筆が乗りまくったので早めの投稿です。
今回からキターンが登場です。
あ、いたいた! 伊地知先輩! リョウ先輩! 一緒に併せの練習しませんか? 私あれから練習してギター沢山弾けるようになったんですよ!
『喜多ちゃん』
伊地知先輩、見て下さい! ここの難しかったフレーズこんなにスムーズに弾けるようになったんですよ! 凄くないですか!?
『郁代』
リョウ先輩! ほら! 弾き語りだってもう余裕で出来ますよ! ギターボーカルも安心して任せてください!!
ほら、私、こんなに沢山色々出来るようになったんですよ!!
もうお二人の足を引っ張る様な事も絶対にしません!!
だから、だから……!
そんな怖い顔しないでよ……
『郁代、そんなに沢山練習したってもう意味なんてないんだよ』
え……? リョウ、先輩? 何を言って……意味が無いわけ、ないでしょ? だって、二人と、もう一回ライブする為に、私こんなに沢山練習したんですから
『だから練習なんて意味が無いんだって』
『リョウ。いいよ、あたしが教えてあげる。あのね喜多ちゃん、練習なんてもう何の意味もないの。だって』
い、嫌だ……聞きたくない……
やめて、それ以上言わないで!
『結束バンドはあの日、喜多ちゃんが逃げ出したあの日に解散したんだから』
△ ▼ △ ▼
ガバッと勢いよくベッドから体を起こす。身体中に嫌な汗をかいており、呼吸も少し乱れていた。
窓から燦々と気持ちの良い朝日の光が入っているというのに、最悪な目覚めであった。
「また、あの夢……もう二週間も経つのに。私、まだ……」
額に手のひらを添えてため息を一つ吐くと、枕元に置いていたスマホを手に取る。画面には既にセットしておいたアラームを停止した旨の表示がされている。
あれ、私いつアラーム止めたっけ? 止めた覚えは無いけど、アラームはちゃんと起動してたみたいだし、勝手に止まるなんて……
あっ!!!?
「やば!? 寝過ごした!! 急いで準備しないと!」
私は慌ただしくベッドから降りると、急いで洗面所へと駆け出したのだった。
朝のスキンケアは絶対に欠かせないんだから!!
いつも家を出る時間を5分ほど遅れてしまったけど、何とか準備出来たわ。
荷物を肩に掛けてから、最後に姿見の前で外見の最終チェックをする。
「うん、完璧! 今日も私とっても可愛い! なんちゃって……」
自分しか居ない部屋でそんな声が虚しく響いた。い、いや、別に虚しくなんてないわ、可愛いのは自他共に認める本当の事じゃない! もっと自信を持ちなさい! 喜多 郁代!
それから慌ただしく家を飛び出した後、最寄りの駅までダッシュし、転がり込むようにして目的の電車に乗り込んだ。
電車の中で漸く落ち着ける時間が出来たので、少し物思いにふける事にする。
考えるのは結束バンドの事とバンドメンバーの先輩達のこと。
更に具体的に言えば、今朝、夢で見た伊地知先輩とリョウ先輩のことだ。
『結束バンドはあの日、喜多ちゃんが逃げ出し日に解散したんだから』
「……っ!」
夢の中の伊地知先輩の顔と声がフラッシュバックする。あの顔は怒っている顔じゃない、諦めと悲しみで満ちた顔。全てに悲観した顔だった。
『郁代、そんなに沢山練習したってもう意味なんてないんだよ』
次にフラッシュバックしたのは夢の中のリョウ先輩の顔と声だった。元々クールで無口な先輩は表情にこそ感情を出さないが、その時の声色は酷く透き通っていて、とても冷酷だった。
意味なんて何もない。そんなの分かってる、分かってるわよ。
二週間前、私は先輩達と一緒に出演する筈だったライブから逃げ出した。それも前日ではなく、当日、本番の日にだ。
