マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 サヨナラノツバサ編




第32話 conversation 会談

 

 民間軍事プロバイダー『S・M・S』フロンティア支部所属の可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』は、艦内に特別な来客を迎えていた――超時空生命体バジュラを敗走させて、息の根を止めるべく追撃して来た未知の巨大宇宙生物 宇宙怪獣の攻撃を受けた『マクロス・クォーター』の危機に姿を現した人型兵器バスターマシン7号と所属不明の航宙艦『実験艦―02』のクルーが『クォータ―』へやって来たのだ。

 

 件の船『実験艦―02』に救助された『クォータ―』バルキリー部隊 スカル小隊の隊長オズマ・リー少佐より齎された情報である、バジュラの母星へと進撃を進めている彼らの故郷『マクロス・フロンティア』船団が未知の宇宙怪獣の攻撃を受ける可能性があると言うのだ。

 

 事態を重く見た『クォータ―』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐は、未知の勢力である『実験艦―02』から助力の提案を受け、かの船のクルーを艦内に迎えて詳細を詰めるべく『クォータ―』のブリーフィング・ルームに主だった者を集めて『実験艦―02』からの来客を待つ……彼女達の目的が何のか不明だが、出来れば有益な情報が得られればいいが、帽子のツバを直しながらジェフリー艦長は協議が良い方向へと向かう事祈った。

 

 


 

 

 『マクロス・クォーター』ブリーフィング・ルーム

 

 ブリーフィング・ルームにて来訪者の到着を待っていたジェフリー艦長達は、『実験艦―02』から訪れるであろうシャトルの到着の報を待っていたが、来訪者達は『クォータ―』の格納庫に直接現れたとの報告を受けて、肩透かしを食らったような気分になると同時に彼女達の技術力の高さに警戒感を高める……アルト准尉の報告にあった救助の際に宇宙で光に包まれたかと思うと次の瞬間には水晶の様な部屋の中に居たという事から、瞬間移動もしくはそれに類ずる技術を有している可能性を考慮していたが、どうやら正解のようだ。

 

 案内を買って出たというミハエル・ブラン少尉により『実験艦―02』からの来訪者はブリーフィング・ルームへと向かっているとの事。室内には艦長であるジェフリー・ワイルダー大佐と実働部隊隊長であるオズマ・リー少佐とボビー・マルコー大尉、そして新統合軍からのオフザーバーでもあるキャサリン・グラス中尉。『実験艦―02』に乗る彼女らの動きにいち早く気付いたルカ・アンジェローニ准尉と、異星人の来訪者ゆえに不測の事態に備えて医療資格を持つカナリア・ベルシュタイン中尉と言った『クォータ―』の面々。

 

 そして『実験艦―02』のクルーである彼女達と親交を持ち、一番長く彼女達と接していた早乙女アルト准尉と、本人達の強い希望にて同席しているランカ・リーとシェリル・ノームが来訪者の到着を待っていた。

 

 

 暫くするとミハエルよりブリーフィング・ルーム前に到着したとの報告があり、ジェフリー艦長が答えると扉が開いてミハエルに案内された『実験艦―02』からの来訪者であるノノと翡翠の二人が入室してくる。

 

「――よく来てくれた。私が当艦『マクロス・クォーター』の艦長ジェフリー・ワイルダーだ」

「――は、初めまして。よろしくお願いします」

 

 桃色の髪をした年長の少女――オズマ少佐からの報告によれば、サンフランシスコ・エリアにある彼の居住の隣に住んでいる姉妹の姉であるノノと名乗る少女であり、その横で興味深そうにブリーフィング・ルームの中にいる面々を見回している栗色の髪をした少女が妹の翡翠嬢なのだろう。

 

「――わぁお、揃い踏みだねぇ」

 

 翡翠嬢が気楽な声を上げて驚いた表情を浮かべているが、その翠眼は冷たい光を放ちながら素早く周囲の人物と部屋の中の構成を確認している……子供の姿をしているが、その姿に安心していると痛い目を見る事になりそうだ。そう判断したジェフリー艦長は、そんな事をおくびにも出さずに来訪者達に席につく様に促して、彼女達が着いた後に『クォータ―』側の面々が着席する。

 

 そしてホスト側となる『クォータ―』の面々が自己紹介をしていき、ノノと翡翠も軽い自己紹介をした後にオズマやアルトにしたように事故によってこの局部銀河系に漂着した後にランカの歌に興味を持って『マクロス・フロンティア』船団へとやって来た経緯が説明された。

