螺旋の風 ~サザンクロスのメガミたち~   作:トミすけ

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第二章 環状線の夜
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 橋本猛が夕飯を適当に済ませて、ホビーショップ・サザンクロスに戻ってくると、見知った青年の姿があった。

 

「あれ? いるじゃないっすか、シュンさん」

「……猛か。どうかしたか?」

「どうかしたか?じゃないっすよ……さっき、アヤちゃんがぼやいてましたよ、今日もシュンさんに会えなかったって」

「あー……」

 

 穂高舜はバツの悪そうな顔で頭をかく。

 今は夜八時過ぎ。高校生組は店にいられない時間である。舜がわざわざ時間をずらして来店したのにはわけがあった。

 一つは、夜の時間帯のチームと対戦することである。この時間帯は全体的に年齢層が高く、レベルも高い。そこで対戦して、サザンクロスの対戦レベルを見極めようとしていたのだ。

 もう一つは、

 

「あえて会わないようにしてたんだ」

「なんで?」

「いや……ちょっと前に知り合った他の男と親しげにしているのは、面白くないんじゃないかと思って……」

「誰が?」

「神崎さんの彼氏さん……とか?」

 

 穂高舜と神崎綾乃が知り合ってから、まだ二週間あまり。

 綾乃は毎日のように舜を捕まえては、メガミバトルについて相談をするようになっていた。

 綾乃のメガミ・マリーの運用について助言したのは舜だった。

 その助言に従い、綾乃は目下マリーの運用方法を模索中だ。今までの運用から大幅な変更を余儀なくされている。ロストナンバーの特異な能力を抑えながら活かすという、相反する運用は手探りで探すしかない。

 セシルに敗北してから二日足らずで、マリーの新しい戦法のすべてを舜に相談するようになっていた。

 なにしろ舜はレスポンスが早い。綾乃の質問に対し、即座に自分の考えを答えることができる。内容も的確だ。高校生メガミバトル選手権県大会優勝の腕前は伊達ではない。

 だが、ここ三日ほど、舜は綾乃が来る時間帯に行かないようにしていた。

 綾乃が鬱陶しくなった、というわけではない。むしろ彼女との会話は楽しいと思っている。

 だが彼女の恋人は、出会って二週間かそこらの男と親しげに話している様子を、よく思わないだろう。

 舜はそう考えていた。

 猛が半分呆れたように言った。

 

「あー、シュンさんは気を回しすぎっすね」

「?」

「アヤちゃん、付き合ってる男とかいないんで」

「……あんな可愛い子なら、彼氏の一人や二人いてもおかしくなさそうだけど」

「たしかにアヤちゃんはかわいいっすけどね。付き合ってくれ、みたいなことは毎日のように言われてるみたいだけど、特定の誰かと恋仲ってことはないです。間違いなく」

「ずいぶん断言するなぁ」

「まあ、アヤちゃんは幼なじみで、妹みたいなもんなんで。男と付き合うようなことになったら、多分報告されますね」

 

 舜は目を丸くした。。

 幼なじみとはいえ、異性の友人に恋人が出来たことを報告したりするものなのだろうか。

 というか、むしろそんなに距離が近いのなら、当の本人はどう思っているのだろう。

 

「だったら猛は?」

「はい?」

「同じチームで幼なじみだったらさ、付き合ったりはしないのか?」

「アヤちゃんと俺が……? あははははははは」

「なぜ笑う」

「いや、あははは、俺とアヤちゃんが付き合うなんて……あははは、へそで茶沸かしちゃいますわ」

「すごい表現するな……」

「アヤちゃんは妹なんですよ。アヤちゃんは俺を弟と思ってるかもですけど」

 

 俺のほうが一つ歳上なんですけどね、と猛は付け加えた。

 舜はどうにも釈然としなかったが、

 

「神崎さんに迷惑掛からないなら、会って話してもいいのかな……」

 

 などとぶつぶつつぶやいている。

 猛としては、むしろ舜には綾乃に対してもっと積極的になってもらいたい。

 

――アヤちゃんの本当の笑顔を取り戻してくれたのは、シュンさんっすからね。

 

