しすこん・ざ・ろっく!   作:そるるん

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とりあえず書けたので投下! 推敲なんかクソ喰らえ()


05『Stay together ②』

 

 

『うん……! が、頑張ろうね! お兄ちゃん!』

 

 

 さっき、ひとりの見せてくれた屈託の無い笑顔と発言が頭の中を何度も繰り返しフラッシュバックされる。

 その度に俺の心は幸福感で満たされていき、自然と顔から笑顔が溢れ出ているのが分かる。

 

 

 うへへ、あの時のひとりの笑顔可愛かったなあ~。あれは今まで見てきた中でもTOP3に入る可愛さだ~。あの笑顔を向けてくれるのも兄である俺にだけ……嗚呼、神様、あの子の兄としてこの世に生を授けてくれて本当にありがとうございます。へへ、えへへへへへ

 

 

「零人、また顔がニヤけてる。表情筋は動かさなくてもいいから、今は手を動かしてよ」

 

「んああ? ふひ、悪い悪い、へへ、俺も何とか意識ふへ、してニヤケないようにんふふ、してるんだけど。それでもえへへ、ニヤニヤが止まらねえのよ。ひひは」

 

「……喋りながら笑わないで。普通に怖いんだけど」

 

 

 リョウが蔑むような目でそう言った。

 そう言われても本当にニヤニヤが止まらないのだから仕方なくね? 最愛の妹にあんな天使の様な笑顔を見せられたんだ、本当は愛おし過ぎて悶え狂ってしまいたくらいなんだからな? 

 

 

 さて、それで今俺とリョウは何をしているのかというと、STARRY内の清掃だ。ひとりと星歌さ……じゃなくて店長と軽い雑談をした後、いよいよバイトが始まった。

 

 

 とりあえずバイト初日の今日は、俺とひとりには別々の業務を担当してもらうらしく、俺にはリョウが付いて清掃と受付を、ひとりには虹夏が付いてドリンクの受け渡しを担当する事になった。

 

 

 本当は心配なので、ひとりと同じ業務がよかったのだけども、店長が「兄妹で仕事をさせると甘えが出るから駄目」という至極真っ当な意見をぶちかまされたので渋々指示に従う事にした。

 これも、妹の成長の為……ひとりには真人間になる為の試練だと思って、バイトに励んでもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……いや、やっぱ心配だ、だってひとりだもん。

 ドリンクの受け渡しだけとは言え、それでも立派な接客の仕事だ。

 他人と目を合わせて会話をする事すらままならないのに、ひとりには難易度が高すぎやしないだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

「零人、ぼっちが心配?」

 

 

 そんな不安な気持ちを募らしている俺を察したのか、リョウが俺に声を掛けてきた。

 

 

「え、分かんの?」

 

「うん、零人はぼっちの事になると分かりやすいくらい表情に出るからね」

 

 

 そういうリョウの顔は依然として無表情のままだった。

 マジかよ、俺もこいつほどではないが、あまり人前で表情を出すタイプじゃないのに……

 

 

 こいつ普段はボーッとしてるクセに人の小さな変化とかには敏感なんだよなあ。

 気持ちを見透かされたのは何か癪だけど、思ってることを素直に伝えるか。

 

 

「心配だよ。だってひとりは───」

 

「大丈夫」

 

「めっちゃ食い気味に来たな!? 俺まだ全部言い終えてないんだけど!?」

 

「ぼっちには虹夏が付いてる。虹夏は私よりもここで長くバイトしてるし、大抵のトラブルには慣れてる。ぼっちがどんなミスをしても絶対フォローしてくれる筈だよ。だからそんな心配しなくても大丈夫」

 

 

 俺の発言を遮った事を全く気に留めもしない様子で、リョウはハッキリと大丈夫だと言い切った。その発言をしているリョウの瞳には一切の迷いは無かった。

 

 

「ぼっちの事は全部虹夏に任せとけばいい。だから零人は大舟に乗ったつもりで、私の分までしっかりと働いてくれたらいい」

 

「惜しいなあ、最後の発言さえなければ、お前の事見直してたかもしれないのに」

 

 

 最後の最後でクズな部分が露呈してしまうのが何ともリョウらしい。

 

 

