マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
サヨナラノツバサ編
億を越える大軍勢でバジュラたちの母星に侵攻して来た未知の敵 宇宙怪獣――ランカとシェリルの思いを込めた歌声と思念波に乗せたノノの説得により、『マクロス・クォーター』はバジュラたちと共に宇宙怪獣群を迎撃する事になったが、戦闘宙域の後方――バジュラたちの母星の衛星軌道近くにゲートが開いて複数の重巡級宇宙怪獣がワープ・アウトした。
「――後方に現れた宇宙怪獣はバジュラの母星へ向かっています!」
戦闘宙域の後方に突然現れた宇宙怪獣の別部隊は戦闘宙域を気にすることなく、まっすぐにバジュラたちの母星へと向かう――目の前に現れた億を超える規模の宇宙怪獣に気を取られている間に、恐らく前方に展開する宇宙怪獣群から位置情報を得て、後方から一気にワープにて戦場を飛び越えて、バジュラたちの母星を叩く腹つもりなのだろう。
唯一宇宙怪獣の情報を持つノノの説明では、彼ら宇宙怪獣には明確な思考能力を持たずに本能のみで行動すると説明されていたが、こうして伏兵を運用したり、先の戦いではバジュラ空母を嬲り殺しにしたりと――彼ら宇宙怪獣には意志があるように思える……もっとも悪意に塗れた唾棄すべき意志だが。
「――敵重巡級怪獣は速度そのままでバジュラ母星へ向かっています――到達まで280秒!」
目の前の億を超える敵の目前で反転など自殺行為であり……例え反転に成功してバジュラたちの母星に迫る宇宙怪獣を追撃したとしても、到底間に合わない。
「……今の速度だと減速したとしても大気圏で燃え尽きるのでは?」
「……それは向こうも分かっている筈だし、あの見るからに固そうな装甲なら大気圏に突入したとしても燃え尽きずに地表まで到達するかもよ?」
ワープ・アウトした重巡級怪獣が速度を緩めずにバジュラの母星へと向かうのを見たキャシーは、例え減速したとしても分厚い大気の層の前に原形を保てずに燃え尽きると考えたが、隣で回避行動を取りながらも、それは向こうも分かっている筈だと反論したボビーは、強固な外殻に覆われた重巡級怪獣なら もしかしたら大気圏に突入しても突破する術を持っているのではないかと反論する。
そしてボビーの懸念は現実のものとなる――軌道上に布陣していたバジュラの艦隊からの攻撃を物ともしない重巡級宇宙怪獣数百隻は、立ち塞がる駆逐艦級バジュラをその巨体で蹴散らしながらバジュラたちの母星の大気圏へと突入しようとしていた。
「――敵重巡級、大気圏に突入……ダメです、敵重巡級から未知のフィールドが発せられて、プラズマ化した大気から完全に遮断されています!」
物体が大気圏に入ると炎に包まれるのは物体が燃えているのではなく、突入した物体の先端が大気を圧し潰すように圧縮して大気が超高温状態になってプラズマ化したからであり、ワープ後に減速せずにそのまま大気圏に突入した重巡級宇宙怪獣の表面温度は3000度以上になり、その状態なら殆どの物質、まかりなりにも生物である宇宙怪獣といえども燃え尽きてもおかしくない温度である。
だが重巡級宇宙怪獣は、何らかの手段を講じて超高温を無効化して大気圏に突入して地表を目指している。
「――いかん! あんな巨大なモノがあの速度で地表に到達すれば、地表が大惨事になるぞ……」
ホロ・スクリーンに表示された映像を見ていたジェフリー艦長は、巨大な宇宙怪獣が地表に激突すれば大都市が一瞬で蒸発するほどのエネルギーが解放される……地球の白亜紀に地上の王者であった恐竜が絶滅したのは、直径10~15キロの隕石か彗星の破片が衝突した影響であると考えられている。
そんな巨大な宇宙怪獣が数百体以上も地表を目指している……そのまま地表に到達すれば地表は壊滅的な状況になるだろう……そうなれば、地表に降下している『マクロス・フロンティア』船団――共に降下している『アイランド1』もひとたまりもないだろう。
そこまで考えが及んだ者の顔が強張り、誰もがホロ・スクリーンを見ながら絶望に顔を歪ませるが――地表から幾重にも光の砲撃が上り――高密度のエネルギー砲撃は、数千度の熱にも耐えた重巡級宇宙怪獣の外殻に覆われた巨体を幾重にも貫いて爆散させた。
