マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
――それは銀河系中心部へ向けて航海する長距離移民船団『マクロス・フロンティア』の進路を事前に調査する早期警戒機のレドームが前方から接近してくる正体不明の機影らしきモノを察知した事から始まった。
高速で飛来する未確認物体を察知した早期警戒機は機首を反転させると、データーを後続の母艦へと送信しながら撤退する。早期警戒機より送られたデーターは即座に後方の船団へと送られて、『マクロス・フロンティア船団』の護衛艦隊を統括する超大型可変万能ステルス宇宙攻撃空母『バトル・フロンティア』より全護衛艦隊に警戒警報が発せられる。
通常は巨大都市型移民船『アイランド1』に接続されている『バトル・フロンティア』は全長1600mを超える巨大な攻撃型空母であり、フロンティア船団を護衛する統合軍の総旗艦として船団の安全を守る傍ら、いざ有事の際には『アイランド1』から分離してその戦闘力を持って敵対勢力を排除する船団の守護者である。
その『バトル・フロンティア』より発せられた警戒警報を受けて、『アイランド1』の前方宙域を航行するグァンタナモ級宇宙空母の菱形の船体より主力可変戦闘機VF-171 ナイトメア・プラスが緊急発進していく。
西暦2041年に地球より出発して18年。いくつかの小競り合いは在ったが それほどの戦闘経験はなく、専ら進路上に存在する大型障害物の排除などが任務であったが、それでも移民船団ゆえの脆弱性を持つ船団を守る力である事は疑いようがなかった。
スラスターで機体を安定させたVF-171の編隊は、隊列を組んで識別コードを出さない未確認物体を迎撃するべく船団の前方の宙域へと進み迎撃コースに入る……長らく平和な時間が続いた影響で迎撃機を操縦するパイロット達は戦闘経験が殆どなく、未知の存在に対峙するという緊張感に圧し潰されそうになりながらも、大切なモノ、愛する者を守るという一念で進んでいた。
『……目標確認。安全装置解除』
エレナ、ジョニー。編隊のリーダーの通信による指示を聞きながら、彼は愛する者たちの名前を呟いて己を奮起させる――ここを抜かれれば、後方にはフロンティア船団がある……重装備の統合軍艦艇に守られているとはいえ、戦闘力を持たない民間船や居住艦が多数存在する船団に“奴ら”を向かわせる訳にはいかない。
隊長機の指示の下、各機が各々に照準を合わせたミサイルが一斉に射出されて未確認物体へと殺到する――が、その全てが迎撃されて反撃の砲火によってVF-171 ナイトメア・プラスが次々と撃墜されて火球に沈んでいく。
超大型可変万能ステルス宇宙攻撃空母『バトル・フロンティア』
『マクロス・フロンティア船団』を守る統合軍総旗艦である『バトル・フロンティア』の
「ブラボー1,3、撃墜されました」
「無人迎撃隊、アンノンウンに向け進行――会敵まで10秒、8,7,6,5,4,3,2――」
ホロスクリーン上の敵対勢力の表示に変化が起こり、分析した士官は驚きの声を上げた。
「――電磁バースト!?」
無人戦闘機AIF-7Sゴーストの編隊が敵勢力の迎撃に向かうが、人工知能への信頼度が低く自律行動をある程度まで抑制して無線での指示を送るタイプのゴースト故に、敵勢力の放ったECMの前に制御を失って次々と撃墜されていく。
その報告を受けた軍司令官は、この状況が並々ならぬモノであると肌で感じ――遂に来るべき時が来たと判断して、このフロンティアの最高責任者である行政府の大統領へのホットラインを手に取り、連絡先である『マクロス・フロンティア』第4代大統領ハワード・グラスへと繋げる。
『……事実なのかね、アンノンウンがゴーストやミサイルの制御に干渉したというのは?』
「……は、はい。大統領閣下」
統合軍司令官の彼と通信相手であるハワード・グラス大統領は、この『マクロス・フロンティア船団』に試練の時が訪れたという事実に、緊張のあまりに知らず生唾を飲んだ。
『アイランド1』星道館ホール
シェリル・ノーム・コンサート会場