逃げ出した理由は単純で、ギターが全く弾けなかったから。
元々、結束バンドに加入した理由も中途半端な物だった。憧れの先輩、リョウ先輩が所属していたから、後は平凡な自分を変えたいと思ったから。というのが主な理由だ。
私は昔から何でも器用にこなす事が出来た。運動も出来るし、勉強も出来る。人付き合いがとても得意だし、友達だって沢山居る。
いつだってクラスの中心人物で人気者。学生なら誰もが羨むポジションに就いているそれが私だ。
だから、少し調子づいてしまっていたのかもしれない私は。
ギターなんて触ったこともないのに、弾けるだなんて嘘をついた。いつものように少し練習をすればすぐに弾けるようになるだなんて思い上がっていたんだ。
結果から言えば私にはギターの才能なんて無かった。全くない。0だ。
どれだけ、教本を読んでも、ネットで調べても、動画を見てその人の弾き方を真似してみても、私のギターはついにギターらしい音を出すことは無かった。どれだけ鳴らしてもボンボンと低い音が鳴るだけ。
何度か併せの練習に誘われたけど、当然こんな状態で練習になんて行けるはずがない。必ず弾けるようになってから練習に参加するつもりだった。が、とうとうその日が来ることがなかった。
そしてギターが上達する事もなく無常にも時は過ぎ去り、遂に一度も併せて練習する間もなく本番当日を迎えてしまった。
追い込まれた私は、先輩達にライブに行けないとロインをして、一方的に連絡を絶つという、愚かな選択を選んだ。
逃げたんだ、私は、あのバンドから、伊地知先輩とリョウ先輩から、自分の罪から。
あの日以来、結束バンドも先輩達もどうなったかは分からない。今となっては確認する術もない。
ただ、今朝のような夢を度々見るようになった。
夢の中の先輩達にどれだけ謝ろうと、どれだけ懇願しようと、先輩達は私を責め続けてくる。
このまま一生、後悔し続けるのかな……
今更、どんな顔して会いに行けばいいんだろう。分からない、わかんないよ。
でも、先輩達に会ってちゃんと謝りたいな……夢の中ではなくて実際に会って謝りたいよ。
電車が目的地の駅に着いた事をアナウンスする声で私は現実に引き戻される。
続きはまた後で考えよう、とにかく今は学校に行かなくちゃ。
電車を降りると駅から学校に向かって歩みを足早に進めるのだった。
△ ▼ △ ▼
駅から学校までひたすら歩き続け、校門が目前まで迫るところまで来ていた。
結局、いつも到着する時間より5分過ぎてしまっていたが、それでも予鈴までは大分余裕がある。このまま教室まで向かえば間違いなく遅刻は回避出来るだろう。
だけど、ここで私は前方に見覚えのある人影、二人分を確認する。
「あれは確か、2組の後藤さんと……後藤さんの彼氏さん?」
2組の後藤さん。残念ながら私が彼女について知り得る情報はそれだけだ。
けど、今密かに後藤さんは1年生の間で注目されている人物だ。
というのも後藤さんはほぼ毎日、隣を歩くあの男の人と校門の前まで一緒に登校してきているのだ。
そのせいか、あの男の人は一体後藤さんの何なんだ? という噂が一気に広まっている。
その中でも一番有力な説は後藤さんの彼氏説だ。
他にも兄妹説だとか幼馴染み説だとか有力な説は幾つか候補に上がったみたいだけど、結局、皆面白さ見たさに彼氏説を推しているだけなのよね。
かくいう私も恋バナは大好きだし、彼氏説を熱烈に推す者の一人ではあるんだけど。
それにしても、さっきから気になってたけど後藤さんが背負ってる物って、ギター……よね? 後藤さん軽音部なのかしら、ギター上手なのかな?
