マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 サヨナラノツバサ編




第29話 The Final Weapon of the Other World 異界の最終兵器

 

 オズマ少佐との合流の為に銀河系中心宙域を航行する『マクロス・クォーター』の前に現れた敗走するバジュラとそれを追撃する謎の宇宙生物の大群――謎の宇宙生物にバジュラごと包囲された『マクロス・クォーター』は、未知の敵を相手に苦戦を強いられていた。

 

 超時空生命体バジュラが擁する戦艦タイプや空母タイプに匹敵するかそれを凌駕するほど巨大な未確認生物の大群に包囲されたバジュラ達は、未知の生物が放つ光弾の飽和攻撃の前にどんどん数を減らしていき、強靭な肉体を持つ兵隊バジュラたちも小型の未確認生物に捕らえられてエネルギー転換装甲を持つバジュラの強靭な肉体を容易く両断されていく。

 

 その小型生物が群雲の如く大規模に『マクロス・クォーター』の周囲を取り囲み、凄まじいスピードに乗って襲い掛かって来るが、迎撃に出たVF-25やクァドラン・レアによって排除されるが、千を超える巨大生物より射出された小型生物の数は減る処かどんどん増えていき、『マクロス・クォーター』の船体に取り付いた小型生物がその強靭な触脚で迎撃ビーム砲台を破壊し、船体に付けた傷を触脚で広げている所をデストロイドからのミサイル攻撃を受けて吹き飛ばされていた。

 

 だが、それでも未知の宇宙生物の物量に圧され、『マクロス・クォーター』は脱出する為にフォールド航法に移行することも出来ずに、敵大型宇宙生物群による光弾の集中砲火の前にあわや撃沈されそうになったその時――『クォーター』のブリッジの近くの空間に突如として亀裂が入ると、通常空間を押し広げながら光と共に何かが姿を現した。

 

 

 ――それは白いマフラーと長く赤い髪をなびかせて、白いボディースーツに赤いラインを入れた人型の存在は、バイザーに覆われた瞳を迫りくる光弾へと向けると両手と左胸に備え付けられたシステムのカバーを開いて着弾寸前だった光弾の全てを吸収する……その人影は、2隻の戦艦タイプのバジュラによって『フロンティア』船団が危機に陥った時に現れ、圧倒的な力で『アイランド1』の窮地を救った女性型のアンドロイドだった。

 

 バジュラの脅威が去った後、戦場に現れた所属不明のアンドロイドの捜索がされたが、新統合軍の必死の捜索を以てしてもその行方は杳として知れなかったが、そのアンドロイドが再び姿を現したのだ……何故ここに、一体彼女は何者なんだ? 絶望的な脅威に晒されている『クォーター』の前に現れた女性型アンドロイドの目的が分からず困惑するクルーを前に、彼女は高らかに名乗りを上げた。

 

『地球帝国宇宙軍、第六世代型恒星間航行決戦兵器――バスターマシン7号!』

 

 

 『マクロス・クォーター』のブリッジでは白いボディスーツを纏う彼女の後ろ姿と赤く長い髪と白いマフラーが真空の宇宙で“靡く”姿を見ながら、『クォーター』の装甲を貫いて聞こえて来る彼女の声に驚くブリッジ・クルー達――バスターマシン7号? それが彼女の名称(名前)なのか。

 

「……“決戦”兵器…」

「……それ以前に、地球“帝国”ってなに?」

 

 ブリッジ正面を覆う強化素材の透明なカバーの先で両腕を組んで敵小型生物群の前で威風堂々とした佇まいを見せる女性型アンドロイドの後ろ姿を見ながら、彼女の名乗りの中に有る不穏なフレーズにオペレーターのキャシーは柳眉を寄せ、操舵士のボビーは地球“帝国”という言葉に疑問の声を上げる……現在の地球の政治形態は、様々な困難を乗り越えて設立された地球初の統一政府である『地球統合政府』が、第一次星間戦争後に異星人であるゼントラーディと和解して再編された『新統合宇宙政府』なのだ。

 

 ……人類史の中で一度たりとも地球を名乗る帝国は存在しなかったのだ。

 

 突然の女性型アンドロイド――バスターマシン7号の登場に困惑を隠せない『マクロス・クォーター』のクルーを尻目に、事態は動き出す――『マクロス・クォーター』の周囲を旋回していた小型生物-兵隊型宇宙怪獣の群れの一部がリングから離れて、恐ろしいほどのスピードのまま『クォーター』目掛けて襲い掛かってきた――その数数千。

 

