マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

43 / 79

 サヨナラノツバサ編




第42話 scout ――スカウト

 

 バジュラ母星 近隣宙域

 

 億を超える数の脅威 宇宙怪獣の大集団の侵攻を受けたバジュラの母星は、星を守るバジュラの艦隊と『S・M・S』所属の可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』の必死の抵抗により一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 『クォーター』より発艦した『S・M・S』隊員達が駆るバルキリーは縦横無尽に戦場を飛び、群雲の如く襲い来る兵隊級宇宙怪獣を迎え撃ち、数奇な縁で共に戦う事となった異星の決戦兵器バスターマシン7号の助力もあって数の上では圧倒的不利の状況下であっても連携を取って戦う事で宇宙怪獣の侵攻を押し止めていた。

 

 だが宇宙怪獣の脅威は今だ底を見せておらず、30mクラスの兵隊型宇宙怪獣に混ざって250mクラスのジャックナイフ級宇宙怪獣が猛スピードのままにバジュラ艦を守るフォールド・バリアに激突すると、ジャックナイフ級の切っ先が陽炎のように揺らめいた後にフォールド・バリアを突破してバジュラ艦の船体に突き刺さった後に爆発――バジュラ艦は船体に大きなダメージを負い、弱ったバジュラ艦に次々とジャックナイフ級が襲い掛かり、船体に突き刺さってダメージを与えた後に爆発して遂にはバジュラ艦も耐えられずに爆沈してしまう。

 

「――バジュラの戦艦が!?」

 

 『クォータ―』のブリッジで一部始終を見ていたキャシーが驚愕の表情を浮かべる……『クォータ―』の近くで三連装生体重量子ビーム砲の威力を遺憾なく発揮していた戦艦バジュラが、ジャックナイフ級宇宙怪獣のスピードを生かした突撃によりフォールド・バリアを突破されて巨大な船体に勢いのまま深く突き刺さったジャックナイフ級は爆発――大きなダメージを受けた戦艦バジュラの傷ついた船体に次々と別のジャックナイフ級怪獣が激突して――それぞれが爆発して戦艦バジュラの船体に亀裂が入ると大爆発を起こす……『ギャラクシー』船団を壊滅させただけでなく『フロンティア』船団襲撃の折も、その強力な攻撃力と、『マクロス・キャノン』すら防ぐ高い防御性能により猛威を振るった戦艦バジュラがこうもあっさりと撃沈されるなど宇宙怪獣の恐ろしさを改めて実感する。

 

 ――そしてさらに恐ろしいのは、ジャックナイフ級宇宙怪獣がこれだけでなく何十、何百、何千――万を数えるほどのジャックナイフ級宇宙怪獣が此方に接近している事だ。

 

「――敵ジャックナイフ級5000が急速接近!」

 

 『クォータ―』のブリッジで天球のホロ・スクリーンを監視していたモニカの緊迫した声が響き、それを聞いたジェフリ―艦長は迎撃態勢を取るように指示をする……万を超えるジャックナイフ級の一部が『クォータ―』とバジュラの艦隊目掛けて急速に接近して来たのだ。

 

 ホロ・スクリーンに表示されるジャックナイフ級は恐ろしい速度で此方に接近してくる……ただでさえも厄介な相手であるのに、最悪なのは此方に接近してくるのは感知出来るジャックナイフ級の一部であり、その他のジャックナイフ級の殆どは今だ動きを見せていない事だ……ノノ嬢や翡翠嬢の話には聞いていたが、敵宇宙怪獣の恐ろしい所はその無慈悲な攻撃力や3000mを越える巨体に見合う防御力ではなく、彼らが侵攻してくる時に集結する総数――巨大な船体が轡を並べて進撃してくる数そのものであるという事を、シェフリーを始め『マクロス・クォーター』のクルーは実感した。

 

 バジュラたちの星が属する恒星系に侵攻してきた宇宙怪獣の数は億を超える規模を持つが、現在攻撃をして来ているのはそのほんの一部でしかなく、大部分は静観している状態であるのが恐ろしい……ノノ嬢の持つ記録によれば、宇宙怪獣には知性と呼べるモノはなく本能のようなモノや反射のみで行動しているという。

