マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
サヨナラノツバサ編
マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス
サヨナラノツバサ編
第30話
本来であればこの世界に存在しない筈の巨大な宇宙生物 STMC(Space Terrible Monster Crowd) 宇宙怪獣と呼ばれる存在は、その恐るべき力を持って遭遇したバジュラを攻撃して敗走させたようだ――そして敗走するバジュラを追撃する宇宙怪獣群は、バジュラをコントロールする術を手に入れて彼らの母星を征服しようとする『フロンティア』船団と袂を分かった『マクロス・クォーター』前に現れた。
此処とは違う世界において宇宙に進出した知的生命体と遭遇すると、圧倒的な物量を持って全てを破壊して灰塵へと帰す悪意の塊、理不尽の権化のような宇宙怪獣群は、敗走するバジュラたちを包囲してジワジワと嬲るようにして撃ち減らし、『マクロス・クォーター』へもその驚異的な力を向ける……文字通り群雲の如く襲い来る兵隊型宇宙怪獣の凶悪な牙の前に劣勢に陥ったその時、空間を割りながら出現したのは第六世代型恒星間航行決戦兵器バスターマシン7号こと決意を秘めたノノの雄姿。
彼女の形成する超兵器は兵隊型宇宙怪獣を蹴散らし、襲い来る5体の巡洋艦級宇宙怪獣をバスタービームで両断する……それを見た宇宙怪獣は千に迫る物量の全てを持ってノノへと襲い掛かり、自らの手足であるバスター軍団を失って単独で戦うノノは、後ろに傷ついた『マクロス・クォーター』を庇いながら単独で宇宙怪獣群の放った無数の光弾を対して文字通り盾となるも、その物量の前に徐々に押されて行ったその時、遅れてやって来た翡翠の乗る『実験艦―02』が到着して、装備された四重のシールド発生機関を持って強固な障壁を張ってノノと『クォータ―』を守ったのだ。
『マクロス・クォーター』ブリッジ
「……信じられない。所属不明艦より発せられたシールドにより、敵性生物からの攻撃が完全に遮断されているわ…」
『クォータ―』の前方に展開される虹色の障壁によって、巨大敵性生物が撃ち出した光弾の全てが完全に遮断されている事を見たキャサリン・グラス中尉は呆然とした口調で呟く……敗走していたバジュラを追って現れた巨大敵性生物は、空母タイプを含むバジュラの艦隊を包囲すると恐るべき攻撃力を持ってバジュラの船を破壊して、その力を『マクロス・クォーター』とバスターマシンと名乗った女性型アンドロイドに向けたが、突如として現れた所属不明の船の張ったシールドはその恐ろしい攻撃の全てを完全に遮断している。
一体、あの船は何者で、何が目的で『クォータ―』を守ったのか? 所属不明艦の意図が読めずに困惑している『クォータ―』に向けて、所属不明艦から通信が入ったとラム軍曹より報告を受けたジェフリー艦長は、相手の意図を探る意味合いも込めて通信を受けるようラムに指示をする……程なくしてブリッジのホロスクリーンに光が灯り、スクリーンの中に見知った顔が現れた。
「――オズマ!? あなたどうして!」
「――うそぉ! なんでその船に?」
見知った顔であるオズマの顔を見たキャサリンことキャシーとボビーは揃って目を丸くし、モニカ、ラム、ミーナのブリッジ三人娘も驚きの表情を浮かべ、艦長席に座ったジェフリーは片眉をぴくりと上げる。そんなブリッジ・クルーの反応を見たオズマは にやりと男くさい笑みを浮かべる。
『――どうやら、美味しい所には間に合ったようだな』
「――オズマ! これは一体どういう事!?」
のんきな事を言うオズマに怒りのボルテージが限界を突破したキャシーが柳眉を逆立てて追及する……シェリル・ノーム救出作戦の終盤で、救出部隊の帰還が遅い事を理由に偵察に出ると言って『クォータ―』を飛び出して行ったオズマ……どうみても妹であるランカを心配して行った事がまる分かりであった。