 口に出しては言わないが、猛は舜に心から感謝している。

 あの日のバトル以来、綾乃は変わった。

 この二週間で、綾乃が以前よりもよく笑うようになったと感じている。

 作り物の寂しい微笑ではなく、心からの暖かな微笑み。

 その違いが感じられるのか、学校での綾乃の男子人気はさらに高まりつつある、ようだ。

 当の綾乃には全くその自覚がない。

 だが、その彼女が舜にだけは自分から会いたいという。

 ならばどうにかしてやりたいと思うのが、兄たる猛の立場なのだった。

 

「ところで、猛はこんな時間になんで来たんだ?」

「ああ、そりゃ《環状線バトル》しに来たんですよ」

「え、チームに入ってるのに環状線に参戦してるのか?」

「チームに入ってるかどうかは環状線じゃ関係ないっすよ。うちのチームで環状線走ってるのは俺のウェンディだけです」

「ふーむ」

 

 舜には考えられない世界だ。

 チームを組んでいるのに、正規ではないバトルに参戦するのは、スタンドプレーも甚だしいのではないか?

 そこへ、環状線バトルの専門家がやってきた。

 

「よう、猛。久しぶりに走りに来たのか?」

「ユウさん」

「守田」

 

 守田祐二は環状線バトルを縄張りにしているメガミマスターだ。

 舜たちがいるテーブルの空いた席にどっかりと座った。

 

「二人は知り合いなのか?」

「そりゃあ、環状線走ってりゃな」

「ユウさんには環状線のこと、色々教えてもらってるんっすよ。二人とも知り合いだったんですか?」

「ああ、大学の同級生」

 

 舜と守田はC大学の新入生で、一般課程が同じクラスである。お互いメガミマスターということもあり、大学でもよく話す仲になっていた。

 

 舜は腕時計を見た。

 時刻は八時半を過ぎようとしている。ここからが環状線バトルの一番美味しい時間である。

 大きなジオラマの周囲も熱気が高まってきた。

 休憩スペースの席はメガミマスターたちでほぼ埋まっている。皆夢中になってメガミのメンテナンスに勤しんでいる。

 通常の対戦もあちこちで盛り上がっている。仕事帰りの社会人も参戦してきて、夕方とはまた違った対戦の様相になる。壁にいくつも設置された実況モニターはすべてが別々の対戦を映し出している。

 

――いい機会だ。今夜は環状線バトルに注目してみよう。

 

 舜はジオラマの周囲にめぐらされたハイウェイに視線を向けた。

 そこをいくつもの光跡が駆け抜けていく。

 高速で駆け抜けるメガミたちだ。

 メガミのメンテナンスを終えた守田と猛が立ち上がると、対戦ブースへと向かう。

 

「じゃあ行こうか!」

「行きましょう!」

 

 猛のウェンディは、エアバイクのようなものにまたがっている。ウィッチの標準装備であるスナイパーライフルにユニットを増設してエアバイク化した環状線バトル仕様だ。

 手には《オルトロスⅡ》という刃付きのハンドガンを握っている。これはディーラー製の逸品で、ウェンディが愛用の武装だ。

 ウェンディが環状線の流れに入る。動きに危なっかしさはない。スムーズに流れに乗る様子は手慣れた印象だ。

 環状線バトルは基本的に個人戦である。バトルロイヤルモードで登録されるから、環状線にいる参加メンバー全員がライバルだ。

 環状線バトルには三周というルールはあるが、別に守らなくてもいい。たまに突発で大会的なことをやるので、暫定的にルール化されているだけだ。バトルは自然発生的に始まるのが常だから、周回数も曖昧になる。進行方向が右回りか、左回りかも、その日の流れで決まる。

 

「こっちも行くとするか」

「はい!」

 

 守田の言葉にメガミの夜宵が元気に答えた。

 ハイウェイに飛び出すと、脚に装備されたローラーを操り、一気にトップスピードに乗る。

 夜宵はもともとSOL:ストライクラプターであるが、守田の好みで環状線仕様にカスタマイズした結果、ほとんどの装備が朱羅:忍者になった。足首のパーツはディーラー製で、片足三輪で自走式のローラーブレードになっている。これを駆使して環状線を走り抜けるのだ。