 

 ならば攻撃目標である自分達に全ての宇宙怪獣が殺到して、“億”を越える宇宙怪獣が一斉に攻撃を掛けて来てもおかしくない筈なのにその気配は無い……行動には理由がある筈なのだが、その理由が分からない――だが今は、目の前に迫る驚異に対処するのが先決だ。

 

「主砲発射用意!」

「――了解、右舷主砲エネルギー充填」

 

 『マクロス・クォーター』の右舷艦首に搭載された重量子反応砲―マクロス・キャノンにエネルギーの充填が始まり、周囲に居るバジュラ艦もまたそれぞれ主砲である重量子生体ビーム砲の発射体制に入る……『フロンティア』船団の侵攻に対抗する為に集結したバジュラ艦は千体近くが集結しているが、それに対して襲い来るジャックナイフ級は5000体と数の上ではバジュラ側が劣勢であるが、『クォータ―』とバジュラの側には異星の第六世代型恒星間航行決戦兵器バスターマシン7号ことノノが居た。

 

 『マクロス・クォーター』の主砲『マクロス・キャノン』と各バジュラ艦の重量子生体ビーム砲が一斉に発射され、『ファジカル・リアクター』によってノノの周囲の物理法則に干渉して無数のマイクロ・ブラックホールを生成して撃ち出す――無数のビームがジャックナイフ級を捉え、撃ち出されたマイクロ・ブラックホールが蒸発する刹那の時間にジャックナイフ級を超重力で歪ませて宇宙の藻屑へと変える。

 

「――よっしゃああ!」

 

 敵集団が消滅した事に雄たけびをあげるボビー。

 だが、喜びも束の間――幾つもの筒を持つ無数の塔が束ねられた巨大な攻撃的なフォルムを持つ宇宙怪獣の大群が接近しており、しかも大群の中には銀色の鏡面のような姿をした宇宙怪獣も混じっていた。

 

「――主砲、再充填急げ!」

「――了解、右舷主砲へエネルギー急速充填!」

 

 先ほどのジャックナイフ級の集団と同規模かそれ以上の規模の大群が近付いており、それを感知した『クォータ―』は主砲システムに負荷がかかる事を承知で急速充填を行い、周囲のバジュラ艦も同様に各重量子生体ビーム砲の発射態勢を取っている。

 

 そして『クォータ―』とバジュラ艦双方の攻撃準備が整って主砲の強力な攻撃が発射されて凶悪なまでの光の奔流が幾つも敵宇宙怪獣群へと突き進む――しかし強力なビームが届く前に銀色の輝きを持つ宇宙怪獣の集団が砲台型宇宙怪獣の正面に出ると、撃滅せんと撃ち出された無数の重量子ビームを銀色に輝く身体で受け、凹凸がほぼなく磨き抜かれた鏡面の様な身体は『クォータ―』やバジュラ艦の放った重量子ビームをあらぬ方向へと捻じ曲げていく。

 

『バスター――ビィイイイム!』

 

 マイクロ・ブラックホールを生成して射出していた影響でチャージに時間が掛かったノノが遅れて最大出力の必殺技バスタービームを放ち、フィジカル・リアクターによる純粋数学での物理法則を書き換えて精錬された星をも貫くビームが宇宙怪獣の集団目掛けて突き進んで砲台型怪獣を守るように展開していた銀色の宇宙怪獣群と激突した。

 

「――ノノちゃんのビームを受け止めた!?」

 

 『クォータ―』のブリッジでボビーがノノの放った赤いビームの直撃を受けても銀色の宇宙怪獣の船体を貫けない事に驚きの声をあげる……『フロンティア』船団から離脱した直後に遭遇した千を超える宇宙怪獣の集団に対してノノが放った赤いビームは宇宙怪獣の強靭な船体を貫いてそのまま両断するほどの威力があるのに、今直撃を受けた銀色の宇宙怪獣はノノの放った赤いビームをまかりなりにも受け止めたのだ……ビームの圧力そのものは殺しきれずに弾かれるように吹き飛ばされたようだが、その銀色の船体には目に見えるような損傷はなかった。