 しかし、リョウの言う通りかもしれない。俺もリョウはともかく、虹夏には絶大な信頼を寄せている。しっかり者で面倒見のいい虹夏が側についているのだ、きっと大丈夫。ひとりだって虹夏には心を少し開いてるみたいだし、もしもの時は頼るはずだ。

 

 

 あんまり過保護になっても仕方ないのかもな……

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、そのギターどこからだしたの!? 」

 

 

 

「何でいきなり弾き始めたの!? ぼっちちゃんたまにマジで怖いよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめん、零人やっぱりさっき言った事忘れて欲しいかも」

 

「俺も余計に心配事増えたんだけど……」

 

 

 虹夏といえどひとりの予想外過ぎる奇行のフォローは流石に厳しかったか……。

 

 

「ってか、ぼっちバイト中に弾き語り始めるなんて、めちゃめちゃロックじゃん」

 

「あれは、多分、一度にドリンクの種類なんて覚えられないから歌にして覚えちゃえ! っていう、ひとり独自のやり方だと思う」

 

「メモを取ればいいだけでは?」

 

「ひとりの場合はメモを取らせて下さいって言うだけでも難行苦行なんだよ」

 

 

 実際そうだろう。コミュニケーションがもっと上手く取れてるなら、あんな風に奇行に走ることはないだろうし。

 

 

「ふーん……ってか、ぼっちやっぱりギター上手だね。虹夏は止めるのに必死で気づいてないみたいだけど」

 

「え? お前と虹夏、この間は下手って言ってなかったっけ?」

 

「うん、言った。でも、それは合奏した時の話。今みたいにソロ弾きだとかなり上手いよ。それに最初の併せの練習をした時点で、ぼっちの演奏技術が悪くない事には気付いてたから」

 

「へー、この短い期間でそれだけ分析してるとは、お前やっぱり音楽が関わると別人みたいになるな」

 

「音楽に関しては一切妥協する気はないから」

 

「惜しい! 普段のお前を知らなかったら尊敬の念を抱いてただろうに!!」

 

 

 こうは言うがひとりの実力を少しでも認めて貰えたのは、普通に嬉しい。

 

 

 

 △ ▼ △ ▼

 

 

 

 時刻は17時50分。STARRYの中は普段俺達が談笑しているスペースも含めて人で溢れかえっていた。

 満員御礼と言った所だろうか。今日ライブするバンドはどれも人気のバンドらしく、それに伴いこれだけ大勢の人でライブハウスの中はごった返している。

 

 

 当然だがこれだけの人数だろうが全部受付をしなくちゃならない訳で、それでその受付の仕事したのは他でもない俺とリョウな訳で……

 

 

「つ、疲れた……嘘だろ、ライブハウスってこんなに忙しかったのかよ……」

 

「い、嫌、いつもはこんなに忙しくは無い……今日は特別忙しかっただけ、でも、こんなに大勢の人が来たのは久しぶりかも……」

 

 

 二人とも過労で絶賛死にかけていた。

 

 

 バイト初日でこれはしんど過ぎるだろ、普通は慣れさせる為にあまり忙しくない日に初日は入ったりするもんじゃないの? 

 これシフト作成した奴、忙しいって分かってて入れやがったろ。

 

 

 お陰であれだけ心配していたひとりの事を全然気にかける暇もなかった。

 俺とリョウでこんな様なのだ、ひとりはどうなっただろうか、あまりに多くの人と触れ合ったせいで全身爆発四散してなければいいんだけど……

 

 

 そう思い疲弊した体を動かし、受付から身を乗り出す。

 視線の先はひとりと虹夏がいるカウンターだ。あそこでドリンクの受け渡しをしてるはずだけど……

 

 

 あれ! ひとりだけいない!? まさか本当に人の多さに耐えられずに爆発四散したのか!? 

 

 

 カウンターに立つ虹夏と目が合う、虹夏は苦笑いを浮かべながらカウンターの下の方に向かって指を差す動作をしていた。

 あー、なるほど。そこに隠れてるのか……うん、まあその場から逃げ出してないだけ偉い! けど、ちゃんと仕事はしような! 