 装備のせいもあってか、夜宵は後ろから忍び寄って一撃離脱で倒すスタイルを得意としている。

 《ナイトストライカー》を自称しているが、手から肘へと伸びるトンファーのような片刃剣『バックハンドソード』を両手に装備した見た目から、《音速カマキリ》と呼ばれている。本人はいたくご不満だ。

 しかし、実力は本物だ。

 ハイウェイの外周に隠れるように滑っていた夜宵は、ターゲットを見定めた。

 SOL:ロードランナーのカスタム機に、斜め後ろから音もなく、急速に忍び寄る。

 ロードランナーがその影に気づいたときにはもう遅い。

 夜宵は相手を追い抜きざまに、手にしたバックハンドブレードを一閃。

 太ももから胴体を斬り裂かれたロードランナーは一撃で行動不能に陥る。バランスを崩し、ハイウェイの上を激しく転がると、ガードレールに激突して止まった。

 

「けっこう……派手にクラッシュするんだな……あのメガミ大丈夫か?」

 

 舜は無意識につぶやいていた。

 すると、

 

「大丈夫。スピード出てるようにみえるけど、そうでもないのよ。メガミの丈夫さなら、クラッシュしてもそうそう致命的なダメージにはならないね」

 

 何気ない独り言に返事があったものだから、舜は飛び上がるほど驚いた。

 声の方を見ると、いつのまにかテーブルの向かいに一人座っている。パンツスーツ姿の長身の女性だ。服装からして社会人であろう。

 手に持っているのはスキットル――金属製の平べったい水筒である。

 女性はスキットルの中の液体を一口含むと、舜に視線を合わせてきた。口元だけでニヤッと笑う。ほんの少し酒の匂いがする。

 彼女は人差し指を大型モニターに向けた。

 二人は視線を戻し、環状線バトルに注目する。

 環状線の要所にはドローンや、カメラを手にしたメイドメガミが配置されており、実況映像を撮影している。

 時には俯瞰視点で、時にはメガミを追いかけるように、迫力のある映像が観戦用モニターに届けられている。

 ドローンが今追っているのは、先頭をひた走るメガミだ。舜が見たところ、ベースメガミは朱羅:忍者で、かなりのカスタマイズが施されている。

 近未来的なデザインのバイクに乗り、環状線を激走していく。

 その背後に猛のウェンディが現れた。先頭の忍者に追いすがる。

 二機は長い直線に入った。

 最もスピードが乗る区間であり、射撃戦の応酬が展開される区間でもある。前を走るメガミは雨あられと降り注ぐ銃弾をかわしながら走らなければならない。

 ウェンディは前を走る忍者に対し、手にしたハンドガンを前方に乱射する。

 続いてスナイパーライフルが火を吹いた。

 しかし、先頭のバイクからは外れ、はるか前方の路面に着弾する。

 ウェンディの車体は銃撃の反動で前方がわずかに持ち上がり、減速した。

 それを見た隣の女性がスキットルを一口煽ってから言った。

 

「あれはダメね」

「ダメですか」

「ダメダメね。走行中の射撃はロクに命中率しないし、車体の並行も保てない。それに攻撃するたびにスピードが落ちてちゃ意味がない」

「なるほど……」

 

 女性はなかなかに環状線バトルに詳しい。知識のない舜にとってはいっそありがたかった。

 先頭の朱羅:忍者が動いた。バイクがわずかに身動ぎするように揺れると、後ろに装備されたタンクから何かが路面にばらまかれる。

 機雷だ。

 

「うわわわわ~!」

 