 

 反撃とばかりに銀色の宇宙怪獣に庇われていた砲台型の宇宙怪獣の巨大な塔を束ねたような砲台内に蠢く筒虫達が身体を膨らませると凶悪な威力を内包した無数の光弾を放ち、数千の砲台型怪獣から放たれた光弾も密度はこれまで以上の高さを以てノノや『クォータ―』そしてバジュラの艦隊を襲い、襲い来る光弾を回避しようとしてノノは『ファジカル・リアクター』を以て周囲の物理法則に干渉して空間を湾曲させると光弾の進路を逸らして自身とその背後に居る『クォータ―』やバジュラ艦へと光弾が降り注ぐのを阻止するが、『ファジカル・リアクター』の効果が及ぼせる有効範囲には限りがあって空間を湾曲させて逸らせる光弾はほんの一部でしかなく、多くのバジュラ艦が砲台型怪獣から発射された光弾によって多大な被害を受ける。

 

「――周囲のバジュラ艦、被害甚大!」

 

 モニカからの報告を受けるまでもなく、周囲のバジュラの艦隊はかなりの被害を受けていて、フォールド・バリアを張れる大型のバジュラ艦は光弾の飽和攻撃を辛うじて防いでいたが、その前のジャックナイフ級によるフォールド・バリアを突破された後の自爆攻撃によって船体に幾つもの損傷があり、今回の巨大な門松のような宇宙怪獣の攻撃により駆逐艦以下の小型の部類に入るバジュラ艦群の殆どが爆発炎上して半数以上が轟沈していった。

 

 


 

 

 大型都市型移民居住艦『アイランド1』市街地

 

 バジュラの母星攻略作戦に組み込まれた移民居住艦『アイランド1』は、他の『フロンティア』軍の艦艇と共に大気圏へと突入してバジュラ母星の大地に降り立ったが、度重なるバジュラの襲撃の影響で閉鎖系バイオプラント方式を採用している『アイランド1』はその機能に様々な障害が起こり、この度のバジュラ母星侵攻時のバジュラたちによる攻撃で『アイランド1』内の都市部分は瓦礫と化して、かつての栄華は見るも無残な姿へと変貌していた。

 

 そこへ未知の存在である宇宙怪獣の襲来を受けて、瓦礫の中を闊歩する甲羅を被った蜘蛛の様な巨大生物や、巨大な巻貝のようなモノを乗せて先端からビームの様な物を撃ち出しながら今だ姿を留めるビルを破壊する巨大生物など終末期の様な光景が至る所で繰り広げられていた。

 

 そんな地獄の様な光景の中で、全身に銃弾痕を受けて生きているのが不思議な状態の妙齢の女性、藍色の髪とトレードマークと化している眼鏡をかけたグレイス・オコナーは、目の前に居る栗色の髪をウルフカット整えた白いボディスーツに青い結晶を纏った一見少女の姿をした不可思議生物と向き合っていた。

 

 視覚映像を検索すると、この『フロンティア』がまかりなりにも平穏を保っていた頃に、シェリルの宿泊するホテルのラウンジで出会ったコード・Q1(ランカ・リー)と共に来ていた友人と一人だったと記録していた……だが目の前の少女(不可思議生物)は、突然現れたとてもバジュラとは思えない未知の巨大生物を手玉に取って排除した……まともな人物とは思えない。

 

 それこそ自分と同じインプラント手術で常人を越える能力を手にしたか、あるいは『フロンティア』軍の強化兵もしくは特殊任務用に調整された個体か、どちらにせよ油断出来ない存在であることは間違いなかった。

 

「……マネージャか、確かシェリル・ノームに付いていた人だね。そんな人がどうしてこんな所に?」

「……仕事の後のカフェに行こうとして迷ったのよ。貴方はどうして此処に? 散策するには殺風景だと思うんだけど」

「――いや、ちょっと野暮用でね」

 

 白々しい会話をしながらお互いに探るような視線を向ける……先に切り出した少女――翡翠の方だった。

 