私は、自分の背中に背負うギターケースを横目で目視する。
弾けもしないのに何故か持ち出してきたギター。今朝みたいな夢を見た日は決まって持ち出すようにしている。持ってきたって荷物になるだけなのにね……
あ、後藤さん彼氏さんと別れた。彼氏さんは後藤さんが門を潜り終わるまで後ろから見守って上げている。優しい彼氏さんね。
あの制服は下北沢高校の制服、よね?
よりにもよって、あの先輩達と同じ学校なのね……
あ、目が合った。どうしよう、軽く会釈だけして通れば大丈夫よね?
私はすれ違いざまに後藤さんの彼氏さんに会釈をする。顔を上げる時に顔を確認したけど、これまた中々のイケメンだった。
私はそのまま通り過ぎて下駄箱の方へと向かう、途中で門の方に振り返ると、彼氏さんはもう居なくなっていた。
というか、この時間から下高に向かって遅刻、しないのかしら?
そんな些細な疑問を頭に浮かべつつ、私は教室へと向かった。
△ ▼ △ ▼
時刻は放課後。一人スマホを触っていた私は気がつけば教室でただ一人残っていた。そろそろ帰る準備しようかしら、なんて考えていた頃、ふと廊下の方から視線を感じることに気がついた。
え、後藤さん? 2組の後藤さんよね? 何でそんな凄い形相で私の事を見てるのかしら? 教室で残ってるの私だけだし、きっと私に用事よね……
「2組の後藤さん、だよね? 私に何か用?」
「あ、ええ、と……ば、バ、ギ、ボ!!」
「突然のヒューマンビートボックス!?」
え、なになに!? 後藤さんってラッパーなの!? ギター持ってたのにギタリストじゃないのかしら?
と、とりあえず、ここは後藤さんに合わせてあげましょう!
「ぷーつく、ぱーつく、つくつくぱーつく……」
ど、どうかしら? 私ヒップホップみたいなのよく分かんないからこれで合ってるのか分からないけど、後藤さんは気に入ってくれた?
すると後藤さんは、茹でダコのように顔を真っ赤にして
「す、すすすす、すみませんでした〜〜〜っ!!!!?」
と、何故か私に謝ると物凄い速さで廊下へと消えていった。
「ちょ、ちょっと!!」
教室に残ったのは静寂とその場に取り残された私だけだった。
どうしよう? これ探しに行った方がいいわよね? あの子私に用事があったんだろうし。
「すご〜い ! 感動〜! 後藤さんギター上手いのね!」
後藤さんを探しに出て数分後、階段下の謎スペースで一人でギターを弾く後藤さんを見つけた。私に話しかけられた後藤さんは偉く驚いていたけれど。
すごい、ギターって本当はこんな音が鳴るのね……特に後藤さんの演奏は何だかよく分からないけど人を惹きつけるというか、魅了? されるというか、とにかく素人目の私でも分かるくらい凄く上手だった。
一体どれだけの年月をかければここまで弾けるようになるのかしら? 少なくとも私みたいに一ヶ月やそこらじゃないんだろうなあ……
それで結局、私に何か用事があったのか後藤さんに尋ねてみたところ
「あ、今自分のバンドのギターボーカルを探してて、え、えっとその、喜多さんギター弾けるって聞いたので」
後藤さんはかなり早口でそう答えた。同時に私の胸もズキリと痛んだ。本当はギターなんて弾けないくせに、私はその事を周りに弁解することも無く放置している。だから、皆、私がギターを弾けないことを知らないし、当然、目の前にいる後藤さんも知らないんでしょう。だから、後藤さんはその嘘を信じて真剣に私を自分のバンドに勧誘しようとしているのね。
でも、だからこそ私は後藤さんのバンドには入れない。
「なるほど……でも、ごめんなさい、私そのバンドには入れないわ」
「えっ!? あ、いや、私は暗いけど、他のメンバーは明るくて……常に笑顔の絶えない」
「いや、後藤さんが嫌とかじゃなくて」
「週末はBBQ半年に一度の球技大会ライブの打ち上げはリムジンだし行事盛りだくさんで……」
「そんなパリピなバンド嫌なんだけど……」
後藤さんのバンドってパリピな人達ばっかりなのかしら? でも、後藤さんからはそんな感じ全くしないし……はっ! まさか例の後藤さんの彼氏さん!? 確かに見た目もかなりイケイケな感じだったし、思えばあの時の佇まいも只者じゃない感出てたかも?