銀河の歌姫と呼ばれるトップシンガー シェリルのコンサートは熱狂に包まれていた。多くのスタッフの尽力によって築き上げた大規模な舞台装置と、最新の
そんな大規模な熱気に包まれたコンサート会場の上に備え付けられた連絡橋に陣取った翡翠とノノは、移民船団の周囲で繰り広げられている戦闘に気付いていた。
「……どうする翡翠、加勢する?」
「……静観で」
真面目な顔をして問い掛けるノノに向けて、スルメをカジカジと齧っていた翡翠はドライに切って捨てる……この船団に来て知った、フォールド波を発する少女ランカ・リーの周囲に見え隠れする巨大企業『L・A・I』の影。
不審な動きをする『L・A・I』の調査をするうちに判明した甲虫ども――超時空生命体バジュラの特性――彼らだけが生成できる超物質『フォールド・クォーツ』を獲得する事を狙う人類の思惑……それを知った時、翡翠はこの『マクロス・フロンティア』を見限った。
超時空生命体であるバジュラの存在を知った人類は、彼らの生息宙域へと進路を取る――この世界の超光速航法である『フォールド』航法は、対象物の質量が大きければ大きいほど大量のエネルギーを必要とするという欠点があるが、生息地へと侵入したモノへは容赦なく攻撃を仕掛けてくるバジュラの戦闘力を考えれば迂回するのも一つの手だが、人類は、『マクロス・フロンティア船団』はバジュラの生息宙域へと進路を取った……その裏には様々な思惑が見え隠れするが――そんなモノは異なる世界から迷い込んだ翡翠やノノの知った事ではない。
シェリル・ノームのコンサートに熱狂する人々を冷めた目で見ている翡翠に何か言いたそうにしていたノノだったが、結局言い出せずに彼女もシェリルのコンサートへと目を向ける……まるで何かを飲み込むように……そんな時、ノノは会場の端の方に複数の人影がスタンバイしている事に気付いて、舞台から一際眩しい照明と共に大きな音が響いて人々の注目を集め――その観客達の合間を縫うように複数のEX―ギアをまとった人々がカラフルなスモークを吐き出しながら飛翔する。
「――翡翠! あれって」
「……アルトにいちゃん?」
こちらには気付いていないようだが、至近距離を上昇するEX-ギアをまとったパイロットの女性と見まがうような特徴的な顔付きを認識したノノと翡翠は、アルトたち美星学園の生徒たちがアトラクションとして組み込まれていた事を思い出して視線を向ける――5つのカラフルなスモークの軌跡を残しながらも、飛行するにはせまいこの会場を危なげなく飛んでいる姿には高度な操縦テクニックが必要なのは分かる。
「……ドヤ顔だね、アルトにいちゃん」
「……そうだね」
アクロバット飛行をしながらもこの狭い会場を危なげなく飛行する彼らはかなりの訓練をしてきたのだろう、その顔には確かな自信が溢れている。そんな中でシンボルのように立つ巨大なオブジェの上部構造――まるで大きな鳥のような構造物の先端にスポットライトが集中して一人の人物の姿を浮き上がらせる――まるで昔の西部劇のようなレトロな姿をしたシェリルだ。
角度の関係でこちらには気付いていないようだったが、もっているピンク色の銃のようなもので飛行するアルトを狙うと、ハート形の光弾のようなモノが発射されてアルトの至近距離で炸裂――直接的な被害はなかったが、怒り心頭のアルトはフザケた事をしたシェリルの至近距離を飛び抜いて驚かそうという腹積もりのようだが、相手は銀河を股にかける妖精――その程度で驚くようなタマではないようで、アルトを挑発まがいに手招きした後に鳥のオブジェから跳躍――観客が見上げる空間へとその身を躍らせた。
「……おいおい」
「……すごんだねぇ、シェリルって」
何をいちゃついて居やがるのか、アルトの美形は銀河の妖精にも効果があるのかと半目になった翡翠とノノは棒読みのような口調でボヤく。高い所からダイブしたシェリルの姿に観客の中から悲鳴が上がるが、即座に駆け付けたアルトのEX―ギアが空中でシェリルをキャッチして事なきを得て……そのまま会場内を飛行し始めた。
