幕間
「そう、今の競技バトルは腐っています。
メガミデバイス競技連盟――メ競連は、自分たちの意に沿わない参加者を排除し、貶めている。実力ではなく、スポンサーの意向を尊重しているのです」
暗闇の中、一本のスポットライトが照らしているのは、豪華な肘かけ付きの椅子と、そこに座る長身の若い男。
整った顔立ち。色素の薄い髪も調髪に整えている。
臙脂色のジャケットに、ピシッと折り目の付いたスラックス、磨き上げられた革靴。
彼は肘かけに肘を付き、身体の前で手を組みながら、カメラを睨んでいる。
彼は画面の向こうにいる不特定多数の人物に話しかけていた。
「参加するチームも同じです。上位陣は特に腐り切っています。
勝利を免罪符にやりたい放題。拝金主義がまかり通っている。バトルの実力は正しく反映されない。健全とは程遠い状況です。
メ競連は『メガミデバイスを通じた青少年の健全な育成』を謳い、高校、大学の事実上の公式戦や、企業チームも集まるプロリーグまで主催しているにも関わらず……。
そのようなことが許されるのでしょうか?」
冷静な口調の中に、熱がこもっている。
熾火のように静かだが熱い。
不特定多数のうちの何人かは、そこに彼の仄暗い感情を感じ取れたかもしれない。
「このままでは、メガミデバイスの可能性が閉ざされてしまいます。
もうメ競連だけにメガミバトルを任せておくことは出来ません」
青年は立ち上がった。
そして大げさな身振りを交えながら、内なる熱を開放した口調で言い放った。
「ここに宣言します。これからのメガミバトルは、わたしたち《ケイオスリーグ》が主導します!」
自分に酔っている様子はない。
瞳には理性的な意志が見て取れる。
関係者が聞けば世迷い言とも受け取れるようなことを、必ず実現するという意思のもとに語っているのだった。
「わたしたちは新たなメガミバトルの大型企画を立ち上げます。
その準備はもう始まっています。もう見かけた方もいらっしゃるでしょう、わたしたちの仲間があちらこちらへ交流戦に赴くのも、その一環です。
この企画はメガミバトルの新しい潮流となるでしょう。
近いうちに詳細を発表いたします。どうぞご期待ください」
青年は胸に手を当てると、気障な仕草でうやうやしく一礼した。
そして、今までの熱を微塵も感じさせない、冷静かつ穏やかな口調で締めくくった。
「今日はこのあたりで。
ケイオスリーグ・チャンネル。
お相手は私、八神正一郎でした。
それではまた」