 

 

「お疲れ。お、見事に二人ともくたばってんな」

 

「お、鬼が来た……」

 

「極悪、外道、魔王……」

 

「お前らそれ以上無礼を働くつもりなら今日の分、時給から差し引いてやるからな」

 

 

 疲労困憊な俺達の元に現れた店長に向かって二人で悪態をつくと、脅迫じみた文句で返された。

 

 

 

 というか多少の皮肉は容赦して欲しい、だってバイト初日から無茶苦茶忙しい日にシフトぶち込まれたんだぞ? そりゃ悪態もつきたくなりますとも。

 

 

「それで店長、私達に何か用事ですか?」

 

「ああ、受付代わってやるから、お前らライブ観てきてもいいぞ」

 

「え、バイト中なのに観てもいいんすか?」

 

「後藤は今回だけな、別にバンド組んでる訳でもないし、次からはちゃんと仕事してもらう。リョウは今日ライブするバンドはどれも人気あるし、勉強になるから観とけ」

 

「その理由だと本当に俺観る必要ないっすよね? これが星歌さんの優しさか……優しすぎて涙でそう!」

 

「極善、内道、店長……!」

 

「だああああああっ!!? ボケとツッコミで渋滞起こすな!! 面倒くせえから、さっさと虹夏達のところにでも行け!!」

 

 

 あっはははっ

 ただ、普通に褒めただけなんですけどね? (すっとぼけ)

 相変わらず素直じゃないんだから星歌さんは〜

 

 

 でも、本当に受付代わってくれるみたいだ、なら、ここは一つ星歌さんの善意に甘えて、俺は愛しのひとり元にでも行きますかねー

 

 

「あ! でもこれだけは言わせろ!! 後藤、ここじゃ名前じゃなくて絶対店長って呼べ!! いいな!!」

 

 

 いや、それだけはツッコミ入れてくるんかい!! 

 

 

 

 △ ▼ △ ▼

 

 

 

「おつかれ」

 

「よ、おつかれ」

 

「お疲れー! って、二人とも受付は?」

 

「星歌さんが代わってくれた。代わりにライブ観て来いって言われたから来たわ」

 

「そうなんだ」

 

「あと今日、ライブするバンドはどれも人気あるし勉強にもなるからとも言ってたよ」

 

「ウチのお姉ちゃんってあれなの。ツンツンツン、ツンツンツンツン、デレーみたいな」

 

 

 俺とリョウの説明を聞いて虹夏は納得したように頷くと、隣に立つひとりに店長の性格を話していた。

 にしても、ツンがやたら多いな。それだけあの人の天邪鬼のような性格を表現しようとしたのだと思うが。

 

 

 と、ここで俺はひとりが随分と元気の無い顔をしている事に気がついた。

 バイト前のあの天使のような笑顔は一体何処へ行ったのやら。

 こりゃ、あれかな? 仕事中にめっちゃヘマして落ち込んでるヤツだな。多分。

 

 

「よ、ひーちゃん。どう初バイトの方は? やっぱ大変だった?」

 

「……お兄ちゃん。どうしよう、私、戦力外どころかお客さんと目も合わせられなくて、虹夏ちゃんに迷惑かけてばっかりで……」

 

 

 ひとりは一度俺の顔を見ると、すぐに俯いて弱々しい声でそう言った。

 どうやら俺の推理は正しかったようだ。さて、問題はここからだ。落ち込むひとりをどうやって励ますか……

 

 

「これ使う? マンゴーじゃないけど」

 

 

 そう言ってリョウが持ち出して来たのは、数週間前に見た段ボール(但しプリントされているのはマンゴーではなく烏龍茶)だった。

 

 

「いや、使わない使わない」

 

「こんなので接客されたらお客さんドン引きするだろ絶対」

 

「…………」

 

「ひーちゃん……そんな気に病む必要もないよ」

 

「零人くんの言う通りだよ! 今日はまだ初日だし、すぐ慣れるって!」

 

「……虹夏ちゃんはどうしてミジンコ以下の私なんかにこんな優しくしてくれるんですか?」

 

 

 ミジンコ以下って……かなり卑屈ってんなあ。この時のひとりに掛けるべき言葉は……って待てよ? ひとりは今虹夏に質問投げかけてたよな? と、言うことは……ま、マズイ!? 虹夏の返答次第では、せっかくここまで積み上げてきたひとりの交友関係が崩壊してしまう! も、もしそうなったら、ひとりはバンドを脱退し、高校も中退して……そして、全てに無気力になったひとりはやがて酒と煙草に溺れて、アル中ヤニカス引きこもりニートに……

 

 

