マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
サヨナラノツバサ編
バジュラたちの母星へと侵攻した『フロンティア』船団だったが、大気圏に突入した後にバジュラたちの女王を押さえるべく『フロンティア』軍旗艦 可変ステルス攻撃宇宙空母『バトル・フロンティア』は強攻型へと移行すべくトランス・フォーメーションを行いながらバジュラの女王の居る
だが、その艦内では享楽的な光景が繰り広げられていた――新マクロス級宇宙空母のクルーに選抜されるという事は、専門的な教育と訓練を受けて専門職として第一級の技能を持つスペシャルな軍人あるという名誉と誇りに満ちた者である証でもあった……しかし、今『バトル・フロンティア』の至る所ではスペシャルである筈のクルー達は思い思いにくつろぎ、その表情は緩みに緩みきっていた……まるで薬物の影響化にあるかのように。
「……知りたい? 私が何者で、何の為に『マクロス・フロンティア』へと来たのか?」
『バトル・フロンティア』の戦闘指揮所から見知らぬ世界へと連れ去られたレオン・三島と『フロンティア』第四代大統領ハワード・グラス。そして新統合軍の首脳陣を位相の違うこの場所へと誘ったのは、一年以上前から『アイランド1』の闇で動いていた翡翠と名乗る少女――彼女が何を語るのか、レオン達は一挙手一投足を見逃すまいと視線に力を籠める……だが、そんな緊張感あふれる場面で、翡翠は苦笑を浮かべると肩を竦めた。
「……ま、そんな大した話じゃないんだけどな――私の正体は、ただの
望む結果を得る為に、翡翠は嘘ではないが全てではない――何時もの話術を語り出す……新型亜空間跳躍実験の事故により別の世界へと迷い込んだという所を省いて、事故によりノノと二人だけの状態でこの局部銀河に迷い込み、船の修理をしている時に”偶然“『マクロス・フロンティア』船団と遭遇して、修理の間ひまを持て余していた翡翠とノノは『アイランド1』に潜入して生活基盤を整えた。
「……つまり、何かね――君達が『フロンティア』に来たのは、単なる偶然だと?」
「……まぁね。そして『アイランド1』で生活している間に、妙な思念波をキャッチして――見つけたのが、ランカ・リーだった」
「……そんな子供の様な理屈、船団内での破壊工作の為ではないのかね?」
「そもそも、そんな戯言が通るとでも――」
翡翠の語る『フロンティア』船団との接触の経緯に、レオンのみならず新統合軍の将校達からも非難の声が上がるが、そんな彼らを見回した翡翠はくすくすと笑い始めて毒を吐いた――君達に私が注目するだけの“価値”があるのかと。
「……何だと!?」
「……地べたに這いずり回っていた程度の文明で、ゼントラーディの基幹艦隊と戦えたバイタリティーは賞賛しよう……だがその後に、種の存族を求めて宇宙に飛び出した後はどうかね? 移民船団同士が利権を確保する為にいがみ合い――遂には資源を求めて侵攻を仕掛ける」
地べたを這いずり回っていた頃と何が違う? 口を半月に開いて嘲るような笑みを浮かべた翡翠は、進化して高度な知性を獲得したとしても、知的生命体がその性から解放される事は別問題だとし、文明を維持する為に資源を確保しようとするのは自然な事だし、豊かな生活を求めて個人が競争するのもまた自然な事だと――そして、それは何処の世界でも起きている事であると嗤う。
「……そんな君達に注目するだけの価値があると本気で思うのかね? あぁ、別に恥じる事はない――生命体とはそういうものだ」
それは強烈な侮蔑――地上をはいずり回っていた頃より他者を捕食し、知恵を身に着けてからは自身の幸福を追求し、何時しか他者よりも幸福になろうと相手を抑制する為に知恵を使用する――それは、自らを邪悪と称する『
「『マクロス・クォーター』は、君達の行為を銀河条約とやらを違反していると断じているが、私からすれば君達が何をしようが、甲虫どもがどうなろうか、さしたる興味が無い――しょせん私は
銀河系中心宙域 バジュラの母星 衛星軌道上
