マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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サヨナラノツバサ編




第19話 operation Defiance 反抗作戦

 

 『マクロス・フロンティア』船団を脅かす宇宙生物バジュラの脅威を退ける為、『S・M・S』旗艦『マクロス・クォーター』と新統合軍の連合艦隊はフォールド航法にて『フロンティア』の進路上にある敵バジュラの巣へと向かう――デ・フォールドした連合艦隊の前には、破壊の跡が著しい巨大な航宙艦の無残な姿があった。

 

 警戒体制から戦闘態勢へと移行する『マクロス・クォーター』より発艦した真紅のクァドラン・レアの中でクラン・クランは目の前に存在する巨大な航宙艦の名称を呟く。

 

「……ボトルザー級要塞」

 

 大いなる種族プロトカルチャーによって創造された戦闘種族ゼントラーディにおいて、100万単位の戦闘艦艇を要する基幹艦隊を束ねる巨大要塞を前に驚くクラン。第一次星間戦争において強力な艦隊を有している基幹艦隊によって地球本土は焦土と化して多くの地球人類の命が奪われた、恐怖の象徴ともいえる存在が無残な姿を晒していた。

 

『先行偵察部隊により、この中型ボトルザー級要塞は半世紀ほど前にバジュラによって滅ぼされ、その巣となっている事が判明している』

 

 『マクロス・クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐より、今回 連合艦隊によってバジュラを巣ごと殲滅するという作戦内容が説明され、『クォーター』より発艦したVF-25の編隊が新統合軍のVF-171の編隊と合流してバジュラの巣への攻撃準備を整える。その編隊の中にはマルーン基調のVF-27の姿もあり、今回の作戦に掛ける人類側の戦意の高さが伺える。

 

 そしてそんな人類側の動きを察知したバジュラはボトルザー級要塞の残骸から姿を現して、文字通り群雲の如き様相で連合艦隊を迎え撃とうとしていた。そんな無数のバジュラを見たアルトは、表情を引き締める……マヤン島でのランカとの会話の中でバジュラにも心が有るのではないかという疑問は、アルトの心に棘のように突き刺さっていた。

 

『――来ます』

 

 RVF-25に乗るルカの警告を受けて『S・M・S』と新統合軍の連合軍は、ボトルザー級要塞の残骸から出て来たバジュラの大群を迎え撃つべくインターセプト・コースを取る。

 

『全機、反応弾発射』

 

 攻撃機部隊の指揮を執るオズマの命令を受けて、連合軍は機体に装填された切り札の反応弾頭を射出する――反応弾。従来の核兵器を改造して、起爆に重量子を使用した純粋水爆に近い威力を持つ兵器である。

 連合軍の編隊より放たれた大量の反応弾頭は虚空を進み、襲い掛かって来るバジュラの大群の手前で爆発して無数の火球を生み出すとバジュラを焼き尽くすが、群雲の如き数を有するバジュラの群れは火球を乗り越えて攻撃部隊へと襲い掛かる。

 

 バジュラの群れと交戦状態となった連合軍の編隊は、相対速度を合せて格闘戦に持ち込むなど奮戦をしていたが、巣を守る超重量級の大型バジュラの背中に備えられた3門の生体重ビーム砲から放たれる重ビームは脅威であり、またその巨体故に通常の武装では歯が立たず、しかもボトルザー級要塞の残骸から姿を現した重戦艦級バジュラをも上回る巨体を持つ巨大バジュラ艦が出現し、内包する重量子ビーム砲が斉射されると、500mを越えるウラガ級護衛宇宙空母をも一撃で粉砕された。

 

『――フォールド・ウェーブ シグナル増大、奴です。奴がバジュラの群れをコントロールしています』

 