帰って来たら説教の一つでもしてやろうと待ち構えていたが、救出部隊の帰還ルートである資材搬入路近くで爆発が起こり、その後に救出部隊やオズマは行方不明になり、『フロンティア』軍の特殊部隊が『マクロス・クォーター』に突入してくるのを避ける為に『アイランド1』より出港して、態勢を整えて『フロンティア』の暴挙を止める事を決意しながらも、キャシーはオズマの身を案じていたのだ……が、当の本人は能天気に妙な船に乗って気楽な挨拶をして来る始末――キャシーの怒りが爆発するのも仕方がないだろう。
「――あなたは昔からそう! こっちの心配なんかお構いなしに、勝手に突っ走って……」
『……いや。あのな、キャシー。これには事情があって――』
『……何をやってるの、オズマのおじちゃん』
目に涙を貯めながら責めるキャシーにしどろもどろになるオズマの傍に、栗色の髪をした翡翠が翠眼を呆れたようにジト目にして現れる。『マクロス・クォーター』のクルーとは面識がなく、彼女と交流を持っているのはオズマを始めスカル小隊のメンバーかミシェルとつるむ事があるクランくらいしかいないので、突然現れた少女の姿に困惑する『クォータ―』のブリッジ・クルー。
「オズマ、その子はだぁれ?」
隣で痴話げんかの如きヒステリーを起こしているキャシーを尻目に、話を変えるべくボビーはオズマの隣に現れた見知らぬ少女の事を問い掛ける……そんなボビーの質問を聞いた翡翠は、にやりと邪悪な笑みを浮かべた。
『――私はオズマ“父さん”の隠し子だよ』
「「――なっ! 隠し子!?」」
翡翠の爆弾発言に、質問をしたボビーや能天気な恋人にブチ切れていたキャシーが驚愕の事実に驚きの声を上げ、ホロスクリーンの中のオズマの額に青筋が浮かぶ。
『……ほう、君の様な大きな娘が出来たのは、一体俺が幾つの頃の話かな?』
栗色の髪に手を置いて、撫でているには妙に力の込めたオズマは爽やかな笑みを浮かべながら余計な事を言う
『……この娘は翡翠――隣の家に住んでいる姉妹の妹の方だったんだが、色々と引き出しの多い子のようだ』
一頻り頭を“撫でて”溜飲を下げたのか、翡翠の頭から手を離したオズマは、表情を改めて所属する部隊の指揮官であるジェフリー艦長へと視線を向ける。
『――艦長。ご心配をおかけしましたが、オズマ・リー 原隊に合流します。詳しい経緯は後で直接説明したいと思いますが、まずはあの宇宙怪獣とやらを倒してからにしましょう』
「無事で何よりだ、オズマ少佐――君の言う宇宙怪獣とは、あの巨大敵性生物の事かね」
オズマが簡単な説明をしようとするより早く、翡翠は翠眼を別の方向――『マクロス・クォーター』の前で攻撃を防いでいたバスターマシン7号ことノノへと向けながら口を開いた。
『――あの宇宙怪獣とやらは知的生命体の殲滅を目的にしているようだからね。7号、こっちは任された――やってしまえ!』
翡翠の言葉を聞いていたのか、『クォータ―』の前で多用した『フィジカル・リアクター』を調整し終えたバスターマシン7号は、一気に加速して千近い大型宇宙怪獣群へと向かった。
『クォーター』の艦橋の前から飛び立って迫りくる千近い大型敵性生物へと向かうバスターマシン7号……2m弱と成人女性と変わらない体格を持つ彼女が3000mを超える巨体を持つ大型敵性生物の群れに立ち向かう姿は、人知の及ばない宇宙の脅威そのものに立ち向かう非力な人間の姿にしか見えなかった……しかし、彼女(バスターマシン7号)を知るただ一人の人物は、彼女の勝利を確信しているようだ。
『……翡翠ちゃん。君はあの“7号”というかノノ君の勝利を疑っていないようだが、相手はかなりの数だ。俺達も加勢した方が良いじゃないか?』
『……手出しは不要だよ、オズマのおじちゃん。いや、必要ないかな――見なよ』