あ、でもあの人確か下高だったわよね? あの学校は進学校だし、そもそもチャラチャラした人なんて居るのかしら? 伊地知先輩もバンドマンだけど、真面目でしっかり者だったし、リョウ先輩はいつでも無口でクールで最高に格好よかったわ!! だとすると、やっぱり私の勘繰りすぎ? 普通の彼氏さんなのかしら……
ってダメダメ、そんな事考えるより先に後藤さんの勧誘を断らないと
「その正直に言うとね、私ギター全く弾けないのよ」
「えっ」
「バンドの先輩目当てで弾けるって嘘ついて入ってたの、結局何一つ分からなくて逃げちゃったんだけど……」
「えっ」
「ギターってこっちジャンジャンするだけじゃないのね、この木の棒飾りかと思ってた」
「えっ……」
「そもそも初心者がやるには難しすぎるのよね……メジャーコード? マイナー? 野球の話?」
「え、えー……」
よ、よし、ドン引きしてるわね。後、もう一押しってところね!
これで完全に私の事、諦めて貰いましょう!
「一度逃げ出した私がもうバンドなんてしちゃダメなのよ 。だから、ごめんね。後藤さんのバンドにはやっぱり入る事は──」
「で、でも! ここで辞めたら一生その事引きずるんじゃないですか!?」
「え……」
びっくりした……後藤さんいきなり声が大きくなるんだもの。
でも、一生引きずる、かあ……確かにそうかもしれない……ううん、その通りだわ。
現に私、今も結束バンドの事ずっと引きずってるし、あの日、逃げ出さずにちゃんと先輩達に本当の事話せてたら、ここまで罪悪感を感じることも無かったかもしれないし……
「あ!? すすすすみません、私みたいなミジンコ以下の人間が喜多さんのような崇高なお方に意見しようだなんてとんだ愚行でしたよね!?」
「ねえ、後藤さん」
「は、はははいいいいいっ!!!? なんでございましょう!?
この後藤、貴方様の為ならこの身を捧げ、その一生を扱き使われる覚悟もございま」
「私にギターを教えてくれない? 私の先生になって?」
「ふぇ……?」
「後藤さんの言う通りだわ! きっとここでまた逃げたら私はこの先、一生後悔しながら生きていくと思うの! だったら今がその挽回のチャンスだと思うのよね! それにこんなに上手い後藤さんが教えてくれるなら頑張れる気がするもの」
「えっ!? あ、うへへ……」
それで、今度こそちゃんとギター弾けるようになって先輩達に謝りに行きたい。
「それでいつ教えて貰える? 放課後とか?」
「あ、放課後はライブハウスでバイトが……」
「じゃあ、バイトの後とかは!? スタジオとか併設されてない?」
「あ、うあ、ええ、ああ……」
「お願いっ!!」
「わ、わかりました〜……」
「本当!? ありがとう! 早速今日行ってもいい?」
「あ、ちょ、ちょっと待ってください! 今連絡して聞いてみます!!」
後藤さんはそう言うとスマホを握りしめ必死の形相でメッセージを打ち込んでいた。そんな気合い入れなくても大丈夫なのに。
でも、良かった。何だかようやく一歩前に進めた気がする。
待ってて下さい先輩方、私ギター上手くなって、ちゃんと謝りに行きますから!!