重巡級宇宙怪獣群が撃沈された光景は、『クォータ―』のブリッジで固唾を飲んで見守っていたキャシーやボビーに驚愕の表情を浮かべさせた……オペレーターのミーナによれば、今の攻撃はバジュラの女王が居ると推察される巨大な
――だが、敵である宇宙怪獣も一筋縄でいく相手ではなかった。
「――重巡級怪獣は爆沈する寸前に、表層にあった突起物を射出していたようです。数千機の突起物が地表に降下――大量の兵隊級宇宙怪獣が放出されています」
地表に突き刺さっている突起物から無数の兵隊型宇宙怪獣が放出され、
「……あちらはバジュラたちに任せるしかないな」
数百の上陸艇から出て来た兵隊型怪獣を迎え撃つバジュラ……地表での戦いはバジュラたちに任せておけばいいだろう――『クォータ―』の艦橋から見える無数の赤い光を見据え、ジェフリーを始めとするブリッジ・クルーは厳しい戦いを予想して身を引き締めた。
バジュラたちの母星に降り立った『マクロス・フロンティア』船団は立ち塞がるバジュラたちの防衛線を突破して、バジュラたちを統べる女王の居る
厳しい訓練を積んで新マクロス級のクルーとなった優秀な乗組員となった士官達が享楽的な姿を見せる事になった原因――人知れず新統合軍の艦艇に未知のケミカル物質を仕掛けた張本人――翡翠と名乗る一見少女の姿をした正体不明の人物は、戦争指揮所の壁に体を預けながら冷めた瞳で喧騒に包まれた戦闘指揮所を見ていた。
「――巨大生物群、速度を落とす事なく大気圏に突入――これは空力加熱の高温、高圧の影響をほとんど受けていません!」
「……このままでは、巨大生物群はその質量を保存したまま地表に激突します!」
バジュラの母星近くにワープ・アウトした全長10キロを超える未知の巨大生物が数百体、速度を緩める事無くバジュラたちの防衛網を突破して大気圏に突入してくる――猛スピードで突入した巨大な生物の身体が正面の空気が断熱圧縮され、その高温によって周囲の空気がプラズマ化して凄まじい熱が巨大生物を襲うが、硬い外殻に覆われた表面は1万度異常の高温でもダメージを受ける事無く落ちて来る。
「――いかん、あんな巨大なモノが落ちたら大惨事になるぞ!」
あんな巨大な物体があのスピードのまま地表に激突すれば、白亜紀に恐竜を絶滅させた大衝突と同規模かそれ以上の衝撃をこの星に与え――しかも巨大な物体は一つではなく数百も同時に落下すれば、大気は吹き飛ばされて星としての機能を失うだろう。
そうなれば、この美しい居住可能な星は不毛な星に変貌し、『フロンティア』に繁栄もたらす莫大な資源も失われ――何より数百もの巨大な物体が落下した衝撃波は『フロンティア』船団に壊滅的な被害を齎すだろう。
「――全艦、主砲発射用意! 目標、落下中の巨大物体!」
『バトル・フロンティア』からの号令の下、移民船団を守る新統合軍の戦闘用艦艇の火砲が上空から迫る数百の巨大物体へと向けられる――『バトル・フロンティア』の巨大な腕が主砲であるガン・シップを持ち上げて落下してくる巨大物体へと狙いを定める。
「主砲、『マクロス・キャノン』まもなくエネルギー充填が完了します!」
「各艦とのデータリンク正常稼働中、『マクロス・キャノン』発射と連動して一斉攻撃を開始します」
『バトル・フロンティア』の戦闘指揮所の中央に存在する球体状のホロ・スクリーンに表示された新統合軍の艦艇のステータスを読み解きながらオペレーター士官はまもなく主砲のエネルギー充填が完了する事を告げる――全長10キロを超える物体が数百も地表目指して落下してくる。
落下の衝撃はこの星に深刻な被害を与えるだろう……そうなれば『フロンティア』軍は壊滅的な打撃を受け、バジュラの母星攻略に随伴している巨大都市型移民居住艦『アイランド1』も運命を共にする事になる。
そうなる前に『フロンティア』軍の近くに落下する巨大物体を主砲の攻撃で破壊して、その後すぐにリバルシィフ・フールドを全力展開して落下の衝撃波をやり過ごすしかない――『バトル・フロンティア』で新統合軍艦隊の指揮を執る『フロンティア』新統合軍司令官が攻撃の号令を出そうとしたその時、オペレーター士官よりバジュラの
「……なんという破壊力だ、これがバジュラの底力が…」
「――司令官閣下、脅威となりえる物体は今だ多数あります!」
「――主砲、『マクロス・キャノン』! 発射!」
