マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 サヨナラノツバサ編




第31話 Strangers, unknown visitors 見知った、未知なる来訪者

 

 本来この世界には存在しない筈の巨大なる悪意――宇宙怪獣と遭遇した『マクロス・クォーター』は、宇宙怪獣の巨大な姿だけでなく繰り出される兵隊型宇宙怪獣の圧倒的な物量の前に劣勢に陥っていたが、そんな『クォータ―』の前に現れたのは、この世界とは異なる地球で対宇宙怪獣用に生み出された第六世代型恒星間航行決戦兵器 バスターマシン7号と、さらに7号の世界とは別の世界に存在する『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の新型亜空間跳躍艦『実験艦―02』。

 

 新型亜空間航行実験の為に装備された四重のシールド発生機関は宇宙怪獣の攻撃を完全に防ぎ、バスターマシン7号はその戦闘能力を遺憾なく発揮して3000mを超える巨大な宇宙怪獣軍団を打倒して千近い宇宙怪獣を滅ぼして行った。

 

 


 

 

 『実験艦―02』ブリッジ

 

 仄かな青い光を放つ水晶の様な材質で構成されたブリッジにて、操舵を担当するオズマ・リーと火器制御システムを担当する翡翠の即席コンビは、先行して宇宙怪獣軍団を相手取るバスターマシン7号と連携しながら実験艦にしては充実している武装を持って巨大な宇宙怪獣を倒しながら、最後の一体に搭載されている光子魚雷を命中させて物質反物質反応による爆発にも耐える宇宙怪獣に、本命の浸食魚雷が命中して体内に潜り込んだ浸食魚雷が炸裂して止めを刺す。

 

「……これで最後だな」

 

 『実験艦―02』の制御AIからの報告を思念波で受け取りながら、獲物の分際で外皮を硬化するなどして手こずらせてくれた最後の宇宙怪獣を冷たい目で見据える翡翠……ノノから話を聞いていた通りの能力を見せる宇宙怪獣……まったく、外見だけでもあの“ナマモノ”に近いというのに能力まで類似しているとは、気に入らない――とにかく気にいらない。瞳をほぼ深紅に染めながら口角を釣り上げて にたりと嗤った翡翠は宇宙怪獣を敵として認識した。

 

 これからの戦いに戦意を高める翡翠だったが、この戦いにおいて多数の宇宙怪獣を相手に縦横無尽の活躍を見せたバスターマシン7号が停止している事に気付いて、『実験艦―02』のAIに探らせると、どうやら最初に宇宙怪獣に追い詰められてなぶり殺しにあっていたバジュラの空母タイプの傍で停止しているようだった……何をしているのだろう? 脅威となりえる宇宙怪獣は倒して、それ以外にはこの宙域近辺には存在していないようだ。

 

 ブリッジに仮設した操舵席に座って難しい表情を浮かべるオズマに、少し席を外す事を告げた翡翠は、AIにオズマや居住区画に居るアルト達の行動を監視するように指示してから、転送装置を使って『実験艦―02』の船外に出て白いボディスーツに付属する青い結晶体を光らせながら、翡翠は宇宙空間を進む――銀河系中心宙域には太陽の400万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホール『いて座A*』が存在しており、かの存在の超重力によって周辺の巨大な恒星達を振り回し、強力な放射線や多量のガスが蔓延する――銀河系の中でももっとも危険な宙域である。

 

 そんな危険な放射能が飛び交う宙域でも翡翠が纏う『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』は完璧に遮断して、彼女は戦場後を飛んで宇宙怪獣が爆発した後の破片を避けながら艦のAIにサンプルとして回収するように指示をして目的のポイントへと到達する。

 

 そこには見上げるほどに巨大なバジュラの姿があった。

 空母タイプにカテゴライズされ、戦場においては無数の兵隊バジュラを吐き出し、自身も強力な生体重量子ビーム砲を備えた艦艇タイプのバジュラの中でも強力な個体……だが突然襲い掛かってきた宇宙怪獣の攻撃の前に両翼の推進機関は無残に圧し折られ、強靭な船体もボロボロになっていた。

