人のそんな会話のやり取りが繰り広げられる。

 お兄ちゃんに背中をさすられ、ゆっくりと頭をあげた。

 

 

「それと、これはあれだ。ほら、飯食うのにサイズ的に丁度いい量なんだよ。だから、これを買って飲んでる。それだけだ」

 

「え? 可愛いのが好きだから好んで飲んでるのかと思った」

 

「んなわけねえだろ。確かにかわい……ゲフンゲフンサイズが小さいと冷蔵庫の中も場所取らねえし、管理しやすいんだよ」

 

「本音ダダ漏れなのに誤魔化してるのしんどくないすか?」

 

「……お前も店閉めた後リョウと一緒に掃除させてやろうか?」

 

「よーし! 今日から初バイト楽しみだなあ!! 精一杯頑張るぞー!!」

 

「ったく、相変わらず生意気なガキだな」

 

 

 そんなお兄ちゃんを見ながら私は何だか不思議に感じた。

 

 

 これがお兄ちゃんの外での姿なのか……

 

 

 今思えば、私はお兄ちゃんがこんな他人と関わってる姿を見るのは初めてだった。今まで家族と関わってる姿しか見たことがなかったからだ。

 家でのお兄ちゃんは包容力があって、頼り甲斐があって頼もしくて、とっても優しい、正しく『お兄ちゃん』って感じだ。

 でも、虹夏ちゃん達や店長さん達と関わってる時のお兄ちゃんは、凄く生意気で意地悪でとっても子供っぽかった。

 

 

 私の知らない、お兄ちゃんの別の意外な一面を知れて何だか嬉しかった。でも、反対にお兄ちゃんは私の事何でも分かってくれているのに、私はお兄ちゃんの事何にも知らないんだな。って気持ちで寂しくもあって……

 

 

 でも──

 

 

 

 

「ほら、ひーちゃん。バイト一緒に頑張ろうな」

 

 

「うん……! が、頑張ろうね! お兄ちゃん!」

 

 

 

 それでもいい。だって、お兄ちゃんは私にとって最高でとってもカッコいい『ヒーロー』なんだから!

 

 




今回は兄貴ではなく妹目線で書いてみました。

原作のぼっちちゃんと余り差異がないようにしていますが、妹属性が付与された本作のぼっちちゃんは兄貴への依存度が高いせいで、原作と比べて行動力が少し控え目になってるんですよね。でも、そこがいい! 可愛い!

過保護が過ぎるシスコン兄貴とその兄貴に依存してしまっている妹

今後この二人の関係性がどうなって行くかお楽しみにー


それと、今更ですが、お気に入り登録、感想、誤字脱字報告して下さった方々、本当にありがとうございます!
こんな拙作でも沢山の方々に手に取って頂いて筆者も感無量でございます!


これからも沢山の方々に見て頂けるようにノンビリ執筆して参りたい所存です!


それでは、また次回もお楽しみにー
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