人類が生存可能な惑星を求めて銀河系中心宙域を目指して航海を続けていた長距離移民船団『マクロス・フロンティア』は、超時空生命体バジュラと交戦状態に陥り、かねてからバジュラの襲撃を予想していた『フロンティア』軍は体内に内包するフォールド・クォーツが発生させるフォールド・ウェーブによるネットワークに結ばれたバジュラの特性を利用して、彼らのフォールド・ネットワークに干渉して操るジャミング・ウェーブと、彼らの通信プロトコルを解析して干渉波を受信するインプラント弾頭を以て襲ってくるバジュラを逆に取り込みながら、彼らの本星へと侵攻した『マクロス・フロンティア』は迎撃に出て来たバジュラを取り込みながら、バジュラの母星に迫り彼らのみが精製出来るフォールド・クォーツの莫大な資源を手に入れようとしていた。
だが、それに異を唱える『S・M・S』所属のステルス宇宙空母『マクロス・クォーター』は、コミュニケーションの可能性を持つバジュラを支配しようとする『フロンティア』を止めるべくバジュラたちの母星へとデ・フォールドして、軌道上に展開するインプラント弾頭を撃ち込まれて操られたバジュラたち解放しようと苦しい戦いを繰り広げていた。
人間の中でただ一人バジュラと同じくフォールド細菌と共生関係にあるランカの歌声と、フォールド細菌が原因でV型感染症に罹患しながらも魂を削って歌うシェリルの歌声が戦場に響くが、『フロンティア』が放つ強力なコントロール・ウェーブに阻害されてバジュラたちには届かなかった。
そんな彼女達に助力したのは、異界から来訪したバスターマシン7号ことノノ――バジュラたちに直接歌を届けるというシェリルの大胆な提案を受けて、シェリルとランカを抱えたノノは、バルキリーと操られたバジュラたちが戦う戦場を飛び――遂にバジュラたちからの攻撃が停止する。
「――歌が、通じたの!?」
「――ランカちゃん!?」
思いの全てを込めた歌声がバジュラたちに届いたと喜びを露にするシェリルとランカ……だが、彼女達を守りながら飛んでいるノノは首を横に振った。
「……いいえ、先ほどから『アイランド1』から放たれていたコントロール・ウェーブが停止しています。恐らくバジュラたちは、命令を受信できなくなって停止しているだけだと思います」
その証拠に変色した彼らの肉体は戻っていません。
目の前の変色したバジュラを見ながらノノはそう断言した――『実験艦―02』において『フロンティア』が行った対バジュラ作戦、フォールド・ジャミング波とコントロール・ウェーブを受信するインプラント弾頭によってフォールド・ネットワークを阻害されてショック状態にバジュラにインプラント弾頭が撃ち込まれて、身体を変色させた彼らが『フロンティア』軍に組み込まれていく映像を見せられていたシェリルとランカは、ノノの指摘にバジュラを止めたのは自分達の歌ではない事に消沈する―ーが、シェリルはそれでもと顔を上げる。
「――なら、今の内にバジュラたちに撃ち込まれたインプラント弾を取り除けば……」
『――バジュラたちは自由になる!』
『――俺達に任せろ!』
ノノとシェリルの話を聞いていたアルトとオズマは、それぞれのバルキリーを駆って近くで停止しているバジュラの傍まで移動すると、バトロイドに変形してアサルトナイフを装着すると関節部分に撃ち込まれたインプラント弾を切断して破壊する――すると痙攣したかのように身体を震わしたバジュラの色が元の色へと戻った。
『――やった!』
バジュラが元に戻った事に喜びの声を上げるアルト。
続いてオズマがアサルトナイフでインプラント弾を破壊してバジュラを元に戻したのを見た他の『S・M・S』隊員たちもそれぞれが愛機を駆ってバジュラに撃ち込まれたインプラント弾を破壊してバジュラたちを『フロンティア』軍の呪縛から解放していく。
シェリルとランカをフィールドで守っているノノも彼女達を後ろに下がらせると、両脚から三重六連装のミサイルサイロを八つ展開して信管を抜いたマイクロミサイルが発射される――マイクロミサイルは停止しているバジュラの関節部分に撃ち込まれたインプラント弾に命中――高速で衝突したマイクロミサイルはインプラント弾諸共破損して宇宙の藻屑と化した。