 

「……つまり君達はフォールド・ウェーブに乗ったランカ嬢の歌に導かれて『フロンティア』に来訪したと?」

「……まぁね。“事故”によってダメージを受けた船の修理の間は退屈でね、暇を持て余していたって言うのが実情かな」

 

 ノノと翡翠達の説明を聞いたジェフリー艦長の確認の言葉に、翡翠が肩を竦めて答える……答えている間に翡翠の視線を受けたノノがあからさまに目をそらして乾いた笑いを浮かべている所から、二人の間で何かがあったようだ。

 

「……なるほどな。オズマ少佐の証言では、ずいぶん“前”から『フロンティア』に潜伏していたようだが、そんな君達が何故か今回は表舞台に出て、『フロンティア』の暴挙を止める作戦に助力するという……一体どんな心境の変化があったのかな?」

 

 ノノと翡翠がオズマ達の前に姿を現したのは、ランカが高校に進学する前にオズマの住むアパートの隣に引っ越してきたのが最初であり、その後は目立った動きは見せずに水面下でランカを監察していたようだ……その後、シェリル・ノームの来艦や超時空生命体バジュラの襲撃を受けて混乱する『アイランド1』の中で彼女達は暗躍する……『フロンティア』行政府のサーバーや総合機械メーカー『L・A・I』のサーバーに侵入して情報を引き出したり改竄していたようだが、情報を引き出すために『L・A・I』のサーバーに侵入した痕跡をルカが掴み、バジュラの巣となっていた中型ボトルザー要塞での戦闘では、こちらの様子をうかがっていたのも彼女達なのだろう。

 

 そんな彼女達が何故“今”になって姿を現して此方に協力を打診して来たのか、その真意をジェフリー艦長は問い掛ける――数々の戦場を生き抜いた歴戦の戦士である彼は、言葉と共に偽りは許さぬとばかりにプレッシャーを飛ばす。

 ジェフリー・ワイルダーの放つプレッシャーは苛烈であり、その場にいる者全てに物理的な力を持っているかのような錯覚を覚えさせるほどのモノであるが、そのプレッシャーをまともに受けている翡翠は、顔色一つ変えずに翠眼をまっすぐに向けてプレッシャーの中で口角を上げた。

 

 私達は予期せぬ事故でこの局部銀河へとやって来た……言わば私達は漂流者(drifter)と言った所かな、とシニカルに笑う翡翠。彼女達にとって見知らぬ世界、そこにノノと共に放り出された翡翠は寄る辺を失った雛鳥の様なものだ――だがその雛鳥は強靭な精神を持ち、生きる為の術を知り、実行に移すだけの能力を持っていた……それでもこの銀河系――この宇宙にとって翡翠達はあくまで異物でしかなかった。

 

「所詮、私達はこの世界にとっては異物でしかなかい……だがら、この世界の人間同士や異なる種族同士の戦いに関与する気はなかった」

 

 故に『マクロス・ギャラクシー』の暗躍にも、バジュラと『フロンティア』船団の戦いすらも翡翠達は不干渉を貫いた……時折目に余った状況や危機的状況に陥った時には最低限の干渉はしたが、流れの趨勢(すうせい)には関与しようとはしなかった。

 

 直接バジュラ達と戦っているアルトや命がけで歌を届けたランカなどは不満げな表情を浮かべるが、オズマやジェフリーなどは無表情のまま話を聞いている……これまで『フロンティア』で水面下に潜んでいた彼女達のスタンスは理解した――ならば、何故この状況で彼女達は姿を現したのか?

 

「――だが、奴ら宇宙怪獣が関与しているなら話が違う――ノノねぇ」

 

 翡翠に促されたノノが頷いて立ち上がり、ブリーフィング・ルームに集まった面々を見回した上で口上を切る。

 

「……宇宙怪獣、それは私の故郷を襲った宇宙規模の災厄――私のふるさとである地球帝国が直面した破滅が具現化したような脅威」

 

 そこで翡翠より補足説明――ノノの故郷は翡翠の所属する星とは別の――帝政を敷く惑星であり、その名称を翻訳すると大地を指す『地球』となると告げられる。

 

 ノノの周囲に空間投影型ウィンドウが複数展開して、彼女の中に記録されていた過去の資料としての映像が映し出される――そこには多数の涙滴型の航宙艦が艦隊を組んで威風堂々と宇宙に進出していく姿。