「お、お待たせしました……あの、じゃあライブハウスに行きましょう……」
「はーい! 改めてよろしくね後藤さん!」
「あ、ひゃい……」
△ ▼ △ ▼
「ん? ぼっちちゃんからロインだ」
「何? ひとりから?」
「うん、零人くんじゃなくて私になんて珍しいね?」
「俺以外にロイン……虹夏、俺の知らない間にどうやってひとりを手懐けやがった!?」
「手懐けるって何!? バンドメンバーなんだし、ロインくらいするでしょ普通! 向こうからして来たのは今日が初めてだけど……それで、ぼっちちゃん一体何の用なのかな〜……ん?」
「俺にも見せてくれ……ん?」
『すみません! EDMガンガンかけてリョウさんとお兄ちゃんとエナジードリンク片手に踊りくるいながらバイトしてて下さい』
「え、何これ? 零人くん意味わかる?」
「いや、ちょっと待ってくれこのパターンは初めてだな…………よし、分かった」
「はやっ!!」
「これでも17年もひとりの兄貴してますから、ちょっと難解ではあったけど、多分意味は『人を連れて行くから準備してて』って事だとおも…………でええええええっ!?」
「うるさ!? ちょっと、近くでいきなり大声出さないでよ!!」
「いや、おま!? だってひとりが人を連れてくるって言うんだぞ!? いいか、あのひとりがだぞ!?」
「それがどうしたの、ぼっちちゃんが友達の1人や2人連れてくるのは当たり前…………えええええええっ!!!!?」
「ぐああああっ!!!? 耳が!! 耳がキーンって!! 痛え!! てめえ虹夏!? 人の事言えねえじゃねえか、めっちゃ声がでけえよ!!」
「いや、二人ともうるさい。早くSTARRYに向かおうよ」
△ ▼ △ ▼
「後藤さんのバイト先って下北沢だったのね……」
後藤さんに案内されるまま付いて行くと到着したのは下北沢だった。よりにもよって下北沢かあ……
「あ、来たことあるんですか?」
「前のバンド下北系だったから……それにメンバーの先輩達がここに住んでて……」
もしも、先輩達に出くわしたりしたらどうしよう……ま、まだ心の準備も出来てないし、っていうかギターもまだ弾けるようになってないのに今会うのは非常にマズイ!! これは出くわす前に早く後藤さんのバイト先に向かった方が良さそうね……
「あ……」
「ちょっと……後藤さんが先歩いてくれないと道分かんないでしょ!」
「この街まだ慣れなくて……恥ずかしい」
「こっちの方が恥ずかしいって!!」
後藤さん、背中にしがみつくの止めてちょうだい! この格好ただでさえ悪目立ちするのに、もしも、先輩達が近くにいたらバレちゃうじゃない!?
「ば、場所はSTARRYってところで虹夏ちゃんとリョウさんがもう居るはず」
「えっ!?」
ま、待って今なんて言ったの? STARRY、虹夏ちゃんとリョウさん……そ、それって伊地知先輩にリョウ先輩の事じゃない!!?
「ごめん! 後藤さん! 私やっぱり帰る!」
「あ、な、何で……うぶっ!?」
私は急いで踵を返すと、後藤さんの頬を両手で挟み込む。あ、思ったよりモチモチしてる……じゃなくて!!
とにかく、ここを今すぐ離れなきゃ!
「詳しくは話せないけど、とにかく今はそこには行けない、だから申し訳ないけど今日はもう帰らせて───」
「ぼっちちゃーん!」
「ヴっ!?」
「おお、本当に人を連れてきてるー! やっぱり零人くんの翻訳の精度高いな〜。あ、後よく分かんないけどエナドリも沢山買って……って」
「あ────ーっ!!!! 逃げたギター!!!!」
「あひいいいいいいいいいいいい!!!!!?」
「に、逃げた、ギター?」
状況を理解出来ていないであろう後藤さんが首を傾げているが、今はそんなものに構ってる余裕は無い。
さ、最悪だ……運命の神様とやらが居るのなら私は今すぐにでもその人をぶん殴ってやりたい気分だった。
今、私が一番望まぬ再会、それがこうして実現してしまった。
頭の中が真っ白になる。どうする? どうしたらいいの!?