巨大な敵性生物――未知の航宙艦に乗って現れたオズマが言うには、あの巨大生物は宇宙怪獣と呼称されているらしい。その宇宙怪獣の群れに単独で向かったバスターマシン7号に助力すべきではないかとオズマは主張するが、映像の中の翡翠と名乗る少女は不要だと言って彼女は視線を横に――恐らくバスターマシン7号をモニターしている別のウィンドウだろうへと向ける。
こちらでもバスターマシン7号の行動はモニターしており、球状のホロスクリーンにて周辺宙域を監視しているモニカからまもなくバスターマシン7号と巨大敵性生物――宇宙怪獣群が交戦状態に入るとの報を受け、『クォータ―』のブリッジに居る全ての者の視線が千に近い数の巨大な宇宙怪獣を迎え撃つ彼女へと注がれる。
先手を打ったのは宇宙怪獣であった。巨大な宇宙怪獣の全てが巨大な身体に寄生させている無数の砲台型生物から光弾を射出すると、その全てがバスターマシン7号へと向けて殺到する――それはまるで光の壁が押し寄せているような光景だったが、バスターマシン7号は両手の甲と左胸に装備されたカバーを開閉して光弾の殆どを吸収すると、両手を大きく広げて周囲に無数の黒い穴が生み出されると、宇宙怪獣群へと向けて撃ち出され――進路上に存在する宇宙怪獣の強靭な身体を抉りながら進む。
『……あれは?』
『……7号の得意技、マイクロ・ブラックホールだよ』
「――マイクロ・ブラックホール!? そんなモノを制御して……しかも、あんな大量に……」
ホロスクリーン内のオズマと翡翠とか言う少女の会話の内容に驚くボビー。『マイクロ・ブラックホール』――量子サイズのシュヴァルツシルト半径を持つブラックホールの事であり、極微ゆえに普通の状態では発生しないが、ビックバン直後の高エネルギー状態の時のみ発生する可能性があるモノである。
この世界にもプロトカルチャー由来の超技術による重力制御があるが、バスターマシン七号のように大量のマイクロ・ブラックホールを生成するなど不可能な事であり、その不可能を行った七号はマイクロ・ブラックホールの第二弾を生成すると再び撃ち出して、確実に大型宇宙怪獣を殲滅していく。
『……宇宙怪獣という脅威に晒された人類が滅びの定めから逃れようと足掻いた結果、幾つものブレイク・スルーを越えて到達した超技術の結晶――銀河間航行すらおぼつかない未熟な文明が得た奇跡……それがバスターマシン七号なんだよ』
淡々とした口調で語る翡翠の説明に言葉を失うオズマと『クォータ―』のブリッジ・クルー。そんな中で、映像の中のオズマは気になっていた事を翡翠に問う。
『……君はさっき言っていたな、宇宙怪獣は知的生命体の殲滅を目的にしていると……ならば、『フロンティア』も宇宙怪獣の襲撃を受ける可能性があるのか?』
『……そうだね、奴らの特性から考えれば――『フロンティア』だけでなく、全ての移民船団や居住惑星が奴らの殲滅対象になるな』
少し考えながらの答えを聞いたオズマや『クォータ―』のブリッジ・クルーに緊張が走る……これまでにも、ゼントラーディやバジュラなど人類の生存権を脅かすような存在はいたが――この宇宙怪獣は、これまで遭遇した相手とはどこか違うように感じる。
『……奴らとは今までどれほどコミュニケーションを取ろうとしても出来なかった……奴らいわば破滅と言う“現象”なのかもしれない……刻まれているのかもな、“知的生命体を根絶やしにする”という本能が』
――だからこそ、奴らとの戦いは殲滅戦しかありえない。
そう語る翡翠の瞳は翠色から深紅に染まりかけていた……宇宙怪獣のあり様が、彼女達『
次々と仲間を撃破されている宇宙怪獣から苦し紛れの兵隊型宇宙怪獣が放出されてバスターマシン7号へと殺到するが、たどり着く前に7号の両脚から八基の三重六連装ミサイルサイロが迎撃する……千近い宇宙怪獣群もバスターマシン7号の苛烈なまでの攻撃の前に殲滅も時間の問題のようだ。
丁度、『実験艦―02』の攻撃範囲に数体の大型宇宙怪獣が入っている……八つ当たりに丁度良いじゃないか。『02』のコンピューターに攻撃指令を出そうとしている翡翠に、オズマが にやりと男臭い笑みを向ける。