 『クォーター』を守るバルキリー隊に緊張が走るが、兵隊型宇宙怪獣が迎撃範囲に入る前にバスターマシン7号が動いた――彼女の両脚から三重六連装のミサイルサイロが八つ展開すると、迫りくる兵隊型宇宙怪獣に向けてマイクロミサイルが発射されて、迫りくる兵隊型宇宙怪獣を粉砕するだけでなく、『マクロス・クォーター』の周囲を回る兵隊型宇宙怪獣を追尾して命中――『マクロス・クォーター』を包囲していた兵隊型宇宙怪獣は全て爆炎の中に消えていった。

 

『何故、この世界に宇宙怪獣が居るのかは分かりません。ですが、宇宙怪獣が居るのなら それを倒すのがノノの使命です――なぜならば、ノノは人々を宇宙怪獣から守る為に生まれて来たのだから!』

 

 

 突如として『マクロス・クォーター』の前に現れて襲い来る兵隊型宇宙怪獣を両脚に展開した武装で瞬く間に殲滅した“彼女”が口上を高らかに謳い上げるその姿を、愛機であるVF-25Gのコックピットであきれ顔で見ていたミハエル・ブランはため息を付いた。

 

「……自分から名乗っちゃったよ、ノノちゃん」

 

 腕を組みながら、あの厄介な硬さを持つ敵性生物を一網打尽にしたバスターマシン7号を名乗る彼女――ノノの雄姿を眺めながら容易く己が正体を明かす迂闊さに、普段の彼女を知る者としては妙に納得が出来てしまう事に乾いた笑いが込み上げて来る……そんなミハエルの愛機に通信が入り、コックピット内にクァドラン・レアに乗るクラン・クランが映し出される。

 

『……なぁ、ミシェル。“アレ”は本当にノノなのか?』

「本人が名乗っているだろう?」

『……いや、だがなぁ…』

 

 困惑の表情を浮かべるクラン……ミハエル達と共に中華料理店『娘々』を利用していたクランもウェイトレスをしていたノノと会話をした事があり、わりと子供っぽい性格をした彼女とは馬が合って店に行った時にはよく談笑したものだった……真面目にウェイトレスの仕事をする彼女の姿を知っているし、思い込みが激しく、たまに店の皿を割って落ち込む姿を知っているが故に、普段の彼女と真空の宇宙に佇む超兵器としての彼女の姿に戸惑いの様な物を感じているのだろう。

 

「……クランはノノちゃんと良く喋っていたからショックが大きかったのか……けど、言ったろ俺? あのバジュラの戦艦級を破壊したのはノノちゃんかもしれないって」

『……確かに言っていたけど、それは冗談だと思っていたし……何より、その根拠があまりにバカバカしくて……』

「バカバカしいって何だよ――俺の観察眼に文句でもあるのかよ」

『――あるに決まってるだろう! 何だ、あの女性型アンドロイドとノノのスタイルが一致するって、この色魔が!』

 

 『マクロス・ギャラクシー』からの避難民船団を救出するミッションにおいて二隻もの重戦艦バジュラに率いられた軍勢を相手に戦って、フォールドによって戦いの場を『マクロス・フロンティア』船団近隣宙域へと移した防衛線で重戦艦級の砲撃が『アイランド1』へと直撃する寸前に、突如として出現した女性型アンドロイドの助力によって『アイランド1』は破滅的な被害を受けずに済んだ。

 

 被害を出したがバジュラから『ギャラクシー』の避難民船団を救出し、場所を移しての『フロンティア』防衛線を生き残った事を祝福して戦闘の混乱が収まった後に『娘々』で開いていた祝賀会の中で、突然現れた正体不明のアンドロイドの話になった所でミハエルがぽつりと呟いたのだ……あのアンドロイドの姿は何処かで見た事があると。

 

 暫く首をひねっていたミハエルだったが、給仕を終えて戻っていくチャイナ姿のウェイトレスの後ろ姿を見て、あの女性型アンドロイドの姿が戻っていくウェイトレス――ノノの後ろ姿と重なったのだ。

 

 『S・M・S』に所属するミハエルは、愛機であるVF-25でスナイパーライフルを運用している。長い射程を持つライフルの利点を生かすために、彼は訓練において生来の目の良さと周囲の状況を読んで最適なタイミングを導き出す冷静さと、そして周囲の状況を的確に判断できる観察眼を鍛えた――その観察眼が言っていたのだ、ノノとあの正体不明のアンドロイドのプロポーションが同じだと。

 

「……やはり、俺の観察眼に狂いはなかった」

「――うるさい! この女性の敵が!」

 

 


 

 

 『マクロス・クォーター』の周囲を取り囲みながらゆっくりと旋回しつつ、時折旋回する輪の中から離脱して猛スピードで襲い掛かって来る敵生生物にじわじわと押されていた『クォーター』の前に空間を押し広げて姿を現した所属不明の女性型アンドロイド――バスターマシン7号。