 

 見るも無残なバジュラ空母は姿勢制御能力すらも無くして慣性に流されるがままに漂い、力なく流されるバジュラ空母の動きに同期しながらバスターマシン7号は宇宙怪獣の攻撃で抉り取られたバジュラ空母の破壊痕に触れる。艦艇クラスのバジュラと戦ったのは『フロンティア』船団の防衛戦の時であり、空母クラスだけでなく戦艦クラスや駆逐艦クラスのバジュラと矛を交えた……彼らの力は強力であり、その姿は生命力に溢れていた……だが今、この空母クラスのバジュラは命の灯が消えようとしている。

 

『……何してんの、ノノねぇ?』

 

 『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』により真空の宇宙を物ともせずにバスターマシン7号ことノノの居る宙域までやって来た翡翠は、ノノに思念波で語り掛けながら見るも無残なバジュラ空母を翠色の瞳で見上げる。

 

『……コイツはもう…』

『……ランカが、バジュラが怖がっていたって……怖くて、怖くて、助けを求めていた……』

 

 翡翠と同様に思念波の送受信機能を持つノノは、傷ついて命の炎を燃やし尽くそうとしているバジュラ空母に向けて思念波を放つ……宇宙怪獣は撃退されて危害を加えるものはもういない事を……せめて安らかな気持ちで逝けるように、と。

 

 これまでにもバジュラと戦ってきたノノがバジュラ空母を気遣うのは偽善なのかもしれない……だが彼女の戦いとは生き残る為の物であり、相手を嬲るものでない……そして対話が不可能な宇宙怪獣とは違い、バジュラとはコミュニケーションが可能となるかもしれない相手であり、傷ついて怯えるバジュラに寄り添う事をノノは選択したのだ。

 

 ……最終兵器と称されている割には随分とお優しい事で、翠瞳を細めながらも翡翠は冷めた目でみていた。。

 

 


 

 

 宇宙怪獣という本来あり得ない脅威を退けた『マクロス・クォーター』は、戦いの途中で現れた所属不明の船『実験艦―02』に保護されているオズマ・リー少佐と早乙女アルト准尉、民間協力者であるオズマの妹ランカと『フロンティア』から救出したシェリル・ノームを迎えるべく送ったシャトルは、かの船から問題なくオズマ達を乗せて『クォータ―』へと帰還した。

 

 そして『クォータ―』のブリッジにはオズマを始めとした『実験艦―02』に救助された4名がジェフリー艦長へと経緯の説明を行っていた。

 

「……つまり、君達は翡翠と言う少女に救助されてあの船に乗り込んでいたと?」

「……ええ。アルト准尉が言うには、『アイランド1』の外壁を破壊したのもあの子の仕業らしいんですが」

「……トンデモない子ね、その翡翠って子は」

 

 確認するジェフリー艦長に苦笑を浮かべながら答えたオズマ。

 彼の話に出て来た翡翠と名乗る異星人の少女の無軌道っぷりに、話を聞いていたボビーが呆れたようにボヤいている……いくら装甲兵に囲まれたからといって、『アイランド1』の外壁を破壊して真空の宇宙に身を晒すなど、もっとやり様が有るだろうにと言うのがボビーの感想らしい。

 

 だが彼女の持つ技術には目を見張るモノがある――それまでの戦闘によって損傷を受けて動きが鈍い『マクロス・クォーター』を敵性生物である宇宙怪獣からの攻撃から守った多重障壁や、『アイランド1』での戦闘で負傷したオズマを短期間で治療して、収容された刑務所での過酷な勾留生活で消耗したシェリル・ノームは、救出された後にブレラ・スターンの襲撃からの宇宙空間への流出など、多大なストレスを受けた彼女のV型感染症は急速に悪化した――だが、翡翠とノノと名乗るエム姉妹の擁する『実験艦―02』の医療区画において対処療法を受けたシェリルは、己の足で立って歩くほどに回復したというのだから驚きだ。

 