 RVF-25の情報収集能力を最大限に使い、指示を出しているのがあの巨大なバジュラ艦であると特定したルカは、その事実を連合軍の全員に伝える。それを聞いた『マクロス・クォーター』の操舵士ボビー・マルコーは野太い雄たけびを上げると、『クォーター』を巡行型から強行型へと変形させて周囲に浮遊するボトルザー級要塞の残骸に強制着陸する。残骸を巨大バジュラ艦からの攻撃に対する盾代わりにして、主砲であるガトリング式バスターキャノンの照準を巨大バジュラ艦へと向けて発射するが、巨大バジュラ艦の装甲は堅牢であり、バスターキャノンの攻撃力でも穴をあけるのが限界であった。

 

「――なんて、カタブツなの」

 

 


 

 

 『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊がバジュラの巣への攻撃を行っている宙域より少し離れた場所――1光年も離れていない宙域に“それ”は存在していた。黒地に赤い模様が描かれた流線形の船体に四重の強力なシールド発生機関を装備した『実験艦―02』が、亜空間潜航によりこの世界に隣接する亜空間(サブ・スペース)に潜っていた。

 

 『S・M・S』と新統合軍の大規模な作戦をキャチした翡翠とノノは、『実験艦―02』で作戦宙域へと向かう連合艦隊を追跡して、彼らの目的地であるバジュラの巣――この異世界に迷い込んだ翡翠とノノが、艦の修理と一時の安息を求めて立ち寄ったフルブス・アンファレス級の中型ボドルザー級要塞の破壊された無残な残骸の姿が見えて来る。

 

「……ここは」

「……遂に甲虫どもと『フロンティア』連合軍が決戦を行うか」

 

 先行させた偵察用装備のドローンより送られて来る映像を見ながら、何とも言えない顔をする翡翠とノノ。破壊されて放棄された中型ボトルザー級要塞の無残な姿が宇宙空間を漂っている……この世界に迷い込んだ時、亜空間跳躍実験でのアクシデントで損傷を追った『実験艦―02』を修理する為に宇宙を漂っていたこの中型ボトルザー級要塞の残骸に立ち寄ったのだが、そこは甲虫ども―宇宙生物バジュラの巣窟になっており、襲い掛かって来るバジュラを撃退したが、此処では落ち着いて修理が出来ないと判断した翡翠とノノは廃棄艦から撤退した。

 

 そして中型ボトルザー級要塞の残骸の傍の随伴艦らしき残骸からデーターを得た翡翠は、随伴艦を建造した後に敵に破壊された工廠衛星を修理して拠点とした後、フォールド波に乗って宇宙に響く“歌”に興味を持った二人は“歌”の歌い手を探しに行き、長距離移民船団『マクロス・フロンティア』へとたどり着く。

 

 そして、その『フロンティア』船団にもバジュラの襲撃があり、バジュラの脅威を払拭する為に彼らは連合艦隊を編成してバジュラの巣の排除しようとしていた。

 

「……もしかしたら、バジュラともコミュニケーションが取れるかもしれないのに」

 

 バジュラと共生関係にあるフォールド細菌によりフォールド・ウェーブを発する事でバジュラ同士はコミュニケーションを取っている節があり、人類種の中で二人の歌姫はバジュラと同じくフォールド・ウェーブを発する能力を持っている事が確認されている……これから次第では人間の中からもフォールド・ウェーブを発生させる者が増えるかもしれないし、いずれはバジュラとコミュニケーションが取れるかもしれないのだ。

 

「……まっ、上の連中が欲に塗れている限り望み薄だけどね」

 

 『フロンティア』船団に紛れ込んだ『マクロス・ギャラクシー』の首脳部とシェリルのマネージャーという身分を隠れ蓑にして色々と暗躍しているグレイスなる人物との交信をモニターして知った、彼らの思惑――帰るべき船団を失った彼らは、『フロンティア』船団の乗っ取りを画策して準備を進め、その後に超時空生物であるバジュラを支配して、バジュラの持つフォールド・ウェーブで構成される超時空ネットワークと、体内にあるフォールド・クォーツを手に入れるつもりであり、それは『フロンティア』の上層部も同じであった。

 

「甲虫どもの戦力は此処だけではない、それでも欲を捨てられない……なまじ知能を持つが故に欲を捨てきれない、知的生命体の“業”だね」

 