「零人、顔、また考えてること顔に出てるよ」

 

「零人くん、顔やばいって……」

 

「お、お兄ちゃん……?」

 

「ふぁっ!? 危ねえ!? ひとりの将来を考えてたらクソひでぇバッドエンドに辿り着いてた!」

 

「く、クソひでぇバッドエンド!? 何考えてたの!? 怖いよお兄ちゃん!!」

 

「零人くん、どんな想像してたのか知らないけど、今はぼっちちゃんの質問に答えて上げるのが先決だと思うんだけど」

 

「そ、そうだ! 虹夏、いいか? お前の発言に全てかかってるんだ! ひとりへの返答真剣に考えろよ?」

 

「何、その意味深な感じ!? 私、普通のこと言おうと思ってたのに凄いプレッシャー感じるんだけど!?」

 

「いや、それくらい緊張感を持たないとダメだ! でないとひとりの……嫌、後藤家の存亡に関わる程の重大な───」

 

 

 

 

「ぼっちちゃん、あたしね、このライブハウスが好きなの」

 

 

 

 オイイイイイイイ!!!!? 重要な説明してる時にそんな食い気味に被せて来んじゃねえええええ!!!! って叫ぼうと思ったけたど、リョウに羽交い締め+口を手で押さえつけられたのでそれは叶わなかった。

 ああ、黙ってろって事ですか。そうですか。はい、じゃあ黙ってます。

 

 

「ライブハウスのスタッフがお客さんと関わるのってここと受付くらいだし、いい箱だったって思って貰いたいって気持ちがいつもあって」

 

「す、すすすみません! それなのに接客がド下手で……」

 

「あ、いや! ちが……あたしね、ぼっちちゃんにもいい箱だったって思ってほしいんだ」

 

「え……?」

 

「ここで楽しくバイトして、楽しくライブしたいんだ! 一緒に」

 

「…………」

 

「ま、いつかは笑顔で接客出来るようになって欲しいってのもあるけど」

 

 

 虹夏はそれだけの事をひとりに伝えると、俺の顔を見て笑顔を作った。それと、同時にライブも始まった。

 ライブハウス内にギターとドラムとベースの音が拡がり、身体中に爆音を浴びせられた観客達はステージに立つ主役達に狂い狂わされ熱狂している。

 

 

 かく言う俺も、先程まで俯いていたひとりも顔を上げステージ上の演者達に目を奪われている。

 

 

 これが実力を持つバンドのライブ……この間の結束バンドのライブと比べると、圧倒的にレベルが違いすぎる。

 演奏技術もさながら、音の圧、響き、リズム、バンドの一体感、全てがレベチ過ぎる。

 このバンドの楽曲は知らない筈なのに、自然と体がリズムを刻もうと動き始める。

 す、すげえ……改めてバンドってカッコいいなって思うわ。

 

 

「すみませーん、オレンジジュースください」

 

 

 バンドの演奏にすっかり虜になっていたせいで、俺はお客さんの接近に気がつくことが出来なかった。

 まあ、でも虹夏かリョウが対応してくれるだろうから問題は無いか。

 なんて、軽い気持ちでいると

 

 

「は、はい!」

 

 

 まさかの接客に躍り出たのはひとりだった。虹夏とリョウも少し驚いている。

 

 

 え、ちょ、だ、大丈夫か? 

 

 

 すっかり油断していた俺は完全に出遅れてしまい、ひとりの動きを見守ってやることしか出来ない。

 しかし、俺の心配とは裏腹にひとりは落ち着いて淡々と業務を遂行していく。

 カップに氷を適量いれ、ドリンクスターにカップをセットしオレンジジュースのボタンを押す、カップが飲み物で満たされると蓋をしてストローを差し込み、向かうはお客さんの元へ、最後はお客さんの目を見て笑顔でドリンクの入ったカップを渡せば業務は完了だ。

 

 

「ど、どうぞー……」

 

「ぼっちちゃん! 目! 目!」

 

「ふふ、ありがとう」

 

 

 わ、渡した……! 虹夏が最後言ってたようにお客さんに渡す瞬間の目は確かにやばかったけど、でも、渡した! 渡せた!!