 

「……これは、私達が初めて宇宙怪獣と遭遇した記録です――夢の動力である『縮退炉』を搭載した人類初の超光速宇宙戦艦『るくしおん』は艦隊を率いて宇宙探査の大航海へと繰り出して――彼ら宇宙怪獣と遭遇して壊滅しました」

 

 投影型ウィンドウの映像が切り替わり、無数の光弾の集中攻撃によって僚艦は次々と爆沈していき、旗艦である『るくしおん』も光弾の攻撃の前に艦のコントロールを失って、放棄された船より脱出艇が離れる光景へと変わる……『マクロス・クォーター』の周囲に展開して艦に甚大な被害を齎した30m級の小型宇宙怪獣と、帰るべき船を失いながらも生き残るために必死で抗いながらも力及ばず爆散する宇宙戦闘機の姿。

 

「……この猛威を振るっているのが、兵隊型と呼ばれる最小の宇宙怪獣です。強靭な肉体を武器に高速を生かした体当たり攻撃や、硬い鋏状の脚部で相手を破壊するなどの攻撃能力を持つだけでなく、航宙艦などには内部に侵入して自爆するなどの相手を破壊する為だけに存在しているような性質を持ちます……母艦から離れると2,3時間しか生存が出来ない所が救いですね」

 

 肩を竦めるノノ。そして投影型ウィンドウの映像が敗走するバジュラ空母をなぶり殺しにしていた3000m級の巡洋艦宇宙怪獣と同規模の存在が猛威を振るう映像へと切り替わる……巨大な身体を持ち、『るくしおん』と同技術で建造されたであろう涙滴型の戦闘艦を蹴散らしながら、ミサイルの集中砲火にも生き残る強靭な耐久性を見せる。

 

「これが、巡洋艦級と呼ばれる宇宙怪獣の主力となる個体です――彼らは強靭な肉体とそれを包む硬い殻を持ち、縮退兵器である光子魚雷の攻撃にも耐えました」

 

 映像が切り替わり、青い楔形のリフティングボディから射出された光子魚雷が光を放ちながら巨大な宇宙怪獣に命中して激しい爆発を起こすが、爆発が収まった場所には今だ宇宙怪獣が健在であり、艦首に当たる部分を開いて威容を示すかのように咆哮を上げていた。

 

 それからも映像が次々と切り替わり、重巡級や合体型や『ブラック・ホール』を取り込んで変動重力源と化したモノ、そして宇宙怪獣の天敵を作り出そうとして失敗した結果生み出された擬態宇宙怪獣などの姿が映し出され――最後に数千キロものパラボラのような円形の口吻を広げて、そのパラボラの裏側には無数の成長途中の重巡級が蠢いていた。

 

「……そしてこれが、現在確認されている宇宙怪獣の中でも最大級の個体――私たちは母艦級と呼んでいますが、パラボラの直径は数千キロにもおよびます」

 

 地球の直径が約1万2700キロであり、それと比べれば母艦型がどれだけ大きいかが分かる。惑星にすら匹敵する個体すら存在する……そんなもの漫画かB級映画でしか存在しないだろう。惑星規模の巨大生物など、成長する為に必要なエネルギー源や、惑星に匹敵する巨大な身体を動かす際に生じる負荷や動かすのに必要な意思伝達機能などを考えれば現実的な存在ではないと思っていたのに、それが映像となって『クォーター』のクルー達に突き付けられて、幾つもの戦場を繰り抜けてきたオズマやボビーは言葉を失い、普段は豪胆なジェフリー艦長も厳しい表情でうなり声をあげていた。

 

「奴ら宇宙怪獣が何時から存在するのかは分からない。分かっているのは、奴らは若い恒星に卵を産み付けて増殖して勢力を増やし、奴らは本能に従ってワープ時に発生するバニシングドライブ波に反応して向かう習性があり、甲虫どもが襲われた事を鑑みるにフォールドに突入する際に発生する重力波にも反応するんだろうな――つまり、同じフォールド航法技術を使うモノは全て奴らの殲滅対象になる」

 

 宇宙怪獣について説明するノノを捕捉する形で翡翠が説明し――このままではフォールド航法を使用するバジュラ達も、銀河系中心宙域に存在する唯一の移民船団『マクロス・フロンティア』も奴らの殲滅対象になるだろう、と締めくくる。