 弾みながら転がってくる機雷を前に、ウェンディは為す術もない。

 エアバイクに次々と着弾、爆発し、ウェンディはもろくも散った。

 その様子を確認もせず、忍者のバイクがさらに加速する。

 長い直線が終わり左カーブが見えてきた。

 その時だ。

 黒い影がバイクの背後に音もなく現れた。

 夜宵である。

 スピードスケートの選手のようなフォーム走りながら、バイクの後ろにぴたりとつける。

 二機は列をなしたまま左カーブに突入する。

 忍者は地面に身を乗り出すようにバイクを傾ける。ハングオン。基本通りのアウト・イン・アウトのライン取り。

 夜宵はアウト側に膨らむと、そのまま壁を走り、一気に加速した。

 そして、忍者のバイクがクリッピングポイントを攻め、アウト側に膨らんでこようとする瞬間。

 加速した夜宵が車線を交差するように跳ぶ。

 気づいた忍者がアクセルを開けた。

 しかし遅い。

 怪鳥のように飛んできた夜宵が左右のバックハンドブレードを一閃した。

 忍者の背面を袈裟斬りにし、さらにバイクの後輪を切り裂いた。

 夜宵は着地すると、そのままスムーズにイン側を走り抜ける。

 その背後で、忍者のバイクが転倒し外壁に激突してクラッシュしていた。

 

 その後も夜宵はバトルを重ねつつ、三周駆け抜けてゴールした。

 今の一戦は夜宵の優勝で幕を閉じた。

 守田が夜宵を連れて、テーブルに戻ってくる。

 舜がねぎらうより先に、隣の女性が声をかけた。

 

「ユージン、今日は絶好調じゃん」

「いやいや、《ロードクイーン》がこんなところでのんびり観戦してなけりゃ、上手く行ってないですよ」

 

 守田が頭をかきながら、テーブルの椅子に腰掛け、夜宵をテーブルに乗せる。

 舜は首を傾げた。

 

「ロードクイーン?」

「お前、隣の人が誰だか知らずに話してたのか?」

 

 守田の呆れ顔を見て、舜もようやく気がついた。

 そういえば、彼女の名前も素性も知らない。

 舜が《ロードクイーン》と呼ばれた女性を見ると、彼女は微笑みながら舜に視線を合わせてくる。

 

「こんばんは。セシルのマスターくん」

「え、俺のこと知って……」

「そりゃ知ってるでしょ。来店初日に一七連勝のソロマスター。負け姫と仲良しのルーキー。ユージンの同級生……君は自分がこの店の有名人であることを自覚したほうがいいね」

 

 舜は頭をかいた。この店で自分がどう見られているか、なんて、意識したことはない。彼女の話しぶりからすれば、多くのメガミマスターに目をつけられているだろう。

 守田が彼女を紹介する。

 

「その人はナミさん。チーム・SSFのメンバーで、環状線のトップランナーだよ」

「チーム・SSF……ああ、あのSOL三機のチーム」

「覚えていてくれたんだ。そりゃ光栄だね」

「穂高舜です」

「シュンやん、ね。あたしは高坂佳奈美。ナミって呼んで」

 

 チーム・SSFとは先日対戦していた。

 夜の時間帯にやってくる社会人の三人チームである。かなりの実力があり、セシルは敗北を喫している。

 舜は記憶を掘り起こす。SSFの三機中一機が地上戦闘用の重装備なSOL:ロードランナーだったはずだ。

 

「あなたはあのロードランナーのマスターですか?」

「うん、そう」

 

 ナミが頷いた。

 舜も納得する。サザンクロスのトップチームにいるロードランナーは、単独で環状線バトルに参戦し、《ロードクイーン》と呼ばれているわけだ。

 そこへ猛が戻ってきた。

 

「いやー、まいったまいった……あれ? 珍しい取り合わせですね」

 

 眼を丸くしている猛に向かって、ナミはからかうように笑った。

 

「見てたぞ~、タケルっち。もうちょっと環状線慣れしたほうがいいよね。しばらくこの時間に練習に来れば?」

「いやいや、高校生をこの時間に誘わないでくださいよ……」

 

 高校生の入店は夜八時までと決められている。

 環状線バトルが盛り上がるのはそれ以降だから、高校生がおいそれと参戦できる時間ではない。

 今の猛は店が黙認しているだけの話だった。

 二人の会話を横目で見ながら、守田が言った。

 

「舜、どうよお前も。環状線バトル」

「そうだなぁ……珍しい対戦形式だし、結構面白そうかな」

「楽しいわよ~? 参加してみたら?」

 

 ナミの言葉に、舜は肩をすくめて苦笑した。

 

「気が向いたら……ですね」

 

 

 