天文学的な数で侵攻してくる宇宙怪獣と戦う為に生み出されたバスターマシン7号ことノノには多数の敵と戦う為の武装が施されており、多数を相手にする戦闘こそ得意としていた――連続で繰り出す8つの三重六連装のミサイルサイロより発射されたマイクロ・ミサイルが、瞬く間に『フロンティア』軍にコントロールされていたバジュラたちを解放していく。
「スゴイ! スゴイよ、ノノ!」
「――これなら私達の歌が届くわ!」
瞬く間にバジュラたちを解放していくノノの能力に興奮した声を上げるランカとシェリル――さあ、今度こそ魂を込めた歌声でバジュラたちと心を通わせる。そう意気込んだシェリルとランカが歌い始めようとした時、ランカの腹部とシェリルの喉を中心とした光が灯り、彼女達の心に言いようのない悲しみの感情が流れ込んでくる。
そしてそれはシェリルより贈られたイヤリングに付いたフォールド・クォ―ツを持つアルトにも流れ込んできた――突然仲間達との繋がりが断ち切られて茫然自失になっている時に、乱雑に動く得体の知れない相手が使う金属の塊から撃ち込まれた金属片によって意思を奪われた驚きと哀しみ。
撃ち込まれた金属片によって仲間達と望まぬ戦いを繰り広げさせられた悲しみと怒り……自分の中に流れ込んでくる自分以外の感情の渦が、バジュラたちが感じた戸惑いと哀しみそして仲間達と戦わされた怒りの感情である事を理解したアルト。
……これがバジュラたちの感情。
悲しみと怒りの感情を持つバジュラたち……だからこそアルトは思う――俺達はバジュラたちとの戦いを望んではいない――俺達は敵じゃない、と。
可変ステルス攻撃宇宙空母『バトル・フロンティア』の艦内から『フロンティア』大統領と首席補佐官そして新統合軍の将校達を別の移送へと誘った翡翠は、自分達に悪意を以て近づいて来たと疑う『バトル・フロンティア』の将校達を前に冷笑を浮かべた後に言い放った。
――君達にそれだけの価値があるのか、と。
強烈な侮蔑の言葉から突き放すような物言いに、レオンを始めとした『フロンティア』側の人間は翡翠と名乗る少女の能面のように感情が削げ落ちた表情の前に二の句が継げない……つまり彼女は自分達『マクロス・フロンティア』はおろか地球人類そのものに何ら価値を見出していないと言っているのだ。
「……なるほど、つまり我々は君のお眼鏡にかなわなかったようだ――ならば何故再び我々の前に姿を現したんだ?」
鋭い視線を向けるレオン・三島……彼女の言う通りに自分達に何ら価値を見出していないのなら、何故再び姿を現したのか? 行動にはそれなりに理由があるはず。バジュラの母星に侵攻して、いざ女王バジュラを押さえて、バジュラたちに王手をかけようというこの時に現れたのには何らかの理由があるはずだから――言い逃れは許さぬとばかりに強い視線を向けるレオンや、厳しい視線を向けるグラス大統領や新統合軍の将校達を前に、翡翠は肩を竦めた。
「……そうだね、君達が甲虫どもの死肉を漁って一大勢力を築こうが、逆に甲虫どもの逆襲にあって滅ぼうが、さしたる興味はなかったんだが……」
どうやら、そうも言って居られない状況のようなので、な。
そう言って翡翠は指を鳴らすと、周囲が闇に包まれて巻き込まれたレオンや他の者達は突然の変化に驚きの表情を浮かべる……暗闇の中に無数の光が見えるので宇宙空間が投影されているのだろう……さきほどまでと同じく椅子に座っている所から重力があり、呼吸出来る所から周囲の宇宙空間が映像なのは理解できるが……問題は何の目的でこの映像を見せているのかという事だ。
そして前に座る翡翠が視線を向ける先の映像に映し出されたのは、巨大な宇宙施設であった。500キロを超える人工の天体で、その建造様式はゼントラーディ式である所から、古代プロトカルチャーが造り出した宇宙施設であることが分かる。
「……これは、ゼントラーディの自動工廠衛星か」