 シニカルな笑いを浮かべながら肩を竦める翡翠――そうしている内にバジュラと連合艦隊との戦いに動きがあったようだ。中型ボトルザー級要塞の中に巣くうバジュラの殲滅を図って、要塞に取り付こうとするバルキリー編隊を迎撃するべく、これまで確認されなかった大型のバジュラが複数姿を現して、3門の背中に装備された生体重ビーム砲で砲撃を行って近付いていたバルキリー編隊を撃墜し、要塞の残骸から一際大きな戦闘艦が浮上すると、装備された生体重粒子ビーム砲で連合艦隊の艦艇を次々と撃沈していく。

 

「……あれは見た事がないな」

「……バジュラも本気なんだね」

 

 そんな中で『S・M・S』旗艦である『マクロス・クォーター』の主砲により縦長の巨大バジュラ艦の装甲に穴が開き、そこに向けて二機のバルキリーが突入していく――1機は『ギャラクシー』船団所属で、あのシェリルの周りにいた機械兵ブレラ・スターンが駆る赤紫のVF-27と、もう1機は早乙女アルトの乗るVF-25Fであった。

 

「……やる気だね、アルトにいちゃん」

 

 


 

 

 バジュラの巣を守るナイト級と呼ばれる戦艦クラスの個体よりも数倍巨大な準女王種を守る要塞クラスの巨体の内部に先に突入したのは、ブレラ・スターンが操るマルーン基調のVF-27ルシファー。『マクロス・ギャラクシー』で開発されたこの機体は、インプラント技術により強化されたサイボーグ兵士が搭乗する事を前提に開発されており、パイロットの脳と機体側のセントラル・コンピュータを光学回路で直結することで既存の機体を上回る高い機動性を発揮する。

 

 要塞バジュラ艦の内部に突入したブレラの駆るVF-27はその高い機動性を発揮して、構造物などで飛行に制限が掛かる狭い艦内で迎撃の為に襲い掛かって来る兵隊バジュラを的確に撃墜しながら飛び、それを追い掛ける形で飛ぶアルトのVF-27は張り巡らされた構造物を避けるのに手間取って先行するVF-27に追いつく処か、どんどん距離を離されていく。

 

「……アイツ……くそぉおお!」

 

 自分とブレラの“腕の差”を見せつけられたアルトは絶叫しながら機体を操ってブレラの後を追い――突然アルトの耳に聞きなれた声が聞こえてくる。その声はコックピットにぶら下げたシェリルから報酬としてもらったイヤリングの紫色をした石から響いているように感じた。そしてその声に気付いたのはアルトだけでなく、先行するブレラも脳内に移植されているフォールド通信機が受信して「……ランカ」と呟いた。

 

 

 『実験艦―02』ブリッジ

 

 戦場に送り込んでいる偵察用ドローンの映像では、突然フォールド・ウェーブに乗って響いて来た“歌声”にこの宙域にいる全てのバジュラが反応して、戸惑いのようなモノを見せている様子が表示される……先ほどから『実験艦―02』のセンサーも強力なフォールド波を感知しており、フォールド波は後方の『フロンティア』船団から響いて来る。

 

「……これは」

「……ランカの歌?」

 

 虚空に響くランカ・リーの歌声に、フォールド・ネットワークで繋がっているバジュラ達は驚いて戸惑いのようなモノをみせており、それをチャンスと捉えたバルキリー編隊はここぞとばかりに攻勢を強める。

 

「……決まったな」

「……だけど」

 

 悲痛な表情を浮かべるノノ……ランカの放つフォールド・ウェーブの力が広く認識された。彼女の歌はバジュラの連携を阻害し、バジュラに混乱を与える力がある事が証明されてしまった……『フロンティア』政府は、船団を守る新統合軍は、彼女の歌の有効性に気付いてバジュラとの戦争に利用するだろう……バジュラからの脅威から人々を守るという大義名分を盾に。

 