天を目掛けて撃ち出された幾重ものビームの威力に唖然としていた『フロンティア』軍の司令官は、彼の傍に居る幕僚に声に我を取り戻すとエネルギーの充填が完了している『バトル・フロンティア』の主砲『マクロス・キャノン』の発射命令を出し、司令官の命令を受けた士官がシステムを操って強行型に変形していた『バトル・フロンティア』の両腕で固定されたガン・シップから極光の輝きが放出される。
周囲の新統合軍艦艇も呼応して高出力の砲撃を行い、『バトル・フロンティア』とその旗下の艦隊の攻撃はバジュラの攻撃で大きく数を減らした巨大物体の残りを撃ち抜き、地表に落下しようとした巨大生物の全てが爆散して破片が降り注ぐ……例え落下中の全ての巨大物体が爆散したとしても、全長10キロを超える巨大物体の破片はそれなりの大きさを以て地表に降り注いで、地表の至る所で衝突の爆発が起きて星全体が巨大地震にでも在ったかのように衝突の振動で揺さぶられ、激突の衝撃波が暴風となってバジュラたちの
至る所で巨大隕石が衝突したような惨事が起こって凄まじい衝撃波が暴風となって地表に降下していた『フロンティア』船団を襲って、全長1600mを越える巨大な『バトル・フロンティア』を揺らし、その振動は中枢である戦闘指揮所にも伝わって球体状の巨大なホロ・スクリーンを囲んで任務に従事しているオペレーター達がしがみ付いて衝撃に耐え、上層に居る司令部の面々も椅子にしがみつくなどして耐えていた……ようやく暴風による衝撃が収まった『バトル・フロンティア』に更なる事態が襲う。
「――落下した破片の一部から飛翔体が多数出現! こちらに向かってきます」
「なんだと!?」
ホロ・スクリーンにて周辺の被害情報を調査していたオペレーターからの緊急報告に上層部の将校に衝撃が走る……新たに投影されたホロ・スクリーンに映し出されたのは、地表に突き刺さった円錐状の破片から飛び立つ無数の硬い甲羅に覆われた30mくらいの小型生物が映し出された。
「……これはなんだ、生物兵器とでも言うのか?」
「……こいつは兵隊型宇宙怪獣と呼ばれているよ」
将校の誰かの呟きに答える声があった――それは戦闘指揮所の壁に寄り掛かって情況を静観していた翡翠だった。壁に寄り掛かった姿勢のまま彼女は『バトル・フロンティア』の首脳陣に向けて解説を始めた。
「……落下してきたのは重巡級と呼ばれる宇宙怪獣で、10キロを超える巨体と硬い外殻に覆われていて、表層に生えた突起物は上陸艇と呼ばれる別種の宇宙怪獣だよ」
上陸艇は本体である重巡級から切り離された後に目標に向けて猛スピードで突進して相手に突き刺さると、螺塔内部に抱え込んだ兵隊型怪獣を放出して破壊活動を行う殲滅型だと解説する。
「……まぁ、本来 惑星に向けての宇宙怪獣の攻撃方法は宇宙空間からの艦砲射撃による殲滅だが、重巡級が大気圏に直接降下してくるとは小癪な真似をしてくれる……しかも兵隊型に飛行能力まであるとは……」
『バトル・フロンティア』の首脳陣に説明しながら翡翠は内心で首を傾げる……宇宙怪獣との戦闘記録を持つノノの説明では、宇宙怪獣には意志や知性らしきものは存在せず、反射や防衛など先天的行動を以てして活動し、共生関係にある群体が宇宙艦隊を作って知的生命体を殲滅する為に進撃をするという――だが、今回姿を現した宇宙怪獣は、伏兵として重巡級を惑星近郊にワープ・アウトさせて直接バジュラの母星を滅ぼそうとしたり、遭遇戦ではバジュラ空母を多数で取り囲んでなぶり殺しにしようとする残虐性を見せるなど、ノノの記録にある姿とは齟齬がある。
しかも重巡級は迎撃される事を想定してたかのように破片に紛れさせて複数の上陸艇を地表に降下させると、飛行能力をもった兵隊型怪獣を放出している……ホロ・スクリーンに映る兵隊型怪獣の姿を見ながら翡翠は考える……この違和感、放置しておくのは危険かもしれない、と。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
億を超える宇宙怪獣の大集団を前に果敢に戦うクォータ―とバジュラ。
その中で翡翠は、話に聞いていた宇宙怪獣の行動と違う動きを見せる姿に違和感を持ちます。
では次回 第41話 Two people who met in the ruins 廃墟の中で出会った二人 更新できるのは何時になるやら……時間が…ストックが……申し訳ないですが、気長にお待ちくださいませ。