 

 彼女によって全ての兵隊型宇宙怪獣が倒されたからか、少し離れた宙域でバジュラを包囲しながら嬲るようにジワジワと光弾を撃ち込み続けていた巨大な宇宙怪獣群の一部が包囲網から『マクロス・クォーター』のいる宙域へと移動を始める。

 

「――敵大型宇宙生物の一部が移動を始めました、本艦に向かってきます!」

 

 『クォータ―』にて索敵を担当するモニカからの報告を聞いたブリッジ・クルーは視線をバジュラを包囲している巨大な宇宙生物――バスターマシン7号とやらが言うには宇宙怪獣と呼ばれるらしい存在が数体ほど此方に向けて来ていた……空母タイプのバジュラに匹敵するかそれ以上の巨体を誇る宇宙怪獣の威容の前には、400mクラスの『マクロス・クォーター』や戦艦クラスのバジュラを一撃で倒したバスターマシン7号だけでは千を超える宇宙怪獣とやらの物量の前には敗北は必至であり、何とかしてこの宙域から脱出するチャンスを待って一気にフォールド航法で安全圏へ脱出するしかない――『マクロス・クォーター』のクルー達は絶望的な状況でも希望を捨てず、生き残るために抗うつもりだった……彼らは知らなかった――窮地を救ってくれた女性型アンドロイド バスターマシン7号は伊達に決戦兵器と名乗っていない事を。

 

 宇宙怪獣の攻撃により駆逐艦クラスのバジュラは全て撃沈され、残る空母クラスを嬲るように光弾を打ち込んでいた宇宙怪獣による包囲網の中から5体の巨大な宇宙怪獣が『マクロス・クォーター』と、兵隊型宇宙怪獣を軒並み倒した小癪な相手を殲滅する為に向かう、巨大な姿を持つ宇宙怪獣の威風堂々とした姿。

 

 ノノの居た世界では巡洋艦級と呼ばれる艦隊戦の主力となる個体で、戦闘時においては光弾や光線、槍状速射弾など圧倒的な攻撃力を持つ個体であり、3000mを超える巨体は一等宇宙戦艦ヱクセリヲンの放った縮退兵器である光子魚雷の直撃を受けても倒しきれなかった相手だ。

 

 そんな相手にバスターマシン7号は行動を開始する――クロスさせた両腕の先に光が灯り、大きくのぞけって力を溜めると一気に撃ち出した。

 

『バスタァアァア・ビィィイィイイム!』

 

 バスターマシン7号より射出された赤い閃光は虚空を切り裂きながら進み、先頭を切る巡洋艦型宇宙怪獣を貫いた。

 

『――スゥウウラッシュ!』

 

 バスターマシン7号が両手を大きく広げると、赤い光も二つに分かれて左右に展開している別の巡洋艦型宇宙怪獣と接触――その強靭な船体を両断する。

 

 

 『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「……なんて威力なの」

 

 ブリッジの前に立つバスターマシン7号の放った赤いビームが居直線に伸びて巨大な宇宙怪獣を貫いたばかりか、左右に分かれて別の巡洋艦型を両断する光景は、『マクロス・クォーター』の主砲である重量子反応砲を――いや、『フロンティア』船団の守護神である大型可変ステルス戦闘空母『バトル・フロンティア』の主砲メガ・マクロス・キャノンに匹敵するかそれを凌駕する威力を、2m以下の成人女性並みの姿のバスターマシン7号が繰り出したのだ……彼女を製造したという地球“帝国”とやらは、どれほどの技術を有しているのか。

 

「バジュラ空母を包囲していた全ての敵巨大生物が、包囲を解いて此方に向かってきます!」

 

 圧倒的な能力を見せるバスターマシン7号の姿に驚愕の表情を浮かべていた『クォーター』のブリッジ・クルーに向けて、索敵を担当していたモニカの緊張が含まれた声で報告し、ジェフリー艦長達の視線が『クォーター』から少し離れた宙域へと向けられる。

 

 彼らの目に映ったのは、宇宙空間に輝く星々の光の一部が強い輝きを放ちながら動いている光景……バスターマシン7号によって5体の巡洋艦宇宙怪獣は倒されたが、残る千に近い大型宇宙怪獣群が『マクロス・クォーター』の居る宙域へと一斉に光弾を射出した事のより無数の光が『クォーター』――いや、その前に居るバスターマシン7号へと向けられたものだろう。

 