「艦長。彼女達への対応も重要だが、もっと差し迫った事があります――」

「……『フロンティア』船団が、バジュラたちの母星に迫っている事か。こちらも『フロンティア』に残っている協力者からの情報で把握している、次のフォールドでバジュラたちの母星へと到達する、と」

 

 『マクロス・フロンティア』船団は、襲い掛かって来るバジュラの群れを『フォールド・ジャミング』装置で攪乱して、『インプラント弾頭』を搭載したバルキリーによるインプラント弾攻撃によって自由意志を奪われたバジュラを従えながら一大勢力としてバジュラたちの母星へ侵攻しようとしている……彼らがバジュラの母星へと到達すれば、それは人類史に残る汚点になるような惨劇が繰り広げられるだろう。

 

「……もはや、『S・M・S』や新統合軍の援軍を待つ時間はない――我々だけでもバジュラたちの母星へと赴いて、『フロンティア』の――レオン・三島達の野望を阻止せねばならん」

 

 彼らが相手しようとしているのは、かつての友軍であり彼らの故郷ともいえる『マクロス・フロンティア』船団なのだ……彼らの中には不安な思い、『フロンティア』を相手取る事への複雑な感情もあるだろう――だが、このままでは『マクロス・フロンティア』船団は知的生命体の可能性が高いバジュラを虐殺したという汚名を未来永劫被るかもしれなかった。

 

 今まで遭遇したバジュラは接触するや無差別に襲い掛かって来る敵でしかなかったが、フォールド・ウェーブを放つフォールド細菌を宿したランカ・リーやシェリル・ノームの発するフォールド波にバジュラが反応したことにより、彼らバジュラとコミュニケーションを行える可能性が出て来た……文化を持たないゼントラーディとの戦いを人類が培ってきた文化の一つである“歌”の力で生き残った事で、人類は文化を持つ高度な知的生命体であるという自負を持つが、『フロンティア』が――レオン・三島達がやろうとしている事は、その自負に泥を塗るようなモノだ。

 

 故に彼らは己の故郷がそのような汚名を受けないように、レオン・三島一党が行おうとしている事を阻止する為に『フロンティア』とインプラントで操られたバジュラの混合軍を相手に戦いを挑もうとしていた……そんなジェフリー艦長以下『クォータ―』ブリッジ要員は、オズマから『実験艦―02』に乗る彼女達より協力する用意があると打診されたと伝えられて困惑の表情を浮かべた。

 

「……これまで巧妙に姿を隠していた彼女たちが、何故この状況で協力を打診してくるのだ?」

 

 疑問の声を上げるジェフリー艦長……オズマ少佐の話では、事故によりこの宙域へとやって来た彼女達はフォールド波に乗って流れるランカ嬢の歌に興味を持って『フロンティア』船団に来たと言う。

 

 『アイランド1』に潜入した彼女達はソーシャルセキュリティナンバーを偽造して『フロンティア』の社会に潜んでフォールド波を発する人間を探してランカ嬢を見つけ、彼女の傍で普通の隣人を装いながらランカ嬢を観察していた彼女達が、何故人間同士の争いに関与しようと言うのか? 当然オズマも疑問に思って彼女達に問い掛けた結果――彼女達……と言うか、翡翠がトンでもない事を言ったのだ。

 

「……彼女達の説明によれば、『フロンティア』船団が例の宇宙怪獣の襲撃を受ける可能性があります」

 

 


 

 

 『マクロス・フロンティア』行政府の大統領首席補佐官レオン・三島の巧みな扇動によってバジュラの母星へと侵攻する『マクロス・フロンティア』船団を止めるべく、たった一隻で戦場へと向かおうとする『マクロス・クォーター』だったが、突如として現われたバジュラをも超える巨体を持つ凶悪な宇宙怪獣の攻撃を受け、劣勢に陥った時に現れた人型の超兵器『バスターマシン7号』と、未知の勢力である『実験艦―02』を名乗る航宙艦の助力によって宇宙怪獣を退けた。

 

 そして『フロンティア』船団を止めるべく戦場に向かうとする『マクロス・クォーター』と合流したオズマ・リー少佐より齎された可能性――バジュラをも上回る巨体と凶暴性を持つ宇宙怪獣が『フロンティア』船団を襲うかもしれないという可能性。