「……なにをイチャついていやがるのやら、撃ち落としてやろうか」
「……ナニをひがんでいるのよ」
右手の人差し指を伸ばして仲良く空中散歩を始める二人に狙いをつけながらボヤく翡翠にノノは「マセた事を言うのは5年早い」と突っ込むのだった。
謎の敵対勢力の襲撃を受けた『マクロス・フロンティア』船団を護衛する統合軍は移民船団を守るべく総力を挙げて迎撃行動に出たが、相手は軽快な動きで砲火を避けて防衛ラインを突破せんと襲い掛かる――その動きは変幻自在であり、赤やクリーム色をした装甲に守られた彼らは機動兵器というより生物そのモノであった。
体内で生成された炸裂弾頭を発射してバルキリーを粉砕し、肉薄したバルキリーのコックピットに槍状の尾を突き刺して破壊する……一般の兵士たちには知らされていなかったが、彼らはバジュラと呼ばれる超時空生命体であり、太古に銀河系全土に高度な文明を築いたプロトカルチャーですら恐れながらも憧れて、その姿を模したシステムすら構築して崇拝した存在であった。
バジュラの攻撃によって次々と撃墜されるバルキリー達。
そんな絶望的な戦場に一陣の風が舞い込む――統合軍が運用するVF-171 ナイトメア・プラスの危機を救ったのは、白いバルキリーだった。
「――VF-25!?」
白いバルキリーに危機を救われたVF-171 ナイトメア・プラスのパイロットは、危機を救ってくれた友軍機を見て驚きを露にする――その機体はVF-171に代わって統合軍の主力戦闘機になるべく開発されて試験運用されている筈の新型可変戦闘機VF-25 メサイヤ・バルキリーだったからだ。試験運用中で統合軍の中でもめったにお目にかかれない最新鋭機の登場に驚くVF-171へ通信が入る。
『――『S・M・S』スカル小隊リーダー オズマ・リーより新統合軍機へ、この宙域は我々が引き継ぐ』
「……り、了解!」
危機を救われたVF-171は機首を反転させて離脱していき、それを見ていたオズマは愛機の中で毒付く。
「……ふん。腰抜けどもに戦える相手じゃない」
『……『コード・ビクター』、隊長が言っていた例の奴ですか』
「――いくぞ!」
僚機であるVF-25Fに乗るヘンリー・ギリアム大尉より通信が入り、視線に力を込めたオズマは敵を迎撃するべくエンジン出力を上げる。
『マクロス・フロンティア』船団へと襲い掛かってきたバジュラは、その圧倒的な機動力と強大な攻撃力で統合軍の防衛網を突破して、移民船団を守る最終防衛ラインに迫っていた。
ノーザンプトン級ステルス・フリゲートや多数の砲門を持つステルス・クルーザーのみならずグァンタナモ級を始めとする宇宙空母群からも迫りくるバジュラの群れに向けて激しい砲火が向けられるが、軽快な機動で避けるバジュラを捉える事は難しく、逆に赤い大型のバジュラの背中に備えられている突起物が電荷を帯びて発射された光弾は、200mを超えるステルス・クルーザーを一撃で粉砕するほどの威力を見せた。
「……なんて奴らだ」
防衛網を突破しようとするバジュラを追撃するVF-25Fのコックピットでギリアムは一撃で宇宙巡洋艦を粉砕する赤いバジュラの恐るべき攻撃力に呟いた……先行するバジュラを迎撃するべく最大戦速で追撃しているというのに、この最新鋭のVF-25でも離されないようにするのがやっとと言う状況に、本当に生物かと疑問にすら思えてくる。
『――ギリアム! 街を守るぞ』
「――へっ、言われなくたって!」
バジュラの群れの進路の先には都市型大型移民船『アイランド1』が航行しており、バジュラは明らかに『アイランド1』を目指して侵攻しているのは明白である――共に追撃するオズマに了承の返事をすると、ギリアムはバジュラの迎撃を掻い潜ってレーザー機関銃を乱射して少しでも『アイランド1』に近づくバジュラを減らそうと攻撃を仕掛けた。
星道館ホール 天井部連絡通路
シェリル・ノームと共にEX-ギアで飛行する羽目になった早乙女アルトは、シェリルが歌い終えると同時に近くの連絡通路に彼女を下した後、ふざけた事をしてくれたシェリルへと怒りの矛先を向けた。