 視界を埋め尽くす光のシャワー。それは一見すれば美しい光景だろう――その一粒一粒が恐ろしい破壊力を秘めていなければ。兵隊型宇宙怪獣によってダメージを受けて動きが鈍い『マクロス・クォーター』の前に立つバスターマシン7号は、左胸と両手の甲に装備された彼女のみに許された究極の装備『フィジカル・リアクター』により、恐ろしい密度で降り注ぐ光弾の運動エネルギーを消し去って分解して吸収していくが、大型宇宙怪獣から放たれる光弾は減るどころか攻撃はますます苛烈になり、次第にバスターマシン7号の処理能力を超え始めて『マクロス・クォーター』の傍を通り過ぎる光弾も出始める。

 

 『フィジカル・リアクター』、それはバスターマシン7号の所属した地球帝国の絶頂期に生み出された超技術である。此処とは違う世界において、知的生命体が宇宙に進出した際にワープ機関が放つ波動――主に縮退炉によるバニシング波を感知すると天文学的な数で襲ってくる宇宙怪獣に対抗する為に様々な技術を開発していき――遂には思考主推進機関という、純粋数学で周囲の空間の物理法則を書き換えて移動する技術を確立した。

 

 そして『フィジカル・リアクター』は、その周囲の空間の物理法則を書き換えるそれを物質に応用して望みの物を作り出す第六世代の超技術なのだ……だがその超技術にも弱点はある。『フィジカル・リアクター』には効果が及ぼせる有効範囲があり、広範囲の攻撃を防ぐことはできず、敵に使用してその存在を消し去るようなことも不可能なのだ。その弱点をカバーするべく同じ第六世代の技術で作られたのが、バスターマシン7号の手足となってカバーするバスター軍団と呼ばれる無人バスターマシンによる太陽系絶対防衛システムだったのだが、そのバスター軍団も強敵との戦いで失い、今彼女はたった一人で千を超える大型宇宙怪獣を相手にしていた。

 

 ……いや、彼女は一人ではない――通常空間とは異なる“超空間”にて眠りについていた彼女を呼び覚まし、共にこの未知の世界に迷い込んだ相棒と呼ぶには捻くれた年下の少女がいる。

 

 大型宇宙怪獣の飽和攻撃の前に徐々に押されていたバスターマシン7号と可変攻撃型宇宙空母『マクロス・クォーター』の傍の空間に光の奔流が生み出されて、それが通常空間を押し広げて超空間の中から一隻の航宙艦が現れる――黒い船体に赤いラインが入った全長500mの流線形の主船体の周りに四つの異なるシールド発生機関を備えた船、あの子の乗る『実験艦―02』であった。

 

 


 

 

 『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「本艦の近隣の重力傾斜が高まってます――これは明らかにフォールドとは違います!」

「――なんだと!?」

「……重力傾斜がもっとも高い地点から断続的に重力波が発生しています―ーこれは、あの敵性生物が出現した時と同じです!」

「――なんですって!?」

 

 少し離れた宙域に展開する敵性生物群の動きに注意を向けていたモニカより、『マクロス・クォーター』の傍であのバケモノ達が現れた時と同じような現象が起きた事が報告されてジェフリー艦長やボビーが驚愕の表情を浮かべ……しかし、空間を押し広げて開けられた超空間の中から現れたのは、黒い船体を持つ既存の船とは異なる設計構想で作られた航宙艦であった。

 

 その航宙艦の船体の一部――主船体から四方に伸びたパイロンの先に接続されている四つの特徴的な機関に光が灯ると、『マクロス・クォーター』とその前で大型宇宙怪獣の攻撃を防いでくれているバスターマシンを名乗る女性型アンドロイドの前に虹色の障壁が展開されて、大型宇宙怪獣が放つ光弾による攻撃を完全に防いだ。

 

「……これは複数の障壁による多重障壁が展開されています」

 

 

 『フィジカル・リアクター』により損傷を受けている『マクロス・クォーター』を守っていたノノの前に虹色の障壁が展開された事からも『実験艦―02』がこの宙域に到着した事を知り、彼女は視線を前方に展開する宇宙怪獣の群れに向ける……何故この世界に宇宙怪獣が居るのかは分からないが、奴らをこのままにはしておけない。

 

 相棒と呼ぶには胡散臭いが、頼れる仲間も来た事だし――さあ、反撃と行きますか、とバスターマシン7号ことノノは拳に力を込めた。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 この小説のネタが浮かんだ最初の頃に思い浮かんだシーンが、ミシェルがバスターマシン7号とノノの関係性を一発で見抜いたシーンだったんですよね……あまたの女性を見てきたその観察眼によって7号とノノのスタイルが同じである事を見抜く……


 では次回 第30話 Buster Machine バスターマシン 8/15 0時更新予定です。ではでは~。
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