「き、喜多ちゃん何でここに?」
「い、伊地知、先輩……えっ、と」
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいっ!?!?!?
な、何を話す!? 何を言えばいい? 謝る? と、とりあえず謝るべきよね!? あー、でも何て言えば……
堪らずパニックになる私、そこに更に追い討ちをかけるように新たな人物がやってくる。
「あれ」
「っ!! あ、ああ、あう……リョウ、先輩……」
その瞬間私の中で何かが決壊した。溢れ出る爆発的な感情に呑み込まれると、それに呼応するように私の体と口が無意識に動いた。
「何でもしますから! あの日の無礼をお許し下さい!! どうぞ私を無茶苦茶にして下さい!!!!」
「誤解を生みそうな発言やめて!!」
あー、もう無茶苦茶だよお……
「と、とりあえず、ここじゃ目立つしライブハウスまで行こっか? ほ、ほら喜多ちゃん立って詳しい話はSTARRYについてから聞くからさ」
「あ、はい……罰される覚悟はずっと前から出来てます……どうか煮るなり焼くなり好きにして下さい……」
「え、本当に喜多ちゃんなの? 何か前の時と随分キャラ違くない!?」
「何か虹夏、婦警みたい」
「リョウもふざけたこと言ってないで喜多ちゃん支えるの手伝ってよ。あれ、っていうか零人くんは?」
「零人なら私とのジャンケンに負けて荷物持ちしてる、荷物多いから先にSTARRYに行ってるって」
「何でそんなしょうもないことしてるの!? もう、こういう時に男手が必要なのに〜」
伊地知先輩とリョウ先輩が何かを話しているようだったが、今の私にはその内容が一切入ってこなかった。
頭の中で「どうしよう」という言葉が延々とグルグル回っている。
ただ、二人が私に対して以前と変わらないように接してくれたこと。それだけは理解することができ、何とも言えない安心感を覚えたのだった。
△ ▼ △ ▼
「う、嘘でしょ……」
「き、喜多さん? あ、あのどうかしましたか……?」
伊地知先輩達に連れられて久しぶりにやって来たSTARRY、私はそこで信じられない者を目にして驚愕していた。
隣で後藤さんが私を案じて心配の声をかけてくれているけど、どうかしましたかじゃないのよ!? 貴方にも関係あることなんだから!!
「ああ、はじめまして。俺は虹夏達とクラスメイトでそこのひとりの……」
「どどど、どうして!! 後藤さんの彼氏さんがここにいるのよおおおおお!!?」
「「「「は?」」」」
私の悲鳴のような叫びに対して、この場にいる全員が素っ頓狂な声を上げたのだった。
後藤兄妹カップルと勘違いされるの巻でした。
いやはや、どうしてこうなった??? 執筆してる筆者自身びっくりしたわ。ただ、展開的にこうなると面白いかもと思ってこうしてみた。
反省はしていないし、後悔もしていない。
あと、誤字脱字報告ありがとうございます。非常に助かってます!
前話の誤字に関してはマジかよここ誤字ってたのかよ……って思わずなりましたね。眠いのに夜遅くまで執筆しちゃいけまへんな()
新しくお気に入り登録された方々もありがとうございます! 何だか着実に読んでくれる人達が増えてくれてるんだなあ。としみじみ感じてます。めちゃんこ嬉しいです!
最後になりますが、感想とか評価とかしてくれると更に嬉しいです。嬉しすぎてエナドリ片手に踊りくるっちゃうかも?
何か毎度後書き書きすぎてる気がする……こういう所も自重していくべきなんですかね? 話したいことありすぎて何でも話しちゃう。
それでは、またお会いしましょー
次回、まずは誤解を解きませう。