「――なんのつもりだ!」
「……決まってるじゃない。演出よ、演出」
「――ふざけるな。もし俺があと一歩遅かったら……お前だけじゃなく、観客だって!」
演出などと嘯いて危険な行為を行ったシェリルに怒りを見せるアルト、幼少の頃に演目に携わった経験のある彼は自分のわがままで観客をも危険にさらしたシェリルを詰問するが、当の彼女は余裕の笑みを浮かべている。
「うふっ、予測可能な人生なんて何が面白いの? 私はもっとスリリングに歌いたいだけ」
「――なんだと!」
「……貴方、リハで俺たちを見くびるなって言ってたじゃない。私はちゃんと貴方がどれだけ飛べるか、見極めたつもりよ」
そう言ってシェリルは衣装のスカートを捲って怯むアルトにスカートの中身――非常用の小型ジェット推進機を見せる。
「……ガス・ジェットクラスター!?」
「あはははは。バカね、アマチュアなんかに命を預ける訳ないでしょう」
シェリルたちは気付いていないが連絡通路には先客がおり、シェリルとアルトのやり取りの一部始終を目撃した翡翠とノノは小声で囁きあっていた。
「……手玉に取られてるね、アルトにいちゃん」
「……あのシェリルって人の方が一枚上手ですね」
そしてそれはアルトも感じているようで苦々しい顔で憮然としていたが、シェリルはそんなアルトの心境などお構いなしで「――さぁ、次に行くわよ」と駆け出したが――突然照明が落とされて非常用へと切り替わる……そしてそれは星道館ホールだけではなく、『アイランド1』全体に起こり、日常生活を送る市民の近くにある投影型のスクリーンの画像が緊急事態を告げる映像に切り替わった。
『避難警報発令、避難警報発令、市民の皆さんは速やかに最寄りのシェルターへ避難してください。これは演習ではありません。直ちに最寄りのシェルターへ避難してください』
「――避難ですって!? 私のライブはまだ始まったばかりよ!」
避難警報が発令された事を告げる放送を聞いたシェリルは、己がコンサートを中止せざるを得ない状況に納得がいかずに気勢を上げるが、次の瞬間に星道館ホールだけではなく『アイランド1』自体が振動に見舞われて、バランスを崩して連絡通路から落下しそうになるがアルトに庇われて事なきを得た……が、シェリルを支えて体制を低くしたアルトの目に、連絡通路に隠れていた翡翠たちが映る。
「――お前ら、なんでここに!?」
「「……あっ、バレた」」
大型ステルス可変空母『バトル・フロンティア』
「――パープル、バーミリオン小隊壊滅」
「――最終防衛ライン、突破されました」
戦闘指揮所にて戦況を映し出している球体のホロスクリーンには『マクロス・フロンティア船団』の中心である都市型大型移民船『アイランド1』へと迫る幾つもの赤い点――敵対勢力が『アイランド1』間近まで迫っている事が表示される。外宇宙を航行する大型航宙艦ゆえに隕石などから街を守る防護シェルも装備されてはいるが、全長15キロもの巨体を保護する防護シェルも巨大な為に閉鎖するにしても時間がかかり、とても敵勢力の接近を防ぐには時間が足りなかった。
「――『アイランド1』に取り付かれます!」
防護シェルの閉鎖が間に合わない事を悟った女性士官が緊迫した声で報告してきて、軍司令官兼『バトル・フロンティア』の艦長の顔が苦渋にまみれる……このままでは、戦うすべを持たない民間人にどれだけの被害が出るか分からない。
「――リパルシブ・フールド展開! ありったけのエネルギーを回せ!」
非常警報が発令された『アイランド1』の星道館ホールの屋上部分に設置された非常用出入口が開けられて、中から複数の人影が出てくる……EX-ギアを纏ったアルトを先頭に共にいたシェリル・ノームと、連絡通路で隠れていた所を見つかった翡翠とノノの四人は、非常口から外に出て『アイランド1』を覆う強化素材の透明なシェルの外で繰り広げられている戦いの光景に言葉を失う。
「……なんなの、コレ」
「――バカ! ここは危険だ、早く避難を――ほら、お前たちも早く!」
「――いやよ! 私の大切なライブを踏みにじった奴らから、こそこそ逃げ出すなんて!」