『……何か、楽しそうな事をしようとしてるな。俺も混ぜてくれよ』
ホロスクリーンの中でみるみる表情を冷たいモノへと変えていく翡翠に臆することなく好戦的な笑みを浮かべたオズマの提案に、翡翠も口角を釣り上げてにやりと嗤った。
『実験艦―02』ブリッジ
仄かな青い光を放つ水晶のような素材で構成された『実験艦―02』の中枢であるブリッジで、好戦的な笑みを浮かべたオズマと口角を釣り上げて嗤う翡翠。面白そうな事をするなら混ぜろ、というオズマの子供っぽい提案を受けた
翡翠に言われるがままにシートに座ったオズマの両のこめかみにシートからせり出した器具が当たった途端にオズマの視界が変わり、彼は真空の宇宙を直接見ているような錯覚に襲われる。
「――『02』の各種センサーによる疑似的な視界の映像を脳に直接送り込んでいる、操作方法はシンプルだから自分の身体のように『02』を動かせる」
「……攻撃のボタンは?」
愛機ほどではないか視線を左右に向けたり、操舵稈の感触を確かめてどれほど自分の動きに追従出来るかを確認したオズマは満足げに頷くと攻撃手段を問い掛け、それを聞いた翡翠はにやりと笑う。
「……ガンナーは任せろ」
「……はいはい」
つまり攻撃は彼女が担当するという事だろう。『アイランド1』の地下物資搬入路でブレラと戦闘を行って、翡翠の暴挙によって『アイランド1』の艦内から宇宙に放出されるなど、戦闘機乗りとしてはストレスを溜めていたオズマは、戦闘機とは違う航宙艦とは言え操舵できる事でストレスを発散しようとしていた……そしてなにより翡翠の言葉にあった、宇宙怪獣の目的が知的生命体の殲滅であり、このままでは「フロンティア』船団だけでなく、全ての移民船団や居住惑星にも奴らの魔の手が伸びるかもしれないという状況……ここで宇宙怪獣との戦闘を経験していた方が良いと判断したのだ。
「――さあ、行くか!」
「了解、宇宙怪獣狩りだ!」
オズマと翡翠という即興のコンビが駆る『実験艦―02』は加速して、目の前にいる宇宙怪獣へと襲い掛かった。
マイクロ・ブラックホールを多数生成すると一気に撃ち出して敵巡洋艦級宇宙怪獣の数を減らしながら、バスターマシン7号は急接近してくる敵に向けてバスタービームを放って迎撃する。3000mを超える巨体を誇る宇宙怪獣が相手だろうが、7号は臆する事なく立ち向かう――彼女の世界において、宇宙に進出した人類に突如襲い掛かった脅威――銀河系中心宙域から進路上の恒星に卵を産み付けて増殖しながら、天文学的な数で圧し潰そうと侵攻してくる宇宙怪獣に対して地球帝国は総力を挙げてそれに抗い、敵宇宙怪獣から人類を守る為の力を求めた人類の技術の一つの到達点こそが、彼女バスターマシン7号である。
人間サイズに宇宙船とマシーン兵器、乗組員の機能をすべて兼任させた超高性能をコンセプトを元に製造されたと思われる彼女は、バスター軍団の中枢端末を担う自律人型人工知性体であり、手足であるバスター軍団を失っている現状でもそのポテンシャルは千ごときの宇宙怪獣など問題にしない程の戦闘能力を秘めている。
そしてなにより、今の彼女は一人ではない。
奇妙な空間『時空検察官の部屋』としか言いようのない場所で眠っていた彼女を呼び覚まして、共に未知の世界に漂流した異星人の少女……どんな手段を用いてもコミュニケーション不可能だった宇宙怪獣と違い、言葉で会話出来て意見のすり合わせを行える年下だが捻くれた所もある彼女と共に旅をして――いつか“お姉さま”の下へと帰って“約束”を果たす――その為にも、こんな所で倒れる訳には行かなかった。
途中から参戦した『実験艦―02』の援護もあり、バスターマシン7号は千近い敵宇宙怪獣の殲滅したのだった。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
では、次回 第31話 Strangers, unknown visitors 見知った、未知なる来訪者 8/16 0時更新予定です。ではでは~。