 だが結局のところは『フロンティア』政府も『ギャラクシー』と同じだ。彼らはフォールド・クォーツを内包するバジュラを資源としてしか見ておらず、そんな欲の皮が突っ張った彼らはバジュラの生息地を探して、そこに居るバジュラからフォールド・クォーツを回収する気なのだ。

 

「……ま、なるようになるさ――」

 

 肩を竦めた翡翠がそう答えようとした時、『実験艦―02』のセンサーが戦闘宙域で強力な指向性のフォールド波を検出し、それからその場にいる全てのバジュラが撤退していくのが観測された。

 

「……終わったな」

 

 


 

 

  RVF-25に乗るルカ・アンジェローニは、要塞級バジュラに突入した部隊が奥に巣くっていた女王種を撃破した事は戦術ネットワークを通じて把握していたが、撃破後に要塞級に起こった強力なフォールド・ウェーブを感知してその解析を行っていた。そのフォールド波は通常の物と違って一点に集中した指向性のフォールド波であった。

 

「……超指向性のフォールド波……はっ! まさか、この方向は――」

 

 今のフォールド波は、中型ボトルザー級要塞に巣くっていたバジュラの群れを統率した女王種が撃破された事を伝える指向性のフォールド通信だとすると、その通信先は群れの上位存在である――バジュラを総括する存在――つまりバジュラ達の本拠地へと向けた指向性フォールド波なのではないか。

 

 バジュラの群れが撤退した事により、『フロンティア』船団の脅威となりえるバジュラの巣の排除という作戦目標を達成した『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊は、展開していたバルキリー編隊の回収と負傷者や機体を失ったパイロットの捜索を行いながら、中型ボトルザー級要塞内にバジュラが残っていないかの探査を行っていた。

 

 高い探査能力を持つRVF―25の能力を遺憾なく発揮しながら戦闘宙域に残る行方不明者を捜索していたルカだったが、さすがに姿勢制御用の推進剤の残量が心もとなくなってきた為、一時的に母艦である『マクロス・クォーター』へと帰還して補給を受ける傍ら、彼の属する小隊の指揮官であるオズマへと通信を繋げようとするが、オズマはバジュラの要塞級内で負傷したアルトの救出任務中である為、部隊の指揮官であるジェフリー・ワイルダー大佐へと繋ぐ。

 

『……私だ、どうしたかね?』

「突然すみません、シェフリー艦長。実は早急に報告したい事がありまして――」

 

 今回の作戦において、『マクロス・ギャラクシー』の部隊から参戦の申し出があり『フロンティア』政府はそれを了承したが、政府は『ギャラクシー』への警戒は解いてはおらず、同じように警戒している『フロンティア』を守る新統合軍に協力を要請し――虎の子のケルカリア級偵察ポットを投入していた。

 

 このケルカリア級偵察ポットは古代プロトカルチャー文明が全盛の時代に開発・製造された機体であり、探知装置として超長距離早期警戒ドップラーレーダー、重力波パッシヴレーダー、光学・電磁波・素粒子各系統のパッシヴ・アクティヴ両用クラスターを搭載しており、この機体は古代プロトカルチャーの遺跡にて発見された完全オリジナルに近い高性能機である。

 

 今回のバジュラ殲滅作戦において、『ギャラクシー』からの参戦した勢力以外に活動しているモノはいないかを監視していたケルカリア級偵察ポットが未知の素粒子を検出したのだ――それは戦闘宙域から少し離れた宙域から検出され、同時に微弱ながらも重力波も検出されたのだ。

 

『……それは、つまり』

「はい。この宙域の傍で未知の勢力がいる可能性があります」

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 S・M・Sと新統合軍によるバジュラへの反抗作戦が開始され、女王種は討伐されてフロンティア船団への脅威は軽減しました……そして、その裏でルカが暗躍していた翡翠達のしっぽを掴みました……自分たちが技術的に優位に立っていると慢心した結果ですね。


 では次回 第20話 the Clowns' Feast 道化師たちの宴  7/12 0時に更新予定です。ではでは~。
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