シェリルの呆然とした呟きに反応したアルトが、ついでに出てきた翡翠やノノにも避難を促すが、強い拒否反応を示すシェリルの気迫に押されるアルト……今でこそ空に憧れて、航宙科のパイロット育成コースに所属しているが、彼は歌舞伎の名門である早乙女家で生を受けて、幼少の頃より天才子役として数々の舞台に上ったが故に、舞台にかける人の情熱を子供の頃より目の当たりにしており、それがシェリルのライブに掛ける気迫を理解させた……だが、そんな彼女に冷水を浴びせるような声が掛けられる。
「……何言ってんの、ライブの主催だというのなら、ねぇちゃんのする事はまずお客さんの安全確保じゃないの?」
その時、『アイランド1』に取り付いた大型バジュラが上部にある突起物からビームを打ち込んで透明なシェルを破壊して、打ち込まれたビームは運悪くアルトたちの近くに着弾して激しい爆風が四人を吹き飛ばした。
「――きゃああああ!?」
爆風の激しい衝撃波で一瞬意識が飛んだアルトだったが、聞こえてくる女性の悲鳴に意識を取り戻して見たモノは爆風によって宙に投げ出されて飛ばされていくシェリルの姿だった。
「――まずい!」
即座に状況を把握したアルトはEX-ギア背部の飛行ユニットを展開してシェリルの救助を試みるが、一緒に飛ばされた破片が邪魔をして思うように近づけない。
――落ち着け、落ち着け。
焦りは視野を狭めて思考を鈍らせる――なにか手がある筈だ、思い出せ、シェリルの手を掴もうとするが飛んでくる破片に邪魔をされて掴めない――思考を巡らすアルトの脳裏に先ほど見た光景が思い起こされる。
「――シェリル、飛べ!」
「――でも!?」
「――腰のジェットだ!」
アルトの言葉にシェリルは、己の腰に巻いたガス・ジェット・スラスターの存在を思い出してジェットの起動スイッチである腰の紐を引っ張る――己の存在意義を思い出したガス・ジェット・スラスターは、噴射を開始してシェリルの身体を持ち上げて何とか軟着陸に成功する。
だが地面に近かった為か、勢いを殺しきれずに地面を転がったシェリルは大きめの破片に強く身体を打ち付けてようやく止まったが、打ち付けた衝撃の為にしばらく身動き出来ずに居たが何とか身体を起こして周囲を見回すと、町は無残な姿を晒していた。
「……なんなのよ、コレ」
破壊により倒壊したビルや吹き飛ばされた車の群れ、逃げ惑う群衆の傍ではアパートの窓から燃え上がる火災の炎、非日常的な光景に脳が理解する事を拒んだシェリルは後ずさり――そこへクリーム色をした巨大な質量が近くのビルと激突する。
クリーム色をした異形の姿に怯えたシェリルは逃げようとするが、異形から放たれた生体炸裂弾頭により逃げ場を失ったシェリルに覆い被さるように近づいてくる異形の爪が伸びるより早く、飛行ユニットを展開したアルトが間一髪の所でシェリルを救出して飛び去った。
「――しっかり掴まれ」
複数の異形に追われたアルトはシェリルを抱えたまま地面を疾走する――上空に飛び立てばスピードは出るだろうが、複数の相手では遮蔽物がない上空では撃墜される危険性もあり、遮蔽物を利用しながらの逃走の方が土地勘のある分 条件的には此方が有利になる。
遮蔽物をうまく利用しながら異形の攻撃を避けて、角を曲がった所でビルとビルの隙間に身を潜めたアルトとシェリルは、異形の目を掻い潜る事に成功して身を潜めながらもほっと一息をついた。
「……私たちの事は完全に忘れているね、アルトにいちゃん」
「……そうだね」
同じく飛ばされた翡翠とノノだったが、並ではない彼女たちは自分たちで態勢を立て直して、近くのビルの中に身を潜めていた。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
遂にフロンティア船団がバジュラの襲撃を受け、ただ見をしていた翡翠とノノは見つかってしまいました。そんな中で市街地にまで攻撃がおよび、混乱の中で翡翠とノノは完全に忘れ去られました。
では次回 第11話 ハード・チェイス 6/11 0時更新予定です。ではでは~。