 

 

「でも、凄い! ちゃんと人の目見て接客出来たね!」

 

「あ、頑張りました」

 

「うんうんうんうん!! 凄いよひーちゃん!! 目ざましい、本当に目ざましい成長だ!!」

 

「ぼっちちゃんのお陰で今のお客さん、今日のライブがもっと楽しい思い出になったよ! ぼっちちゃんも一歩前進だね!」

 

「一歩……」

 

「うんうんうんうん!! 一歩どころじゃない、今のひとりの頑張りは1000歩! いいや、かつて人類が地球を飛び出して月に降り立った瞬間のあの一歩目と同じ」

 

「零人くん落ち着いて!? さっきから何言ってるかマジで分かんないんだけど!?」

 

「今の零人はシスコンが爆発して理性を失ってるから、多分何言っても聞こえてない」

 

「シスコンが爆発って何!? リョウも冷静に分析しないで!! ってぼっちちゃんも褒めて上げたのに何でそんなに落ち込んでるの!? ほ、ほら次のバンド始まるから! 皆ーお願いだから結束して──ーっ!!」

 

 

 

 △ ▼ △ ▼

 

 

 

「じゃあ、今日はお疲れ。二人とも気をつけて帰れよ」

 

「あ、お疲れ様です……」

 

「お疲れ様でしたー」

 

「じゃあ、私も皆お疲れ」

 

「おい、待て。何をしれっと帰ろうとしてんだ。山田お前は今日は店閉めた後に清掃だ」

 

「……くそ、ダメだったか」

 

 

 激忙しかったバイト初日も何とか終わりを迎えた。

 しれっと店長との約束を無視して帰ろうとしたリョウはちゃんと捕まり、室内へと連れ込まれて行った。あいつマジで反省しろよ、ガチでバイトに遅刻しかけたのリョウのせいなんだし。

 

 

 この場に残されたのは俺とひとり、そして虹夏だ。

 

 

「そうだ、虹夏今日はありがとな。仕事とは言えひーちゃんの面倒を付きっきりで見てくれて」

 

「あ、私の方からも本当にありがとうございました。虹夏ちゃんには私が無能なばかりに本当に迷惑ばかりを」

 

「あー、ぼっちちゃん! それさっきも聞いたから! ぼっちちゃん最後にちゃんと接客出来て本当に凄かったよ! また、次もその感じで頑張ろう!」

 

「は、はい! が、頑張ります!」

 

「零人くんも今日はありがとう! 零人くんがリョウに付きっきりだったお陰で、今日はあの子ちゃんと仕事してくれたし、本当に助かったよ〜」

 

「え? あいつバイト中でも仕事サボろうとすんの?」

 

「うん、サボろうとするんじゃなくて隙あらばサボってるの。あたしやお姉ちゃんが見つけ次第すぐに絞めてはいるんだけど、人の目が無くなるとすぐにサボってるんだよ」

 

「ええ……あいつ、学校でもバイトでも基本的にやってる事変わらねえのかよ……」

 

「あはは……本当にリョウのサボり癖には困ったもんだよ……と、あたしもまだやること残ってるから中に戻るね! それじゃ、二人ともおつかれ! バイバイ!」

 

「おう、また明日な」

 

「ま、また明日!!」

 

 

 それから、俺とひとりはSTARRYを離れ歩いて駅に向かう道中の事だった。

 

 

「いやー、にしても疲れたー!! マジで初日からハード過ぎなんだよなあ……マジで星歌さん鬼だよ」

 

「…………」

 

「ひーちゃんも、今日一人で学校からSTARRYまで来て偉かったな。下北沢の街、ひーちゃんからしたら歩いてくるのもしんどかっただろうに」

 

「…………」

 

「慣れない接客業もちゃんと出来たし、本当に今日は一日だけ沢山成長したね、本当に偉かったよ!」

 

「…………」

 

「あ、でも、もう昨日みたいな事しちゃ絶対駄目だからな! バイトを無理矢理休みたいからって氷風呂に浸かって挙句、風呂上がりに扇風機の前で体を冷そうとするなんて、風邪をひく以前の問題で家族全員に心配かけるし、迷惑もかけるだろ? だから、あんな馬鹿な真似はもうしちゃダメ───」

 

「……くちゅん、あ」

 

「え?」

 

 

 それから、翌日ひとりは無事風邪を引き、三日間学校もバイトも休むことになったのであった。

 

 

 

 

 

 




次回はいよいよ四人目が登場する……?
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