 

 無視するには危険すぎる可能性――もし『フロンティア』船団とバジュラとの戦いの最中にあの凶悪な宇宙怪獣の攻撃を受ければ、『フロンティア』船団とバジュラ双方が全滅する可能性がある。

 

 『フロンティア』船団に警告を出すにしても、『クォータ―』が持つ宇宙怪獣に付いての情報はそれほど多くはない……それ故に『クォータ―』は、宇宙怪獣に付いての情報を持つ『実験艦―02』からの来訪者を迎える事を選択した。

 

 

 全長402mの可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』はその内部に搭載機の格納庫を持ち、普段は整備などで喧騒が溢れる場所であるが、今その格納庫内は武装した兵士の姿があり緊張感に包まれていた……それと言うのも未知の勢力の船である『実験艦―02』からの来訪者が『クォータ―』へと来艦する事になっている故だった。

 

 あれだけの規模の航宙艦だ、連絡艇の一つくらいは用意されているだろ。そう考えた『クォータ―』は隣を航行する『実験艦―02』の一挙手一投足を見逃すまいと神経を傾けていたが、その努力は徒労に終わる――格納庫内に光が灯ると、それはどんどん大きくなって輝きを増していき、その輝きが消えた後には二人の人影が立っていた。

 

 ブルーのホットパンツと白のTシャツを着た幼さを残しながらも整った顔立ちをした少女が、ピンク色に見える珍しい髪色をした長い髪を振りながら周囲を見回して、呆気に取られている兵士達を見て額に一筋の汗をかくと、傍にいる栗色の髪をウルフカットにした年下の少女に顔を寄せて「……どうしよう、みんな呆気に取られているよ」と囁いていると、パイロットスーツの上にジャンバーを羽織ったミハエルが眼鏡を怪しく光らせながらも爽やかな笑みを浮かべて近づいて来た。

 

「よっ! 派手な登場だな、ノノちゃんに翡翠ちゃん」

「――あっ、ミシェル君」

「久しぶりっ、ミハエル君」

 

 不安そうな顔をしていたノノが見知った顔を見て安堵の息を吐き、にやりと笑った翡翠が挨拶を返すと、三人の居る所に影が差して見上げる。そこには赤と紫を基調にしたパイロットスーツを着た女性のゼントラーディがにやりと笑い返して来た。

 

「元気そうだな二人とも、本当にあの船に乗っていたんだな」

「――クラン!」

 

 見下ろしている女性のゼントラーディが、美星学園やアルバイト先の『娘々』でよく顔を合わせていたクラン・クランだと気付いて喜びの声を上げるノノ。マイクローン状態では子供の様な姿をしているが、ゼントラーディの姿になると年齢相応の姿になるというのは本当だったようだ……事あるごとに、本来の姿は“ないすばでぃ”だとクラン・クランは豪語していたが、話半分に聞いていた翡翠は疑いのまなざしで見ていたのだ……大体遺伝子が不器用ってなんだよ。

 

 みれば見事なまでの双丘で、心なしかクランもどや顔をしているように見えるのは翡翠の僻み根性か目が腐っているからだろうか? 

 

 妙にやさぐれている翡翠を尻目に、ミハエルがノノの傍に近づいていく。

 

「――ノノちゃん。さっきもだけど『フロンティア』での戦いの時も、『アイランド1』を守ってくれたんだろ? ありがとな」

「――いえいえ、それくらい……あっ!?」

 

 爽やかな笑みを浮かべたミハエルが世間話のようにノノに話を向けると、何千年も自分達の太陽系を守っていたクセに妙に世間慣れしていないノノが何も考えずに返すと満面の笑みを浮かべるミハエルの表情を見て、自分が何を口走ったのかを悟ったノノが固まって隣に居た翡翠が頭を抱える。

 

 ……なにやってんだよ、自称“すーぱーろぼっと”。

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。


 では次回 第32話 conversation 会談 8/20 0時更新予定です。ではでは~。
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