 翌日、舜は大学の講義が終わるとすぐにサザンクロスへと向かった。

 舜が通う大学からサザンクロスまでは電車に乗って五駅ほどだが、それほど時間はかからない。

 もうすぐ夕方という時間。広いサザンクロスの店内に客の姿はまばらだ。

 やがて、少しずつ賑やかになってくる。主に今日の学業を終えた学生たちが集まってきたのだ。

 舜はメガミデバイスの売り場を物色していた。

 地元のどの模型店よりも品ぞろえが良い。特にメガミの関節パーツなどの消耗品が充実しているのが嬉しい。

 

――Cランナーの在庫があるのがありがたいよな。

 

 関節パーツは摩耗し、やがて破損したり、正常に動かなくなったりする。競技バトルをやっていれば、関節パーツのメンテナンスは必須事項だ。

 舜がパーツをいくつか選んでレジで会計を済ませ、店の入口に視線を向けたところに、 ちょうど待ち人が入ってくるところが見えた。

 いつものように、学校の制服に白いパーカーを羽織った黒髪の少女。

 チームメイトの仲間三人も一緒である。

 舜はゆっくりとそちらへ向かう。

 彼女はすぐにこちらに気がついた。

 

「……穂高さん!」

「やあ……」

 

 神崎綾乃が駆け寄ってくる。

 舜は少し気まずい。猛に言われるまで、彼女が自分のことを気にかけているなんて、思いもしなかったのだ。

 そばに来た綾乃は少し不安そうな顔をしている。

 

「あの……ご迷惑でしたか?」

「え?」

「わたしの方から一方的に厚かましく、いろいろ聞いたりしていたので……それが嫌でここに来られないのかと思ってました。

何かお気に触ったり、ご迷惑をおかけしていたなら謝ります。申し訳ありません」

 

 と言って、綾乃が深く頭を下げた。

 

――俺が理由で、彼女にこんな顔させてるのか?

 

 そう思うと、舜は無性に腹が立った。何をやっているんだ、俺は。彼女にちゃんと笑ってほしいと願ったのは自分じゃないのか。

 舜は胸の前で手を振った。

 

「いや……神崎さんは悪くないよ。俺が変に気を回してただけ……なんだ」

「……そうなんですか?」

「そうそう」

 

 綾乃の顔をまともに見れなくて、猛に視線を送ると、奴はしたり顔で頷いている。

 綾乃は再び丁寧に頭を下げた。

 

「その……もしご迷惑でなかったら、お時間があるときで構いませんので……またいろいろ教えていただけませんか? 穂高さんのアドバイスはとてもためになるので、ぜひお願いします」

「いやまあ……俺なんかでよければ……いつでも」

「よかった……ありがとうございます」

 

 胸に手を当て、ほっと息をつく綾乃。舜に柔らかく微笑みかけた。

 舜は思わず息を呑む。

 

――やばい。かわいすぎる……。

 

 心臓の鼓動が一気に大きくなるのを自覚する。

 忘れていた。彼女はとんでもない美人だったのだ。

 舜は思わず目をそらした。彼女の顔をまともに見られない。

 綾乃がまた表情を曇らせた。

 

「やっぱり……ご迷惑なんじゃ……」

「ごめん……ちがうんだ」

 

 舜は女の子と差し向かいで話すことに慣れていない。

 クラスの女子とあたりさわりのないやり取りをするくらいなら、特に問題はない。

 だが、こんなふうに個人的な理由で、面と向かって話をするのははじめてだった。

 しかも、相手はとんでもない美少女。

 こんなに照れくさいものだとは思っていなかった。

 舜は猛に助け舟を求めるべく、視線を送った。

 それに気がついているにも関わらず、奴はわざとらしく視線をそらす。

 

――あとで覚えてろよ、猛。

 

 舜はため息を一つついて、綾乃に視線を合わせないようにしながら、話題を変えた。

 

「そ、それで、今日は何か聞きたいことある?」

「あ、実は……」

 

 綾乃が笑顔で話し始める。

 舜はようやく綾乃と視線を合わせることができた。

 メガミデバイスの話にかまけていれば、緊張せずに会話ができるのだが。

 綾乃のチームメイト三人は苦笑しながら、二人の様子を見つめていた。

 

 

 

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