ずんぐりとした施設の姿に見覚えがある新統合軍将校の誰かが呟く……地球に襲来したゼントラーディ軍のボトル基幹艦隊との戦いの後、500万隻以上の戦闘艦艇を有する基幹艦隊が他にも銀河系内で活動している事を知った地球人類は、早急な戦力の再建する為に幾つもの自動兵器工場衛星を奪取して地球側の戦力の構築や、銀河播種計画に基づいて大量の移民用艦艇を建造したり、余剰生産能力だけで民間需要を満たす生産力を利用して来た。
現在の地球の社会を支えるだけの生産力を持つ自動兵器工廠衛星の映像に変化が訪れる。工廠衛星の各所から無数の球体が吐き出される――10m級と機動兵器と同クラスの機体に大型の火器を搭載した恐らく防衛設備の編隊が自動兵器工廠衛星の前面に展開していた。
「――これは防衛兵器か、一体何との戦闘を想定して? まさか監察軍の攻撃が!?」
1999年に地球に落下した巨大物体を調査した人類は、その物体が人工物であり至る所にあった戦闘の跡から宇宙で大規模な戦闘が行われており、少なくとも二つ以上の勢力が争っている事を知った――落下した巨大人工物―のちのSDF―1マクロスの痕跡を追って襲来したゼントラーディ軍との接触により、SDF―1マクロスは彼らゼントラーディと戦う『監察軍』の艦隊から落伍した中型砲艦であると判明したが、その後の基幹艦隊との戦闘の経た現在においても『監察軍』と接触した報告は皆無であり、その事から主戦場は銀河系の反対側に伸びる いて・りゅうこつ渦状腕や、銀河系外縁部に移っているのではと推察されている。
……だが、映像に映し出された相手は彼らの想像した相手ではなかった。防衛網を敷いた球体群が装備している火器を使用して迎撃行動を開始するが、その火線を潜り抜けて敵対者が姿を現す――甲殻類のような分厚い殻を持った蜘蛛の様な宇宙生物が赤い複眼を不気味に輝かせながら防衛線を敷く球体群に襲い掛かって、鋏状の脚部が球体の装甲を圧壊させる。
「……これはなんだ、バジュラの新種か?」
自動兵器工廠衛星の前に無数に展開して分厚い防衛線を敷く球体群だったが、それを上回る数の凶悪な宇宙生物が襲い掛かって球体群を次々と圧壊させていく。球体群が敷いた防衛線の至る所で繰り広げられる凶悪な宇宙生物による蹂躙劇――そして500m級の細長い円錐形の宇宙船が凶悪な宇宙生物と迎え撃つ球体群の双方を蹴散らしながら防衛網を突破して、その恐るべきスピードのまま自動兵器工廠衛星の外殻へと激突し、船体の四方にある開口部が開いて大量の宇宙生物を吐き出して自動兵器工廠衛星へと襲い掛かる。
「――翡翠・エム! この映像はなんだ!? こんな物を我々に見せて何をしようというのだ!?」
茶番に付き合う気はないとばかりに席から立ち上がったレオンは、目の前で笑みを浮かべる翡翠に噛み付くが、翡翠の笑みは崩れない――それどころか笑みはどんどん深く、禍々しいモノになる。
「……この映像を見せた意味か……これから困難な道を歩む君達への私からの優しさかな」
「……なに?」
無数の光弾が防衛網を突き崩して自動兵器工廠衛星へと直撃する光景を眺めながら、翡翠は他人事のように語り掛ける……これから相手にするモノがどんな存在なのか、知っていれば対処に悩む必要もないだろう、と。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
ノノとS・M・Sの尽力によって呪縛から解き放たれたバジュラーーだが彼らから発せられたのは悲しみの感情であった。
そしてバトル・フロンティアへと乗り込んだ翡翠は、ノノと言う枷から解き放たれて元気一杯に暴れています……ああ、ウチのオリキャラはどうしてこんなに悪役が似合うんだろうか。
では次回 第38話 A communicative heart, and… 通じる心、そして… 9/10 0時更新予定です……え~、最近書いてる時間が取れずにストックが尽きてしまいましたので、次回の38話をもってしばらくお休みをいただきたいと思います。ではでは~。