「……シェリル・ノームは今『マクロス・クォーター』に保護されている……と言う事は、今の君は無職?」

「……失礼な事を言う子ね。大人になればやる事はいくらでもあるのよ」

「……けど、今の君は所属していた組織は壊滅し、『フロンティア』を制圧しようとして武装蜂起をする前にキノコに制圧されたんだろ?」

「……あなた、何者?」

 

 グレイスの視線が鋭くなる……目の前の少女があまりに此方の事情に詳しい事に、やはり『フロンティア』軍に連なる者かと疑念が深まる。

 

「……脱走した私を追って来たのかしら?」

 

 目の前の少女を見据えながらグレイスは素早く周囲の状況を走査して何か武器になるモノは無いかと探すが、残念な事に周囲には瓦礫だらけで武器になりそうなモノは存在しなかった……コンディションは最悪で、そんな状態であの巨大な蜘蛛の様なバケモノを葬った相手を出し抜けなければならないと考えた時、グレイスは自分が何の為に抗おうとしているのか分からなくなった。

 

 11年前に第117次大規模調査船団に研究者として参加してバジュラの研究をしていたが、突然バジュラの攻撃を受けて調査団は壊滅し、グレイスは何とか脱出してゼネラル・ギャラクシー社の調査船に救助されて瀕死の状態であった彼女はインプラント手術を受ける事で命を救われたが、代わりに精神を抑制されて上層部の人形としてネラル・ギャラクシー企業軍情報部所属して『マクロス・ギャラクシー』船団による超時空生命体バジュラの持つフォ-ルド・クォーツ独占する作戦に従事していた。

 

 だが、その『ギャラクシー』船団もバジュラの攻撃の前に壊滅し、上層部の指示によって『マクロス・フロンティア』船団制圧作戦を開始するも、事前に情報を入手していた『フロンティア』軍によって鎮圧されてしまい、自分も虜囚の身となってしまった……拘束された際に負った身体の損傷によってインプラントの呪縛から解放されたは良いが、何とか『フロンティア』軍の施設から脱走して、壊れた身体を動かして身を隠すべく街へと来たが街は瓦礫と化しており、孤立無援となったグレイスは途方に暮れる……今更ゼネラル・ギャラクシー社と連絡を取ろうとは思わないが、自分は何をすればいいのかと戸惑いを覚えている所に蜘蛛の様な巨大生物と、それを容易く吹き飛ばす少女の姿をした不可思議生物だ。

 

 B級映画でももう少しマシなシナリオを用意するだろうが、その登場人物に自分が関わっている事に自虐的な笑みを浮かべてしまうグレイス……そんな自分に対して目の前の不可思議生物(翡翠)は、にやりと悪魔の様な笑みを浮かべた。

 

「いいや、スカウトに来たんだよ、グレイス・ゴドゥヌワ(・・・・・・・・・)大佐」

「……やはり、私の事を知っていたのね」

「まぁね。どうも私ともう一人だけでは手が足りなくてね、色々と手札が多い人物が欲しいなと思っていたんだよ」

「……それで私を?」

「――そう、これから人類は未曽有の危機を迎える……いや、人類だけでなくバジュラを始めとする全ての生命が」

 

 グレイスの傍までゆっくりと近づいて来た少女は右手を差し出しながら、そこで口角を上げて、今までとは違い子供っぽく悪戯じみた笑みを浮かべる。

 

「……それにキノコにやられっぱなしなのも癪にこない? 今ならキノコへの意表返しも出来るよ?」

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。
 
 億を超える宇宙怪獣軍団相手に奮闘する『マクロス・クォーター』とバジュラの艦隊は、ゼントラーディや監察軍を越える規模を持つ宇宙怪獣の物量の前に苦戦を強いられる――1方バジュラの母星に降下した『マクロス・フロンティア』船団もまた群雲の如く迫りくる兵隊型宇宙怪獣の脅威に晒され、大型都市型移民居住艦『アイランド1」も瓦礫に埋もれ、避難した民間人も風前の灯火と思われーーその中で翡翠は決断する。

 次回 第43話 Wild Card ――ワイルド カード 10/23 0:05に投稿予定です。

 ――さあ、反撃の時だ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。