 

「……回避する術――彼らの矛先を変える術はないのかね?」

 

 きびしい表情を浮かべたジェフリー艦長の絞り出すような声にノノは首を横に振る。

 

「何とかコミュニケーションが取れないかと試行錯誤しましたが、彼らには意志や知性などは存在せず反射や防衛などの先天的な行動を以てして活動をし、人類との接触以来その攻撃性は増していって徹底的に殲滅活動を行い、先のバジュラとの戦闘のように残虐性ともとれる行動をも行っています……彼らは決して相容れない相手なんです」

 

 断言するノノに言葉に失う『クォータ―』のクルー。

 

「……何で、そんな奴らが現れるんだよ」

「……アルト君」

「……アルト」

 

 ぽつりと呟いたアルトの表情はあまりに暗い……バジュラの脅威から人々を守りたくて『S・M・S』に入隊して戦いの中に身を投じたのに、その後に起きた『マクロス・ギャラクシー』による『フロンティア』制圧作戦と、それに組したとしてシェリルは投獄されて、真実を調べていく内に明らかになる『フロンティア』によるバジュラの母星への侵攻計画と、バジュラがコミュニケーション可能な生命体である可能性を知り、自らの信念に従って『フロンティア』の暴挙を止めるべく抗った時に現れた未知の宇宙怪獣の脅威。

 

 翡翠によって導かれた『実験艦―02』の艦内で宇宙怪獣の強力なまでの攻撃力と圧倒的な物量を見たアルトは、何故これほどまでに脅威となりえる宇宙生物が立て続けに現れるのか――まるで銀河系中心部が人間が立ち入るのを拒んでいるかのように感じたのだ……そんなアルトを心配するランカとシェリル。

 

 レオン・三島一党に扇動されて銀河条約違反を犯そうとしている『フロンティア』を止める為に行動を起こそうとした矢先に明らかになった新たなる敵 宇宙怪獣の脅威……凶暴な性質を持ち恐るべき攻撃力と途轍もない物量……絶望的なまでの戦力差を目の当たりにした『クォーター』のクルーは、如何にして『フロンティア』を守るか難題に考えを巡らしていると、説明後は考えを巡らす『クォータ―』のクルーを黙ってみていた翡翠は立ち上がって一同を見回した後、口を開く。

 

「……まずは、甲虫どもと『フロンティア』の衝突を止める事を第一に考えてみたらどう?」

 

 宇宙怪獣の事はその後に考えれば良いと気楽に言う翡翠に冷めた視線を向けるオズマ達。だがそんな一同の冷たい視線を物ともしない翡翠はブリーフィング・ルームの中をゆっくりと見回す。

 

「あの甲虫どもが作るフォールド・ネットワークにランカねぇの放つフォールド・ウェーブが干渉出来る事は今までの事例から疑いようがない事実。そして『フロンティア』内での戦いでシェリル・ノームの魂の熱唱に呼応するように発現した新しいフォールド・ウェーブ――二人の放つフォールド・ウェーブは相乗するかのように交わり、力強く響いた……」

 

 思いを込めて二人が歌えば、あの甲虫どもにだって届くかもな、とにやりと笑う翡翠……翡翠の言葉に希望を見出したランカとシェリルが顔を上げ、その顔には決意の色が見える。

 

 ランカは思う――自分達とは違う形かもしれないが、バジュラにも確かに心が有る。

 シェリルは思う――自分たちの歌ならば、例えバジュラであろうと心を振るわせる事が出来るはずだと。

 

「……とはいえ、甲虫どもと『フロンティア』の争いの場に行くのに、護衛がこの船だけというのは心もとないな――と言う訳で、ノノねぇ、出番だ」

 

 翡翠の言葉をランカとシェリルを守れと取ったノノは拳を握って ふんっと鼻息荒く気合を入れるが、翡翠がどこからか取り出した細長い棒を渡されて へっ? と目が点になるノノ……翡翠が渡したモノ――それはマイクと呼ばれるものであった。

 

「……どういうこと?」

「――簡単な話さ。ノノねぇ、君も歌うんだよ」

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 ――ついに爆誕する、ランカとシェリルそしてノノを加えた音楽ユニット。
 ……翡翠の無茶ぶりは容赦ない。(オイ

では次回 第33話  Issues 懸案事項 8/23 0時 更新予定です。ではでは~。

 ……しかし、そろそろストックが……
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